「ん〜……!」
隣に停めたバイクの上で、プルクラが大きく伸びをした。
俺も軽く身体をほぐす。
結構な時間飛ばしていた気がする。
ここは……郊外の何処か。
どこでも良いし何処だか分からん。
「なんでここに?」
「景色が良いからさ」
使われておらず、寂れたガソリンスタンド。
その裏手の崖から……新エリー都が見える。
「なるほどね……」
俺はバイクから降りる。
……気が付けば、俺のバイクには猫のシール以外にデフォルメされた幽霊と、これまたデフォルメされたヴェスポのシールが貼られていた。
いつの間にか二人に貼られていたらしい。
「今日はここで野宿でもするかい?」
「……それも良いかもな」
だから野営用の荷物があったのか。
思えば……新エリー都で暮らしてから郊外で一夜明かすなんてこともなくなった。
なんだか懐かしい気持ちになる。
「見なよ、アレ」
「……おお」
日が沈む。
新エリー都も、郊外も夕日に照らされていた。
「言ったろ?景色が良いって」
「そうだな……」
そのへんにあった倒木を転がして椅子にして座る。
プルクラが隣に座った。
……近い。
「……んだよ」
「良いじゃない、別に」
「そんなくっつかなくてもいいだろうが」
「嫌かい?」
……正直なところ、嫌ではないが……困る。
郊外育ちだが案外ちゃんと身体の手入れをしているので、近くを通られるといい匂いがしたりして少し心臓に悪い。
「イヤじゃねぇよ……ただ」
「ただ?」
「……落ち着く」
「ふぅん……?」
プルクラがマスクを外して……ニヤリと笑う。
そして、俺の腕に身を預けた。
「じゃあ、私はアンタの隣に居てあげる」
「……そいつはどうも」
しばらく二人で、沈み行く夕日眺めていた。
郊外の夕日なんて、昔は何も感じなかった。
一日が終わって、また新しい戦いが始まるだけ。
今は?
(今は……どうなんだろうな)
ずっとひとりで過ごして来た。
けど、今は……プルクラが隣に居て。
リナとか、ヴェスポとか。
アキラとかフォルテとかカリンとか……ギルスとか。
周りに人が増えた気がする。
(……ガラにもねぇな)
考えることが増えた。
やることも増えた。
なら、それで良いんじゃねぇかな。
少なくともあの時……何も考えないでただ拳を振るっていた日々より遥かに良い。
「プルクラ」
気が付けば、俺は傍らの女の名を呼んでいた。
「な、何さ」
急に呼ばれたからか知らないが、珍しくプルクラが驚いた顔をしていた。
「俺は……お前が居たから、マシな生活と……ガラにもなく夢なんて持てたのかも知れねぇ」
「なんだい急に……」
「だから……その……」
踏み込んだ関係になりたい。
いつしかそう思うようになっていた。
「……その」
プルクラがバツが悪そうな顔になる。
「まだ、ダメ」
「え……?」
プルクラの人差し指が、俺の唇に添えられた。
口を閉ざすようなジェスチャー。
普通に拒絶されたかと思って結構ショックを……ん?
「……まだ?」
「……まだ。私だけじゃなくて……二人にも、会ってから決めて」
「二人って……」
二人。
まさか。
「リナと、ヴェスポ……?」
「アンタの気持ちは……嬉しいけど、私ひとりだけ……今選んで貰うのは……フェアじゃないから」
なにかに耐えるように、俺に背を向けて立ち上がった。
「プルクラ……」
「……ご飯にしよ。今日は……まだ、その時じゃないから」
「……分かった」
……雰囲気に流されちまったかなあ。
ちょっと勇み足が過ぎたか。
その後、天幕を張って二人で眠りについた。
……夜、プルクラが俺に抱き着いて寝ていた。
あんな事言ったくせにそういう事するのかよ……!
理性と戦いながら眠り、二人で起きて……。
「……おはよ」
「……おう」
昇る朝日を眺めて、何のけなしに笑い合った。
(……まだ俺が真剣じゃなかった……そう言いたかったんだな)
分かったよ。
3人の中からちゃんと選ぶさ。