ソードアート・オンライン~神速の剣帝~   作:エンジ

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第三話 囚われの姫と巨人の王

俺達が、第四層に到達したのは第二層のボスを撃破してからわずか二十分しかたっていない。第三層のムカデのようなボスは、リズ、シリカ、シノン、ピナ、クラインが頑張って足を切り落とし、体勢が崩れたところで、俺のスキルオーバーラップとキリトのスキルコネクトによって、撃破した。俺達は、第四層に通づる階段を降り、そして今現在に至る。

目の前には、氷の柵とその中に囚われている何とも美しい女性がいた。

 

「お願い・・・。私を・・・・ここから、出して・・・・・」

 

クラインは、氷の檻に吸い寄せられていくが、キリトがそのバンダナを掴み、引き戻した。

 

「罠だ」

 

「罠よ」

 

「罠だね」

 

キリトの言葉に同調して、シノンとリズも言い出した。

びくんと、背中を伸ばしてクラインが俺達の方に振りかえると、微妙な表情で頭をかく。

 

「お、おう・・・・罠、だよな。・・・・罠、かな?」

 

何とも往生際の悪い刀使いだ。だが、その気持ちはわかる。目の前にいるのは美女なのだ。どんな言葉でも信じてしまうのが男の性分だろう。

 

「ユイ?」

 

「NPCです。ウルズさんと同じく、言語モジュールに接続しています。ですが一点だけ違いが。この人には、HPゲージがイネーブルです」

 

Enable、すなわち有効化されているということだ。通常のNPCはHPゲージが無効化されており、ダメージを受けない。例外は護衛クエストか、あるいは・・・・・。

 

「罠だよ」

 

「罠ですね」

 

「罠だと思う」

 

「・・・・」

 

アスナ、シリカ、リーファが同時に言う。だが、俺はクラインの気持ちがわからないわけではないので、無言だ。

 

「もちろん罠じゃないかもしれないけど、今はトライ&エラーしてる余裕ないんだ。一秒でも早く、スリュムのところまでいかないと」

 

「お・・・・おう、うむ、まあ、そうだよな、うん」

 

クラインは、何度もうなずき、檻から視線を外した。俺達は、奥に見える階段に数歩走った後、後ろから声が聞こえた。

 

「・・・・罠だよな。罠だ、わかってる。でも、でもよ。罠だとわかっていてもよ・・・・」

 

クラインはうつむいていた顔をがばっとあげ、目元を薄くにじませながら叫ぶ。

 

「それでも俺は・・・・・どうしても、ここであの人を置いていけねェんだよ!たとえそれでもクエが失敗して、アルンが崩壊しちまっても・・・・それでもここで助けるのが、それが、俺の生き様・・・・武士道ってヤツなんだよォ!」

 

勢いよく振り向き、氷の檻に駆け戻っていくクラインの背中を見た俺は思わず

 

 よく言った、クライン!

 

と叫びそうになった。

クラインは、愛刀を抜き取ると氷の柵をソードスキルで破壊する。

 

「・・・・・ありがとう、妖精の剣士様」

 

「立てるかい?怪我はないか?」

 

しゃがみこみ、右手を差し出すクラインはまさに紳士の鏡のようだった。

 

「ええ・・・・大丈夫です」

 

頷き、立ち上がった金髪美女は、すぐによろけた。クラインは紳士的に支えるとさらに尋ねた。

 

「出口までちょっと遠いけど、一人で帰れるかい、姉さん?」

 

「・・・・私はこのままこの城から出るわけにはいかないのです。巨人の王スリュムに盗まれた一族の宝物を取り戻すために忍び込んだのですが、見つかり捕えられてしまったのです。どうかわたくしもご一緒させてもらえないでしょうか」

 

「・・・・いいんじゃね?」

 

「え!?ラテンさん、怪しくない?」

 

「まあ、怪しいが。ここまできて見捨てるのもどうかと思うしな~」

 

「・・・・こうなったら最後まで分岐ルートで行くしかないだろ」

 

キリトは、目の前に出現したダイアログのYESのボタンに触れる。

おそらく、キリトのパーティーに一人の名前が追加されたはずだ。

 

「んじゃ、ラストバトル、全開でぶっ飛ばそうぜ!」

 

「おー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は、ボス部屋前で、金髪美女のフレイヤにHP増強魔法をかけてもらった。この手の魔法を俺は見たことがないので少しばかり感心したが、時間がないので俺達はそそくさに扉内部へはいって行った。

内部には、大量の宝石や黄金があり思わず息をのむ。

すると、低い声がエリア内部に響いた。

 

「・・・・小虫が飛んでおる。どれ、一つつぶしてくれようか」

 

目の前に現れたのは、超巨大な人だ。俺が、全力でジャンプしても膝までが精いっぱいだろう。

巨人の上に長い三本のHPゲージが出現する。

 

「来るぞ!ユイの指示をよく聞いて、序盤はひたすら回避!」

 

キリトが叫んだ瞬間、スリュムはでかい拳を、猛然と降り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘開始から十分近くが経ち、ようやく俺達はスリュムのHPを一本削った。巨人の王が咆哮を轟かせると、キリトが叫ぶ。

 

「パターン変わるぞ!注意!」

 

「まずいよ、お兄ちゃん。もう、メダリオンの光が三つしか残ってない。多分あと十五分無い」

 

「・・・・・・」

 

ゲージ一本削るのに、十分もかかってしまったのだ。例え、俺とキリトが切り札を使ってもHPを削り切れない。大技によって、長時間スキルディレイが発生し、そのあいだ攻撃を受け、俺とキリトは確実にゲームオーバーになる。そうなると、勝機はなくなる。かといって、このままでも意味がない。一か八かに賭けるかもしくは・・・・。

そう考えているうちに、キリトが叫ぶ。

 

「みんな、防御態勢!」

 

俺達が、防御態勢をとるとその瞬間スリュムが巨大な足を持ち上げた。

 

 まずい!

 

俺が思うとほぼ同時に、スリュムは右足を猛然とストンプした。生まれた衝撃波が俺達を包む。HPゲージを見ると、レッドゾーンに突入していた。

ようやく立ち上がった俺達にさらに追い打ちをかけるように、スリュムが前進する。だが、火に包まれた弓矢が、スリュムののど元に突き刺さり爆発した。奴のHPが目に見えて減少する。

俺は、すぐにハイポーションを飲み、アスナの範囲回復魔法と重複させて、一気にHPが回復していく。一気といっても、少しづつ回復していくため、HPが一瞬で全回復するわけではない。だが、重複させることによって一回の回復量を大幅に上げてくれる。それ+俺には自動回復能力がついているためすぐに体勢を立て直すことができる。

 

「シノン、ラテン三十秒頼む!」

 

「三十秒だけだぞ!」

 

俺は、シノンの近くで奴の拳を刀で受け止める。

 

「ぐっ・・・」

 

予想以上に重い一撃は俺のHPを徐々に削っていく。

 

「シノン!」

 

シノンは、素早く弓を構えると奴の顔目掛けて矢を放つ。スリュムは顔を抑え俺への攻撃を緩めた瞬間俺は、バックステップをしスリュムと距離をとる。

俺は、鞘を取り出し納刀する。その瞬間、鞘が五色に輝き始めると俺は思い切り地を蹴る。スキルオーバーラップ<オーバー・トライ・ワンズ・リミッツ>を放つ。

ついさっき急遽完成させた技だ。ミノタウルス戦に使った連撃+七連撃<ゲール・ウィズ・ライトニング>風四割、雷四割、物理二割を加えている。

俺は、スリュムのHPゲージを一本と少し削るとスキルディレイが発生する。この技のディレイ時間は八秒。どうあがいても、避けることはできないだろう。

 

 キリト、後は頼んだぞ!

 

俺は、奴を見据える。スリュムは俺に拳を振っていた。だが、その拳は俺に届く前に逆に俺から離れていった。俺は、顔を左に向けるとそこには巨大なハンマーを持った超巨大の金髪のおっさんが、ハンマーでスリュムの顔面をたたきつけていた。スリュムを攻撃するということは味方なのだろう。

 

「今だ!全力攻撃!」

 

キリトの声がしたのと同時に七人が俺を追い抜きスリュムにソードスキルを叩き込んだ。

あいにく俺は、硬直のため参加することができず、硬直が解けたころには金髪のおっさんがスリュムの頭をたたき、HPを消滅させていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、俺、しっかり貢献したな?」

 

俺は、思わずつぶやく。なぜならスリュムを倒したとき、俺は攻撃に参加していなかったからだ。

 

「ああ、お前は三十秒以上時間を稼いでくれたんだ。感謝してるぜ」

 

階段を下りながら言ったキリトの言葉に俺以外の全員が頷く。

 

「それにしても、あれがラテン語の最後の切り札か?すごかったぜ」

 

「・・・・ああ。まあな」

 

一応、最後の切り札ではないのだが、現時点では俺の切り札だろう。

俺達は、階段を降り切ると目の前に台座があった。そこには黄金に光る伝説級武器<聖剣エクスキャリバー>が刺さっていた。キリトは、エクスキャリバーの前に立ちありったけの力を使い引き抜き始めた。

 

「がんばれ、キリト君!」

 

「ほら、もうちょっと!」

 

「根性見せて!」

 

「パパ、頑張って!」

 

「キリト、もっと腰を、腰を入れろ!」

 

「くるるるるるるぅ!」

 

アスナの声に続き、俺達は応援し始める。すると、ぴきっという音とともにエクスキャリバーが引き抜かれた。「おお!」という声もつかの間、俺達のいた床が大きく振動し始めた。

 

「・・・・!スリュムヘイムが崩壊します!パパ、脱出を!」

 

「って言っても、階段が」

 

さっきの揺れで、階段が崩壊してしまった。

後戻りもできないし、前に進むこともできない。まさに絶体絶命だ。

 

「よ、よおォし・・・・こうなりゃ、クライン様のオリンピック級垂直ハイジャンプを見せるっきゃねェな!」

 

「そうだ、クライン!お前が今までしてきた苦労をここで見せるんだ!」

 

「うおおおおおおおお!!」

 

「あ、バカ、やめ・・・」

 

俺が、クラインを後押しし、クラインがジャンプする。キリトがとっさに止めるが遅かった。

記録、推定二メートル十五センチ。立派な記録だが、根っこには到底とどかなかった。

クラインは、音を立てて落下するとそのショックのせいで周りの壁が崩壊し始めた。

クラインは、地面に伏している。

 

「立て!立つんだ、クライーーーン!!」

 

「・・・・燃え尽きたぜ」

 

そんなしょうもないコントをしている俺達に、リズベットが思い切りチョップをかましてくる。

 

「クラインさんの、ばかーっ!」

 

シリカの絶叫とともに、俺達の床が勢い良く落ち始める。

 

「ああああああああああ!!!!!!!!」

 

ただでさえ、空中戦闘及び高いところが苦手な俺がこんなハードすぎる絶叫マシンに耐えられるわけもなく、白目をむいて倒れてしまった。

最後に聞こえたのは、リズの一言。

 

「あんたが燃え尽きてんじゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が目を覚ましたころには、一人の女性が天を上るところだった。

 

「・・・・・あれ?どうなったの?・・・・・・あで!」

 

そんな俺の言葉に、リズがまた俺の頭をチョップした。

俺とリズと少し離れて胸に手を置いているクライン以外が苦笑した。

 

「・・・・あのさ、この後、打ち上げ兼忘年会でもどう?」

 

「賛成」

 

「賛成です!」

 

俺達は、キリトの言葉に大きくうなずいた。

この冒険はきっと忘れられない思い出になるだろう。

 

 




はい!キャリバー編書き終わりました!ようやく、ようやくマザーズロザリオ編が・・・泣
取り乱して申し訳ございません。今回は、クラインとラテンのコントを少し入れてみました。ちょっとセリフをいただきましたが・・・・・。
あと、エクスキャリバーってどんな能力があるんですかね?魔剣グラムよりも強いということは、チート並みに強いとか(笑)

そんなわけで、次回からはマザーズロザリオ編です!
待ちわびてくださった方々ありがとうございます。
ころからもこの作品をよろしくお願いします!
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