機動戦士ガンダムSEED RE:SONANCE ―星巡りのルナと換装の呪縛―   作:マキ

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前回の『第13話:【Veetwo】氷晶の爆炎』では、ビクトリア基地での激戦の最中、追い詰められたルナは使い捨て増幅ユニットによる強攻策『バースト・シグナル』を発振。数十km彼方から召喚された『ヴィーナスアーマー』とドッキングを果たし、ヴィートルーガンダムへと合体する。絶対零度の冷徹な統制と圧倒的な重火力により連合軍の追撃部隊を撃破したルナは、ついに地球上に散らばっていた4つのアーマー全てを回収することに成功するのだった。
【あらすじ】
限界を超えた無茶な戦いの代償により、意識を失ったままモルゲンレーテの医務室へと運び込まれたルナ。数日間の眠りを経て目を覚ました彼女を迎えたのは、技師長エリカ・シモンズだった。散らばっていたパーツが揃ったことを知ったルナは、エリカとの会話の中で、自身に与えられた『ルナ』という名前の真実と静かに向き合う。


第14話【Equip】束の間の凪

「……ルナ。ルナ、聞こえるかい?」

耳の奥で、優しくも硬質な女性の声が響いていた。

薄暗い視界が徐々に開けていく。天井に配置された無機質なLEDライトの光と、規則的に刻まれる心電図の電子音。鼻腔をくすぐるのは、消毒液と冷却オイルが混ざり合った、どこか懐かしいモルゲンレーテ独特の匂いだった。

「……エリカ……技師長……」

ひび割れた唇を小さく動かし、ルナはゆっくりと体を起こそうとした。だが、全身を突く激痛と猛烈な脱力感に襲われ、思わず眉をひそめる。

「無理に動くなと言ったはずだよ。ビクトリア基地からの長距離飛翔に、無理なバースト・シグナルの発振……君の神経系と肉体は、完全に限界を超えていたんだ。丸三日、眠り続けていたんだよ」

ベッドの脇に立っていたのは、白い研究衣を羽織った女性——モルゲンレーテの技師長、エリカ・シモンズだった。彼女は手元のタブレット端末に表示された生体データを厳しい目で見つめつつも、その瞳にはどこか安堵の色を浮かべていた。

「……コアガンダムと……アーマーは……?」

ルナの第一声は、自分の身体ではなく、共に戦った機体のことだった。

「呆れた執着だな。だが……安心していい。コアガンダムの損傷は軽微だ。ビクトリアでパージした『増幅ユニット』は灰になったがね。それと……君が命懸けで持ち帰った『ヴィーナスアーマー』も含め、4つのアーマーはすべてハンガーに揃っているよ」

エリカはタブレットの画面をルナに見せた。

そこには、モルゲンレーテの地下ドックに並び立つ4つのアーマー——アースリィ、メルクワン、マーズフォー、そして新たに回収されたヴィートルーの各種コンポーネントが、完璧に整備・清掃されて格納されている映像が映し出されていた。

「……良かった……」

ルナは小さく息を吐き出し、ベッドの背もたれに深く体を預けた。

散らばっていたパーツが、ひとつ、またひとつと自分の元へ集まっていく。記憶の大半を失い、名前すら持たない自分にとって、それらのパーツを揃えることだけが、自分がここに存在する唯一の証明だった。

「ねえ、ルナ。少し野暮なことを聞いてもいいかね?」

エリカが椅子を引き寄せ、ルナの顔を覗き込んだ。

「君のパーソナルデータ……いや、あの『GAT-X100A コアガンダム』のメインフレームに残されていた識別コードだがね。LUNA-07……これが、君が『ルナ』と名乗る理由だろう?」

ルナは淡々とした瞳でエリカを見返した。

「……アークエンジェルと最初に通信を繋いだ時、画面にそのコードが表示されていた。それを見たあの少年(キラ)が……私を『ルナ』と呼んだ。ただそれだけ」

「自分の本当の名前は……思い出せないのかい?」

「……ないわ。そんなもの」

ルナの声には、悲哀も拒絶もなく、ただ透明な事実だけが横たわっていた。

「戦争孤児なんて、どこにでもいる。名付けられる前に親を失ったのか、薬のせいか……私には『ルナ』というID(コード)しか残っていない。でも……」

ルナは自分の胸元をぎゅっと握りしめた。

「あの船の人たちが……あの少年が呼んでくれたその名前が、今の私の全て。だから、私はルナでいい」

エリカは一瞬、言葉を詰まらせたように目を見張り、やがて優しく目元を緩めた。

「そうか……ふふ、実に頑固で、強い少女だな」

エリカは立ち上がると、研究衣のポケットから小さなタブレット端末を取り出し、ルナのベッド脇のテーブルに置いた。

「体力が戻ったら、ドックへいらっしゃい。君が休んでいる間に、うちの技師たちが面白い改良を加えておいたわ。回収された4大アーマー……その真の力を引き出すためのシステムテストよ」

「真の力……?」

「ああ。コアドッキングシステムの神髄は、単一の換装にあらず。戦況に応じて瞬時に姿を変える『連続コアチェンジ(瞬間換装)』の運用試験よ。……準備ができたら来なさい、ルナ」

そう言い残し、エリカはハンガーへと戻っていった。

ルナは静まり返った医務室で、自分の両手を見つめた。

身体はまだ重い。だが、心の中には静かで確かな火が灯っていた。

(束の間の凪……でも、すぐに次の風が吹く)

ルナはゆっくりと脚をベッドの外へと下ろし、床を踏みしめた。

4つのアーマーと共に行く、新たな戦いと居場所に向かって。




第14話をお読みいただき、ありがとうございました!
ビクトリア基地での激闘を終え、傷ついた身体を休めるルナの束の間の日常をお届けしました。
名前の記憶すらない戦争孤児の彼女にとって、キラたちから呼ばれた「ルナ」というコードネームがどれほど大切な居場所になっているのか、彼女の秘めた想いを感じていただけたら幸いです。
次回からは、全快したルナがモルゲンレーテの地下ハンガーで、揃い踏みとなった4大アーマーの真の性能を引き出す『連続コアチェンジ(瞬間換装)運用試験』へと挑みます!
もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ぜひページの評価(★)や感想、お気に入り登録をよろしくお願いします!皆さんの応援が執筆の大きな励みになります次回:第15話『【Adapt】散らばるパーツと集う絆』もお楽しみに!
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