Massively Mulchplayer Online Roll Playing Game…通称MMORPGと呼ばれ、役数千人以上の規模から集まるプレイヤーによってオンライン上の専用サーバーに構築されたもう一つの世界観を共有しながらプレイできるゲーム。しかし近年ではヘッドギア型VRゲーム機ナーヴギアが登場した事により、仮想世界大規模オンラインRPGである新たなVRMMOが誕生したのだった。
天才・
まさに夢のようなゲームが発表される事を知ったと同時に、SAOのβテストの抽選が始まった。そして抽選に当たった1000人のβテスター達は、たったの二ヶ月の間だけ新たな体験や冒険を忘れる事ができなかった。β期間が終えた後もなお、テストを受けた者達と抽選に当たってなかった者達も同じく今か今かと正式リリースが来る日を待ち続けている。
しかしそんなSAOの正式リリースが始まる前日では、
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アインクラッド 第1層=草原フィールド=
《??? side》
始まりの街を出て間もない場所に広がる草原フィールド。その広さは直径十キロにも及び周囲には見渡す限りの草原がどこまでも続いていて、ピクニックを楽しむには最高の絶景と言っても過言ではない。もっとも、
「よしっ、次!」
各エリアを隅々まで探索し、街では武器やアイテムの仕様を確認する。NPCの挙動やクエスト内容に異常がないかを調べ、フィールドではモンスターの攻撃力や経験値やドロップアイテムなどを一つひとつ記録していく。そんな調査を続けているとこの層に出現する猪や狼型モンスターのHPバーがゼロになり、その身体は砕け散るガラスのように無数のポリゴン片となって消滅した。
同時に視界の前へ獲得経験値や獲得コルが表示され、『Level UP!』というウィンドウが現れる。
「経験値とレベル設定……ソードスキルにも異常は──」
一息つきながらメニューを開き、これまで調査してきた階層と同じようにスキルや武器の性能を細かく確認していく。もちろんこれもすべてバグの有無を確かめるための作業だが、正直に言ってかなり骨の折れる仕事ではある。けど街やダンジョン、遺跡など探索できる場所は数多く存在するそのすべてが新鮮で、調査そのものを楽しめている自分も存在する。
「ここも問題なし……よし」
そう呟き、この層にも異常がないと判断した俺はメインメニュー最下部に表示されている『Logout』を選択する。
次の瞬間に視界は真っ白な光に包まれ、この世界で俺専用のアバターRITSUKAは、SAOからログアウトしたのだった。
◇ ◇ ◇
それから数秒くらい時間が経った頃、何度か瞬きを繰り返しながらゆっくりと瞼を開く。目の前に広がっていたのは見慣れた研究室の天井で、頭に装着していたナーヴギアを外した俺は大きく息を吐く。ゆっくりと身体を起こしながらベッドから降りようとしたら、白衣姿をしている一人の男がこちらへ歩み寄ってきた。
「長時間の調査、ご苦労だったね立香。一応こちらでも確認していたが、何か気になる点はあったかな?」
「あっ、
「ほう…というと?」
「例えばこう、飲みかけの回復ポーションを途中で捨ててしまってもその時点までの回復量はある程度で反映される仕様にするとか。それと──」
これまで調査してきた内容や、改善したほうが良いと思った点を次々と口にする。色々と俺の話を聞いてくれる茅場さんは“なるほど…”と小さく呟きながら、内容を吟味していた。
「他に大きな異常がないのであれば、修正はいくらでも可能だ。正式サービス開始には何とか間に会う事もできるだろう。」
「本当!じゃあ今から──「ただし今日はここまでにしておこう。」……えっなんで?」
「システムの修正ならいつでもできるが、もう日はとっくに暮れている。それに今頃、凛子君も帰っているはずだ。」
そう言って茅場さんは壁掛け時計へ視線を向ける。俺もつられて時計を見ると、時刻は午後七時前。確か今日は普段より遅く帰るはずだった凛子さんが、研修を早めに終えて帰宅する日だった。しかもその日に限って、一緒に夕食を食べる約束をしていた事もすっかり忘れてしまっていた。
こんな遅い時間にまだ子供である君を1人で帰らせるわけには行けないからね……私も帰宅の準備をするから君はロビーで待ってなさい。」
そう言い残すと、茅場さんは足早に部屋を後にした。
思い返せば、修士課程の修了が近づいている凛子さんは大学から出される課題や研究に追われる毎日で、最近は夜遅くまで帰れない日が続いていた。一方、茅場さんもSAO開発の責任者となって以来研究室で寝泊まりすることがほとんどで、自宅へ帰ることは滅多になくなっている。
ちなみに
『こんな夜遅くまで君が残る必要はない』
『そうよ! どこぞの人みたいに
──ってな感じで、二人から全力で反対されてしまった。
特に凛子さんからはまるで学校の先生のような口調で延々と説教されてしまい、俺は反論する事もできなかった。そんな出来事を思い出しながら俺はロビーのソファへ腰を下ろし、茅場さんの支度が終わるのを待つだけ。
「子供、子供って……もう勘弁してくれよ……」
さっきも茅場さんに子供扱いされたが、正直あまり納得できない。とはいえ自分で言うのもアレ何だが、今の俺は
「大体、見た目が子供で中身が大人っぽいアンデルセンや俺と歳は変わらないエリセだって、子供扱いしているわけでもないし───いや……誰だ?」
愚痴をこぼしている途中から自分でも知らない名前を口にしていたことに気付く。どこか聞き覚えがあるようだけど、心当たりがない。名前を再び思い出そうとしたら砂が指の間から零れ落ちるように記憶の奥へ沈み、頭の中には何も残らなかった。
「今………誰かを呼んでいたような──「待たせたね、立香」……あ、茅場さん。」
記憶を辿ろうとしたところで、私服姿へ着替えた茅場さんがやってきた。
「先ほど何か考え込んでいるようだったが……何か悩み事でもあるのかい?」
「えっと……ううん、何でもないよ! それより、早く行こう。もうお腹ペコペコだよ!」
胸の奥に小さな違和感は残っていたけれど、それが何なのかは自分でも分からない。だから今は気にしないことにした俺は何事もなかったかのように笑顔を浮かべると、茅場さんと共に研究所の出口へ向かって歩き出した。
「凛子さん、今日のご飯すっごく美味しいよ!」
「もうそんなに慌てて食べないの……ほら、口の周りがソースだらけじゃない。」
研究所を後にし、自宅へ帰ってきた俺と茅場さんは、さっそく凛子さんの手料理を囲んで夕食を楽しんでいる、今日の献立も相変わらず絶品で、夢中になって食べ進めているうちに口の周りへソースが付いてしまった。それを見つけた凛子さんが苦笑しながらハンカチで優しく拭き取ってくれた……いや、これ普通にちょっと恥ずかしいんだけど。
そんな俺たちの様子を見ていた茅場さんが、小さく口を開いた。
「立香、ちゃんと噛んでゆっくり食べなさい。そんな勢いだと喉に詰まらせてしまうぞ」
「だって本当に美味しいんだよ。それにさっき茅場さんが料理を食べた時、凛子さんすっごく嬉しそうな顔していたし。」
「ちょっ!ちょっと何を言って!」
俺の余計な一言に、凛子さんは耳まで真っ赤に染めながら慌て始める。素子sてそんな茅場さんは少しだけ照れたように視線を落とした後、穏やかに微笑んだ。
「……確かに、凛子君の料理は本当に美味しい。こうして毎日温かい食事を用意してもらえる私はとても幸せ者だ。」
━━と呟いていると、凛子さんは驚いた表情を見せる。今まで何度も一緒に食事をしてきたが、茅場さんがこんなにも素直な笑顔で感謝を伝える姿を見るのは初めて見た気がする。やがて凛子さんの顔は熟したトマトのように赤く染まり、恥ずかしさを隠すように俯きながら小さな声でぶつぶつと呟く。
「ず、ずるいわよ……そんな顔を見せられたら…」
「あれ?凛子さんどうしたの、そんなに顔が赤くなって?」
「なんでもないよ!それより立香、早くさっさと食べなさい!」
──と、何故か怒られた。つーかどうでもいいけどさ、いい加減に二人揃って早く結婚したらどう?思い返せば二人が恋人として付き合い始めてからもう6年くらい経っていると思うし、そろそろ結婚してもいい歳だと思うけどな〜
「ちょっと立香、今変な事を言ってなかったかしら?」
「ぎくっ……な、ナンデモナイデスヨ〜」
◇ ◇ ◇
それから食事を終えた俺は先に風呂を済ませ、リビングで茅場さんと久しぶりにゲームをしたりゲームシステムについて語り合ったりしていた。そんな俺たちを眺めながら、淹れたてのコーヒーを運んできた凛子さんがふと思い出したように口を開く。
「そういえば立香、そろそろ友達を作らない?」
「友達?」
「もう明後日には
「友達かぁ……また今度考えてみるよ。」
曖昧に笑って返すと、凛子さんは呆れたように深いため息をついた。
「その“また今度”って返事、もう何回聞いたわよ。」
「な、なんだよ別にいいじゃねーか俺の勝手で。それに友達なら
「確かに比嘉君が貴方の友達であるのはなんとなく分かっていているけど、そう言う意味じゃないの。例えば、同じ歳の子と友達になるとか……」
「いやまぁ〜、別に今は作らなくてもいいんじゃないかな〜」
「ハァ……あのね!
「あ〜〜もう!分かっているから、いい加減に子供扱いしないでよ!」
何回も聞いているからか、俺は思わず反発してしまう。茅場さんのSAO開発を手伝うようになってから俺はほとんど新しい人間関係を築いておらず、開発側のテスターとして何度も仮想世界へフルダイブを繰り返す生活ばかり。
そのせいなのか、現実では人との距離感を掴むのが少し苦手になっている気がしていた。もちろん
そんなこんなで考えている内に、気がつけばついに寝る時間が来てしまった。
「立香、そろそろ寝る時間だよ。」
「あ!ほんとだ……じゃ、おやすみ!」
茅場さんの声に反応した俺は自身の部屋へ向かおうとした時、凛子さんが俺に何か言いかけようとする様子が見えた気がした。けれど結局その言葉が紡がれることはなく、俺はただ部屋へと戻った。ベッドへ横になりながら“友達”について考えてみるが、結局答えは最後まで見つからないままそのまま静かに眠りへと落ちてしまう。
《立香 side end》
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それから翌日、アーガス本社の研究所にて
「茅場さん、どうですか?」
「あぁ、先月に行った1000名のβテスター達の経験と記録の結果を確認し終えたところだ。そして君が見てきたシステムの改善や修正───これでようやく、SAOは完成した。」
パソコンの画面に映っているデータを眺める茅場がそう告げると、隣で椅子に座っている立香は疲れと共に背中を大きく伸ばした。
「よ、よっしゃ!頑張った甲斐があった〜!」
「長い間ここまで付き合ってくれてありがとう立香。君の協力がなければ、今頃SAOの完成はまだ先だったかもしれない。」
「いやいや、俺は別に対したことしてないよ〜。ほとんど登場キャラや武器などのデザインを造ったり、テストプレイヤーをしただけなんだけど…」
「だとしてもそれは君自身にしかない、紛れもない特別な才能だ。」
その言葉を聞いた立香は照れていると、少し移動した茅場は何かを探していた。
「本当は明日に渡したかったが、生憎SAOの正式サービス日で一日中忙しくなるから今のうちに渡そうと思ってね。」
まるで事前に用意したかのような口調で語りながら、所々に置いてある物を退かしたりする茅場は
「1日早いが、
「──ッ!あ、開けていい?」
「もちろん。」
驚きを隠せない立香は、茅場から受け取った白い箱を早速開けようとする。赤いリボンを取り外した後に恐る恐る箱を開けると、中に入ってある物を壊さないよう衝撃を吸収する為のプチプチが大量に入ってあった。大量のプチプチを退かしていく立香は中にあるそれを目に入った瞬間、驚きと共に目を輝かせていた。
中身はなんと、SAOのソフトと
「これってナーヴギアだよね。けど、色は違うんだけど?」
「正直君に何のプレゼントを贈ればいいのか迷っていてね、結局これしか用意してなかったんだ。SAO限定版と言うより君専用のナーヴギアだ。とは言っても、機能としては普通のナーヴギアとは変わらないけどね。」
「俺専用のナーヴギア……」
それは自分自身にとって特別なアイテムであると思い込んだ立香は、まるで本当に子供のような目を輝いている。大はしゃぎしそうになるも何とか耐えながら再び茅場に感謝の言葉を送ろうとする。
「あ、ありがとう茅場さん!俺……大事にするよ!!!」
「そうか……喜んでくれて何よりだ。」
誕生日プレゼントに喜ぶ立香の姿を見た茅場は小さな笑みを浮かび、研究所にある時計に目を向ける。
「さて、ぞろそろ凛子君が迎えに来る時間だ。私は明日のSAO正式サービス日の為にまだ研究所で残るつもりだが、君は先に帰りなさい。それに明日は君の誕生日だ、体調が悪くなったらそれはそれで嫌だろう。」
明日のSAO正式サービスの日にデータを確認するなどの仕事がある為、茅場はどうしても研究所に残らなければならない。事情を聞かされた立香は自身を迎えに来る凛子が到着するまで、帰宅の準備をしようとした時──
「立香、昨日の友達についてだが……別に早く作れとは言わない。」
唐突に言われると、立香は思わず手が止まる。茅場の方を見るが、別の方に視線を向いていて表情は分からなかった。だが茅場は気にせずに語り続ける。
「人と関わるのは確かに難しい事だし、私も凛子君とそうだった。でも、孤独になるのだけは絶対にやめなさい。時間がかかってもいいし、いつかきっと君が仲間と思える人物が現れるかもしれない。もしもその仲間が困っているのなら、助けてあげなさい。仮に君が困っているのなら、
茅場がそう語ると、その場の空気が静寂となっていた。立香に関しては語られていた言葉に理解ができず、途中で声をかけようにも隙がなく結局黙ってたまま聞き続ける事しかできなかった。
「あの茅場さん…「それに……私みたいな人間にならないで欲しい」え?今、なんt──」
「さぁ、そろそろ行こうか。」
一瞬だけ何か語っていたように聞こえていたが、全く聞こえなかった。疑問を抱いた立香は尋ねようとしても茅場は“何でもない”と、まるで何かを誤魔化しているような口調で返したのだった。
その後、2人がアーガス本社のエントランスから外へ出ていくと丁度そこには凛子が乗る一台の車が目に入った。
「それでは凛子君、立香の事は任せたよ。」
「えぇ……そっちも、健康には気をつけてくださいね。」
短い会話を済ませた後、立香が車に乗るのを確認した凛子は車のエンジンをかけようとする。その隙に立香は車窓を開けながら、茅場に別れの挨拶をしようとする。
「茅場さん!明日、また会いましょう!!」
「──ッ、あぁ……また明日…」
明日もいつも通りに会えるとそう信じ込む立香の言葉に、茅場は静かに微笑むと同時に小さな声で返す。その言葉を聞いたと同時に凛子が車を走らせると、距離が徐々に離されていった。対して茅場は、自身の視界から去っていく2人をじっと見つめ続けていた。だが、その時の表情の中に
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立香達を見送り終えた茅場は再び研究所に戻り、残りの仕事を片付けていた。
カタカタ…とキーボードを叩く音が部屋に響いていた。しかもその時の茅場の表情は、あまり感情を窺わせない金属的な瞳でかつてないほどの集中が込められていたような視線をしていた。やがてエンターキーを強く叩くと、全ての処理を終えた茅場はパソコンを閉じる。一息ついた茅場は、自身がいる部屋にある大型のメインフレームに目を向ける。
まるで神のごとき慈悲を含む様な表情をする茅場は椅子から立ち上がると、何かを噛み締めるかのようにゆっくりとメインフレームに近づき自身の手でガラスケースに触れる。
「ようやくこれで………全てが始められる」
そう言いながら茅場は、これまで行っていた研究と努力の出来事を思い出す。自身の夢である
行動しようとした時、ふと茅場は自身のデスクの上に飾ってある一枚の写真に目が入った。しかもその写真には、何年か前に休日としてキャンプしに向かった時の思い出の一つであり、そこに写っていたのは自身と凛子、そしてその真ん中にポーズを取る立香の3人が写ってある。
「…………」
目に入った写真を手に取る茅場は、じっと見つめながら表情を暗くする。しかもそれはまるで、“二度と会えない”と言わんばかりの表情をしてた。やがて時刻が丁度深夜0時となった瞬間、茅場はようやく動き出す。
「さて、そろそろ行くか……」
そう呟きながら手に取った写真を懐に入れ、研究所を後にするのだった。
△▽△▽△
それから翌日、新たな
=おまけ=
立香が自室へ戻った後も未だにリビングに残っている、ソファへ腰を下ろしたまま小さくため息をついていた。そんな彼女の前にやってきた茅場は、穏やかな口調で問いかける。
「どうしたんだい凛子君、そんな浮かない顔をして?」
「あの子の事が心配だからこんな顔をしているのよ。このままじゃ、本当に友達が一人もできないんじゃないかって……」
保護者として過ごしてきた時間が長いからこそ、凛子は立香の人付き合いを誰よりも案じていた。年頃の少年でありながら新しい友人を作ろうともせず、人との距離をどこか無意識に置いてしまう。そんな姿を見るたびに、胸が締め付けられるような思いだった。
そんな彼女を見て、茅場は静かに微笑む。
「確かに……彼にも心から信頼できる友人が一人や二人いてくれた方がいいとは思う。だが、その心配はいずれ杞憂に終わるさ。」
「えっ?」
「彼はいずれ多くの人と出会い、そしてその出会いが
茅場は窓の外へ視線を向け、夜空を見上げた。
「それに──彼の傍には、いつだって
どこか意味深な笑みを浮かべている茅場が語るが、それがどういう意味なのか凛子は未だに分かっていない。
=プロフィール=
プレイヤー名:リツカ(SAO開発側SAOのテスター)
アバター:現実世界と同じ顔
装備(服装):極地用カルデア制服に似ている
武器:テスター用に様々な武器の使用を可能
前作とは一応同じ流れとして書くつもりですが、いくつか変更点が多い部分があります。
次回もお楽しみください