レベル1のわんこプレイヤー   作:わんこ

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ユニークな職業

 

 

 

 

 

 リュカオーンは、呪いをつけることがある。

 それは、いずれ己が食べるべき獲物と見定めたからこそのマーキング。

 それは聖女の力で取れることの出来るもの。

 

 滅多にないが、それでもシャンフロのプレイヤーは過去に何人かがリュカオーンの呪いを受けた。

 その上で職業変更へ至るほどの何かが起きた人はいるのかどうか。

 

 

「……シャンフロって発売されてかなり経ったはずだよね?」

 

 

 いくつか調べてみた結果、私以外に職業『影法師(シャドウサーヴァント)』はいなかった。

 闇の石に関してもそう。あれはつまり隠し職業へ行くためのものであり、そのきっかけとなるのがリュカオーンだったと……。

 

 あんなの売ってた商人って一体何者なんだろうか。

 もし会うことができたらぶん殴るとして……やばいのは職業だけではない。

 呪いとなった『リュカオーンの(ぶんしん)』もやばい。

 

 説明文みたけどあれらはナーフされるべき案件。

 

 

職業:影法師(シャドウサーヴァント)

別名、ネクロマンサー。退治したモンスターを使役し、そのものの能力、経験値、スキルを条件付きで付与可能。一日に一体の使役が可能となる。

いつしか、プレイヤーが破棄したモンスターは影となり再び襲い来るだろう。夜道には気を付けろ。

 

 

・リュカオーンの(ぶんしん)

それはかつて、与えられるはずだった奮起の兆し。

リュカオーンの呪いが石に吸収され、破壊されたことによりその力はプレイヤーに付与された。リュカオーンが遊び、それを許す限り影の力を行使するに至る。プレイヤーは職業を強制的に影法師(シャドウサーヴァント)と至る。

プレイヤーの経験値及びスキルはリュカオーンへ付与される。呪いの変異による代価としてプレイヤーのレベルは初期値となる。

リュカオーンの分身よ。内部より喰われるまでに、その意志よ奮起せよ。

 

 

 

 所々に怖いのが並んでるんですよねぇ!

 つまりこれ、キャラロストになるかもしれない職業と呪いじゃんか。

 ユニークモンスターの分身になったってことでしょ?

 だからレベルがリュカオーンに奪われて、かつリュカオーンに至る可能性が大きいってことでしょ?

 

 どう足掻いても詰み案件じゃん!

 

 

 レベル1でどうやって先へ行けばいいのか。あと聖女ちゃんの力でこれ解決する問題なのか。

 というか聖女ちゃんってどっかのギルドが守ってたよね?

 つまり聖女ちゃんに会うにはギルドの誰かに話さないといけないってことだよね?

 

 ユニーク職業を話すだなんて目立つ行為をした場合、リュカオーンの分身と知られたらアウトでは?

 

 

「……いや、シャンフロがクソゲーに染まるはずはない。何処かに突破口があるはず。でもなんかこう、ムカつく! 息抜きになれないのムカつく!」

 

「どうした瑠璃ぃ、何だよそのアホ面は」

 

 

 騒がしくしてたせいか、ドア開けっぱにしてたので廊下から訝しげな様子で私を見てる兄がいた。

 お兄ちゃんあれ徹夜明けかな。あのクレイジードリンクの効果が切れた時の顔してる。

 

 ひとまずアホ面と言われたので喧嘩売られてると判断しよう。

 

 

「いろいろあってNPC天誅しようか悩んでるだけだよフェアクソ未だにクリア出来てなくて徹夜してるアホ面お兄ちゃん」

 

「残念! フェアクソならラスボス一歩手前まで来ててクリアまで秒読み。……ってか、NPC? 幕末にやべえのいたか?」

 

「シャンフロの話だよ。お兄ちゃんもシャンフロやろうよ」

 

「クソゲーじゃねえ神ゲーはご遠慮します。……っとそうだ、瑠璃。フェアクソの息抜きにお前が作った試作ゲームやったぞ」

 

「えっ、マジで!? あれだよねガンハザZじゃない方の鬼ごっこのやつだよね? ……ど、どうだったの?」

 

「フェアクソよりキャラクターのクソさは劣るが、まあまあ良きクソゲーだな。特に武器を作る際のヒロインの挙動と、ラスボスを倒す時に関節があり得ねえほど曲がるバグり方が便秘みたいだったぜ」

 

「クソゲー作るためにゲーム作ってる訳じゃないのよお兄ちゃんの馬鹿ぁ!」

 

「あっ、やめろ馬鹿! あんま叫ぶと瑠美がまた──」

 

「お兄ちゃん! また瑠璃ちゃん泣かせたの!?」

 

「ちげえわ!」

 

 

 私が小学生であるからか、若干過保護なお姉ちゃんによる仁義なき喧嘩が背後にて起きたが無視。

 

 クソゲー作りたいわけじゃないのにクソゲー言ってるのが悪い。

 いやそりゃあデバッグ済ませたのにバグるのも挙動おかしいのも機材足りてないだけだから、もっとお金かけたら神ゲーが出来るはずなのよ……!

 

 というかそもそもネットに放流した私の作り上げたVRソフトはなかなかに売れてるんだし、スワローズ名乗る会社にてある程度作ってから任せたからクソゲーじゃなくなるはず!

 

 

「次はお兄ちゃん得意の格ゲーで勝負してやる」

 

 

 そんなにクソゲー評価なら本物のクソゲーを作ってやろうじゃないか!

 便秘みたいだったっていうなら隠しコマンド搭載しまくりのパンツゲー!

 

 野球拳と格闘技混ぜたクソゲーにしてやる!!

 

 

「瑠璃。お母さんがゲーム創作禁止って言われてるの忘れた?」

 

「あっ……」

 

 

 とりあえずシャンフロやろう。

 そんでリュカオーンを脳天から天誅してぶっ飛ばすんだ。

 

 ついでに闇の石を売って面倒なことしやがった商人も天誅する。

 

 

 

「というわけでおはようファステイア! こなくそレベルワン!!」

 

 

 

 ゲームを起動させ、リルとして目が覚めたら宿屋の中。あの時リスポーンしなかったら二つ目の町に着けたのに!!

 

 レベルだって頑張って上げたのに!!

 

 

 そうやって苛立っていたら気づいた。

 

 

 

 

 

「んあぇ」

 

 

 

 不意に下を見て寒気がした。私の影が蠢いていたのだ。

 

 

 轟いてるというか、動いてるというか?

 ホラゲー並みの怖さはあったけど、しばらくしても影が襲ってこないのを見て、大丈夫と判断。

 

 影が影じゃないということはすなわちリュカオーンの影! つまり敵!

 

 ────というわけで即座に右ストレートを発動させて床を破壊。宿屋の出禁が脳裏をちらつくけど仕方ない。

 

 しかし私の影から飛び出したのはリュカオーンではなく、片腕のヴォーパルバニーであった。

 

 死んだと思っていた子。

 あの時、頼もしくも絆を感じていた仲間。リュカオーンに共に食べられたフレンズ。

 

 

「……え、何で真っ黒なの?」

 

 

 なんか日焼けした?

 

 盛大に舌打ちしてきた兎。こいつ無口なわりに態度が悪い。

 

 あーっと、そういえば使い魔になってたんだっけ?

 ステータス画面を確認すれば、いいか。襲ってこないし。

 

 

使い魔

・片腕のヴォーパルバニー(名無し)

影法師より捕縛された影。ご主人への殺意は高い。使役を怠れば殺しにかかるだろう目でお前を見ている。

 

 

「ひえっ」

 

 

 そりゃあ態度が悪くなるのは当然ですよねぇ!

 私が腕斬った時の恨みがまだ残ってるのなら当然舌打ちぐらいはしますよねぇ!!

 

 リュカオーンにやられる前は町まで追いかけて来てたもんね。そのぐらいの執念とガッツはあると見た。

 でも幕末はもっとヤバイからこれぐらいでビビる私じゃないよ。

 

 えーっと、つまり影だから真っ黒なのか。というか何で影?

 捕縛ってリュカオーンがやったの?

 

 いろいろと疑問はあるが、今はとにかく知ることが大事だ。

 

 職業変異による呪いでレベル1から不動となった私に残された戦略は使役すること。つまり殺意なんざ気にせずポケットなモンスターのごとく育てるのが大事なはずだ。

 

 説明より下を見ればヴォーパルバニーの基礎ステータスが見れたが、レベル25と微妙に高かった。あと暗殺、即殺用の攻撃スキルが多いように感じる。

 

 

「名前つけれるみたいだし、片腕のーっとかよりいいよね……ラビット、バニー……良し。お前は今日からラピンで!」

 

 

 盛大に舌打ちされたし、包丁をこちらに向けてきたんだけど、こんな感じで使役って出来るの?

 

 

 

 

 

 速報、ラピン氏暗殺者の素質あり。

 スピード重視で動きたいけど初期値でクソザコな私に合わせてなのか、ラピンが仕方なく周囲のモンスターの急所を包丁で切っていく。

 

 そのスピードたるや早業である。職人かこいつは?

 

 

『ゴブリンが使い魔となりました』

『ゴブリン二体目が使い魔となりました』

『ゴブリン三体目が────』

 

 

 ラピンが倒すごとに増える使い魔。ゴブリンが沢山いても使役する時は一体のみだから意味ないんだけどね。

 

 とにかく狩り尽くしそうな勢いのラピンにドン引きしつつ、「流石は遭遇レア度高めのヴォーパルバニー、いよっ! 職人気質!」と褒めたら満更でもない顔してたので懐かせるためにこれから褒め殺し作戦します。あと鍛冶屋に行かなきゃね。

 

 そろそろエリアボス倒せそうだし、町を探索してラピンの懐かせ度を上げよう。

 というかラピン先生のおかげで私何もしてないや。これゲームしてるといえる?

 

 

 ……あっ、倒した。

 

 

 

『片腕のヴォーパルバニー(ラピン)のレベルが上がります』

『ゴブリンのレベルが上がります』

『ゴブリン二体目のレベルが上がります』

『ゴブリン三体目の────』

 

 

 どうやら使い魔全員のレベルが上がるらしい。私は上がらないし、リュカオーンに経験値喰われるけどさ!

 

 

 

『貪食の大蛇が使い魔となりました』

 

 

 

「うぇっ!?」

 

 

 

 エリアボスも使い魔に出来んの!?

 

 

 

 




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