本編へどうぞ!!
※大幅修正しました。内容が続いていませんがすぐに修正しますのでしばらくお待ちください。
久しぶりのプレイヤー設定画面は二年前とは少し異なっていたが、大方は同じであったため、慣れた手つきであらかじめ決めていた情報を入力していく。最後に〖OK〗を押せば世界は白に包まれた。
再び瞼を上げれば、目の前に広がっていたのは薄青い光に照らされた巨大な洞窟のようなところだった。洞窟とはいっても、本物の洞窟のように何もないわけではなく、地上はどちらかといえば中世の西洋を連想させるような街並みだった。
心もとない光が点々としているこの場所はどうやらラテンが選んだ〖インプ〗という種族のホームタウン的な所のようだ。行き交う人のほとんどが、プレイヤー設定画面で見た〖インプ〗の容姿に似ている。このような全体的に薄暗い場所でも鮮明に見て取ることができるのは〖インプ〗の特徴だ。
「へぇ~、よく創りこまれてるな」
周囲を見渡しながら数歩進んだところでラテンは琴音との約束を思い出した。
慌ててメインウインドウを開くために右手を縦に振るが、数秒待っても出現しない。眉をひそめてもう一度右手を縦に振るが、やはりメインウインドウは出現しなかった。
こうなったらそこら辺にいるプレイヤーにでも聞こうかと思い、足を踏み出すが頭の片隅で、ある可能性がよぎり再び立ち止まる。
そのまま今度は右手ではなく左手を縦に振った。すると、軽快なサウンドと共にラテンが求めていたメインウインドウが手前に出現する。
「なんだか、ヒースクリフになった気分だな……」
不意に七十五層でヒースクリフの正体を看破した時を思い出す。確かあの時にヒースクリフがラテンとキリト以外のプレイヤーを強制麻痺させたコマンドも左手で出したウインドウだったはずだ。
妙なことを覚えているもんだな、と苦笑しながらフレンド申請の項目へ移動する。入力欄で〖Kotone〗と打ってみれば、全く同じ名前を持ったプレイヤーが五人ほど出現する。
「……名前検索だとどうしてもこうなるよな。やっぱIDも聞いておけばよかった」
しかし、幸いなことにプレイヤーネームの横に各種族のマークが表示されており、〖シルフ〗のマークは一つしかない。
「本物の妹は、こいつだな」
シルフの〖Kotone〗をタップし、フレンド申請を飛ばす。これで向こう側が受諾してくれれば、フレンド欄に名前が載るだろう。そこであることを思いつく。
「そういえば和人も来てるんだよな……〖Kirito〗にも飛ばしておいた方がいいか?」
ラテンのプレイヤーネームが〖Raten〗であるため、すぐに気づいてくれるとは思うが、和人がこのゲームで〖Kirito〗というプレイヤーネームでダイブしているとは限らない。それに加え先ほどのように同じ名前のプレイヤーがいる可能性だってある。やはり現実で連絡を取り合って合流してからフレンド交換するべきであろう。
フレンド一覧からメインメニューへ戻り今度は自分のステータス画面を開く。確認したところで、初期数値であることは明白だが。
「ここをこうして…………って、え?」
目を擦って、ステータス画面をもう一度凝視する。
一番上にあるプレイヤーネームは、設定した通りラテンだ。隣にはインプのマークが表紙されている。その下に、HP、MPとRPGによくあるステータスが表示されており、それぞれ400、90となっている。ここまではばりばりの初期数値であり、疑問に思うことは一つもない。しかし、問題はその後に続く習得スキル欄だ。
完全な空白と思いきや、様々なスキルが列記されているのだ。《カタナ》や《武器防御》などのような戦闘系スキルから、《釣り》という生活系スキルまで一貫性なく表記されている。その横に表示されている熟練度も異常だ。
《釣り》以外のスキルがすべて1000に達しており、サービス開始から一年と少ししか経っていないにも関わらずこの数字は、バグ以外に考えられないだろう。あの世界でバカみたいに戦闘及び熟練度上げしていたラテンでさえ、ここに羅列されているスキルの熟練度を1000まで上げるのに一年と八か月ほどかかったのだ。
「このバグはひどすぎるだろ……GMに問い合わせてみるか」
メインメニューに戻りGMコールの欄を開く。そのまま〖GMコール〗と書かれたボタンを押そうとするが寸前で止めた。
「……待てよ。なんで俺が持っていたスキルとまったく同じなんだ?」
もう一度ステータス欄へ戻り、習得スキルを一つ一つ確認する。やはりラテンが持っていたスキルとまったく同じだった。《釣り》の熟練度でさえ全く同じ数値なのだ。偶然とは思えない。ただ、ラテンだけが持っていたスキル《神速》をはじめ、いくつかのスキルは失われていた。
「えーと……これはGMコールしたほうがいいのか?」
メインメニューへ戻って今度はアイテム欄をタップする。
「げっ」
そこには、文字化けした大量のアイテムがずっしりと並んでいた。何度も下へスクロールしても、ちゃんと表記されたアイテムが一つもない。タップしても反応がなく、使用できる気配がないため、すべて捨てるしかないだろう。
「……さよならベイビーちゃんたち……さよなら……俺の青春」
視界がにじみ、右手を震わせながらラテンは意を決して〖OK〗ボタンを押す。すると、何事もなかったように、羅列された文字化けアイテムたちが綺麗さっぱり消えた。
大きなため息をついて、メインウインドウを閉じる。終わったことをうだうだしていても仕方がない。今はコトネと合流することが最優先だ。
「っと……まだ時間はありそうだな」
琴音のパソコンで見たALOの全体簡略図では、シルフ領からインプ領までは相当な距離があったはずだ。装備を新調するほどの時間はあるだろう。
「金は……まあ流石になんか買えるくらいはあるだろ」
特に確認するわけでもなく、近くにいたインプの男性プレイヤーに声をかける。
「すいません、武具屋ってどこにありますか?」
「ええっと……あそこに見える大きな煙突が付いた家だよ。近くまで行けばすぐにわかるから」
「あそこですね。ありがとうございます」
「いやいや困ったときはお互い様だよ。見たところ君はビギナーみたいだし、初心者狩りには気を付けてね」
そう言い残して親切な男性プレイヤーは去っていった。その後ろ姿に一礼して、さっそく教えてもらった武具屋へ足を運んだ。
〖インカ武具店〗と書かれた看板を確認して店の中へ入ってみれば、たくさんの武器と防具がラテンを出迎えてくれた。どれもこれも面白そうな武器ばかりで、思わず手に取って眺めてしまう。いついかなる状況でもやはり武具屋に入るのは楽しい。
手に取る武器一つ一つに歓声を上げること数十分。結局ラテンが手に取ったのはカタナだった。
最初は新しく始めるにあたって、あまり使ったことのない武器を使ってみたいと考えていたのだが、この世界に来た目的はアスナの救出であり、ALOを楽しむためではない。本気で戦うためにはやはり、あの世界で散々使い慣れた武器――カタナが必要だろう。
「と言ってもなあ……」
目の前に空いてあるいくつかのカタナを手に取ってみる。この世界ではカタナがあまり人気がないのか、種類が他の武器と比べて極端に少なく、パラメータを見てみても高くはない。
「まあ確かに『飛ぶ』ことができるこの世界ではあまり利点ないけどさ……」
カタナは、両手剣には及ばないもののそれに次ぐほどの火力を出せることに加え、機動力が高いことが利点だ。しかしそれはSAOのような『飛ぶ』ことができないRPG限定の話だ。
『飛ぶ』ことができるこの世界では、地上戦だけではなく空中戦も少なからずあるだろう。その空中戦ではおそらく機動性がカギになる。確かにカタナも機動性は高いが、扱いやすい片手剣や短剣には劣る。地上戦は地上戦で『種族』が設定されている以上、一対一で戦う機会などデュエル以外にはそうないはずだ。集団戦ならば、半端な特徴しかない武器よりも、何かに特化した武器のほうが作戦を立てやすいはずだ。最後の望みであるカッコよさでさえも、カタナに似た片手剣がある。
「よくよく考えたらなんで俺、カタナ使ってたんだろ……」
一つため息をつきながら手に取った刀を元の場所に戻し、奥の方を手で探ってみる。いいものというのは案外奥の方で眠っているものだ。
何度か弄っていると、不意に小指がひものような何かに触れた。何故かそれが気になってしまい、もう一度右奥側を弄ってみると今度はしっかりと紐のようなものを掴むことができた。
「なんだ、これ」
とりあえず引っ張って正体を確かめようとするが、思いのほか固く片手では取れそうもない。どうやら何かに挟まっているらしい。
今度は左手も奥に突っ込んで紐を掴む。さすがに力いっぱい引っ張ったところで商品を支えている柱が壊れることはないだろう。
「んぎぎぎ……」
歯を食いしばって紐を引っ張る。
奥に挟まっている何かは、ラテンの思いに応えるかのように少しずつ動く。それが数秒間続いた後、挟まっていた何かが勢いよく抜け、ラテンは盛大に尻餅をついた。その勢いで後ろの棚に頭をぶつけ、二重に痛い。
「かーっ…………これは?」
右手でつかんでいる紐を辿ってみれば、細長い形をしたものに布袋が巻かれている。どうやらこの紐は、その布袋を縛るための物だったらしい。
紐を引いてやれば、最初に布袋から顔をのぞかせたのは、藍色の柄巻だった。ラテンが引っ張り出したものの正体は、刀だったらしい。
徐々に見ていくのもじれったいので勢いよく布袋をはぎ取る。
一見すれば藍色を基調とした刀だ。違うことといえば、ほかの商品よりもやや雰囲気があることくらいだろうか。
今度は刀身を見るべく柄に手をかける。そこでようやくこの刀には他の刀との絶対的な違いがあるとに気付いた
「鍔が……ねぇ」
本来、刀に付いている鍔は手を守るための物であり、名前がついている通り《鍔迫り合い》をするときには必須と言えるものだ。確かに鍔がない分刀は軽くなり扱いやすくはなるが、それは現実世界での話だ。ゲーム内でそんな微妙な差をつけているとは思えないし、このALOはPK推奨で対人戦が多いため、鍔がない刀はあまりありがたくはない。
「せっかく良さげな刀を見つけたのに……」
大きなため息をつきながら掘り出し物を戻そうとしたところ、不意に横から声がかかる。
『おお! お主、その刀を見つけてくれたのか!』
顔を向ければ、白いひげを生やした年配の男性が嬉しそうにこちらを見ていた。店の看板にはNPCと表記されていたため、ここにはNPCの店主しかいないはずなのだが、声をかけられたということはクエストが発生したということだろうか。
数秒間店主のほうを見つめていれば、店主の頭の上にエクスクラメーション・マークが出現する。
とりあえず、店主の元へ行き話しかける。
「ええと……この刀を返します……?」
この手のクエストは正しいもしくはそれに似たニュアンスの言葉で話しかけなければ進行しない。
三秒ほど待つと、店主がより一層笑顔になって口を開いた。
『いいや、それはお主に差し上げよう。大切に使ってやってくれ』
どうやら正解だったらしい。店主の頭の上に〖店主の宝物 CLEAR〗という文字とエフェクトが出現し、目の前に小さなウインドウが表示される。
「たまたま見つけただけなんだけど……」
少々罪悪感を感じながらウインドウに視線を移す。そこには〖湖上ノ月x1を入手しました〗と表示されていた。どうやらこの刀の名前は《湖上ノ月》らしい。
試しに鞘から抜いてみれば、鋭い刃が露わになった。刀身は淡い水色で、その名の通り湖上の月のような美しさがある。
パラメータ画面を開くとラテンは目を見開いた。何故ならすべてにおいて、この店のどの品物よりも上だからだ。相当なレア武器であることは明白だろう。
「……先ほどのご無礼お許しください」
殿様に頭を上げるかの如く、湖上ノ月に頭を下げた。そして丁寧に納刀すると、手に持ったまま今度は防具の場所へと足を運ぶ。
防具とはいっても欲しいのは甲冑のような重装備ではない。どちらかと言えばただの衣服だ。ラテン自身、機動性を最も重視しているため、できるだけ動きやすく軽い服のほうが好きなのだ。
店内を回ること数分。ふとあるコートのような服が目に留まる。白を基調とし、所々黒でデザインされている。どこはかとなくラテンがSAO時代に着ていた服と似ていたため、自然と手に取り、適当にズボン、黒いベルト型の剣帯を取って店主の元へ向かう。
持っていた金額に一瞬固まったが、とりあえず無事に支払いを済ませ店を出る。どう考えても初期金額では買えない服だったが、その場合はコトネに支払ってもらうため大丈夫だ。もちろんその借りは、家の近場にある『ケーキ食べ放題』の店で返すことになるが。
外に出てさっそく買ったものを装備する。SAOの時に着ていたものとは全くの別物だというのに、妙に体に馴染む。
「おお、こりゃいいぞ!」
買ったばかりの服を撫でてみれば、妙に肌触りが良く、可能ならば数時間でも撫でていたいくらいだ。
一人で奇妙な行動をしているラテンに後ろから声がかかる。
「何やってるの、お兄ちゃん……」
振り向けば金髪をワンサイドアップで結んでいる女性プレイヤーが立っていたが、彼女の「お兄ちゃん」という言葉で誰かがわかった。
「よう、コトネ。随分と遅い到着だな」
「あのねぇ……」
コトネは呆れた様子で口を開く。
「シルフ領からインプ領までどんだけ距離があると思ってるの……? サラマンダーに知り合いがいなかったらもう二、三倍くらいかかるんだからね!?」
「まじかよ!? 思った以上に距離があるのか……」
抜け道を使わなかった場合、休みなしでシルフ領からインプ領まで約四時間。そうなるとキリトとの早めの合流は厳しいだろう。キリト自身一刻も早くALOの中心地でそびえ立つ世界樹の元へたどり着きたいはずだ。その場合、世界樹の根元にある《央都アルン》で合流したほうがよさそうだ。
「んじゃあ早速レクチャー頼むわ」
「それは別にいいんだけど……お兄ちゃん、なんでそんなに急いでるの?」
「え、そんなに急いでるように見える?」
自分では気づかなかったが、表情にでも出ていたのだろうか。
「まあいいや。じゃあフィールドに行こ!」
インプ領を出てから数分。周りが岩ばかりの所へラテンは連れてこられた。
「今から、コトネ先生のレクチャーを始めます!」
「はーい、お願いしまーす」
いきなり保育園もしくは幼稚園の先生のように振る舞い始めたコトネに、合わせるように返事をする。
「はい、いい返事ですね! ではまずはあそこにいるモンスターを――」
「すいませーん。その行程飛ばしてもいいですかー?」
モンスターを倒すことぐらいは流石にレクチャーされなくても大丈夫だろう。一番重要なのは、この世界で最も魅力的な『飛ぶ』ことについてだ。
「えー……じゃあ左手を立てて何かを握るような形作ってー」
「急にやる気がなくなったな!?」
とりあえず言われた通り左手を立てて何かを握るように形を作る。すると突然、左手にジョイスティック状のコントローラーらしきオブジェクトが出現した。背中には紫色の羽が出現する。
「なんだこれ」
「それは補助コントローラーって言ってね、手前に引くと上昇、押し倒すと下降、左右で旋回、ボタンを押せば加速、離すと減速だよー」
「引くと上昇?」
言われた通り手前に強く引いてみる。
すると隣にいたコトネが慌てて口を開いた。
「ああっ、そんな思い切り引いたら……」
「え? ――ぎゃあああああああああああああ!!」
発射されたミサイルの如く、急激に上昇したラテンは発狂しながら今度は強めにスティックを押し倒す。すると、上昇した時とほぼ同じくらいの速さで下降し始めた。
「ぎゃああああああああああああああああ!! ――ぎゃん!!」
強く地面に叩き付けられ、体が思うように動かない。
「ちょっと、大丈夫!?」
ふと隣でコトネが何かを謎の言語で詠唱しはじめ、それが終わるとラテンの体を黄緑色の光が包み込んだ。視界の左上に映る四分の一ほど減ったHPバーが少しずつ回復していった。それに伴い、体が少し軽くなる。
「いやあ助かったわ」
「助かったわ、じゃないでしょ! 下手したら即死だってあり得るからね!」
笑いながら頭を掻くラテンに、コトネはぷりぷりと怒る。それをなだめながら、左手のコントローラーに視線をやると、とある疑問が浮かび上がった。
「なあ、ALOのプレイヤーってみんなこれを使って飛んでんの?」
「ううん。補助コントローラーになれた人は基本的にもう一つの方法で飛んでるよ」
「それは?」
さすがに補助コントローラーを左手に持って戦うなんてできるわけがない。戦闘よりも補助コントローラーの操作のほうに集中してしまいそうだ。
「えーとね。ここ、わかる?」
「ああ」
突然ラテンの背後に回り込んだコトネは肩甲骨に手を当てる。
「この肩甲骨から仮想の骨と筋肉が伸びてることをイメージして動かしてみて」
「了解」
目を閉じ、肩甲骨へ意識を集中させる。仮想の骨と筋肉が伸びている。何ともわかりやすい例えだ。
「おおっ、そうそう! そんな感じそんな感じ! じゃあ今度は思い切って肩と背中の筋肉を動かして、羽が連動する感覚を覚えて!」
「なるほどね」
最初は片に力を入れていたため羽が小さく震えただけだったが、思いのほか軽い力でも羽を動かすことができるらしい。
何分かかけて羽と筋肉の動きが連動するのに慣れると、今度は『飛ぶ』イメージをする。
「すごいすごい! お兄ちゃんセンスあるね!」
少しずつ宙に浮き始めたラテンの後ろでコトネが小さく拍手をしている。
「これ、ちょっと難しいな」
「大丈夫、私が付いてるから」
すぐ隣へ飛んできた琴音は嬉しそうに言った。
それからコトネにコツを教えてもらいながら飛行練習を始めて数十分。ようやく自分の思い通りに飛ぶことができるようになった。
「ありがとうなコトネ。本当に助かった」
「まあダメな兄を持つ妹として当然のことをしたまでですよ」
「言いやがったなこの野郎」
ふふーんと胸を張ってドヤ顔をしている妹の無防備な脇腹に手を入れてコチョコチョ攻撃をする。
「あ、ちょ――あはははははははは、やめっ、あはははははははは!!」
「ほら、言い直しなさいな。『私は兄を尊敬しています』って、ほら、ほら」
「いや、っ、はははははは、わ、わかっ――あははははははは!!」
コトネの息が上がってきたのに気づき流石にコチョコチョ攻撃を止める。限界まで攻撃すれば鉄拳が返ってくるからだ。
ラテンから解放されたコトネは大きく肩を揺らしながら、息を整えている。
「仕方がない。今回は許してやろう」
「はあ、はあ……絶対にケーキ奢らすからね」
ラテンを睨みつけてからもう一度大きく深呼吸したコトネは、再び口を開く。
「で、レクチャーは終わったけど、どうする?」
「そうだなぁ……お前、まだしばらく時間ある?」
「まああるけど……やりたいことでもあるの?」
ラテンがコトネに頼んだのはレクチャーまでだったのだが、この際コトネに世界樹まで案内してもらった方がいいのかもしれない。
「本当だったら失われた二年間分の時間を埋めたいところだけど」
「……は?」
「冗談だって」
家族として結構大切なことを言った気がしたような気がするのだが、「何言ってんのこいつ」的な視線を向けられては、こちらが折れるしかない。
「……世界樹に、連れてってくれないか?」
「え? なんでまた世界樹?」
「まあ、ちょっと色々な」
コトネはラテンの次の言葉を待っているようだった。しかし、コトネの期待には応えることができない。確信があるわけではないが、今回のアスナ救出作戦はどうも嫌な予感がするのだ。SAOのようなことが起こるとは思わないが、コトネのことだからきっと本当のことを言えばラテンたちについていこうとするだろう。
もしその嫌な予感が的中してしまったら? コトネが危険な目にあったら? 大切な家族を傷つけるわけにはいかない。
いつまでも口を閉ざすラテンに痺れを切らしたのか、コトネはため息を一つついた。
「……わかった。とりあえず世界樹には連れて行ってあげる」
「ありがとうな」
くしゃくしゃっとコトネの頭を撫でてやるが、ラテンが真実を言わなかったことが相当不服だったのか、コトネはぶすっとした表情でインプ領へ戻っていく。
その後ろを慌ててついていけば、前を向いたままコトネが口を開いた。
「今日はもう遅いから明日出発ね。何時からにする?」
「そうだなあ……あれ、お前学校は?」
「今は自由登校。受験だからねー」
「ああなるほどね……って受験!?」
さもごく自然な感じで返されたので一瞬流しかけたが、どうにか引き寄せることができた。
「受験ってお前……俺が言うのもなんだけど大丈夫なのか?」
コトネはちらっとこちらを一瞥した後、地上に降り立ちインプ領に歩きながら口を開く。
「まあとりあえず志望校は大丈夫かな。じゃなかったらゲームなんてしないよ」
「だよなあ」
とりあえずは安心したが、妹が受験シーズンであることを知った手前、先ほど言いそびれた時間を言いづらい。ここはもう、早めに《央都アルン》へ到着するしかないだろう。
「で、時間はどうするの?」
「……午後二時くらいから、でどうだ?」
「おっけー。じゃあ今日はもう落ちようか」
そう言いながらコトネは宿屋に入っていく。ラテンもその後を着いていこうとしたが、入口でコトネが何かを思い出したかのように振り返った。
「自分の種族の領内だとどこでもログアウトできるよ。ただ私みたいに別種族とか、フィールドとかに出ると、アバターがその場に残っちゃうから気を付けてね」
「なるほどね」
「じゃあ」と宿屋に入っっていくコトネを見送って、ラテンは左手を縦に振りかざした。メインメニューからログアウト欄へタップし、ログアウトのボタンを押す。
「そういえば、確認してなかったっけな」
苦笑しながらラテンは〖OK〗を押した。
戦闘シーンが全くてかない・・・・。
申し訳ありません!
次回は書きたいと思っています!
これからもよろしくお願いします!!