2022年11月6日
時刻、PM12:55
とある民家の2階の部屋では、1人の少年がいた。
もうすぐ始まるSAO正式サービスが開始されるまで少年はSAOのソフトのパッケージを開け、ROMカードをナーヴギアのスロットに差し込む。電源を付けたナーヴギアを頭に装着し、自室のベッドで横になった。
少年にとってもう一つの世界とも呼べる仮想世界へと向かい、己が持つ剣で行けなかった先を目指したい。やりたい事が多すぎて頭がいっぱいとなってしまった時、時間があと僅か数秒となった。少年は深く深呼吸し、心踊らせながら思わず“フッ”と笑ってしまう。
やがて時刻は丁度13時となった瞬間、瞳を閉じた少年は魔法の合言葉を発しようとする…
これは、後に
XXXXX
時刻、PM12:00頃
《立香 side》
『ご覧下さいこの大行列を!』
『今話題沸騰中のVRMMO『ソードアート・オンライン』の発売日を前に、早くも発売予定の店舗前ではコアなゲームファン達の行列が成しております。中には3日前から休暇を取得して列んでいる人も多く確認しております!』
『また、ネット販売分の初期ロット50000本は僅か数分で完売し───』
テレビの画面から見える光景には、ニュースキャスターが熱気に包まれた販売店の前から中継を行っていた。中にはようやくソフトを手に入れた人達が歓声を上げたり、パッケージを掲げて自慢しようと写真を撮ったりと、思い思いに喜びを爆発させている。
「あぁ〜……暇だなぁ」
そんな様子を横目に、俺はリビングのソファへ寝転んだままぼんやりとニュースを眺めていた。
ちなみに本来なら今日は俺の誕生日のはずなんだが、家の中には俺一人しかいない。この日は凛子さんもいるはずなんだけど──
『ごめんね、立香!急に大学から急用な用事が入ってきてしまって……本当にごめんね!できるだけ早く帰ってくるから!』
そう言い残した凛子さんは、慌ただしく家を飛び出していった。きっと誕生日パーティーやケーキの準備もしてくれていない事に謝っていたんだろうけど、急な呼び出しで仕方がない。それに凛子さんが忙しい人なのは昔から知っているから怒るつもりなんてないし、こうして留守番をすることにも慣れている。
けど、やっぱり一人だと暇なんだよな。
「……部屋に戻るか」
ニュース番組にも飽きてしまいテレビの電源を切った俺は、自分の部屋へと戻る。本棚から適当に何冊か本を取り出し、そしてそのままベッドへ寝転がり込んだ。手に取るのはいつものように歴史書や神話、そして小説ばかり。
ケルト神話
ギルガメッシュ叙事詩
古代エジプトファラオ
巌窟王
新撰組
どれも何度も読み返したお気に入りの本ばかリダが、ページをめくりながら時間を潰してみる。けどそれでも、退屈さが紛れることはない。茅場さんへ連絡を入れようと思ったが、しばらくは連絡が繋がれないことを思い出す。そもそも今日は《ソードアート・オンライン》正式サービス開始の日で、開発責任者である茅場さんが多忙であるのは理解している。
「ハァァ〜本当にやる事ねぇ〜」
しかしあまりにも暇過ぎてやる事がなさすぎて、ベッドの上で意味も無くゴロゴロする。他にやる事がないのかと考えていた時にふと視線を動かすと、机の上に置いてある白いナーヴギアが目に入ってしまった。
「そういえば、後もう少しでSAOが始まるよな……」
茅場から誕生日プレゼントとして貰えた自分専用のナーヴギアとその隣に置いてある電子時計の時刻を確認し眺めながら、もうすぐ始まるであろう正式サービスの時間を思い出す。さっきの番組から見た人々は早速ログインするだろうなと思うけど、何故か俺はログインする気がない。むしろ遊びたいという気持ちも今はない。
もちろんゲームが嫌いというわけでもなく、禁止されている訳でもない。俺はそこまで熱狂的なゲーマーというわけでもないし、寧ろゲームのシステムを造る側として楽しんでいた。
「あんだけ一緒に造ったのに、本当にあっという間だったなぁ……」
そう呟きながら、俺は茅場さんと共にSAOを開発した時の思い出を振り返る。
ゲームシステムの研究や開発など、いつくかの仕事を行なっていた。時には何度も失敗しまた一からやり直そうとする日々もあり、大変な日々も過ごしていた。それでも俺にとって
だが時間が経つにつれ、目標でもあるSAOがついに完成してしまった。完成した事に喜んでいたが、同時に寂しさも感じていた。今まで続いていた目標一つがあっという間に終わってしまい、真剣にやりたい事がなくなってしまった。次に何を目指せばいいのか。今の俺には考えが浮かばない。
「まぁ、
「ふぁ〜〜……」
思わず大きな欠伸が漏れ、急激な眠気が押し寄せてくると同時に身体が鉛のように重くなる。起き上がろうとしても力が入らず、瞼もゆっくりと閉じ始めていた。
「あの世界に行ったら……友達できるかな━━━」
小さく呟いた俺は静かな部屋へ溶けるように消えていき、そして抗うことなく深い眠りへと落ちてしまう──
★△★△★
『警告━━警告━━現在、カルデアは危険な状態にありまる。速やかに◯◯ブロックの方まで、避難してください。繰り返します』
警告アナウンスが鳴り響く中、
目を開いた瞬間からいきなり怒涛な展開に脳が追いついていけず、気が付いた時には足が動いていた。
さらに視線を動かすと明らかに人工物で造られていたであろう見覚えのないはずの建造物を焼き崩そうとする業火が広がっていた。その場から見える景色には生命の動く気配さえ感じられず、瓦礫と化した内部が炎と共に全てを埋め尽くそうとしていた。ここはどこなのか、そしてなんでこんな場所にいるのか━━未だに分からない。
目的もなくただ走っていると、目の前には
『動力部の停止を確認━━発電量が不足しています。予備電源への切り替えに以上があり、職員は手動で切り替えて下さい。隔壁閉鎖まで後、40秒』
再びがアナウンスが鳴るも、それはなんの意味なのかは未だに分からない。けどそれは絶対に良くないパターンであるとなんとなく分かる。そんな時、いつの間にか俺の隣に立つ
「ボクは地下に行くよ!▇▆▆▆▇▇▆の火を止める訳にはいかないし、君は急いで来た道を戻るんだ!まだギリギリで間に合うから寄り道だけは絶対しないでくれ!真っ直ぐ外に出て、外部からの救助を待つんだ!!」
──と名も顔も知らない青年がそう告げた途端、どこかへと走り去ってしまう。一体何がどうなっているのか理解できず困惑する俺は、とりあえずどこか避難できる場所はないかと探そうとしていた時─k
「フォウ!」
ふと
それはまるで“ついてこい!”と言わんばかりな声が聞こえ、しかもその先には瓦礫の山。分からないけど、でも何故かどうしてそこへ向かわなければならない気がしてきた。
『システム、レイシフト最終段階に移行します。座標、西暦2004年1月30日──日本、冬木。ラプラスによる転移保護 成立。特異点への因子追加枠……確保』
走って行く最中、何やら気になる単語が次々と耳に入ってきたが今はそんな事を気にしている暇などなかった。走り続けてながら炎を掻い潜った先には、筒上の形を成した謎の機械が複数あった。思わず中身を見ると、そこには
「フォーン…… フォーン……」
そうこう歩いている内に、再びあの小さな鳴き声が聞こえた。振り向くと、そこには頭から血を流す名も知らない1人の
表情も白黒の砂嵐で隠れて見えないが、女性である事はすぐに分かった。しかも
どうにか助けなければならないと思い、瓦礫に手をかけ持ち上げようとする。
「───いい…です…… 助かりませんから………それより…… 逃げ……て──」
小さな声で彼女は自分に“逃げろ”と伝える。この場に残り続けていたら、自分も瓦礫に巻き込んでしまうかもしれない。
けど何故だろうか......彼女の言葉を聞かずなんとしても助けようと必死になる。もちろん人間一人の力では瓦礫をどかす事はできず、びくともしない。
『観測スタッフに警告───カ───の状態が変化しました。シバによる近未来観測データを書き換えます──』
再び鳴り響くアナウンスを聞こえ、振り向くと最初に見た巨大な地球儀があった。しかもいつの間にか、地球儀全体を燃えたぎるような赤い光が包み込んでいた。
『近未来百年までの地球において………
人類の痕跡……それがどう言う意味なのかは未だに理解ができていないが、その内容を聞いた少女はまるで絶望へと無慈悲に叩きつけられるように見えていた。
『人類の生存は確認できません───人類の未来は保証できません───』
そう鳴り続けるアナウンスだけど、未だに何の事なのか分からない。今はただ、瓦礫をどうにかどかそうとと力を振り絞っていた。だが炎によって膨れ上がる温度が徐々に自身の体力を奪っていき、熱で焼けていく手からも力が抜けてきた。
「もうやめてください………私は…… いえ、世界はもう───」
まるで全てを諦めたかのように、弱々しい声を出す少女。何が起きているのか今もさっぱり分からないが、少なくともアナウンスから語られた内容は不吉である事をなんとなく分かる。
それに、そもそも何故自分は
名前も顔も知らないし、何故か諦めない───いや、
『中央隔壁 封鎖します───館内洗浄開始まで、後、180秒です───』
「すいません、▇▆▆……私のせいで………」
何故謝るのかは分からないが、その声を聞いただけで
「─── ▆▆▇.....手を......握ってくれますか...」
少女は、自身の手を握って欲しいと願う。それを聞いた自分は瓦礫から離さなかった手を離し、少女の方へと差し伸ばした。少女は震えながらも、自身の手を握る。お互いの手を近づいた瞬間、自分よりも小さい彼女の手をそっと掴む。
その手を握った瞬間にとても冷たかった───けど、どこか懐かしさを抱く。
瓦礫がさらに降り注ぎ大きな揺れるも起きるが、それでも自分は彼女の手を握り続けていた。
『レイ──ト定員に達していません………該当マ───を検索中…… 発見しました──』
再びアナウンスが流れる。だがそのアナウンスすらも気にしなくなった。
「ありがとう………ございます………▆▆………」
『適応番号48、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎をマスターとして再設定します。アンサモンプログラム、スタート……霊子変換を開始 します───』
「⬛︎⬛︎は……ずっと側にいてくれますか?」
『レイシフト開始まで………あと3──』
今の状況が何が起きているのか、未だに理解ができていなかった
『2』
それでも、少女に掛ける言葉は無意識に浮かんだ
『1』
“君を………1人にさせない……”
『全行程完了………ファーストオーダー実証を開始しm────
その瞬間、目の前の視界が古いテレビのような白黒の砂嵐が広がり、同時に意識が途絶えられてしまった──
★△★△★
「───おかしな夢を見たな....」
気が付くと、俺は自室のベッドの上で目を覚ましていた。さっきの夢は一体何だったのだろうか......これまで散々不思議な夢を見ていたが、今までのとは比べてとても現実とは思えないようなものだった。
「ッ…………なんだったんだアレは──?」
身体を起こしながら、ついさっきまで見ていた夢を思い出そうとする。いつもならすぐに思い出せないはずなのに、何故か妙に記憶が残っている。けど、ノイズのような存在が邪魔しているせいで思い出そうにもその夢自体を思い浮かぶ事ができない。
ただ、夢の中で見ていた顔も名も知らない少女だけが、微かに覚えていた。一体あの少女は何者だったのか……疑問を抱く俺は記憶を振り返るも、思い当たる点が一つも無い。
ふと電子時計に視線を向けると、画面にはPM 17:30と表示されていた。
「嘘ぉ!?もうそんな時間になったの!?」
寝てしまったのはおそらくお昼過ぎだったから、大体5時間くらい寝込んでしまったらい。気づいてから慌ててベッドから離れ、急いで一階のリビングの方へ向かった。外の色はすでに薄暗くなっており、恐らくもう既に凛子さんが帰っているのであろうと思い、慌てながらもリビングに向かう。
「ご、ごめん凛子さん!ちょっと昼寝をしt───あれ?」
階段から降りると、
キッチンや風呂場などの場所を探り回るが、どこにも凛子さんの姿が見当たらない。恐らくまだ帰ってきていないだろうと思い、連絡しようと自身のスマホを手に取る。
「そういえば………あれからSAOはどうなったんだろう?」
寝落ちしてしまてから既に始まっているであろう正式サービスから4時間以上経過しているし、今頃多くのプレイヤー達がゲームを充実しているかもしれない。そう思い、ネットニュースやSNSを確認しようとスマホの画面を開く。
けど、俺が想像していた事態とは全く別だった。
“最新型のVRゲームにログインした人々が
「………は?」
ネットニュースに上がっている記事の内容をを目にした俺は衝撃を受けたと共に疑問の声を漏らしまい、戸惑いながらも理解ができなかった。しかも記事だけでなく、SNSでもその話題が悪い意味で広がっている。
“SAOからログアウトできないって……なになに、どうなってるの?”
“ゲームプレイしている人が死んだって聞いたけど……やばすぎだろ…”
“ナーブギアって新型VRの
“さっきテレビのニュースを観たんだけど、新しいテロなのか?”
“運営側は一体何をしているんだ?こんなの炎上どころの問題じゃないぞコレ”
同じ話題が次々と投稿されていて、ログアウトが不可能や不審死などの言葉が目に入る。だけど俺は、未だに信じていなかった。
“そもそもただのゲームで死人が出るなんてあり得ない……きっと、フェイクニュースなのかも知れない”と、内心でそう信じ込む。
けどなんだか嫌な予感がしてしまい、思わずリビングにあるテレビの電源を付けた。それから画面に映し出されたのは、自分が想像していたよりも既に混乱状態となっていた。
『新型VR専用ソフトのVRMMORPG……SAOをプレイした人々が、次々に死亡する事件が多発しています。また、ゲームを開発した責任者である茅場晶彦を容疑者として判明し……現在行方不明となっており、警察は今も捜索しております──』
『SAOの被害者であるご家族、並びに友人の皆様……ナーヴギアの電源を切断、または強制接続解除を絶対にしないでください。被害者が死亡する恐れがあります。繰り返します───』
『新たに7人もの犠牲者を確認しました。当時担当されていた医師から確認された死因の原因は、ナーヴギアから自動的に発せられた電気ショック死と思われます。現在、既に
『ソードアート・オンラインの開発運営会社であるアーガス本社には、多くの人々が詰めかけており、遺族の姿も見えております。また、警察も──』
「なんだよこれ……何が……起きているんだ……」
報道されているニュースの内容を観た俺は呆然とし、息を呑んだ。途中で番組を変えても、緊急速報として同じ報道が流れるばかり。しかもその報道の中には死者数も確認されていて、少なくとも百人以上もの死者が出ている。
思いもしない事態に俺は急いで茅場さんに電話しようとするが、何故か繋がらなかった。というより、茅場さんの電話番号はいつの間にか使えなくなっている。
「茅場さん………なんで……どうして………っ!!」
内心パニック状態になっている俺は、今の状況に追いついていない。共にようやく完成したゲームが、今ではまるでテロのような大事件を引き起こしてしまう事態となっている。夢を目指し続けていた茅場さんがこんな事をするとは思えないと、心のどこかで間違いなんだと願っていた。
「どうしてだよ茅場さん……どうs──『どうして、うちの息子が死ななければならないんですか!?』……ッ!」
そんな時、突如怒鳴り声が聞こえた。しかもその声はテレビから生中継として報道されており、50代くらいの男性とその隣で泣いている女性の2名が映っていた。
『息子は………息子はまだ16なんですよ!!なのに……なのに、ゲームを遊んだだけで死ぬなんて……おかしいでしょ!?どうして……どうしてなんですか!!息子が何をしたのですか!?』
『ああぁぁぁぁぁ……返してぇ!!!ウチの子を返してぇ!!!』
“息子”という言葉を聞いた女性は泣き叫びながら、膝から崩れた。そして男性も涙目になるが、女性を必死に支えようとする姿も映っていた。
この中継を観た時、彼らが夫婦であるとすぐに分かった。
しかも彼らの息子が死亡した事についても報道されており、恐らく死因は他の被害者と同じであるとすぐに察してしまう。何よりその息子さんは自分より二つ上だが、それでもまだ10代でありながらこの世を去ってしまっている。
サービスが始めってからほんの数時間───それも多数の死者が出るという大事件が起きていると知った俺は、ただ茫然とテレビの画面を見つめる事しか出来なかった。
するとそこへ自身のスマホが鳴り出す。茅場さんからなのかは分からないが、考える暇も無い俺は迷わずに着信ボタンを押す。
「………もしもs──『立香、大丈夫!?何ともなってない!?』……り、凛子さん?」
掛けてきた相手は、ついさっき連絡しようとしていた凛子さんからだった。通話越しから聞こえる彼女の声は戸惑いを隠せないような口調で、慌てているのもなんとなく分かる。
『立香……本当に立香なのね!?今、どこにいるの!?』
「い、家だよ……」
『本当に!?今ナーヴギアを付けていないよね!?』
「…………大丈夫………付けてないよ……」
数少ない言葉で答えると、通信越しでも分かるくらい凛子さんは安堵の息を吐いく。
『よかった.....本当によk──「凛子さん、今何が起きているの……」──ッ』
「俺に連絡したって事はニュースを観たんだろ.....あれ嘘だよね?だって、昨日まで一緒に完成したのに………その結果が……人が……たくさん死んだんだよ?それとも……他に誰かがやったとか……別の犯人が茅場さんのせいにするとか──」
曖昧な言葉で語りかける俺は、今でも茅場の仕業ではないを信じている。だが、通話越しから聞こえていた凛子さんは依然と黙り込んでしまう。
「ねぇ……凛子s『──なさい』………え?」
『本当ごめんなさい……私もついさっき知ったばかりなのよ………もちろん私もあの人が……晶彦さんの仕業ではないって今も信じてるの……でもね───分からないの!!!偶々ニュースを観てたら、晶彦さんが事件を起こしているって聞いて、困惑して………さっきから連絡しようとしても、電話が繋がらないし、連絡もできない!だから……私も何が何だか、本当に分からないのよ!!!』
──と、泣き崩れるかのような口調で答えてくれた。多分...凛子さんも自分と同じくらい困惑しているだろう。
「凛子さんごめん、俺……何がなんだか分からなくて─」
『いいのよそんな事………私も、貴方になんて答えてあげていいのか分からなくて───本当にごめんなさい……』
通話越しでありながらお互い謝罪し合い、一度落ち着こうとする。だがそれでも、今起きている事件が頭から離れなかった。
『ここで速報です!また新たなSAOによる犠牲者が現れました!これで少なくとも、
そんな矢先にテレビのニュース番組からSAOの被害者達が新たに増えたと報道が入り、それを聞いた俺は驚きを隠せなかった。
夢のようなゲームの正式サービスが始まってから、既に200人以上もも犠牲者が現れた。突然と起きた大事件に混乱が広がり、収まる気配すら見えない。
だからこそ、俺はどうしても直接茅場さんに会わなければならない。もちろん理由は、このような大事件を起こそうとする目的や真相を自身の耳に聞きたいからである。
「(今すぐにでも茅場さんに会いたい!とにかく連絡を………嫌、多分もう別の電話番号やメールは使えない……なら───)」
いくら会いたいと願っても、今はとても会える状況じゃない。それにアーガス本社は今ごろ警察に調査され、出入りする事も不可能であろうとすぐに察知する。もちろん茅場さんがその場にいるはずもなく、恐らくどこかに隠れているかもしれない。
「(クソッ!考えろ……考えろよ俺………ッ!!)」
今まで使っていない頭を使おうと、必死に考えていた。頭痛をするくらい深く考え込む。
考えて、考えて……
また考えて……考えて…
考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて 、考えて 、考えて 、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて────
たった一つだけの方法が、脳内に思い浮かんでしまった
『ねぇ立香……今日は家にいて……私もすぐに帰ってくるから……』
未だに繋がっている通話越しから凛子さんの声が聞こえる。自分を心配してくれるのは分かるが、彼女に返す言葉が見つからない。
『色々と話したい事と聞きたい事はあるのは分かっている……けど今は家で大人しく待っていて.....それからゆっくりお話ししましょ………お願いだから……』
多分この
『一言だけでいいから返事して………それにケーキだって用意してあるk──』
「凛子さんごめん……俺、行ってくるよ……」
──と、ほんの短い言葉で凛子さんに伝えた。
『行くって……どこへ?まさか立香……駄目よ立香!まっt───』
何かを語ろうとするが、俺は何も言わずすぐに通話を切った。そして静かになった自身のスマホをリビングのソファの上に置き、急いで自室へと戻る。
その最ぶ再び着信音が鳴り続けているが、俺はその音を無視した...
▲▽▲▽▲
「よし………接続の異常も問題ないな………」
自室へ戻った俺。これからやろうとする方法の準備を行っていた。電源の確認や電波などの接続、そしてもうすぐ帰ってくるであろう凛子さん当ての
「……後は、コイツを使うだけだな………」
全ての準備を終え、机の上に置いてある自身の白いナーヴギアを両手で持ち上げながら緊張と共に息を呑み込んだ。
茅場さんに会う為に俺は、
もちろんあくまでも俺自身の勘で、その場にいるという保証もない、
そして何より、手にしているナーヴギアも危険はある。ついさっきまで新型のVRゲームだったはずが、今では人を簡単に殺してしまう殺人マシーンとなっている。頭に装着し、
仮に戻れたとしても、半年……いや1年。もしくはその倍以上かかるかもしれない。ハッキリ言って俺が考えた方法は馬鹿げており、自殺行為とも言えるだろう。
「───よしッ!!」
それでも俺は、覚悟を決めた。
今も起こり続けている大事件が起きていながらも、考えを捨てなかった。二、三度も息を吸ったり吐いたりしながら、SAOのソフトのROMカードをナーヴギアのスロットに差し込む。電源が点滅から点灯に変わるのを確認し、ナーヴギアを自身の頭に装着しながら、自室のベッドに横たわる。
ドクン──
ドクン──
「ハァ……ハァ………ハァ………」
心臓の鼓動が強くなる中、さらに呼吸も激しくなる。これらか向かう別の世界へログインする緊張感と、死ぬかもしれないという恐怖心が同時に襲いかかる。そして何より、身体中から気持ち悪いくらいの汗が流れ出てくるのも分かる。
今なら引き返せるかもしれない…………そう心のどこかで聞こえた気もした。
それでも俺は心変わりせず、あの世界へと旅立とうと自身の瞳をゆっくりと閉じ──
魔法の言葉と共に、再びもう一つの世界へと向かうのだった。
更新が遅れてしまい、申し訳ございません
今年の夏も熱い日々が続いておりましたが、皆さんも熱中症対策と水分補給だけは絶対に忘れないようにしましょう。