レベル1のわんこプレイヤー 作:わんこ
(酷い目に遭ったぁ……)
現在隠れているのはサードレマの宿近く。
プレイヤーが数多く動いているためお店の側面に置かれている荷物置き場となった場所に潜んでいるのだ。仔犬の姿で。身体を丸めてびくびくしつつも。
ぴよぴよ。
動くことがあまりにも遅く、きゃんきゃん鳴くことしか出来ないと思っていた私だけど、影から影へ移動することが出来ると知ってすぐさま行動を開始。
プレイヤーの影から影へ飛び、そして門前の影に潜って反対側へ飛び出したのだ。
ほんと、リュカオーンには感謝するしかないというかなんというか。
ぴよぴよ。
────というか、仔犬の姿はいつまで続くんだろうか。
元の姿に戻ったら速攻で宿に入ってリスポーン地点を更新し、ゲームからログアウトするというのにだ。
ぴよぴよぴよぴよ。
「……きゃん」
おそらくフレンドとなった園長さんが鬼メール仕掛けてきてるのだろう。バサバサと鳥が飛んでくるたびに影に隠れてはいないふりをする。
そうすると不思議なことに鳥はぐるりと一周して私のことが追跡不可能となり、帰っていくのだ。
でもこれ鳥のせいで追いかけられてる可能性あるよね?
やっぱりフレンド解除するか。園長さんには悪いけど、私の身が危険だからしょうがない。
たぶん仔犬の姿になって抱っこさせてとか鬼メールしてるとかなんだろうなぁ。
いやもうほんと、無理なんだけどな。
ひとまずフレンドを解除したらメール爆撃が止んだので一安心だけど。
(ログアウトしたらお兄ちゃんに仕返ししてやる)
冷蔵庫にあるライオットブラットを全部誰かにあげてしまおうかと画策する。
そうしているうちにまた誰か近づいてきた気配がしたため影に潜る。
しかし、いつまで経っても遠ざからない。仕方なく私が移動しいなくなろうとして、気づいた。
前足を動かしていつものように影にダイブしたいのに、影がない。
────あれ、荷物置き場の影と他の影が繋がってない?
先程までは逃走手段として影がたくさんある場所に隠れていたつもりだった。
でも今は、明るい。明るすぎる。
誰かに影を消された?
明かりか何かをつけた?
おそるおそる荷台から顔を出して外へ出て、息をのんだ。
逃げたいのに逃げられない。足が動かないほどのプレッシャーに襲われる。
「ハァイ、リルちゃん」
ランタンを持ったペンシルゴンが、楽しそうに仔犬の私を抱き上げたのだ。
「ちょっとお話しよっか」
「きゅう……」
♢
件名:不本意ながら飼い主が出来ました
差出人:瑠璃
宛先:お兄ちゃん
本文:可愛い妹のピンチなので至急添付した伝言のところに来るように。もし来なかったらリアルに襲撃かけるのでよろしく
「これでいいですか、ペンシルゴンさん」
「ええ、ありがとねリルちゃん」
「じゃあ私はこれで────」
「リルちゃん、お座り」
「アッハイ」
────君のお兄さんが来るまで待っててね。
そんな風に命じられたせいで出るに出られなくなった蛇の林檎のお店。
街中ではあるし、店長に頼み込んで上の部屋を貸してもらってなんとかセーブとログアウトは出来るようになったけれど、この店から出られなくなったのは事実。
お兄ちゃんとは別ゲームで話をつけるといってたし、それまで時間はかかるはず。
ログアウトしていったペンシルゴンさんとの約束は破るわけにはいかない。
というか、町の外に出たら動物好きの変態とユニーク狙いの変態とロリコンの変態がうようよ潜んでるからね。ペンシルゴンさんもそこは分かってるからこそ私をここへ置いたのだろう。
貸してもらった部屋でのんびりくつろぎつつ、棚にあるインテリアを軽く触る。
「どうしようねラピン」
「チッ」
「舌打ちしても出れないよ。ペンシルゴンさんに隔離してもらってるようなもんだからね」
子犬から戻れたのは明るい太陽に照らされてダメージを負い、影が軽減されたせいか。
どうにもペンシルゴンさんは私のユニーク職業か何かしらに用があるみたいだけど……。
「ひゃわっ!?」
考えながら棚のお洒落な瓶に触ってたせいか、つい落としてしまい割れてしまった。
どうしよう無一文みたいなもんだし、これ以上ペンシルゴンさんに借りを作るのは怖いし……!
「どうしようラピン!?」
「チッ」
「ふぇ────」
ラピンが何故か、割れた瓶ごと影に戻っていく。
『聖なる翡翠(瓶)が影に吸収されました』
『リュカオーンの影が濃くなります』
『影により修正されたそれは、リュカオーンの分身に新たなる力を得ることになる────』
『聖なる翡翠(影)の複製に成功しました』
「えっ」
『影から取り出しますか?』
「えっ?」
思わず反射的に取り出したるは黒くなってるけど割れてない瓶。ついでにラピンの持つ割れた瓶。
つまり、二つに増えたということでは?
ちょっと軽く確認すると割れてない瓶の隅っこに(影)の文字が。
「待ってまって……もしかしてこれ、回復用のアイテムとか……」
恐る恐る足元の轟く影にアイテムの持つ手を突っ込んで見ると、リュカオーンへの吸収と複製成功。
それぞれの手に持つのは、ちゃんとした回復アイテムたるポーションと、影により複製されたポーション。
「これもしかして使える……?」
ラピンに頼んでちょっとだけダメージを作り、影のポーションを使ってみると普通に使えた。
でも、影のアイテムからまた複製は出来ないらしい。何回か検証したけど無理だった。
つまり、本物を一度影に入れたら一回だけ複製出来るということで……。
やっぱりナーフされるべき案件じゃん!?
ちなみにこれはリュカオーンとも繋がっているため、複製された分だけリュカオーンの強化に繋がります。
つまりリュカオーン戦の難易度がやばいことになります。
♢
ここから先は新しく書いていくので、のんびり書くつもりです。
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