レベル1のわんこプレイヤー   作:わんこ

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残念ながら貴女は呪われました!

 

 

 

 

「やっぱりチートすぎる能力だよね。これライブラリに協力してもらう方が吉? いやでもリュカオーン狙ってる奴らにバレたら暗殺案件では……」

 

 

 エリアボス仲間に出来るとは本当に意味が分からず、ログアウトして掲示板とかシャンフロ攻略サイトとか調べるけど何も書かれていない。

 つまりあれは、まだ見つかってないユニークってこと。

 

 

「よっしゃぁぁ!! ついにフェアクソクリアしたぞぉぉ!!」

 

「うわっ、びっくりした!」

 

 

 

 隣室にいるお兄ちゃんの歓喜の雄叫びが響いた。

 そのせいで手元が狂ってシャンフロについて調べてたデータが全部吹き飛んだが、なんとか持ち直し息をつく。

 

 

「……シャンフロやるか」

 

 

 ネットで調べても分からないし、分からないならここでいても仕方ない。

 

 ゲームで分からないならゲームをするべきだ。

 でもなぁ……。

 

 

「これ絶対にデメリットあるでしょ……」

 

 

 ゲームに戻ってから考えるは検証のみ。

 ラピンを影に戻し、1日経ってから貪食の大蛇を呼んでみせたのだ。流石にエリアボスを使い魔にするのはチート過ぎる。弱体化した状態で使役することになるだろうと。

 

 しかし実際呼び出してからのステータス確認と、貪食の大蛇が出てくる最初と第二の町までに入った森の中で検証してみて理解する。

 ────身体の大きさ、狂暴さ、厄介な毒攻撃など全てが変わらず私の思うがままに使役することが出来ていたのだ。

 

 流石にこれやばくないですか的なお気持ちメールをシャンフロ作った会社に送っておく。

 それと、いろいろと調べてみても影法師の職業は未だに見つからない。

 何かデメリットがあるなら職業をさっさと変えたいけど『影が再び襲い来る』って文字からして安易に変更するのも怖いんだよねぇ。うーん……。

 

 

 

「さてと、貪食の大蛇くん……蛇くんでいいか。森の中でたくさんモンスターを狩ってくれたおかげでゴブリンの群れとウォーパルバニーが五匹ずつ仲間になったけど、この子達を一気に出せる訳じゃないしなぁ」

 

 

 なんなら仲間が多くなるごとに入ってくる経験値が少なくなってる気がする。

 

 全部仲間にされるのも困りものだけど、破棄したらどうなるかな?

 

 一応攻撃されてもいいように警戒しつつ、ゴブリンを一体選んで破棄してみる。

 足元の影にいたであろうゴブリンは、一瞬だけ表に出てきたと思ったら、私を睨んで消えてしまった。

 二体召喚できないから、蛇君を出してるのにゴブリンが出てきた時に焦ったけど、これは仕様なのかそれともゴブリンの死ぬ前の最後の抵抗か。

 

 お前のせいだといわんばかりの目で見て、不意に全てが黒く染まる。

 

 まるで綿菓子が水に溶けて消えるがごとく、真っ黒だった身体がデロリと私の足元に吸収されたのだ。

 

 

『ゴブリン一体が影へ喰われました』

『今まで会得された経験値が全使い魔へ付与されました』

 

 

『リュカオーンの影が薄まりました』

 

 

 

 倒したら経験値が貰えて、使い魔になってから破棄するとその経験値が貰えるってことかな。

 

 ────なんか気になる文章なんだけど、影が薄まったってどういうこと?

 

 

「影を薄め続ければいいわけ? どう思うよ蛇君」

 

 

 蛇君の方を見ると、困ったような顔で私を見ている。

 そうして一度鳴いて、影に尻尾をツンツンしてきた。

 

 

 

『夜襲のリュカオーンより「呪いの行使」が宣言されました』

 

 

「はい?」

 

 

 

『168時間の間に一度、「リュカオーンの(ぶんしん)」へ変質します』

『プレイヤー「リル」の身体が夜襲のリュカオーンへと変質した場合、夜の間は動くことが出来ません』

 

 

 

 どういうことなの……!?

 

 

「蛇君きみ何かした!?」

 

「きゅるっ?」

 

 

 きみエリアボスのくせに鳴き声可愛いな!?

 いや待て待て。落ち着け。

 

 ちょっとこれやばいかもしれないんだから冷静になれ。

 

 

 ステータス画面に出てくる赤文字のタイムリミット。ゴブリンを破棄したら出てきたからもう一度やったらより最悪になるかと試すと何も出てこず、ゴブリンから恨みのこもった目で睨まれて、経験値だけが貰えたのみ。

 

 まあ私の経験値はリュカオーンに奪われるからずーっとレベル1なんですけどね!

 

 蛇君に尻尾で影をツンツンしてもらったけど、意味なし。

 

 

 つまり先程のは偶然重なったユニークイベントであったということ。

 ユニークスキルのデメリットが今発動したということか。

 

 

 とにかくだ。

 リュカオーンの影というスキルが悪さしているならどうにかしてこれを放棄しなければならない。

 ううーん。本当こういうの面倒なんだけどなぁ。

 

 

 

「検証に行きますかぁ……」

 

 

 

 うん、何かこういう、どうしようもない状況下でいつ自分が殺されるのかと思うとゾクゾクするわ。

 

 自分に脅威が来るけど何もできない系のホラーゲーム作るのも面白そうだし、また今度やってみようかな?

 本格的にケイ先輩がやってくれそうな対戦ゲームを作るのはもう少しゲーム作りに慣れてからにしたいし。

 

 

 

 

 

 

 町中で歩き回ってNPC限定で話を聞いてみたけど収穫無し。

 影というか、黒い幽霊的な噂は聞く程度。それは別のクエストだったので今は止めとく。

 

 プレイヤーには話しかけるつもりはなかった。もちろんライブラリ関係者にも。

 

 なんせ私しかないオンリーワンなユニーク職業だからね。

 情報公開するならもう少し探ってからがいいからね。

 特に闇の石が完全に罠だと教えてくれなかったあのクソ商人を殴るまでは!

 

 

「うーん、昨日に引き続き何も無しかぁ」

 

 

 1日、2日とかけて探ったが何も出てこない。

 ついでにいつリュカオーンが私に悪さするのかとビクビクしていたが何も無し。

 

 現在月明かりが全く無い深夜過ぎ。セカンディルから抜けてサードレマへ向かう途中の地底の樹海にいた。

 夜が危ないみたいだったからあえて深夜のお散歩してみたけど、モンスターが襲いかかる以外何もない。

 

 そのモンスターもラピンの手で狩られ、使い魔となって影が増えた。

 

 

 

「ねえどう思うよラピンくん」

 

 

 

 鼻で笑ってきたラピンにちょっとだけムカついて、頭を強く撫でてやった。

 嫌そうにしてたけど人参をあげれば何もいわず足ダンして苛立ちを見せるのみ。

 

 最近知ったけど使い魔となった子達は飲食も出来るらしく喜怒哀楽が分かりやすい。

 ゴブリンにも一体だけリーダーとして名前を『ゴブリ』にし、交流してみたが殺意の欠片もなく私をボスとして立ててくれる超良い子だった。

 蛇君も天然で可愛いし。エリアボスの影ってだけで、またエリアボス出てきた時は蛇君に任せて討伐したら、蛇君に経験値が大幅に増えただけで蛇君は増えなかったけど。

 

 ひとまず今!

 まだまだレベルが全然足りないのでラピンくんに頑張ってもらいますがね!

 

 

「んー。虫がいるだけであんまし変化は────ラピン?」

 

 

 

 それは、突然起きた。

 

 ブルブル震えたラピンが影に沈む。

 瞬間、ゾッとするほどの寒気が辺りを包み込んだのだ。

 

 

 

「な、なに?」

 

 

 周りを見るけど何もない。異変もないはずなのに、何かがおかしい。

 

 私だけそう感じたかもしれない。

 なんせ遠くから虫モンスターを倒しているらしい音が聞こえるから。

 

 

 ────頭の中から、獣の声が聞こえた。

 

 

 

『夜襲のリュカオーンにより、その身体は喰われる』

 

『リュカオーンの分身へ変質します』

 

 

 

 

「は? ────ガッ、ァ」

 

 

 

 何が起きたのか、一瞬理解が出来なかった。

 

 

 めきりめきりと、身体が裂ける。

 骨が折れる。

 肉が分解される。

 

 

 痛みなど規制されているはずのシャンフロで大きな衝撃に襲われる。

 

 きっとこれが現実にあったなら────痛覚100%だったサバイバル・ガンマンでやられたならしばらくは寝られず発狂してしまうぐらいの劇物。

 

 

 攻撃エフェクトが体内から発生していく。

 

 身体の内側から自分が喰われていることを、自覚する。

 

 

 

「グォォォォォォ!!!」

 

 

 

 私の身体が、勝手に動かされる。

 

 近くにいたプレイヤーが「ひぃ! ユニークモンスター!?」と私を見て悲鳴をあげて、噛みつかれて死んだ。

 

 

 

『全使い魔に経験値が付与されました』

 

『影が濃くなりました』

 

 

 

 モンスター達を足で踏み潰し、駆ける。

 

 影に飛んではどこか光の無い場所へ向かう。

 

 

 

『全使い魔に経験値が付与されました』

『片腕のヴォーパルバニー(ラピン)のレベルが上がります』

 

 

『影が濃くなりました』

 

 

 

 しばらく迷子になっていて抜け出せなかったはずのセカンディルへ舞い戻って────そのプレイヤーを見た。

 

 とても面白い生き物だと思えた。

 

 攻撃を避けて、避けて、私を攻撃するプレイヤー。

 どう足掻いても死ぬしかないはずのユニークモンスター相手に勝ちに向かおうとするその意思に、兄を見た。

 

 

 潰し甲斐のある玩具と悟り、呪いを刻む。

 

 

 ────それを食べるのは私だ。

 

 

 

『夜明けにより、その闇は一時の休息を得る』

『リュカオーンの分身は影へ消えます』

 

『リュカオーンの影が一定以上の濃さになりました』

 

『ユニークスキル「リュカオーン」が付与されました』

『ユニークスキル「リュカオーン」は夜襲のリュカオーンによる許可を得ないと発動しません』

 

 

 目を覚ました時に見えたのは、セカンディルの目前。

 

 岩肌に寝転ぶ私を変な目で見てくるプレイヤーが通過する。

 先程の衝撃を徐々に受け入れ、自然と身体が震え始める。

 

 

「ってか、サンラクってお兄ちゃんじゃん!!」

 

 

 

 私……というか、身体を動かしてたリュカオーンが呪いを刻んだプレイヤーの名前がサンラクだったけど、お兄ちゃんクソゲーじゃなくて神ゲーやってんの!?

 

 フェアクソ終わったみたいな声は聞こえてたけど、次やるのもクソゲーかと思ったのに!!

 

 

 他にもいろいろとツッコミたいところあるけど、まず先に────。

 

 

 

「助けてお兄ちゃん!!」

 

 

 他のプレイヤーは協力させられない。でも我が兄であれば頼める。

 

 

 お兄ちゃん! これもう私の手に負えないからどうにかしてぇ!!

 

 

 

 

 

 

 




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