「お招き頂きありがとうございます。Mr.ハワード」
「こちらこそ。応じて頂けて感謝するよ、Ms.エガード」
ハワードコネクション、応接室。
ギルス·ハワードは一人の女性の相手をしていた。
長い銀の髪の、上品な女性だ。
尖った耳が印象的である。
「実に有意義な時間でした」
「ロスカリファと友好を結ぶ、その第一歩を歩めて光栄だとサンブリンガー様に伝えておいてくれ」
「勿論ですとも」
話は終わり……かに思われたが、ギルスが1本のビデオテープをテーブルに置いた。
「……これは?」
「ウチの……今回の大会に出場させる選手の、今までの試合のビデオだ」
「……何故それを私に?」
「お好きかと思われまして」
「……はぁ?」
エガードと呼ばれた女性は困惑しているように見える。
その様子にギルスは笑う。
「洗練された暴力は礼儀、そう仰っているではありませんか」
「それは……」
エガードは言い淀んでから、ビデオを受け取った。
「頂きましょう」
「ほう?」
「選手を知るのも、ホストである私の役目。目を通させて頂きます……それでは、御機嫌よう」
――――――――――
後日……ロスカリファ、外務計策局。
「……そんなにわざとらしかったかしら」
自身の執務室で、ヴェリナは独り言を呟いた。
そこへ、同じ銀の髪をした女性が入ってきた。
「どうしたの?お姉ちゃん」
「エリー……ノックをしなさい。マナーでしょうあと職場では官職氏名で呼びなさい」
「ごめんごめん……あ。ビデオテープだ。珍しい」
「先日のハワードコネクションで頂いたのよ」
「へぇー……中身は?」
「今度開催される親善大会の選手の試合よ」
「えっ……!?見たい見たい!」
「仕事中よ、エリー」
「えぇー?お姉ちゃんだって格闘技好きじゃん。どうせ見るなら今見ようよ」
「だから……ハァ……仕方ないわね……」
「やった!」
エリーと呼ばれた女性が、ヴェリナからビデオテープをひったくってプレイヤーに挿入した。
「貴女、本当にファイトに対してがっつき過ぎよ?」
「いいじゃんいいじゃん。戦うと気持ちいいんだもん」
「そんなのだから貴女巷では『飢えた狼』なんて呼ばれてるそうじゃない」
「なにそれ……知らないんだけど……」
ビデオが再生される。
映し出されたのは……以前、ギルスが秘密裏に開催したリング・オブ・ファイターズでの試合風景だ。
「へぇ……?」
ヴェリナから声が漏れる。
「お姉ちゃん」
「荒々しくも粗野でもある。けれど……己の技を極限まで磨き上げた研鑽のあとが見える。なるほど……ハワード氏が推すだけの事はあるわね」
「どうするの?」
「……会いに行こうかしら」
「珍しい」
「アキラさんに打診すれば会えるかしら」
「アキラなら行けるんじゃない?にしても行動が早いね」
「うふふ。ファンになってしまったかも」
「え、嘘」
「さ、行きましょう」
「もう!?」
「貴女も、彼と戦いたいのでしょう?」
「そ、そうだけど……ノルムーは?」
「今回は置いていくわ」
ヴェリナがスマホを操作して通話を始めた。
「もしもし、アキラさん?今回は折り行ってお願いがあるのだけれど……」
ヴェリナの妹として登場したこちらの方、一体誰なんでしょうね。