「よし……」
ニットキャップを被り、ベストを羽織り、グローブをはめる。
相棒の音動機にドライバディスクがセットされているのを確認。
対エーテル浸食抑制剤の在庫をチェック。
通帳類は金庫にしまった。
準備は万端だ。
「行くか」
早朝の六分街。
朝が特別早い人間以外誰も出歩いていない中……俺は自宅の鍵を締めた。
「おはようございます。今日は早いですね」
お隣の治安官さんがゴミ袋を持って歩いていた。
「……大事な日だからな」
「はっ……!もしや今日がデビュー戦だったり……」
「まぁ、そんなところだ」
「頑張ってくださいね。応援には行けませんが、勝利を祈っています」
「どうも」
六分街の……すっかり馴染みとなったビデオ屋に到着する。
CLOSEDの札が掛かっていたが、構わず中に入る。
「来たね」
リンが奥へ入ろうとしていたので、手を挙げて軽く挨拶する。
「お兄ちゃーん。アレックス来たよ」
「今行くよ」
「ふぁ……おはよう、リンちゃん」
……なんかシレッと2階からアキラとレミエールが降りてきたがまぁ気にしないでおこう。
「……ゆうべはお楽しみ、ってやつか?」
「……別に彼女とやましい事なんてなにもしてないさ」
「まぁこれから封鎖地区に不法侵入するわけだからやましい事はこれからするんだが」
「……そうだね」
リンが奥の機材をセッティングしている間に、アキラとレミエールと俺で作戦会議を行う。
「突入まではサポート出来るけど……今回、私は送るまででいいんだよね?」
「病み上がりの君を酷使するわけにもいかないからね。それに……アレックスは、ひとりでの決着を望んでる」
「ふーん……良いね。アーケードモードのさしずめラストステージって感じ」
「最奥のヤツをぶちのめしてエンディングだ。何も考えることは無い」
「僕とアレックスがホロウに突入したら、レミエールは速やかに離脱……リンが回収してここに戻ってくれ」
「分かったよ、お兄ちゃん」
……すると、ビデオ屋の玄関のベルが鳴った。
「ちょっと見てくるね」
リンが機材室から出ていく。
「誰だろうね」
「おに……アレックスさん!」
「……カリンか?」
声がしたので、俺も表へ出た。
息を切らしたカリンがカウンター前に居た。
「出発、するんですね……」
「……ああ」
俺は、カリンに自宅の鍵を差し出した。
「預けておく」
「え……?」
「取りに行くから、待ってろ」
「……これで、納得すると思ってるんですか?」
「しろ」
「嫌です」
「もう決めたことだ」
「………………」
カリンは渋々と鍵を受け取った。
「絶対、帰ってきてください」
「そのつもりだ」
「……待ってますから。お父様も一緒に」
「……アイツ絶対追いかけてくるだろ」
腕を組んで高笑いするギルスを幻視した。
「嫌なら帰ってきてください」
「わかったよ……」
俺は両手を挙げて降参のポーズをとる。
「大丈夫だよ、カリン。僕がついてるからね」
「天下無敵のパエトーン様をナビに出来るとは、俺も出世したもんだ」
最初はこんなモヤシ野郎がパエトーンだなんて露にも思わなかった。
「うんうん。話は纏ったみたいだしそろそろ行こうか?」
「なんで君が仕切っているんだい……?」
「構わねぇ。誰の仕切りだろうが、俺の出番さえありゃな」
「勿論。貴方はあのホロウで大暴れしなきゃいけないんだから」
「上等だ」
俺達はビデオ屋から出る。
決着のときだ。