ではどうぞ!
鋭く光るリザードマンロードの曲刀がラテンを襲う。
その一撃をバックステップで躱すと、素早く距離を詰め、重三連撃ソードスキル<羅刹>を放つ。赤い光をまとった愛剣《無双刀》が、システムで定められた軌道を描いた。
三連撃のうち身体に命中したのは最初の一撃だけで、あとは円型のバックラーで防がれてしまうが、小型の盾で防ぎきるのは厳しかったようで、《盾割り》状態が発生し、リザードマンロードに一秒弱の硬直が襲う。
その隙を見逃すはずもなく、<羅刹>から流れるように三連撃ソードスキル<緋扇>
を放った。
無防備になった体に水色の閃光が降りかかる。
クリーンヒットも含めた三連撃を耐えうるHPをリザードマンが持っているはずもなく、小さな断末魔と共にポリゴンとなって消滅した。
「やるなー! さすが『神速のラテン』様だぜ」
ふう、と息をつきながら納刀すると、首に腕をかけられる。
見れば、趣味の悪いバンダナを額に巻いた野武士ヅラの男が笑っていた。
この男の名はクライン。
第一層の時からの知り合いで、今では、『攻略組』と呼ばれる最前線で戦う五百人弱しかいない集団の中で、昨日のアスナのような血盟騎士団ほどではないにせよ名の知れたギルドである『風林火山』のリーダーをしている男だ。
クラスに一人はいるムードメーカー的なこの男は、意外にもリーダーとしての能力は高い。それが二年間死者ゼロで押さえている一つの要因だろう。
「茶化すなよ……、『
「けっ! 言ったなこの野郎!」
「冗談だって! ギブギブ」
羽交い絞めをしてきたクラインの右手を笑いながら叩くと簡単にほどいてくれた。だが、当の本人は少しばかり引きずっているようで、「どうせ俺はモテないですよ……」と小声でぶつぶつと愚痴をこぼしていた。誰もモテるモテないの話はしてないのだが。
普通ならほっとく場面であるのだが、たまには元気づけても罰は当たらないだろう。
「そろそろ行こうぜ。今日中にボス部屋を見つけるんだろ? もしかしたら『キャー! クライン様~! ありがとう!』って可愛い女の子からお礼を言われるかもしれないぜ?」
「女の子女の子女の子女の子女の子女の子女の子……」
「おいぃぃ!? どんだけ渇望してんだよ!? この変態ロリコン野郎!」
「俺はマゾじゃねぇ!!」
「誰もそんなこと言ってねぇ!!」
どうやらこの変態ロリコンマゾ野郎が元気を取り戻すには女性と会話させる以外の方法はないらしい。だが生憎この場には女性はいないため、現状ではほっとくのが一番だろう。
仕方がないので残りの五人の声をかける。
「こいつはほっといて先に行こうぜ」
「「「「「女の子女の子女の子女の子……」」」」」
「お前らもかい!?」
道先は険しそうだ。
しばらくマッピングをしながら歩いていると、異次元の空間への入り口のような縦長の緑色の円が見えてきた。これは上層への入り口で、全三階からなる迷宮区のどこかに設置されている。
ラテンたちがいるのは二階であるため、次の階に今日の目的であるボス部屋が存在している。
未だにうだうだと嘆いている風林火山を無理やり押し込むと、最後に背後を確認してワープゾーンに入り込んだ。
次の階に到達すると、風林火山の連中が誰かと話しているのが見えたため、傍に歩いていく。その相手は顔なじみの奴らだった。
「あれ、キリトじゃん。それにアスナも」
「よ、ようラテン。お前も来てたのか」
「……ははーん」
大方キリトがアスナに誘われたのだろう。その誘われ方が穏便であったのかはわからないが。
「な、なんだよ……」
「別にーなんでもねーよ」
そう言いながらもニヤニヤし続けているラテンを、細めでじっと見つめてていたキリトは、ふと何かを見つけたかのように視線を俺の後方へ動かした。
その視線を追うように顔を動かすと、重装備をした兵士たちが二列縦隊でこちらに向かって行進していた。その数十二。
「軍……だよな」
「ああ」
キリトが短く答える。
お揃いの黒鉄色の金属鎧に濃緑の戦闘服を装備している彼らは、第一層にある巨大な街、《はじまりの街》を拠点としている《アインクラッド解放軍》というギルドに所属しているプレイヤーたちだ。
第二十五層ボス攻略戦で多数の死者を出したため、それ以来最前線で見かけることはほぼほぼなかったのだが。
「おいおいめっちゃ消耗してるじゃねぇか」
安全エリアの、ラテンたちとは反対側の端に停止した部隊は、隊長らしき人物の指示によって一斉にその場で倒れるように座り込んだ。全員が肩で息していることから相当疲労が溜まっていることだろう。
だが隊長らしき人物はそんな彼らに目もくれずにこちらに歩いてくる。
その男がラテンたちの前で立ち止まると、ゆっくりとヘルメットを外した。年齢は三十代前半くらいだろうか。重装備とかなりの長身の相乗で、ものすごい威圧感がある。
「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」
「キリト。ソロだ」
ここはキリトに任せたほうがいいだろう。
一歩下がって事の成り行きを見守る。
「君らはもうこの先も攻略しているのか?」
「……ああ。ボスの手前まではマッピングしてある」
「うむ。ではそのマップデータを提供してもらいたい」
当然だ、と言わんばかりの男の台詞に少しだけ驚いた。
マッピングをする苦労はこの男もわかっているはずだ。特に迷宮区は『迷宮』という名がつくだけあって、べらぼうに広いため、マッピングには時間と精神力を必要とする。その苦労をただで提供しろと言っているのだ。
いくら協力が大切だからであっても、それをごく当然のように振る舞うのは間違っている。少なくとも申し訳なさそうに言えないのだろうか。
「な……て……提供しろだと!? 手前ェ、マッピングする苦労が解って言ってんのか!?」
ラテンが口を開くよりも早く、クラインが同間声で喚いた。
クラインの言葉に片方の眉をぴくりと動かしたコーバッツは顎を突き出す。
「我々は君ら一般プレイヤーの解放のために戦っている」
大声で張り上げながら続ける。
「諸君が協力するのは当然の義務である!」
その言い方をもう少し何とかできないのだろうか。
思わず眉を寄せる。
「ちょっと、あなたねぇ……」
「て、てめぇなぁ……」
爆発寸前のクラインとアスナをキリトが両手で制す。
「どうせ街に戻ったら公開しようと思ってたデータだ、構わないさ」
「おいおい、そりゃあ人が好すぎるぜキリト。ラテンもなんか言ってやれよ」
「……まあ、いいんじゃないか。キリトのマップデータはキリトのモンだし。どう使おうが俺には関係ないことだ」
さすがのクラインもこれ以上は出ないようで、押し黙る。
キリトはそれを確認すると、トレードウインドウを出し、迷宮区のデータをコーバッツに送信した。男は表情一つ動かさずにそれを受け取ると、「協力感謝する」と呟いて踵を返した。感謝の気持ちなどかけらも感じられなかったが。
「ボスにちょっかい出す気なら止めといた方がいいぜ」
離れていく背中にキリトが声をかける。
「……それは私が判断する」
「さっきちょっとボス部屋を覗いてきたけど、生半可な人数でどうこうなる相手じゃないぜ。仲間も消耗してるみたいじゃないか」
「……私の部下はこの程度で音を上げるような軟弱者ではない!」
部下、という所を強調してコーバッツは言い放つ。この世界に規律だの何だの求めても意味がないというのに。
「貴様等さっさと立て!」
部下たちはのろのろと立ち上がり、二列縦隊で整列すると、コーバッツの指示で再び進軍を開始した。
もちろん向かう先はキリトが言っていたボス部屋だろう。
「……大丈夫なのかよあの連中……」
「いくらなんでもぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど……」
クラインとアスナが心配そうにつぶやく。先ほどまでコーバッツに噛みつこうとばかりの勢いはどこに行ったのやら。
それはともかく、さすがにあのコーバッツという男もそれはわかっているだろう。第二十五層の惨劇を経験していたらの話だが。
「……まあ、どっかのカップルが必死で逃げ出すくらいだし、大丈夫なんじゃねぇの?」
「え、なんでお前知って――」
「あら。適当に言ったつもりなんですけども…………そうだったのね」
二言目は若干オカマ口調になってしまったが別に気にしなくてもいいだろう。ニヨニヨと顔を向ければ、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしたキリトとアスナがすぐさま反論をしてきた。
「あ、あれはちょっとびっくりしただけで別に逃げてなんか……!」
「そ、そうよ! 戦略的撤退をしただけなの!」
「……『カップル』って所は弁解しないのね」
「「ラテン(くん)!!」」
鬼の形相で迫ってくる二人――といっても片方は顔を真っ赤にしているが――に「冗談だって」と笑いながら両手を小さく上げる。さすがにからかい過ぎただろう。
「んで、どうする? 様子だけでも見に行くか?」
「……そうだな」
いきなり話を切り替えたラテンを不服そうに見つめながらキリトが呟く。アスナとクライン、そして風林火山の五人も相次いで首肯した。
戦闘少なっ!と自分で書いてて思いました。戦闘ってどういうふうに書けばいいですか
ね?アドバイスあったら、お願いします。文字数が、とても少ない駄作だと思いますが
文字数はこれからどんどん増やしていきたいと思います。文のほうは……、これからう
まくなるように善処します。 m(_ _)m
修正しました。