ある日の夜。
雨が降っていた。
静かな路地裏。
水たまりへ雨粒が落ち、小さな波紋を何度も広げていく。
???「……。」
そこには壁にもたれかかるように倒れている少女がいた。
その少女は、ゆっくりと瞼を開いた。
???「……ここは。」
おかしい。ここはどこだ。私はさっきまで、体の汚れを取らないまま、フラフラと夜の歩道を歩いていたはず。そして、横断歩道を通ろうとしたら、横から眩しい光が見えて…
…そこから記憶がない。恐らく私は何かに轢かれたのだろう。でも、そうなると私は何故今生きている…?
とりあえず、ここがどこなのかを把握する必要がある。
そうして、立ち上がるために目線を下にやると
???「…何これ」
私がさっきまで着ていた、ボロボロの服じゃ無くなっていた。
いや、私そのものが別人へと変わっていた。
白い長髪。
私は黒髪だったはず。
病的にも思えるような白い肌。
私はこんな肌色じゃなかった。体中にあったあざも一切ない。
そして服。
上は白い半袖のワイシャツに水色のマント。そして縁が白色の丸メガネに首に十字架が着いた銀のネックレス。
頭には白色の彼岸花が付いていた。
下は迷彩柄の白いズボンに白いタクティカルブーツ。
なんだこれ。こんなのを着ていた覚えは一切ない。本当にどこなんだ、ここ。
???「とりあえず、この路地裏から出ないと…。」
そうして路地裏を出ようと少し歩くと、所々に亀裂が入っていてホコリもついているが、かろうじて自分の姿の全容を見ることができる縦長の鏡を見つけた。
改めて服や自身の顔をしっかり確認しようとしたが…
???「………は?」
そんな考えが吹き飛ぶモノが、鏡に写っていた。
私の頭の上に浮かんでいる、小さい十字架達が円を描くようにつらなり、白色に淡く光る天使の輪っかような、謎の物体。
本当になんなんだ、これ。何が起こってるの、私の体は。
でも何故だろう。この謎の物体に、どこか見覚えがあるような…
その違和感が気になりすぎる。
何が心当たりがないか、必死に頭を働かせると。
???「…もしかして」
まさかと思い、路地裏から出るため走る。
ここの路地裏は狭いし薄暗く、空が確認しにくい。雨がふっているようだがそんな事、気にしていられない。
路地裏から出ると、どうやら雨が丁度やみ始めだったようだ。
そこからうっすらと空が見えた。
そしてその空には、私の頭の物体と似ている、でもサイズが桁違いな円が他の建物と比べても圧倒的に高い塔の先を中心に浮かんでいた。
やはりそうだ。ここは。この世界は。
私の考察が合っていたら、私の頭に浮かぶ物体にも納得がいく。
???「BlueArchiveの世界…?」
ここは、BlueArchiveの世界…超巨大学園都市、「キヴォトス」。
個性豊かな生徒達が、連邦捜査部「シャーレ」に赴任したプレイヤー…もとい、キヴォトスでただ一人の*先生*として生徒達を取り巻く問題を解決させていく、青春の物語。
そして…私がかつて、憧れた世界。
でも、今はもう。
???「じゃあ、私はここに転生したってこと?」
???「私が目覚めたときに銃なんてなかったんだけど…」
マズイ。BlueArchiveの世界は夜はまだ比較的マシだと思うが、銃や爆発物、果てには戦車なんて物も使う喧嘩が当たり前のように起こっているなんていう、最低限ハンドガンぐらい持ってないと、この世界では生きていけない。
恐らく私はこの頭の輪っか…「ヘイロー」と呼ばれるキヴォトスの生徒達だけが持っている物体があるおかげで私は銃火器に対する異常な耐性がついているはずだ。恐らく即死することはなく、最悪でも気絶するで済むと思うが、それでも、もしスケバンなんかに襲われて抵抗できずに攫われたりなんかしたら…
私のやりたいこと出来なくなってしまう。
???「それだけはマズイ。絶対に嫌だ。」
本当にどうしよう。アテなんてあるわけないし、お金も銃も、学籍もない。本当にどうしよう…。
そんなことを思いながら、とりあえず散策するために歩きだそうとすると
???「興味深いですね。」
後ろから声が聞こえた。
だが、その声は女性の声には聞こえなかった。
今のBlueArchiveの世界の時間関係がどれぐらいの時に転生してしまったのかは分からないが、先生だとしてもこんな口調ではなかったはずだ。
誰だ。私に声を掛けたのは。
そう思いながらも振り返ると、そこには。
人とも、異形とも言えるような存在が立っていた。
その存在は黒いスーツを着込み、黒い手袋を着用していた。
体は影の様に黒く無機質で、顔の右目にあたる箇所には白く光る発光部があり、そこから顔全体に亀裂が走っていて、口の部分は不気味に笑っている。そして、頭部の亀裂からはモヤのようなものが出ていた。
ここがキヴォトスとするなら、目の前の存在は。
絶対に間違いない。
キヴォトスで一番最初に先生と明確に敵対した、「悪い大人」。
BlueArchiveの中でも正体不明の組織、「ゲマトリア」。
数少ないメンバーの一人。
???「黒服…」
黒服「おや。私の名前を知るキヴォトスの生徒は存在しないと思いましたが。」
???「あ。」
マズイ。やらかした。
黒服「何故私の名を知っているのでしょうか?」
???「エーット…」指イジイジ
ヤバいヤバいヤバい!
黒服「ふむ…まぁ、そのことはいいでしょう。」
???「…いいの?」
黒服「ええ。問題はありません。」
本当にいいことあるんだ…
黒服「あなたは非常に興味深い。」
黒服「キヴォトスの生徒でありながら、どこか私たちと似ているような、似ていないような…」
黒服「そのような存在感を貴方から感じます。」
???「………」
流石黒服。私が転生者っていうことは分からなくとも、この世界の異物っていうことは察している。
黒服「貴方に提案がございます。」
そう言った黒服は、一つの紙とペンを取り出した。
黒服「私が所属している組織…ゲマトリアへと、加入してほしいのです。」
私は黒服が取り出した紙を受け取る。
その紙には、「契約書」という文字が書かれていた。
???「…どうして私にそんな提案したの。」
黒服「我々ゲマトリアという組織はそれぞれが神秘という概念の探求・研究を行なっています。」
黒服「貴方の様な存在は、我々にとって非常に興味深い存在でもあり、貴重な人材ともなるのです。」
???「この契約書は?」
黒服「ゲマトリアへと加入するにあたり、我々が貴方に行う事項が書かれています。」
私は契約書に書かれている事項を読んだ。
軽くまとめると、衣食住を私に提供する代わりに、私はゲマトリアメンバーの部下となり、「神秘の探求」を手伝ったり、私自身がゲマトリアメンバーの観察対象となったり、時には生徒…「神秘」を持つ存在である私が「神秘の探求」の実験体になったりするという内容だった。
???「私が拒否したらどうなるの。」
黒服「そうなる場合は、この出会いはなかったことになるだけです。」
黒服「事項に納得していただけるのなら、貴方の名前を記入していただきます。」
???「そう。」
契約書の内容は、キヴォトス中の全生徒を探しても絶対に名前を記入する生徒なんていない。
でも、私は。
???「名前、記入すればいいの?」
黒服「…いいのですか?」
黒服「契約書の事項は、おおよそ健全なものとは言えないものですが。」
???「提案する側の人がそれ言うんだね。」
???「でも、いいよ。加入するよ、ゲマトリアに。」
黒服「理由を伺っても?」
???「…私は、青春なんてものはもうどうでもいい。」
???「私は、「あの顔」をまた作れれば他の事はどうだっていいの。」
???「その神秘っていうので、もしかしたら「あの存在達」を作れるかもしれないし。」
???「後…私には青春なんてものは、合ってないから。」
黒服「…そうですか。」
黒服「では、名前を記入してください。」
名前、か…
正直、転生する前の名前を使うのはBlueArchiveのキャラクターと比べて違和感しかないし、使用する気も起きない。
どうしようかな。
まぁ、ある程度適当でもいいか。
そうだな…この新しい自分の姿がどこもかしこも白色になっているから…
名前「白井コウ」カキカキ
黒服「ありがとうございます。」
黒服「では、私についてきてください。」
黒服「我々ゲマトリアのメンバーを紹介しますよ。」
コウ「分かった。」
こうして謎の少女…私、「白井コウ」は黒服へついて行き、
…まぁ、もう知ってるけど。ゲマトリアのメンバーの元へと向かった。
ふふっ…あぁ、楽しみだなぁ。
また「あの顔」を見れるなら、私はなんだってするつもりなんだから。
一体この少女は何者なのでしょうか…
これからも頑張って投稿していきたいです!
よろしくお願いします!