プロヴィデンスホロウ外、撤収地点。
アキラがホロウから放り出された所をレミエールが発見し回収していた。
「お兄ちゃん!?大丈夫!?」
「う……あ、れ……ここは……?」
「ホロウの外だよ……」
「……何があったの?アキラさん」
「分からない……アレックスと一緒に侵入したと思ったんだけど……」
アキラが頭を押さえて起き上がる。
余談だが、先ほどまで横になっていたのはレミエールの膝の上だった。
「そうだ、アレックスは!?」
「……見てないよ。キミだけホロウから出てきたんだ」
「じゃあ……」
「そうだね、お兄ちゃん……アレックス、まだホロウの中かも……」
3人は無言でホロウを見あげた。
「……よし。fairy、リン。もう一度侵入しよう」
「お兄ちゃん!?何があるか分かんないんだよ!?」
「プロキシとして同行して、ひとり残して帰ってくるなんて……パエトーンの名前が泣くよ。リン、僕たちは皆のプロキシなんだ」
「……全くもう」
「アキラさん。カッコつけてるとこ悪いんだけど……アテはあるの?」
「何のために暫くあのホロウを調べたと思っているんだい?不測の事態に備えるためさ」
『マスター。データの整理が終わりました』
「流石だねfairy。今月の電気代は気にせずやってくれ」
――――――――――
ヴィクトリア家政、詰所にて。
「……騒ぎになっていますね」
ライカンがテレビを点けると、プロヴィデンスホロウがニュースになっていた。
『只今入った情報によりますと、プロヴィデンスホロウへ侵入が出来なくなったとのことです』
「入れなくなった……ってことですか……?」
カリン、リナが内心穏やかではない様子で見ていた。
『1時間前からホロウのデータが急変、縮小を始めたため……調査員がホロウへ入ろうとした際、すぐに戻ってきたそうです』
『これは異常事態ですね……入ってもすぐに外へ出されるホロウなんて前代未聞です』
「……アレックスさん」
リナが、想い人の名前を呟く。
今は、見ていることしか出来ない。
「……り、リナさん!」
「カリンちゃん?」
「アレックスさんは……必ず帰ってきます。だから……え、笑顔で迎えましょう……!」
「……そうですわね」
「……フン」
ライカンが鼻を鳴らすが、二人には聞こえない。
「そうと決まれば……アレックスさんにお出しする料理を用意しませんと」
「リナ、その前に仕事があります」
――――――――――
郊外。
猪突猛進のメンバーは別件で出払っていたため、プルクラは単独行動していた。
「……ホロウに、入れない」
たまたま点けていたラジオから、そんなニュースが流れてきた。
不安を煽るひと言ではあるが……。
「だから、何だって言うのさ」
気にしないように振る舞う。
それは、信頼か、それとも願望か。
「アイツは帰ってくる。絶対にね」
そうは言うものの、プルクラは居てもたってもいられずシーザーにメッセージひとつ送ってバイクに飛び乗った。
――――――――――
クランプスの黒枝、某所にて。
ヴェスポは一時的に黒枝預かりとなっているので……ここで生活していた。
「最近楽しそうだねぇ、ヴェスポちゃん」
「そう見えるかしら?照」
「うん。照ちゃんにはそう見えるなー」
「そうね……恋をしてるからかしら」
「……え。あのウワサ本当なの?」
照がちょっと困ったような笑みを浮かべる。
「どの噂かしら」
「『筋肉ムキムキ、マッチョマンの一般市民と熱愛発覚』」
「……一般市民かしら、彼」
「さぁ?ヴィクトリア家政とかハワードコネクションとかとパイプ持ってて一般市民は無理だよぉ」
「そうねー」
「……で?本当にそうなの?」
「ええ」
ヴェスポがノータイ厶で肯定したので、照は頭を抱えた。
「嘘ぉ……」
「聞いといて信じないのはひどいんじゃない?」
「だってあの……アレックスって人でしょ?とてもじゃないけどヴェスポちゃんの趣味には思えないんだけど……」
「そんな事言われてもねぇ……好きになっちゃったんだもん」
「はぁ……どうするの?歌手に復帰するって言うのに恋人騒ぎなんかで足引っ張られたら大変でしょ?」
「良いじゃない別にその程度で足元掬われる程度で収まるつもりないし」
「……そっか」
「心配してくれてありがと、照。私は大丈夫だから」
ヴェスポは笑顔で言い切る。
「私の歌が好きって言ってくれる人がいる限り、私は無敵なんだから!」