レベル1のわんこプレイヤー 作:わんこ
「ふぁ……」
眠い。徹夜に徹夜しまくったせいで眠い。
でも今は寝てる場合じゃない。
ライオットブラッドを1本拝借し、飲みきる。
小学生の身体にライオットブラッドはかなりのエネルギー過多だけど、おかげで頭が冴え渡る。
ああーぎゅわぎゅわくるー。
「これあとで反動来るやつぅぅ」
なんとか意識を保ちつつ、思考を回す。
スマホを動かして見るは掲示板。リュカオーンの捜索スレ。やはりというか、私が私ではなく、『リュカオーンの分身』として動いた時の出来事が載っている。
分身であるから本体もどっかで暴れてるかと思ったけどそうじゃないらしい。あのわんこ、意外と頭が良いのかそれとも分身を動かしてる時は本体は動かせないのか。
ポチポチスマホを動かして調べるけど、リュカオーンが別の場所で同時に出たわけではなく、私がリュカオーンとして暴れてた情報のみ。
「ふぁぁ……あれ、珍しい。瑠璃がリビングにいるだなんて」
「おはようお姉ちゃん。ちょっとお兄ちゃんに用があるんだけどまだゲームしてるみたいだから」
「無理やり起こそうか?」
「ううん。急いでないし、ここでゲーム作ってるよ」
「ゲーム作るのは禁止って──」
「製作の前段階! プロット! お姉ちゃん的に言うならショッピング行く前の洋服何買おうかなーって考えてる時のあれ!」
「……まあ良いけど」
瑠美お姉ちゃんが冷蔵庫から野菜と果物、そして牛乳を取り出して、私の隣で朝食として食べ始める。
「いつも思うけどモデルとして意識高いよね。ご飯だって糖質制限して、お菓子我慢してさぁ。なんか苦行じゃん。ドMのやること? それって楽しいの?」
「喧嘩売ってんの?」
「いででごめんなひゃいおねえちゃっ」
姉に頬を引っ張られたのでショッピングモールの割引券を献上したら許してくれた。持っててよかった割引券! ありがとうスワローズの不審者!
でも急に私宛にいろんなお礼出すの止めてよね!
「お姉ちゃんって私やお兄ちゃんとは違ってかなり大変そうだなって思うの。私なら欲望に忠実に動いて我慢せずゲーム作るしか出来ないから……」
「別に趣味に没頭したいのは同じでしょ? 私はトワ様とお仕事したい夢を叶えるために頑張ってるだけ。瑠璃だって寝る間も惜しんでゲーム作ってるでしょ? それと同じよ」
「まあ、ケイ先輩にやってもらいたいゲームのためにって頑張ってるけど。……うん。変なこと言ってごめんね。ありがとう」
「はいはい。お礼は今度一緒にショッピングね。一度姉妹コーデしてみたかったんだぁ!」
「う、うん。機会があったらね」
お姉ちゃんのショッピングってかなり時間かかるし、ゲームする暇もないぐらい体力もってかれるんだよなぁ。
でもうちの姉に逆らえるはずもない。うぐぅ。
「絶対ね、約束よ! っと、そろそろバイトの時間だし、行ってくるね~」
「いってらっしゃぁい」
ご機嫌で騒がしく出ていった我が姉。
姉妹コーデとかショッピングとか言ってるけど、私の経験上これは半日コース確定かな。
引きつった顔した私に気づいてない様子のお姉ちゃんのことだから、きっとたくさん着せ替え人形にされる。
────よし、お兄ちゃんも巻き込もう。兄には荷物持ちで、私と同じ気持ちを味わってもらおう!
「エネルギー……ゴハン……」
「っ────お、おはようお兄ちゃん!」
噂をすれば兄。
でもなんか萎びれてる。私がリュカオーンになって噛みついたから?
レベルダウン? それともキャラロスト?
いや、それだったらぶちギレながらリビングにくるはず……。
「あのね、お兄ちゃんに話したいことがあるんだけど……」
「あー……ちょっと待て……」
「う、うん! 待ってるね!!」
訝しげな様子の兄がエネルギー補給のためいつものライオットブラッドを一気飲みしていく。
そんな様子を見ながらも、私はどうお兄ちゃんに説明しようか迷った。
────やぁやぁお兄ちゃん! 昨夜はごめんね! お兄ちゃんを襲った夜襲のリュカオーンは私で、ユニーク関連で時々私の身体がリュカオーンになっちゃうみたいなの!
こんなこと言ったらお兄ちゃんはどんな反応するのか。
「くぁぁー!! やっぱ徹夜明けはライオットブラッドに限るわ!! んで、瑠璃はゲーム作りか? 禁止されてるだろ?」
「プロット段階なら良いでしょ! お母さんが許可してくれたら一気に完成させるんだからね。それで出来たらお兄ちゃんにバグ調査とかお願いします」
「おう」
「あーっ……あとさ、ええとね……」
よし……よし!
覚悟は出来た。PKさせそうになったら仕返しする気合いで行け!
レッツゴー、リル!!
「昨日、夜襲のリュカオーンに襲われて呪われたでしょ? あのリュカオーンって私なの」
「タイム」
お兄ちゃんが真顔になって指し示す。
それに私は頷いて、リビングの床に正座した。
♢
リビングの隅にて、兄妹が2人、向かい合って正座している。
「被告人の言い分は大体理解した」
「はい裁判官。判決は?」
「有罪!」
「そんなぁ」
わざとらしく偉そうな顔をするお兄ちゃん。
私のせいもあるから、ものすごく煽ってくると思ったけど、なんか優しい。
……たぶんあれかな、思わぬ情報が出たせいでまだ動揺してて、茶化してるだけかな。
「お前がリュカオーンになれるってことは分かった」
「呪いというか、ユニークのせいでね」
「時限爆弾式かつ自爆特効のな」
「どうにかしてユニーク職業とスキルを破棄したいんだけど、お兄ちゃんなんとか出来ないかな?」
難しい顔をしたお兄ちゃんが、仕方がなさそうに立ち上がる。
「ひとまずシャンフロで会うぞ。こっちもいくつか問題抱えてるんでな」
「ありがとうお兄ちゃん! お礼は次に作るパンツゲームでお返しするね!」
「なんだそのクソゲー!?」
ゲームについて問い詰められそうになったけど、お兄ちゃん初見は何も知らない方が楽しめるはずだからと秘密にしといた。たぶんパンツ投げるゲームと勘違いしてるな?
まあともかくログインしよう。
ゲームの中に入って最初に見えたのはセカンディルの宿。その一室。
お金を払って外へ出て、お兄ちゃんと落ち合う予定の路地裏へ向かう。
しかし、宿から外へ出た瞬間、町を歩いていたプレイヤー達の目が一斉に私の方へ向く。
「リルだ!」
「おいいたぞ! リュカオーンになれるわんこ幼女だ!!」
「そのわんこを捕まえろ!!」
「ふぇぇ!?」
なにこれどうなってんの!!?