ソードアート・オンライン~神速の剣帝~   作:エンジ

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空いた時間を使って、書きました。
来週からはまた本格的に書きますので、よろしくお願いします。


第十話 笑顔

 

俺は、選手控室の中央の椅子にぽつりと座っていた。さきほどの闘技場とは裏腹に静寂がこの部屋を包んでいる。

キリトとのデュエル。

おそらく今まで生きていた中で、一番全力を出して戦っただろう。

結果は<勝利>に終わったものの、正直に言うと運がよかったのかもしれない。

キリトのスキルコネクトの最後の一撃である<ヴォーパル・ストライク>。

あのソードスキルを、クラリティーで防ぐことができたのは、キリトの剣尖が俺の左胸をとらえていたからだ。

もちろん、キリトは右手で繰り出したので、突きが相手の左胸を狙うのが最短距離であり、少しばかり早めに相手をとらえることができる。

だが、あの速さの斬撃になると右胸を狙おうが左胸を狙おうが、さほど変わらなかったはずだ。

つまり、キリトが仮に俺の右胸を狙っていたのなら、間違いなくキリトが勝っていたはずだ。だから<運が良かった>ということになる。

 

次はデュエルトーナメント決勝戦。

ネット放送局《MMOストリーム》が生中継で、放送することになっている。

俺は中学の中体連<剣道>の全国大会決勝戦以来の緊張を味わっていた。あの時は、どうやって緊張をほぐしていただろうか。

今の俺には思い出せそうもない。

 

次の相手は、おそらくこのALO内で最強と言ってもいいほどである闇妖精族の少女<ユウキ>。

反応速度はあのキリトをも凌駕する。

あの少女を見ていると、不思議とあの世界での自分を思い出す。あの世界の俺達と、今のユウキは何かが似ているのだ。

それが何かは判らない。

でもきっと、このデュエルを通して理解することができると思う。そして、キリトが言った言葉の意味も……。

控室にある時計を除くと、決勝戦開始五分前だった。

俺は控室を出て、闘技場までの廊下を歩き始める。

闘技場に近づくに連れて、何故か心臓の鼓動が収まっていく。そして、俺の体に新たな感情が生まれてくる。

いや。正確には再び出てきたと言ったほうがいいかもしれない。

 

―――楽しみ……か。

 

きっと、俺は強敵と戦えることを楽しみにしている。

しかし、それはキリトとはまた別の<楽しみ>のような気がする。心の底から湧いてくるこの感情。

自分の表情が柔らかくなっていることに気付く。

俺は闘技場入口の五メートルほど手前で、立ち止まる。そして、大きく両手で頬を叩く。

 

「よし、行きますか!」

 

大きな歓声を浴びながら、俺は闘技場中央に歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ラテンよりの三人称

 

「ラテン。ようやくデュエルできるね!」

 

「ああ。俺も楽しみにしてた」

 

ユウキは慣れた手つきで、システムウインドウを操作し始めると、すぐにラテンの目の前に、デュエル申し込み窓が出現する。

闘技場には、実況をしているMMOストリーム司会者の声と、観戦者の声援が響いていた。

ラテンは、<承諾>のボタンを押すと、刀を帯刀したまま抜刀術の構えをとる。

その動作と同時にユウキが高い音とともに、黒曜石の剣を抜き取った。

二十秒のカウントダウンが開始される。

 

「言っとくけど、女の子だからって手加減しないぜ?」

 

「手加減なんかしたら張り倒すからね!」

 

ユウキはにっこり笑ってみせると、ラテンはそれを苦笑いで返す。

カウントダウンが十秒を切ると、会場全体が残りのカウントダウンを唱和し始める。

それとは対照的に、ラテンの心は静まっていた。

 

「「「サンッ!…ニィッ!…イチッ!《ファァァン!》」」」

 

デュエル開始のファンファーレが闘技場に鳴り響いた。

 

[DUEL]という文字の出現とともに、ラテンは一瞬で十メートルの距離を詰めるとOSS<天地開闢>を繰り出した。水色の刀がユウキの右脇腹をとらえる。

 

カァァァン!

 

甲高い音とともに、ユウキはラテンの斬撃をいとも簡単にいなすと首もと目掛けて斬り上げる。

 

「……ッ!う…らァ!」

 

ラテンは瞬時に後ろの腰から、クラリティーを抜き取るとギリギリのタイミングでユウキの斬撃の軌道をずらす。

ユウキはすかさずバックステップをとると、中断に構えた。

 

「おいおい。なんであんな簡単に、パリィできるんだ?」

 

「ふふっ、教えないよ」

 

「無理やり口を割らせてやるさ!」

 

ラテンは思い切り地を蹴り、斬撃を繰り出していく。

手数ではラテンのほうが有利なため、打ち合えば必ずユウキに隙ができるはずだ。

だが、ユウキは片手剣一本だけだというのに、正確にラテンの斬撃をとらえ防いだり、いなしたりしている。

 

――――こいつは化け物かよ!?

 

実際に剣を交えると、改めてユウキの反応速度に舌を巻く。

観戦者から見れば、完全にラテンのほうが押しているように見えるが、実際のところ五分五分ぐらいだ。

ラテンは刀でユウキのカウンターを受け止めると、距離をとるためバックステップするが、ユウキは恐るべき速さで追いついてきた。

 

――――しまっt

 

「やあぁぁ!!」

 

ラテンは体勢を完全に崩していた。

そのタイミングをユウキが見逃すはずもなく、すかさずソードスキルを発動させる。

垂直四連撃<バーチカル・スクエア>。

ラテンはとっさに剣を逆手に持ち、交差させて防御するが、二発足にヒットしHPが二割ほど減る。

だが、速さならラテンも負けていない。

 

左足で踏ん張ると、そのまま地を蹴り、単発突進技OSS<レクトリニア・エッジ>を繰り出した。

ユウキにはコンマ何秒かのディレイが発生している。

ラテンはユウキの肩に目掛けて刀を振るった。

だが。

 

「はあぁぁぁ!!」

 

「…!?」

 

ユウキは高速で、その斬撃を防ぐ。

ユウキの反応速度には驚かされるばかりである。だが、おそい。

 

「おおおおお!!」

 

クラリティーが深紅に包まれる。

ラテンはそのまま、隙ができたユウキにソードスキルを繰り出す。

四連撃OSS<スクエア・グリスター>。

二発は防がれるが、次の二撃は絶対に<防御>不可能だろう。

ラテンは完全に決まったと思ったが、ユウキは瞬時に体を動かしラテンから離れることで、弱ヒットにした。ユウキのHPが一割ほど減る。

 

ラテンとユウキは、五メートルほど距離をとった。

ユウキの反応速度、斬撃速度、移動速度。どれも恐ろしいほどに速い。この速さで、ユウキがフェイントを使えば勝ち目はなくなるかもしれない。

 

「お前……強すぎだろ」

 

「そういうラテンは、速すぎだよ」

 

「そのお言葉、ありがたく頂戴するよ」

 

ユウキとラテンの顔から再び笑みが無くなる。

 

――――こうなったら、相打ち覚悟で使うか…。

 

ラテンは、思い切り地を蹴るとユウキに向かって突っ込む。

重単発突進技OSS<デモリッシュ・スラッシュ>。

ラテンの突き技を、ユウキは右にいなすが頬掠める。だが、ラテンの斬撃はまだ終わらない。

 

ラテンは、完全に意識を左手から右手に移し替える。

スキルコンビネーション八連撃OSS<シェイプ・スクエア>。

ユウキにラテンの高速斬撃が襲い掛かる。

しかし、ユウキは先ほどのラテンとキリトの試合を見ている。ということは、軌道が完全に読まれているということだ。

ユウキは、大きく目を見開き、八連撃すべてを防いだ。

そして、片手剣六連撃ソードスキル<スター・Q・プロミネンス>をカウンターとして繰り出す。

しかし、ラテンはさらに右手から左手に意識を移し替える。クラリティーが紫色に輝きだす。

スキルコネクト七連撃OSS<ダークネス・エンタイス>。

ラテンは六発を相殺させると、残りの一撃をユウキの太ももに斬りつける。

ユウキのHPは一割ほど減る。

 

ラテンとユウキには、同時にディレイが発生したがラテンのほうが少しばかり長いためユウキは反撃をする。

ユウキの斬撃を二発ほど受けてから、ラテンの硬直が解ける。

そのまま、激しい斬撃の応酬が繰り広げられる。

二人の周囲には、剣と剣がぶつかるたびになる、甲高い音とともに様々な色彩のソードスキルのエフェクトが飛び散る。

何度目かの、距離をとるころにはユウキのHPは五割ラテンのHPは六割ほどになっていた。お互いに全然ヒットさせていない。つまり、ほとんどが相殺だったのだ。

 

ラテンは、残り時間を確認するために視線を左上に向ける。

残り時間はすでに一分を切っていた。

おそらく、次の打ち合いが最後になるだろう。

ラテンは大きく深呼吸すると、ユウキを見据える。

対してユウキもまた気合を入れなおしたようだ。

 

「次で終わりだ、ユウキ」

 

「それはこっちの台詞だよ」

 

ラテンはユウキとの距離を一瞬で縮め、ユウキの懐へ入り込む。それは、驚くべき速さだった。そして、二本の剣が黄色に輝き始めた。

 

「うおおおおおおお!!!!」

 

―――スキルコンビネーション、二十一連撃OSS<ラスト・ジャッジメント>。

 

落雷の如く、超高速の斬撃が全方位からユウキを襲う。超高速の二十一連撃を片手剣一本で、防ぎきれるがない。

ユウキは<防ぐ>ことを捨て、すべての斬撃の軌道をずらすことしか考えていなかった。

ラテンの斬撃が弱ヒットを繰り返し、ユウキのHPがどんどん減っていく。

最後の一撃である<ヴォーパル・ストライク>が、ジェットエンジンのような音を立ててユウキに向かっていく。

だが、ユウキはその一撃の軌道をありえない速さでずらした。明らかに限界速度を超えている。

いや、その一撃だけではない。斬撃速度が急激に上がる、後半の十連撃からすでに限界速度を超えていたのだ。

 

ラテンの一撃は、ユウキの左わき腹に弱ヒットする。

ユウキのHPを確認すると、無情にも残り一割あるかないかくらい残っていた。

 

―――――うそ……だろ?

 

致命的なディレイが発生したラテンに、ユウキが反撃をする。黒曜石の剣が青紫色に輝きだした。

 

―――十一連撃OSS<マザーズ・ロザリオ>。

 

残念ながらラテンは、その斬撃を防ぐ手段はない。

息もつかせぬ、十連撃を見事にもらいHPバーが大きく減少した。最後の一撃を受けたら間違いなく、HPバーが消し飛ぶ。

マザーズ・ロザリオの最後の突きが、ラテンの胸に向かっていく。

 

その瞬間ラテンは、久しぶりの感覚を味わっていた。ほんの一瞬だけ、自分が自分でないという感覚。

まだディレイが続いているはずなのに、左腕が本能的に動き、いつの間にか逆手に持っていたクラリティーで、ユウキの一撃の軌道を完全に逸らした。

それと同時に、ラテンに意識が戻る。

 

「へ?」

 

「え?」

 

ユウキとラテンが同時に呟く。

何故かというと、ユウキは完全決まったと思い、全体重を乗せて突きを繰り出した(防ぐことは完全に不可能)。

しかし、その一撃の軌道をラテンが逸らしたため、勢いがそのままであり急停止することができない。

一方ラテンはというと、無意識に体が動いて軌道を逸らした瞬間意識が戻ったため、対処することができない。

つまり、今ユウキがラテンに体ごと突っ込んでいる状態になっている。

 

――ゴン!

――ファァァァン!

 

ラテンとユウキが、お互いに頭が激突したと同時にDUEL終了のファンファーレが闘技場に鳴り響いた。

それとともに、今までに聞いたことのないくらいの盛大な歓声が会場を包み込んだ。

一方ラテンとユウキはというと、ユウキがラテンの上に乗っかった状態でお互いにおでこに手を当てて悶絶していた。

 

「いったー!!!!」

 

「いってぇ!!!…………………ぇええええええええええええ!?」

 

ラテンは、おでこに手を当てながらDUELの結果を確認する。

ユウキのHPは相変わらず、一割あるかないかほど。

対してラテンのHPは、なかった。正確には、視認できるかどうかの量だ。

ラテンがポリゴン片になっていないということは、少なくともHPがまだ残っている。

しかし、あいにくユウキよりHPが少ない。

ということは、ユウキのHPのほうが多い=ラテンの負け。……………………ちーん。

 

まあ、終わったことをどうこう言っても仕方がない。

ラテンは何とか起き上がると、いまだに悶絶しているユウキに声をかける。

 

「…おい、大丈夫か?」

 

「………」

 

ユウキが無言の涙目で、ラテンを見上げる。相当痛かったらしい。だが、今は関係ない。

―――――何この可愛い生き物は……。

自然に速くなる鼓動をおさえながら、とりあえずユウキを起こす。

するとそこへ、スリーピングナイツのギルドメンバーたちが駆け寄ってきて、祝福の言葉をかけていた。

ユウキは、泣き笑いの表情だった。

―――もちろん涙の理由は、優勝したこともあるかもしれないが、一番の原因はあれだと思う……。

 

ラテンは、落ちていた<月光刀>と<クラリティー>を拾い、納めた。

ユウキのほうへ顔を向けると、こちらに笑顔を向けていた。

ラテンは笑顔で返すと静かに退場していく。

ユウキの笑顔が、どんな感情から来ているのか俺には分からない。

だが、これだけは言える。

 

―――今までで一番いい笑顔だったな。

 

ラテンはユウキの笑顔を思い浮かべながら、仲間の元へ歩き出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………一応言っとくけど、変態じゃないよ?

 

 




戦闘シーンは三人称のほうが書きやすいことを学びました。(≧▽≦)

というか、ユウキ、強すぎましたね(笑)
ラテンの攻撃をどんどんいなしていくという……。(笑)

ということで、閲覧していただきありがとうございます。
再度申し上げますが、次話の投稿は来週の金曜日か、土曜日になりそうです。
ご迷惑をおかけしてすいませんm(_ _)m

これからもこの作品をよろしくお願いします!!

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