って息巻いても勝てない時はとことん勝てなくて泣ける。
「では、はじめ」
儀玄の合図で、俺の周囲に浮かぶ剣が一斉に周囲を旋回し始める。
俺は、集中力を極限まで高める。
飛剣が動きを止め、1本ずつ俺目掛けて飛んできた。
「うおおおおっ!!」
次々と迫りくる剣をブロッキングで弾いていく。
「うわ、凄い……!本当に生身で弾くなんて……」
「瞬光、量を増やしても良さそうだ」
「はい!師匠!」
サラリと恐ろしい事が聞こえるが、目の前の剣の嵐に集中しなければならない。
(クソっ、物量がやべぇ!!)
ブロッキングは判断を間違えればガードによる補間が効かない諸刃の剣である。
この嵐に立ち向かうには必須の力ではあるが、一瞬のミスがそのまま敗北に繋がりかねない。
「まだまだ行くよ!」
「まだあんのか!」
更に本数が増えてくる。
別々の方向からも飛んでくるし。
落ち着いて、焦らずさばく。
「くっ……!」
至る所から汗が吹き出る。
当たっても弾くし刃は通らないと分かっていても、凶器が自分に向かって飛んでくると言うストレスは緩和されない。
「瞬光」
「はい!」
「……そこだ!」
声がした方向から、剣を構えた少女が突っ込んできた。
俺はそれに対してDリバーサルを放つ。
「うそっ……!?」
反撃の頭突きを貰って、少女が尻餅をついた。
「そこまで!」
儀玄の制止の声が響いた。
「……はぁ〜……!」
俺は脱力して、一気にため息を吐いた。
疲れた……!
こんなに集中したのは久し振りだ。
俺は尻餅を着いたシリオンの少女に手を貸して立たせた。
「凄い防御力だったね、アレックス!」
彼女の名は、葉瞬光。
……そう、以前アキラに紹介された2人目の虚狩りだ。
なんでこんな事になったかと言うと……。
『アレックス。そろそろ試してみたくはないか?』
『試す?』
『以前にH.A.N.Dの虚狩りとやりあったそうじゃないか。なら……もう一人に挑んでみたくはないか?』
『……面白ぇ!』
と言う二つ返事でたまたま暇していた瞬光が呼ばれた。
本人はアキラに会う予定があると言い張っていたが、生憎とアキラは店員のボンプたちの猛反発でビデオ屋の店長をやっている。
「ご指導ありがとうございました、姉弟子」
年下っぽい顔立ちをしているがこの世界は見た目と年齢が合わないやつがごまんといる。
目上の人にはきちんと敬語を使うべきだ……とは思うんだが俺はそんなキャラじゃないしなぁ。
「アキラとリン以外に弟弟子が出来るなんて思ってもなかったな〜」
「アイツらも、ここで修行してたのか」
「うん。まぁ……色々あったけどね。最近は空の向こうに居たから、また会いたいなって思ってたの」
「そう言うと思って呼んでおいた」
「師匠に呼ばれて来たよ。姉弟子!」
「リン!久し振り!」
リンと瞬光がお互いに駆け寄ってハグし合う。
俺は、儀玄に向き合う。
「……どうだ?」
「まぁ、行けるだろ」
「……適当だな」
「お前さんが人の評価で動く人間では無いのは知っている。私に言われるより、自分の中の感情の方が正しい判断をするだろうよ」
「……世話になったな」
「短い間だったが、お前も私の弟子の一人だ。生きて帰ってこいよ」
儀玄が懐から1枚の札を取り出す……今どっから出した。
「こいつは選別だ。お前さんのミアズマへの抵抗力を少し補強する術法を込めた。気休め程度だがな」
「いや、助かる」
「お前さんには修行以外に適当観の軽い修繕も任せてしまって悪かったな」
「世話になってる身だ。せめてそれくらいはさせてくれ」
「お前さん、今の時勢中々見ないレベルのお人好しだな……本当に郊外の出か?」
儀玄の感嘆に、俺は肩をすくめて答えた。
「リン、アキラは……?」
「お兄ちゃんは店番だよ」
「そっか……」
……アキラも罪な男だな。
「全く……可愛い弟子を泣かせおって」
「ああ言う奴ほど本命が居たりしてな」
「滅多なことを言うなよアレックス。虚狩り全員に刺されるぞ」
「……いや、マジで何なんだよアイツ」
虚狩り二人に特大矢印が向けられているプロキシ……ってそういや伝説のパエトーンだった。
二人で一人のプロキシとは言っていたが……妹の方も多方面に勘違いを量産する小悪魔らしい。
「世話の焼ける弟子たちだ」
……なんか、師匠の方も陥落しかけなんじゃないのかこれ?
「何か言ったか?」
「イエ……ナンデモナイデス」
何はともあれ……プロヴィデンスホロウに挑む時が来た。
1か100しか無い男、アレックス。
安定して勝つのがとんでもなく難しい……。