ソードアート・オンライン~神速の剣帝~   作:エンジ

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第八話 切り札

真上に上った太陽の日差しが俺を包む。それとともに会場に盛大な歓声が湧いた。この会場の観客席はぎっしりと埋まっていた。おそらくこのALOのほとんどのプレイヤーがこの会場に集まっているだろう。

俺は直径百メートルほどの闘技場の中央に立っている。俺ともう一人のプレイヤー以外の準々決勝はすでに終わっていた。

 

 

 

西ブロック北側準々決勝、ユウキVSリーファ。

リーファはユウキ相手に得意の空中戦闘で善戦し、HPを五割ほど削ったがやはりユウキの速さにはついていけず負けてしまった。

 

 

西ブロック南側準々決勝、アスナVSコトネ。

コトネは<大空天真流>を多少かじっている。だが、どちらかというと運動系よりも頭脳系なのでそこまで深く習ってはいない。それでも、剣のセンスはあるようでシルフの種族の中でも上位の実力を持っている。

コトネは、相手の動きを先読みしてその裏をかきカウンターするのが得意だ。兄妹はやはり似るものである。

それでも、あの世界の二年間で培ってきたアスナの速さには対処しきれず、HPを六割削って惜しくも負けてしまった。

 

 

東ブロック北側準々決勝、キリトVSユージーン将軍。

キリトとユージーン将軍がデュエルするのはこれで二回目だ。前回は二刀流を使ったキリトがユージーン将軍の<魔剣グラム>を押し切り、勝利した。

ユージーン将軍の<魔剣グラム>は防御態勢をとっている相手の武器をすり抜けて攻撃をすることができる能力がある。そのため、前回キリトは苦戦を強いられていた。

しかし今回、キリトは一刀流しか使っていなかった。それでもユージーン将軍はキリトのHPを四割しか削ることができなかった。

なぜかというと、それはキリトの武器の能力が原因だった。

キリトは今回、いつも使っているモンスタードロップ品の黒い剣ではなく、伝説級武器である<聖剣エクスキャリバー>を使用したのだ。ユージーン将軍の<魔剣グラム>は、防御態勢をとっているキリトのエクスキャリバーをする抜けることができず阻まれた。

エクスキャリバーの能力を詳しくは知らないのだが、見た感じ相手の武器の能力を無効化してしまう能力を持っていると思われる。

それによりユージーン将軍は、ダメージをあまり与えることができずに負けてしまった。

 

そして、東ブロック南側準々決勝。

俺は十メートルほど離れているもう一人のプレイヤーを見据える。

彼の名前はフライ。<空将>の異名を持ち、おそらくシルフの種族の中で一番強いだろう。

俺は、フライとデュエルをしたことがないが、間違いなく空中戦に持ちこむだろう。そうなると、空中戦が苦手の俺が相当不利になる。

フライに勝つには、地上にいる間に仕留めることが必要だ。

俺の目の前にデュエル申請のメッセージが出現する。デュエルのやり方は予選と同じ<全損決着モード>だ。

俺がYESのボタンを押すと、二人の間に六十秒のカウントダウンが出現する。

このALOの世界ではデュエルを行うとき、ほとんどが<全損決着モード>だ。

かつてのSAOではデュエルは<初撃決着モード>でしか行われなかった。<全損決着モード>はもちろんありえないし、<半減決着モード>でも、クリティカルヒットしたらHPが危険域に陥ってしまうため使われなかった。

時代は変わってしまった、なんて爺くさい考えをしてしまうのは俺だけだろうか。

そんなことを思っているとフライが口を開く。

 

「できればラテンさんとデュエルをしたくはありませんでした」

 

「それはこっちの台詞だ。空中戦に持ち込まれたら、俺に勝機はないかもな」

 

「正直僕はラテンさんの速さについていけませんよ」

 

「言っとけ<空将>さん」

 

俺は、月光刀を抜き剣尖を地面すれすれに下ろす。体は自然体に半身だけ相手に向け腰を落とす。

対するフライは、右手に長剣を左手に丸い盾を装備している。

フライが持っている<イージスの盾>はダメージを三十%軽減するため、浅く入った斬撃はダメージ判定にはなりにくい。

カウントダウンが残り十秒を切った。

俺は大きく息を吐く。最初の一撃が肝心だ。全神経が自然に研ぎ澄まされる。

そして、デュエルの開始を合図する音が鳴った瞬間俺は、思い切り地を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side キリト

 

俺は、ユージーン将軍とのデュエルが終わると、そのまま待機室ではなく会場の観客席に向かった。

観客席に到着すると、特徴的なバンダナを見つけたのでそこまで足を運ぶ。

 

「よう、キリの字!お前強すぎるだろ!」

 

「エクスキャリバーのおかげだよ」

 

俺は、アスナの隣に並ぶ。アスナのほかに、なじみの仲間やスリーピングナイツのメンバーがそろいもそろって、闘技場に目を向けていた。もうすぐラテンとフライのデュエルが始まる。みんな、楽しみなのだろう。

 

「アスナ、次はユウキとだな」

 

「うん、今回は負けないけどね」

 

「む~、ボクも負けるつもりないよ!だってラテンと約束したもん」

 

「まあ、ラテンが決勝に行く前に俺に当たるけどな」

 

「そういえば、キリトとラテンはどっちのほうが強いの?」

 

「・・・・試したことないから解らないなぁ。あいつとは、相棒だったから別に強さとか気にしてなかったからな」

 

「う~ん、ラテン君は強いけど、やっぱりキリト君に勝ってほしいな」

 

「ねえ、アスナさん、ユウキ!それじゃ、フライが負ける前提みたいじゃない。フライはきっとお兄ちゃんをぼっこぼこにしてくれるよ!」

 

コトネ以外が苦笑した。

コトネはここで兄を応援するのではなく、恋人を応援するようだ。あいつが、この場にいたらきっと泣いているだろう。

俺はラテンに視線を向ける。きっとこのデュエルはラテンが勝つだろう。もちろん、フライが弱いわけではない。むしろ相当強い。このALOでも間違いなく上位に入る。

 

「ねえ、キリト君はどっちが勝つと思う?」

 

「・・・・ラテンに勝ってほしいかな」

 

「ボクもラテンに勝ってほしい!」

 

「私は、フライです!」

 

「なんだと~」

 

ユウキとコトネがじゃれ合い始める。そうしている間にもデュエル開始のカウントダウンが進んでいく。

そして、それがゼロになった瞬間ラテンが駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ラテン

 

俺はあいさつ代わりに、カタナ単発ソードスキル<辻風>をお見舞いする。だが、俺の斬撃は丸い盾に防がれ、火花が散った。

フライは、俺の一撃を防ぐと間髪いれずに突きを放ってきた。

ぎりぎりで体をひねり避け、斬り上げる。しかし、そのカウンターも空しく盾に防がれる。

だが、ここで終わらない。俺は、一気に距離を縮める。

フライは、払い切りをするが、それをしゃがんで避け左斜め下から鞘をたたきつける。

 

「くっ!」

 

フライのHPを一割減少させた。クリティカルヒットしたはずなのだがダメージはまったく出なかった。

フライは大きくバックステップを取り空中に飛び始めた。

 

「ちっ!」

 

俺は、フライが空中で体勢を整える前に大きくジャンプする。背中から翅が出てくるのを感じた。

 

「うらあああ!」

 

俺は両手で刀を持ち、思い切り斬り下ろす。だが、わずかに下に押しただけで盾に防がれてしまう。

フライは、開いた隙をついて下から思い切り突き上げる。俺は、鞘を使って軌道を変えるが頬にかすり、HPがわずかに減る。

俺は、そのまま空中で回転しフライと距離をとった。

 

 

「ラテンさん。今のよく避けましたね」

 

「・・・・・」

 

俺は、無言で刀を構える。正直に言うとあまりよろしくない。空中戦において機動力は俺よりもフライのほうが高い。

何か、隙がないかと探してみるが、さすがは<空将>の異名を持つだけあって、隙が微塵もない。

ないということは、<作るしかない>ということだ。

俺は、翅に力を込め一気にフライトの距離を縮めると、重単発突進技OSS<デモリッシュ・スラッシュ>火七割、物理三割を右から叩き込む。

その一撃は大きな音とともにフライの盾に防がれる。だがこれでいい。

おそらくフライは、体勢が崩れた俺に剣で斬りかかるだろう。俺はそれを狙っていた。

その斬撃の軌道を鞘でずらすことで、盾と剣の間を広げることで防御できない場所が生まれる。そこに俺が斬り下ろせば、結構なダメージを与えることができる。

 

俺の予想通り、フライは右手の剣で斜め上から剣を振り下ろす。

それを鞘でいなして、カウンターをしようとするが、それは叶わなかった。

 

パリィィィン!

 

フライの剣を俺の鞘が受け止めた瞬間、音を立ててポリゴン片となり消滅してしまったのだ。

俺は、とっさに体をひねるが、腹部に斬撃を受けた。もし、まともに受けていたら大ダメージを受けていただろう。

そして、そのまま盾によってふっとばされてしまった。HPゲージを見ると、残り六割を切っていた。

 

「くそ、空中戦じゃなかったら・・・・!」

 

鞘を破壊された以上、積極的に仕掛けに行くことはできない。

こうなったら、カウンター覚悟でスキルオーバーラップを使い隙を作って大ダメージを与えるしかないのかもしれない。だが、それでHPを削り切れなかったら、こちらが大ダメージを受ける可能性もある。

 

あれを使うしかないのか・・・・

 

俺は頭をフル回転させてる間に、フライがこちらに突進してきた。俺はフライの斬撃を受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。

 

「くっ・・・・・!」

 

受ける体勢をしっかりとっていなかったため、後ろに少しずつ押され始める。

すると、そこへ追い打ちをかけるようにフライがソードスキルを叩き込んできた。

俺は何発かは刀で受け止めたが、全てを防ぐことができず、HPが徐々に減り始める。だが、それでもディレイが発生する。

俺はそこを見逃さず、ディレイが発生した瞬間に四連撃OSS<スクエア・グリスター>を繰り出し、フライとの距離をとる。

 

「ラテンさん、そろそろ時間になりますよ」

 

時間を見ると、残り一分ほどになっていた。このままだと、時間制限で確実に負けるだろう。勝つためにはとっておきを使うしかない。

 

「・・・・正直鞘が壊れるとは思わなかった」

 

「鞘にも<武器破壊>が適用されるんですね」

 

「そうらしいな」

 

俺は、右半身をフライに向け刀を腰のあたりで、水平に構える。もう残り時間が少ない。この一撃が通らなければ、俺の負けだ。

俺は、息を大きく吸いゆっくりと吐き出すと、勢いよくフライの元へ飛んだ。

カタナが赤く光りはじめる。重単発突進技<デモリッシュ・スラッシュ>。俺は、左手でウインドウを開き素早く操作しながら、技を叩き込んだ。

フライは、防御態勢をとるが威力が大きくまたもや盾をはじかれてしまう。ここまではさっきの状況と同じだ。だが、同じ二の足を踏むつもりはない。

フライは、俺に斬撃を繰り出すがそこに俺の姿はなかった。

なぜなら、俺はフライの右側に回り込んでいたからだ。普通、空中でソードスキルを繰り出すとディレイが発生し、相手の横に移動するなんてことはできない。だが、俺は移動したのだ。

 

「うおおおおおお!!!!!」

 

ガキィィィィン!

 

俺は、後ろの腰に出現した新たな剣の柄を握り抜き取ると、全力でフライに斬り下ろした。

フライはぎりぎり剣で受け止めるが、俺の渾身の一撃を受け止めることができずそのまま地面に勢いよく落下する。

俺は、素早く地面に着地をしそのままフライの元に駆け出す。

 

「終わりだ、フライ!」

 

両方の剣が黄色く輝き始める。

スキルコンビネーション、《ラスト・ジャッジメント》合計二十一連撃。

 

「おおおおおおおおおお!!!!」

 

最初の二発でフライの剣と盾を弾き飛ばすと、隙だらけの体に雷の如く連撃を繰り出す。

 

もっと・・・・上がる・・・・・!

 

俺はさらに斬撃のスピードを上げた。フライのHPがどんどん減っていく。フライが何度か防御態勢をとるが、すぐさま弾き飛ばされてしまう。

そして、クラリティーの最後の一撃である単発重攻撃<ヴォーパル・ストライク>をフライの胸に突き刺すとフライのHPゲージを消し飛ばした。

その瞬間デュエル終了のファンファーレが会場に鳴り響く。それと同時に盛大な歓声が会場を包んだ。

 

 




ラテンに二刀流を使わせました!
なぜ刀ではなく片手剣かというと、使いやすそうだったからです!(笑)
技の説明は次回ラテンが言ってくれると思うので、楽しみにしていてください。
これからもこの作品をよろしくお願いします!!
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