ホロウに入るときの感覚は、なんどやっても変わらない。
俺とアキラはプロヴィデンスホロウへ突入した。
……が、
「……アキラ?」
一緒に突入した筈のアキラが、傍らに居ない。
「どういうことだ……?」
周囲を見渡すが、影も形もない。
「マジかよ」
「うむ、大マジじゃな」
「うおっ!?」
背中から聞き覚えのある女の声がする。
慌ててその場から飛び退くと……えらく簡略化した人形みたいなのが浮いていた。
「モナド体か?」
「なんじゃ、知っておるのか」
「まさか、ずっと背中に張り付いていたのが……?」
「うむ。この世界にも様々な異能があるのじゃな」
モナド体と呼ばれた小さな人形が光ると、シルエットが拡大する。
光が収まると、そこにはイングリッドが立っていた。
「見てるだけじゃなかったのか?」
「少々事情が変わっての。あのぷろきしーとか言う小僧はほろうに弾かれて外におる」
「……なんだと?」
「今、このほろうの中には正真正銘おぬしだけじゃ」
ホロウから弾かれた?
そんな事が起きるのだろうか。
そこまで考えて否定する。
人類はホロウを歩く方法を手にはしたが、未だ解明したわけではない。
「OK、分かった。切り替えよう」
奥まで行ってギルをぶん殴る。
以上終わり。
「単純じゃの……」
「物事はシンプルな方が何かと都合が良い。特に……ファイトはな」
勝つか負けるか。
それだけだ。
「世界は変わっても、おぬしは変わらんな」
「……そうなのか?」
「最後に会ったアレックスも、清々しい顔で戦っておった。おぬしの顔もそっくりじゃ」
「……そうか」
好きなキャラと同じ顔で、同じ顔付きになっているのなら……それは喜ばしい話なのかもな。
「わしは長いことここに居られんが、コイツを着けよう」
「モナド体をか」
「最悪コイツがおぬしをこのほろうの外へ連れ出すじゃろ」
「……何から何まで悪いな」
「足掻く若者の背中を押すのも老人の務めじゃ。ほな、ばいならー」
イングリッドが消えた。
俺はホロウの奥へと歩き出した。
(ヤツは、多分俺を呼んでる)
ホロウの中だというのに……空間が歪んでいない。
ギルは、ホロウにすら干渉している。
アキラを弾いて、俺を自身の下へ呼んでいる。
(……ひとりで、ケリを着ける)
それしか無い。
そして、周囲に多数のエーテリアスがわらわらと集まってきた。
「ハッ……!肩慣らしには、丁度いい!」
俺は迎撃の構えを取る。
「来やがれ!」
――――――――――
ホロウの奥。
玉座に座る男がいた。
「………………」
男は、アレックスの侵入に気付いている。
「まだ見ぬ大海……望みはそれか?」
男……ギルは、不敵に呟いた。
眼下に傅くエーテリアス達が動き始めた。
「ならばここまで来い、アレックス」