「ゲッ」
思わず呻いてしまった。
ビデオ屋から出た瞬間、黒い外套の女と鉢合わせしてしまったからだ。
「………………」
紫の瞳が動き、俺と目が合った。
思わず後退りしてしまう。
元郊外の掃除屋……現、クランプスの黒枝の裁決官……プロメイアがそこにいた。
「何でここに……」
「……悪いか?」
ギロリ、と睨まれた。
「……悪いとかじゃねぇよ。掃除屋が何でここに居るのかって」
「プロメイア」
「………………」
「………………?」
「……何がだ?」
「……掃除屋と言う名前では、ない」
わ、わからん……!
何を考えてるのかさっぱり分からないぞこの女。
正直まだ怖い。
対面してる今、冷や汗が止まらない。
出来るなら今すぐ逃げ出したいくらい。
それだけ、郊外で生きる者にとって恐れられていた存在なのである。
「……強い奴を探しているそうだな」
「あ……?」
「アキラから聞いた」
「そうか……」
だから、アキラの人脈は以下省略。
もうツッコむのも面倒くせぇ。
パエトーンだからで大体片付けられそうだ。
「来い」
「は?」
そう一言言うとスタスタと歩いて行ってしまった。
「……何なんだよ……」
「………………」
前を行くプロメイアがちらりとこちらを流し見する。
ついて来いと言うことだろうか。
「……分かったよ」
俺は諦めることにした。
――――――――――
「……ここは?」
連れてこられたのは……これまた珍しい日本的な家屋。
こっちの世界に生を受けてから見たことはなかった。
プロメイアは何も言わずに戸を開けて中へ入っていく。
俺もそれに着いていくと……。
中では、老若男女様々な人間が稽古していた。
「道場……?」
この手のものはあまり見かけ……いや、適当観があったか。
しかしなんでこんなところへ連れてきたんだ?
「……む。プロメイア殿」
がちゃん、がちゃんと重い足音がする。
奥からやってきたのは、
「うおっ……」
知能構造体。
それも……デカい。
ヴェスポとはまた違う、全身に力強さを感じるガッシリとした体型。
まるで獅子を思わせるようなデザインの知能構造体だった。
「連れてきた」
「連れてきた……?む」
知能構造体が隣にいた俺を見る。
「なるほど、アレックス殿だな」
「……え?俺を知ってるのか」
「プロヴィデンスホロウを単身消し去った格闘家と聞いている」
「……その情報はTOPSが握りつぶした筈じゃ……」
「ふむ、自己紹介がまだであったな。我輩はクランプスの黒枝、
「黒枝の……」
それならば納得だ。
TOPSの情報は必ず入ってくる立場だからな。
「……で?何で黒枝の知能構造体のアンタが道場なんて……」
「請われたのだ」
「……え?」
「我輩を慕う者たちに教えを請われたのだ」
「そ、そうか……」
まぁでも師匠ポジなんて大体そんなもんか。
無理に頼み込んで弟子入するやつだってそこそこ居るわけだし。
そう言えば師匠キャラと言えば剛拳はどういうスタイルの師匠だったかな……。
餓狼伝説のジェフ·ボガードはデリー達を養子として拾って教えたんだっけか。
「帰る」
「えっ?」
そう一言言い残して、プロメイアの姿は消えた。
「相分かった」
「えっ……?」
「皆のもの。少しばかり耳を貸してはくれぬか」
盤岳が道場内に居た門下生へ声をかけた。
周りからの声がピタリと消えて、全員の意識がこちらに向けられる。
「紹介しよう。こちらはアレックス·ウィクス殿……道場破りである」
「………………は!?」
待て。
道場破りって言ったか今!?
「皆、心してかかるように。では、始め」
「「「うおおおおおお!!覚悟おおおおおおお!!!」」」
「どういうことだコラァァァァァァ!!!!」
と言うわけで盤岳先生の道場へ道場破りとして紹介されました。