ドライバディスク『GO!ALEX!!〜Ver.Vesper〜』
6セット効果:残りHPが3割を切ると発動。
心象風景を全てアンロックし、戦闘終了までVスキルゲージ、ドライブゲージ、SAゲージが全て無制限になる。
また、アレックスの攻撃は全てパニッシュカウンター扱いとなる。
戦闘終了時破損し、以後使用不可能となる。
――――――――――
「君の敗北は、既に分かりきっていたことだ」
ギルが、6枚の翼をはためかせ倒れたアレックスの元へと降りてきた。
「しかし、私の知らない力を君は見せてくれた」
うつ伏せで倒れ込んだアレックスの頭に手をかざして……止まる。
「ありゃ、わしの存在に気付いておったか」
「観測者が何の用だ」
ギルが鋭く睨む先。
白髪の美少女が、瓦礫の山に座っていた。
「いやいや、ちょっとお手伝いじゃよ」
美少女……イングリッドが、アレックスの傍に降りる。
ギルは黙って眺めていた。
「おーい、小僧?起きぬか。まだへばるには早いぞ」
ぺちぺちと横たわるアレックスの頬をはたく。
「観測者よ。介入したところでどうにもならない」
「おぬし、わしの事を知っておるのか?登場作品は被ってなかったから知らぬはずじゃが……」
「文書には貴様らのことも記されていた」
「ほーん。機会があったらそっちも確認してみるかの……おい、アレックス。起きろ……しょーがないのう」
イングリッドが光を手のなかに集める。
「おぬしに届けてやろう。皆の声を」
その光が……アレックスの中に溶けていった。
「わしがやるのはここまでじゃ。ほなばいならー」
「………………」
ギルがイングリッドから視線を外し……アレックスを見た瞬間、身構えた。
……アレックスの手が一瞬動いたのだ。
「何というポテンシャル、素晴らしい肉体強度だ……!文書の通りとはいかないか……!」
ギルはまた翼を展開する。
「君は私の障害足り得る。全力をもって排除しよう」
「そう、かよ……」
――――――――――
声が聞こえた気がした。
俺の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。
『アレク』
『アレックスさん』
『アレク!』
『アレックス』
『お兄様』
『アミーゴ!』
誰かが俺の名を呼んでいる。
誰かだって……?
そんなの、分かりきってるじゃねぇか。
「う、ぅ……」
意識が戻ってきた。
全身が痛い。
身体が鉛のように重たい。
けど、生きてる。
「君は私の障害足り得る。故に全力をもって排除しよう」
「そう、かよ……」
ギルとの戦いで、ヤツのクリティカルアーツであるセラフィックウィングを受けてしまった。
ガードもパリィもろくに出来ず致命傷を負ったはず。
なのに、何故生きてる……?
「が、は……!」
立ち上がり、ふらついた所をギルに殴られる。
「パイロキネシス」
「っ!」
飛んでくる炎の弾をブロッキングで弾いた。
「星よ」
ギルの頭上から、炎と氷の隕石が大量に落ちてくる。
……画面内に一発ずつじゃねぇのかよ!
「く、そ……!」
落ち着いてブロッキングとドライブパリィで捌いていく。
一発でも食らえば炎上か凍結し即フルコンボを貰ってまた倒れる可能性が高い。
……だが、不思議とそのリスクに怯え動けなくなることは無かった。
「今、だ!!」
迫りくる隕石の間を縫ってギルに飛び掛かる。
「DDT!!」
「ぐあ……!?」
弾抜け属性の移動投げを使って一気にギルとの距離を詰める。
ようやく縮まった差に息を吐く暇もなく攻防が始まる。
俺とギルは無言で打ち合う。
打撃を当て、受けて。
投げて投げられて。
ひたすらに殴り合いが続く。
「この終わりかけた世界を、私が導くのだ……!」
「この世界で起こった事件を経験してねぇテメェの言葉なんざ、誰が聞くかよ!!」
……結局、コイツは俺の記憶から生まれたばかり。
11年前の旧都陥落を体験していない。
そんな奴が言う言葉を……この世界の人々は信じないだろう。
俺の蹴りがギルの腹を打つ。
ギルの蹴り返しが俺の胸を捉える。
途方もない攻防。
傷はそのまま。
痛みもずっと自己主張している。
呼吸するたびに肺が焼けるように熱い。
関節が軋んでいるような気がする。
だが
(力が、漲る……!)
ギルは先ほどのリザレクションで身体は完全回復している。
対する俺は、傷も体力もそのまま。
けれど立って戦える。
いつの間にか音動機は起動していて……ドライバディスクが回る音がしている。
ドライバディスクから流れる曲は、なんだか懐かしく……力が漲る気がする。
普段は女性らしい歌声のヴェスポの声が……この曲からは凛々しく声を張る、逞しさを感じる。
まさに応援歌だった。
俺は、前の人生からずっとこの曲と共に戦ってたのかも知れない。
「戦いの意味さえ分からぬ者よ。倒れたまま己の運命を受け入れたまえ」
ギルの渾身のストレートが俺の顔面を捉える。
「ぐ……お……!!」
負けじと身体に渾身の力を込めて立ち上がる。
「私こそが君の神だ」
神だと?
「ふざ、けんな!!」
「!?」
俺はギルに向かってとびかかる。
足をかけて転ばせた後、左腕を取って関節を極めた。
「ぐ、う……!?」
「戦いの意味だァ!?あるさ!俺にもな!」
「くっ……!」
「お前は、俺から生まれた存在だ!だから俺がケリを着けなきゃならねぇ!!」
更に絞め付ける。
「あともう一つ!」
締める手を離してギルを蹴り飛ばした。
肩を回してVスキル:オーバーホールを発動する。
立ち上がるギルに
腹に拳がめり込む。
「ぬぅ……!?」
オーバーホールの効果は、発動後一度だけ打撃の有利フレームを増やすこと。
通常ヒットがクラッシュカウンター……要するにパニッシュカウンター扱いとなる。
「DASH!」
ドライブラッシュで追撃を仕掛ける。
いつものヘビーラリアットコンボから、本来は繋がるはずのない必殺技が連携に組み込まれる。
「フラッシュチョップ!」
VスキルII:オーバーチェイン。
一度だけ必殺技から異なる必殺技へコンボが可能となる。
ギルを水平を薙ぎ払う光の軌跡が打ち据える。
「皆が、俺の背中を押してくれたからだぁぁぁぁぁぁ!!」
スーパーアーツ3を選択。
これが俺の出せる最大の攻撃。
ギルの首を締め上げるスリーパーホールドに移行する。
「ぐ、ぬ、ぬ、あ……!!」
「絶対離さねぇ……!!」
渾身の力で絞め続ける。
ここで、確実に落とす。
ギルの抵抗も激しい。
肘や足が俺の身体を打つ。
「っ……!?」
ぞわり、と悪寒がする。
何かが浸食してきている。
「クソっ……!ここでミアズマかよ……!」
俺は体質的にミアズマに弱い。
ここで浸食されてしまえばここまでの戦いは全てパァだ。
こいつの一部となってしまい永遠にこのホロウをエーテリアスとして彷徨うことになるだろう。
たが、ここで手を離してしまえば仕切り直しだ。
ここで仕留めたい。
が……。
「う……く、くそ……!」
視界が霞んできた。
……俺とギルの間から、何か光が漏れた。
「な、何だ……!?」
胸のポケットに入れていた物が勢いよく飛び出して上空に浮かび上がった。
ミアズマがそちらに吸収されていく。
「儀玄の、札……!?」
儀玄から渡された札が、ミアズマを吸収していた。
「サンキュー……師匠!」
一瞬のスキに抵抗を強くしたギルが抜け出そうとする。
これ以上は絞められない。
「大人しく、しろ!!」
絞めた体勢のまま、首投げで後方にぶん投げて叩き付けた。
「ぐおぉっ……!?」
「ここが魅せ場だ!!」
立ち上がるギルが翼を広げる。
またCAを使うつもりか……!
「
俺は飛び上がる瞬間ギルを掴む。
「貴様……!」
「ハァッ!!」
バックドロップ。
そして、もう一度バックドロップをぶちかます。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
逆さまになったギルを抱えて大きくジャンプする。
そして、頭から叩き付けた。
「ハイパーボッ!!!!!」
勝負は、決まった。
俺はギルから離れる。
……ギルの身体が赤黒く染まり、液状になって床に広がった。
結局、中身はドッペルゲンガーに過ぎなかったと言うことが。
「はぁ……はぁ……」
汗を拭い、ニットキャップを握る。
視界にプルクラのくれたグローブが映る。
「サンキュー……プルクラ、リナ……ヴェスポ……」
誰も居ないホロウの中で、俺は天へと拳を掲げた。
「勝ったぞ……!」
無事、決着……。