今回の章で神秘と恐怖、崇高の独自解釈が出てきます。
黒服がくれた実験室の探索から数日。
私は螺旋階段を降りた先の部屋で思考を続けていた。
机の上には大量のゲマトリアの研究結果をまとめた資料。
何日も何日も朝から夜まで資料とにらめっこしてはどんどん謎が深まっていくばかり。
コウ「本当に何なんだ…」
コウ「神秘っていう概念はどう理解すれば…」
コウ「そもそもどうやってCreepypastaを再現するんだ…」
コウ「あぁもう!」
毎回毎回こうなっては時間が溶ける。
…そろそろ視点を変えてみなければいけない。
1回神秘という概念を理解しようとするのはやめ。
私は転生者なんだから、その利点を活かさないと。
目の前の資料に目を移しすぎた。
とりあえず、1回休憩するためにあの廃墟の空間にでも行くか。
私は適当な廃墟のビルの屋上のフェンスに腰掛けた。
空を再現した映像のようなものは夜空を再現している。
コウ「はぁ〜…」
コウ「どうしようか…」
コウ「うぅ〜!」手足ジタバタ
移動したのはいいが、それでも凝り固まった頭はどうしようもない。
コウ「今度は原作の設定を頭の記憶から掘り起こしたほうがいいのかも。」
だとすると、さっきの資料も含めていかないと。
資料には、ゲマトリアの人達が作っていた存在達…研究物を記されていた。
そこに書いていた名前は、覚えがあった。
ヒエロニムス、ペロロジラ、ビナー…
確か、BlueArchiveのコンテンツの一つ。
総力戦・大決戦BOSSのキャラクター達だったはず。
BOSS戦が始まる前に演出と共に名前が表示されるんだっけ。
初めて挑むときは、そのBOSSを作ったゲマトリアの各メンバーが先生に説明していた。
私はその時の説明を何とか思い起こさないといけない。
黒服は「そのような研究をしている方がいる」と言っていた。
ならCreepypastaに近しいゲマトリアメンバーが作ったBOSSを思い出さねば…
ヒエロニムスの資料はマエストロが再現している途中だという記録とヒエロニムスの存在について書かれていた。
ヒエロニムスは「聖徒の交わり」…マエストロが製造した人工の天使。
外見は赤色の司祭服のような服装でフードを被り顔がある場所は真っ黒になっている。
頭にはヘイローのような輪っか、背部にはこれまた豪華な装飾がある。
腕は4本あり、そのうち2本は装飾の施された杖を持ち、残りの2本は手を組んで祈っている。
資料には 「 「崇高」が形成する「神秘」と「恐怖」の内、「神秘」を手に入れようとしたが失敗した。
だがアプローチの方法を変え、「崇高」とは違うがそこに秘められた「神秘」と「恐怖」に別の意味で似る部分がある、トリニティの地下に封印された太古の教義に目を向けた。
そしてそれは成功し、遂に教義は受肉しつつある。
まだ不完全であるが、観察は続行する。」と書いていた。
うーん。
人工の天使という存在は、恐らくCreepypastaとは関連しないと思うが…
「崇高」ね…
資料から考えると、「神秘」と「恐怖」が「崇高」を形作っているのかな。
まだこれだけだと分からないが、覚えておく必要はある。
続いて、ペロロジラ。
確か、阿慈谷ヒフミが大好きだったあのよく分からないデザインの鳥…なのかな。が巨大化したみたいな存在。
輸送中に沈没し市場に流通されることがなかったとされる伝説のぬいぐるみで、その事件によりぬいぐるみの下請け会社は破産し再販されることはなかったらしい。
資料にはゴルコンダ達が発見したペロロジラの情報…というよりは考察がまとめられていた。
「ペロロジラは「記号」という物の変種である。
パロディやオマージュなどと言えるものだが、ただそう言えるものではない。
現代の都市伝説、怪談……あるいは俗に「Creepypasta」とも呼ばれる、本来無意味なお話が自ら「崇高」の境地へと至った非常に稀なケース。
「神秘」も「恐怖」も無いままに胎動した、新たな「崇高」。
無限に繰り返される中で偶然に意味を孕んで誕生した稀有な「テクスト」を持ちうる記号……。
これは非常に興味深い、ぜひとも解釈されるべき「記号」であるわけだ。
私はある偉大な芸術家の作品の名を少々お借りして、このように名づけた。
「The Library of Lore(止め処無い奇談の図書館)」、と。
その第一弾がパロディであるのは少々可笑しい話に思えるかもしれないが、逆に考えてみれば、それもまた一つの立派な「記号」であるとも言える。
ぬいぐるみの魂が唐突に暴れるという奇談。
この後もきっと、様々なオマージュのようなものが続いていくことだ。
この図書館の全体像はまだ掴めない。
しかし全体像が掴めないからこそ興味深い……そうとも言える。」と書いてあった。
コウ「この情報を知った時には心躍ったんだけどなぁ…」
コウ「直接 Creepypasta って書いてあるからいけるかもって思ったけど。」
コウ「まずまず私はペロロジラみたいな存在にじゃない。」
コウ「ビナーの存在は覚えてたんだけど、如何せん情報が少なすぎるし、そもそも資料があっただけでゲマトリアが作った存在じゃないからなぁ…。」
コウ「オリジナルじゃなくて、ゴルコンダ達の考えを元に考えればいけるのかな。」
コウ「そうなると「記号」っていうのがわからない。」
コウ「そこはゴルコンダの考え方だからいいんだけどさ。」
コウ「…やっぱりどっちの資料でも出てくる概念。」
「神秘」と「恐怖」。
そして、「崇高」。
ヒエロニムスやペロロジラは、別々の形で崇高へと至っている。
ベアトリーチェも、崇高へと至る為に行動していた。
なら、私も崇高に至れば…
でも、崇高に至るにはどうしたらいいんだ?
ここまで考えついたなら、もう一回資料を見返す必要がある。
休憩も終わったことだし、部屋に戻るか。
机の上の資料をまた読み漁る。
目的のものは、崇高関連の事。
そうして、必死に探すと。
マエストロが崇高の説明をしている資料を見つけた。
「いわゆる「崇高」というものは、二つの側面を持っている……ひとつは、到底たどり着くことの叶わない「神秘」。そしてもうひとつは、不可逆の「恐怖」。
例えるならばそう、それはまるでコインの両面のように、「神秘」と「恐怖」とは互いに切り離すことができないものなのだ。
しかし宙に投げられたコインが最終的にはどちらか一方の面を見せるのと同じように、「崇高」もまたそのような形で顕現する。
「神秘」、そして「恐怖」。これらの本質は同じだが、私たちは「崇高」の形として、その二つの内の一面しか観測することができない。」
…なるほど。
可能性が出てきた。
ゲマトリアのメンバーは神秘を持っていないか、もしくは持っていたとしても「神秘」の量が足りない。
そもそもゲマトリアは外の世界からきているはずだから、キヴォトスの生徒ではない。
今思い出したが、ベアトリーチェは秤アツコの特別な神秘を生贄とし、色彩と接触し崇高へと至ろうとした。
自力だけで崇高へと至ることは「神秘」の量が不足している事によってできないのだろう。
だから、崇高へと至るためには、「神秘」の量が大切。
「恐怖」に関しては、心に多大な負荷に掛かったり、
「色彩」の干渉で「神秘」が反転し、「恐怖」へとなる。
BlueArchiveのストーリーだとシロコ*テラーがいい例だ。
でも私はどうだ?
キヴォトスの生徒だし、黒服の発言から私は小鳥遊ホシノと並べるほどの「神秘」の量を持っている。
「恐怖」に関しては、黒服達に頼んで心が壊れるほどの苦痛を伴う実験。
ペロロジラの崇高を取り込んでしまえばいい。
そもそも崇高をそのまま私の体の中に取り込むことができるならいいが、要するに文面だけ見れば体の中に「神秘」と「恐怖」を共存させれば「崇高」になれる。
「崇高」に至ることで、生徒の枠組から外れる。
となれば、ゲマトリアと同じ「外の世界」の人間と同じながら「神秘」と「恐怖」を併せ持つ特異点となり、神秘にアプローチをかけれるようになるはず。
そこから、Creepypastaを再現するには。
ゴルコンダは「記号」といっていたもの。
神秘にアプローチをかけるための一つの解釈。
私も同じ解釈をすればいい。
でも、再現するとなるなら。
「記号」を「ゲームコード」や「データベース」と解釈する。
そもそもこの世界はゲームなんだ。
だったら、「神秘」という「設定」。
メタ的観点から「神秘」に接触してやればいい。
そうすれば、この世界にCreepypastaそのものを再現することができる!
だか、「神秘」が反転し、まるごと「恐怖」となってしまうこと。
BlueArchiveストーリー内で小鳥遊ホシノが反転した事例もある。
そんな危険性もあるが。
それでも。
コウ「これで…いけるはず。」
コウ「まずは提案してみないと。」
コウ「なにか条件をつけられると思うしね。」
コウ「でも、それはそれで別にいい。」
コウ「やっとここまで来た。」
コウ「なら行動あるのみ!」
そう思った私は黒服へ連絡をかけた。
「なんかこいつの言ってることよくわかんねーぞ」と思っても温かい目で見てくだせぇ…
足りない頭で頑張った結果なんです!