「……ここは?」
目を開けると、どこまでも白い空間が広がっていた。
床も、空も、境界すらない。
ただ、自分だけが立っている。
「死んだ……のか?」
最後の記憶は曖昧だった。
車のクラクション。
強い衝撃。
「その認識で間違ってはいない。」
不意に声が響く。
振り返ると、一人の人物がいた。
年齢も性別も分からない、不思議な存在。
穏やかな笑みを浮かべているが、その瞳には星空のような深さがあった。
「私は、この世界の神様のようなもの」
「……神様?」
「そうだ」
その神様は深く頷き、自分は置かれた状況を少しずつだが理解する。
「君は命を落とした。しかし、その死にはこちらにも事情があってね。お詫びといってはなんだか、新しい世界で人生をやり直す機会を与えようと思う。」
「異世界転生ってやつですか?」
「そういう理解で構わない。」
神は軽く頷く。
「そして、一つだけ願いを叶えよう。」
自分はそこの言葉に目を瞬かせた。
「一つ?」
「そう。一つだけだ。」
「チート能力とか?」
「可能だ」
「最強の剣とか?」
「可能だ」
「不老不死?」
「できる」
「無限の魔力?」
「それも可能だ」
何を言っても神は淡々と頷く。
その姿を見ていると、本当に何でも叶えられるのだと理解できた。
「時間は気にしなくていい。この場所の時間の流れは無いような物だからな」
神は優しく微笑む。
「君が納得するまで考えなさい。」
主人公は腕を組み、考え始める。
(最強の力?)
(不老不死?)
(魔法の才能?)
次から次へと候補は浮かぶ。
だが、どれもしっくりこない。
神は黙って待っていた。
急かすこともなく。
主人公はふと神を見る。
「神様。」
「なんだ?」
「今まで転生した人って、居ます?」
「ああ、もちろん居るぞ。この世界にも転生者が居る。いずれもチートと呼ばれる能力を手に私の元から去ったな」
自分はふと思ったことを口にする。
「それで、その人たちは今幸せなんですか?」
神は静かに答える。
「願いが叶うことと、幸せになることは同じではない。」
その一言だけで、自分は口を噤んだ。
確かにそうだ。
どれだけ強くても、幸せとは限らない。
どれだけ金があっても、満たされるとは限らない。
「だからこそ。」
神様は自分を真っ直ぐ見つめる。
「君自身が、本当に欲しいものを願うといい。」
白い空間に静寂が満ちる。
自分はゆっくりと目を閉じ、胸に手を当てた。
「……俺が、本当に欲しいものは――」
息を整え、その願いの続きを言う。神様に、聞き返されないようにはっきりとした声で。
「俺のことが好きすぎて仕方ない、中性的で顔がめちゃくちゃ整った上位者の従者が欲しい!」
神様はその言葉を聞き、しばらくうつむいて顎に手を当てて考える。
「…………。」
自分は小さくも大きくも無く、丁度良い大きさの声で話したのだが…神様も困惑しているのだろうか。
それとも、さすがにこの願いは叶えられないのだろうか。
「……聞き間違いであってほしいが…まあ、君の願いだ。しかし…人ってのは中々業が深いな」
そう言うと神は手を動かし始める。
「さて、君にその従者を特典として与えるに伴い、いくつか質問をする。いいか?」
「はい!お願いします!」
「好きと言ったが、どの程度まで君のことが好きなんだい?」
「四六時中くっついてきたり、俺を最優先にしてほしい」
「えぇ…」
「俺はそれくらいがいい。」
主人公は腕を組んで頷いた。
「自分しか見ないし、他人を見ようとするとこちらを見させようとする姿…最高じゃないか。」
神様は天を仰ぐ。
「……歴代転生者を何万人と見てきたが、初めてだよ、こんな願い。」
「ダメでしょうか?」
神は少し考え込み、
「いや……別にいいけどさぁ。叶えられない願いじゃないし」
「本当ですか!?」
「ただし、後から違うとか言われても困るからね」
「はい!大切にします!!」
自分の勢いに押された神様はため息を吐きながらも手元を動かし続ける。
しばらくすると頭の中に何かが入ってくる感覚がした。
「君の好みに合わせて作った。頭の中に入れたのは上位者の仕様書みたいなもの」
頭の中の仕様書をめくりながら神様の話を聞く。
「じゃあ、これから転生だから。仕様書はあっちでも読んでね、その仕様書を破ったから何かある訳じゃないけど、読んでおいた方がいいよ。それじゃ」
すると自分の体がどんどんと輝き始める。
「行ってらっしゃい。君と、その『一途すぎる上位者』の新しい人生に祝福を」
自分が好きすぎる人外が異世界転生時に一緒に居るという妄想を消費するために投稿しております。
顔がよければ男性でも女性でも良くないですかの精神でやっております。