フライとのデュエルが終わると、十五分間の休憩時間が与えられた。
俺は、次の試合がないのでフライとともにキリトたちの元へ足を運んでいた。
「ラテンさん、あんな技を隠し持っていたんですね・・・・」
「まあな、でもあれがなかったら俺はお前に負けてたぜ?」
「いやいや、ラテンさんは大空天真流を使ってなかったじゃないですか」
「・・・・」
「ほらだまった」
「あ、あはははははは」
俺は苦笑する。もちろん大空天真流を使っていたわけじゃない。だが、使えたといえばそれは嘘になる。
本来、大空天真流の戦い方は<カウンター>だ。相手の動きを一瞬で読み、隙をついて高速のカウンターを仕掛ける。
しかし、防御を中心とし隙を見て攻撃を仕掛けてくる相手なら別だ。
カウンターをカウンターするのは、とても難しい。仮に成功しても、十中八九盾で防がれるだろう。そうなると、やることは一つだ。
<ごり押し>をすること。
連続して攻撃をし、隙ができたところに一撃を入れ仕留める。
フライとのデュエルでは、得意な地上戦ならともかく苦手な空中戦だっためごり押しはほぼ不可能だった。
だから、もし二刀流がなかったらフライに負けていた可能性は高い。
俺達は、キリトたちの観客席に到着するとクラインが俺の服をつかみ、ぐわんぐわん揺らしてきた。
「おい、ラテン語!さっきのは何なんだよ!二刀流のソードスキルがあるなんて聞いてねぇぞ!」
「ああ、スキルコネクトでもあの速さの斬撃を繰り出すのは不可能だ。いったい何なんだ?」
クラインならともかく、キリトが質問してくるのは珍しい。
おそらく、あれを使えばSAO時代の二刀流スキルを再現できると思ったのだろう。俺に期待のまなざしが向けられる。
クラインを引きはがすと、さっきの技を説明し始める。
「さっきのは<スキルコンビネーション>っていうんだ。キリトのスキルコネクトと俺のスキルオーバーラップを組み合わせて開発したものだよ。でも、当たり前のようにディレイは長いし、連撃数はあれが限界だ」
「でもよ、さっきのソードスキルは単色だったし、交互にやってたじゃねぇかよ」
「あれは、単発ソードスキルを交互に繰り出してたからだ。単発ソードスキルを組み合わせれば軌道が読めないし、一撃の威力が高いからな。それに、ディレイが少ないから組み合わせしやすいんだよ。まあ、めっちゃ疲れるから連続して使えないし、防がれたらアウトだからな、あまり使わないようにしてる」
「お前も化け物だけど、あれを防ぐ奴も十分化け物だよな・・・・」
クラインが座り込む。
俺は苦笑するとユウキの元に向かう。
「おめでとう、ラテン!あの技すごかったね!でもボクは負けるつもりないよ!」
「それは、アスナを倒してから言えよ。それに俺はキリトに勝つ保証はないぜ?」
「お互い様だ」
キリトが俺の隣に座り込む。
アスナとユウキが次の試合の準備をし始めた。
「今度は負けないからね、ユウキ」
「ボクも負けないよ!ラテン、キリトに勝ってね!」
「残念、キリト君が勝つの!」
「ラテンだよ!」
「キリト君!」
「ラ~テ~ン!」
「キ・リ・ト君!」
「・・・・早く行かないと、試合始まるぞ?」
「「あっ」」
ユウキとアスナはさっきまで何の準備をしていたか忘れていたようだ。
それにしてもユウキは何故そんなにも俺とデュエルしたいのか。デュエルなら大会でなくてもできるはずだ。
そんな疑問が頭によぎったが、本人に聞くしか解決しないだろう。
「じゃあ、ラテン。またあとでね!」
「ああ。がんばれよ」
「うん!」
ユウキはそそくさに控室に向かって行った。
はっきり言って、ユウキが勝つかアスナが勝つか俺にはわからない。
ユウキの反応速度や剣技は、おそらくこのALOの全プレイヤーの中でトップだろう。普通ならば、圧倒的大差で勝利できる。
しかし、それでも互角に近い戦いができるのは、ユウキの剣が素直すぎるからだ。
フェイントは全然使わずに、己の能力を頼って全力で戦う。
そんな姿を見ていると、SAOにいた頃の自分を思い出してしまう。
俺は雑念を振り払い、キリトに声をかける。
「なあ、キリト。どっちが勝つと思う?」
「さあな、俺はアスナに勝ってほしいけど、きっとユウキが勝つだろうな」
「・・・・なんで?」
「それは・・・・・お前がユウキと戦えばわかると思うぜ」
「・・・・・?」
ユウキがアスナに勝つのと、俺が関係あるのだろうか。
ユウキが俺とデュエルしたいと思っていることはわかっている。だが、その望みだけでアスナを倒せるとは思えない。
そう考えているうちに、ユウキとアスナのデュエルが始まろうとしていた。
俺は、立ち上がり前の方へ移動する。周りからは盛大な歓声が巻き起こっていた。
デュエル開始まで十秒を切った。
ユウキが一瞬こちらを見たような気がしたが、気のせいかもしれない。
ファァァァン!!
デュエルの開始音とともに、ユウキとアスナは地を蹴った。
「惜しかったな、アスナ」
「ありがとう、キリト君」
ユウキとのデュエルが終わり、観客席に戻ってきたアスナは少々落ち込んでいるように見えた。まあ、それもそうだ。
あの、ユウキ相手にHPを三割まで減らしたのだから、勝ちたかったのだろう。
一方ユウキは、相変わらず元気いっぱいだ。
「次はキリト君の番だね。頑張ってね!」
「ああ、アスナの分まで頑張るよ」
キリトはアスナの頭に手をのせる。アスナは小さく「もう!」と言うが、どう見ても嬉しがっているようにしか見えない。
周りからの痛い視線に気が付かず、イチャイチャしているバカップルはもう救いようがないだろう。
「おーい、キリト。いちゃいちゃしているのは構わないが、デュエルが始まるぞ」
「ああ」
俺は、闘技場に向かう。
SAO時代からの相棒とは、一度もデュエルしたことはない。特にあの世界では個々の強さを比べるなんてどうでもよかった。
みんなが協力して地獄の世界を脱出する。
そんな、思いを胸に必死で戦ってきたのだ。きっと、あの世界の俺が今の世界のように軽いノリでデュエルを申し込まれたら「デュエルする暇があるなら、一レベルでも上げる努力をしたらどうだ?」と言ったかもしれない。
思えば、キリトはアスナに出会ってから随分と変わった。
あいつは、どんなことでもソロでやろうとしていた危なっかしい奴だった。
だが、アスナと出会ってからは自分よりも他人を優先し、自分が犠牲になっても構わないような感じだった。
キリトにとって、アスナは自分を変えてくれたとても大切な人なのだろう。
ユウキを除いて、俺が知る限りでは最強のプレイヤーだ。全力でぶつからなければ勝機はない。
俺は、月光刀とクラリティーを装備する。あと、十メートル歩けば闘技場の中に入れる。
大きく深呼吸した俺に後ろから、声がかけられた。
「ラテン」
「ん?・・・・ユウキか。どうしたんだ?」
「・・・・勝ってね。応援してる」
「なんでそんなに悲しそうなんだよ。デュエルなら普通の時でもできるだろ?」
「・・・・・」
ユウキは無言だった。いつも元気なユウキのこんな姿を見たらほかの奴らはびっくりするだろう。
でも、ユウキがこんな顔をするということは、何かがあるのかもしれない。
俺は、ユウキの頭に手をのせる。
「・・・・安心しろ。キリトに勝って、全力でお前の相手をしてやるよ」
「・・・・うん」
最後にユウキは笑顔になってくれた。やはり、ユウキには笑顔が似合う。
俺は、踵を返すと闘技場に歩いていく。
闘技場に入ると、盛大な歓声が包み込んだ。俺の先には、あの世界の英雄キリトがいる。背中には黒い剣の柄と、黄金の剣の柄が見える。
俺は、キリトから十メートルほど離れた位置で立ち止まると、デュエル申請をキリトに出す。
キリトがYESのボタンを押すとカウントダウンが始まった。
「キリト。手加減するつもりはないぜ」
「それはこっちの台詞だ」
キリトは、二本の剣を抜いた。
俺は、右手に月光刀、左手にクラリティーを持ち、半身をキリトに向け刀を胸の位置まで上げる。
刻々とデュエルのカウントダウンが過ぎていく。
そして、<デュエル>の文字が出現するとともに、俺とキリトは同時に地を蹴った。
ラテンよりの三人称
キリトが、地面すれすれで走り、ラテンの元にたどり着くと下げていた右手の剣を思い切り、たたきつける。
だが、ラテンは左の剣でそれを防ぐと右の刀で四連撃ソードスキル<スクエア・グリスター>を繰り出した。
キリトはそれを読んでいたようで、四連撃ソードスキル<バーチカル・スクエア>で相殺させる。
甲高い金属音とともに、二人は距離を開く。
キリトが相手になると、ソードスキルのごり押しは通用しない。手数は互角だが、斬撃速度はラテン、反応速度はキリトが少しばかり上回っている。
ラテンは地を蹴り、キリトとの距離を一気に縮めると八連撃スキルオーバーラップ<シェイプ・スクエア>を放った。
だが、キリトはその技を<バーチカル・スクエア>と<ホリゾンタル・スクエア>の組み合わせだと一瞬で見抜き、すべて防御すると右の剣で単発重攻撃<ヴォーパル・ストライク>を繰り出した。
「う……らあ!!」
シェイプ・スクエアは片手で行う技なので、ラテンがとっさに左の剣でキリトの一撃の軌道をずらすが、肩に掠りHPが少しばかり減少する。
だが、ラテンもこのままやられるわけではない。
体を回転させ、左の剣でキリトの太もも目掛けて剣を振る。
キリトは、とっさに少し下がるが、斬撃のあまりの速さに間に合わなく、一撃を受けHPが一割ほど減少する。
「くっ!・・・うおおおおお!!!」
「!?」
キリトは、斬撃を受けた瞬間思い切り、ラテンの懐にもぐりこむと左の剣でたたきつけて、そのままスターバーストストリームのような軌道の斬撃を次々と打ち込む。
そのスピードはソードスキル並のものだった。
ラテンは最初の一撃を右の刀で防ぐがはじかれ、右の剣の一撃を右腹部に受けた。
しかし、このままでは終わらない。
ラテンはすぐさま体勢を立て直すと、斬撃を繰り出す。
その場に、超高速の連続技が繰り広げられる。
二人の周囲には、甲高い金属音とともに様々なソードスキルの色彩が飛び散る。
お互いの連撃が弱ヒットしHPが徐々に減少し始めた。
それでもなお、キリトの斬撃のスピードがさらに上がり始める。おそらく、ソードスキルの速さを超えているだろう。
ラテンはだんだん防御中心になってくる。
「らあああああああ!!!!」
「くっ!!」
キリトはラテンの防御態勢を崩すと、スキルコネクトを発動する。
目にも留まらぬ速さの斬撃によりラテンのHPがどんどん減っていく。
そして、十六連撃目のヴォーパル・ストライクがラテンの胸に向かっていく。
これを受けたら、間違いなくHPが消し飛ぶだろう。
ラテンは大きく両目を見開き、キリトの片手剣の先端に焦点を合わせ、左手に全意識を集中させる。
ガキィィィィン!!
「!?」
白く、半透明な片手剣が宙に吹き飛んだ。
ラテンは左の剣で、ヴォーパル・ストライクを受け止めたのだ。限界に近いスピードの突きを、防いだということはラテンのスピードが限界を超えたことになる。
だが、ヴォーパル・ストライクの威力は高いためその衝撃で、ラテンが吹き飛んだ。
ラテンは何とか、刀を地面に突き刺し転倒を防いだ。
「・・・・・?」
キリトはてっきり、ディレイが発生している自分にすぐさま攻撃を仕掛けてくると思ったがラテンはそのまま無言で立ち上がり、刀を納刀していた。
ラテンは腰から、鞘を取り出し抜刀術の構えをとる。
キリトはスキルオーバーラップを使うと思っていたが、ラテンの鞘が赤色一色に輝きだしたので違うと悟った。
ラテンは大きく息を吐くと、思い切り地を蹴った。
キリトは防御態勢をとる。抜刀術だけなら、一撃を防げばカウンターをすることができる。
ラテンはとてつもなく速い抜刀術を繰り出した。キリトはギリギリそれに反応し左の剣で、その斬撃を防ぐが一瞬で左の剣が吹き飛ばされる。だがそのまま、キリトは右の剣でソードスキルを発動する。これが通ればキリトの勝ちだ。
しかし、ラテンは抜刀術の勢いを使ってその場で回転し始めた。刀の赤色はまだ消えていない。すなわち、まだ技の続きがあるということだ。
「うおおおおおおお!!!!」
「!?」
ラテンはそのまま、抜刀術よりも速い斬撃を繰り出した。もうその速さは、視認不可能だった。その斬撃は明らかに限界を超えている。
ラテンの斬撃はキリトの腹部を深くヒットする。
そして、二人の周囲に大爆発が起こった。それと同時に、デュエル終了のファンファーレが鳴り響く。
爆発による煙で、勝者はまだわからない。会場全体が固唾をのんで闘技場中央を見つめていた。
煙が晴れると、そこには黒い炎の塊とその隣に座り込んでいたラテンの姿があった。
その光景を見た瞬間、会場に盛大な歓声が巻き起こった。
また、中途半端なところで終わりにしました。なぜか、ラテンが限界速度を二回も越えとる(笑)
今回は三人称視点で戦闘シーンを描いてみました。どうだったでしょうか?読みやすかったでしょうか?
何故か主にキリト視点になっていたような気がします(笑)
そんなわけで、次回はユウキとの戦闘です。まだいちゃいちゃさせませんが、じきにさせますんで、これからもこの作品をよろしくお願いします!!