機動戦士ガンダムSEED RE:SONANCE ―星巡りのルナと換装の呪縛―   作:マキ

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前回の『第14話【Equip】束の間の凪』では、ビクトリア基地での激戦を制し、4つ目の外装『ヴィーナスアーマー』を獲得したものの、限界を超えた無茶な戦いの代償により倒れたルナ。モルゲンレーテの医務室で目覚めた彼女は、技師長エリカ・シモンズとの会話を通じ、自らに刻まれた『ルナ』という名と静かに向き合いました。
【あらすじ】
C.E.71年6月13日、地球連合軍からオーブへ「48時間の最後通告」が突きつけられる。刻一刻と開戦の時が迫るなか、ルナはモルゲンレーテの地下ドックで、揃い踏みを果たした4つのアーマーの真の力――パーツ単位の分離合体と、頭部アンテナアーマーによる精神制御システム『リミテッドチェンジ』の最終調整を進めていた。自分を受け入れてくれた場所、そして仲間たちがくれた「ルナ」という名を守るため、少女は4つのアーマーと共に『オーブ解放作戦』直前の最前線・オノゴロ島防衛線へと出撃する――。


第15話【Adapt】散らばるパーツと集う絆

C.E.71年6月13日。 太平洋の青い海に浮かぶ中立国、オーブ連合首長国。その静謐な空気を一瞬で叩き潰すようなニュースが、世界中を駆け巡っていた。

『地球連合軍、オーブ首長国連邦に対し、48時間以内の無条件降伏と自軍への編入を要求。拒否した場合は、即座に武力行使へと移行する――』

モルゲンレーテの地下ハンガーには、警報音こそ鳴っていないものの、呼吸すら憚られるような張りつめた緊迫感が漂っていた。大型コンテナが重々しい金属音を立てて運ばれ、オレンジ色の作業着を着た整備兵たちが、怒号を飛ばしながら走り回っている。

「最後通告、か……」

ハンガーのキャットウォークの手すりに細い手を掛け、ルナ・セレスは遠くを見つめていた。 適合薬の副作用による倦怠感はまだ完全に抜けていない。だが、首元のコントロールチョーカーが発する淡い青色の光が、彼女の意識を冷徹な覚醒状態へと引き留めていた。

「怖くなったかい、ルナ?」

背後から歩み寄ってきたのは、タブレット端末を抱えたエリカ・シモンズだった。エリカの表情には隠しきれない疲労と、迫り来る決戦への強い悲壮感が滲んでいた。

「恐怖……? いえ、理解できません」

ルナは表情を変えずに振り返った。素体状態の彼女の瞳は、どこか澄んだ冷たさを宿している。

「私は兵器として調整された個体。戦況を予測し、与えられた出力を最適化して敵を排除する……ただそれだけです。地球連合軍の侵攻計画も、提示されたデータ通りの予測数値に過ぎません」

「相変わらず素直じゃないね」

エリカは小さく苦笑すると、タブレットの画面をルナに向けた。そこには、地下ハンガーの特殊換装デッキに並び立つ、4つの異彩を放つシルエットが映し出されていた。

『アースリィ』 『メルクワン』 『マーズフォー』 『ヴィートルー』

青、紺、赤、緑。 地球上のあらゆる戦線へ分散輸送されていたコアガンダムの増設外装――4大アーマーが、今、完璧な形でモルゲンレーテのドックに揃い踏みを果たしていた。

「君が命を懸けて集めた4つのパーツ……そして、うちの技術陣が総出で組み上げた『多重リンク型プログラミングOS』の調整が完了したよ」

エリカが指先で画面をタップすると、ホログラムのコアガンダムが目まぐるしく姿を変える3Dシミュレーションが展開された。各アーマーの肩、脚、胸のユニットが目まぐるしく分離し、戦闘中に必要なパーツだけが再構築されていく。

「単一のアーマー一式をそのまま装着して出撃する従来の運用じゃない。戦闘中、リアクターコアハンガーから射出される各アーマーのパーツを瞬時に分離・合体させる特殊戦術――『リミテッドチェンジ』のシステムだ」

「……リミテッド、チェンジ……」

ルナのディープブルーの瞳が、微かに揺れた。 状況に合わせて必要なブースターや武装パーツだけを選択してコアガンダムに装着させる局地対応型の分離合体。通常であれば複雑を極める制御だが、素体であるコアガンダムの規格とモルゲンレーテのOS調整によって現実のものとなっていた。

「そして何より重要なのが、頭部アンテナアーマーの切り替えだ」

エリカはホログラム上の「頭部ユニット」を拡大させた。

「このシステムにおいて、ルナ、君の精神状態を左右する思考インターフェースは装着する『頭部アンテナアーマー』に集約されている。アースリィのアンテナを装着すれば【冷徹な統制】、メルクワンなら【静かな追撃狂】、マーズフォーなら【熱狂の狂暴性】、ヴィートルーなら【絶対的な戦術分析】……選択した頭部アンテナに応じて、君の脳へ送られる精神補正パラメータが直接切り替わる仕組みだ」

「頭部アンテナが……私の精神を司る牙になる、ということですね」

「そうだ。だが、パーツの分離合体と同時に頭部アンテナを頻繁にチェンジすれば、それだけ君の精神に急激な過負荷がかかる。一歩間違えれば脳が耐えきれない」

「問題ありません」

ルナは一切の躊躇なく言い切った。自分の胸元、チョーカーのすぐ下にある『LUNA-07』の刻印へそっと触れる。

「私は……ルナです。あの少年が、この船の人たちが私にくれた名前……。それを証明するためなら、この肉体がどれほど摩耗しようと関係ありません。私に居場所をくれたこのオーブを、モルゲンレーテを……私自身の手で防衛します」

その瞳に宿るのは、兵器としての冷徹さではなく、他者を寄せ付けなかった少女が初めて獲得した、意思という名の「熱」だった。 エリカは息を呑み、やがて満足そうに口元を緩めた。

「そうか。……なら、行って来い。君の『牙』を、あの傲慢な連合軍に見せつけてやりなさい」

――48時間のタイムリミットが、静かにゼロへと刻まれていく。

オノゴロ島の地下要塞カタパルトデッキ。 暗闇の中、重厚なハッチが開き、外の眩しい太陽の光が射し込んできた。だが、その光の先にある海と空は、地球連合軍の大艦隊と航空部隊によって黒く埋め尽くされていた。

「適合体LUNA-07、コアガンダム……出撃準備」

コックピットのシートに深く身を沈めたルナは、Gコンのグリップを両手で強く握りしめた。 背後の拡張ハンガーには、パーツ分離射出機能を持つリアクターコアハンガーに繋がれた4つのアーマー群が、完全充電の青いランプを明滅させながら待機している。

『ルナ、聞こえるか!』

通信回線から飛び込んできたのは、ストライクガンダムのコックピットにいるキラ・ヤマトの声だった。

『敵の数は膨大だ……! でも、僕たちでオーブを……この場所を守ろう!』

「……了解、キラ・ヤマト。連携データの参照を開始します」

短く答えたルナの首元で、チョーカーが激しく青く輝き始めた。 自律AIとの同期が完了し、彼女の瞳から迷いが消え去る。

「コアガンダム、ルナ・セレス……出撃します!」

ドンッ!!

爆発的な推進力とともに、素体のコアガンダムと後続のリアクターコアハンガーが、光の矢となってオーブの青い空へと飛び出していった。 迫り来る歴史の過酷な濁流のなかで、少女と4つの具足の戦いが、いま幕を開ける。




第15話をお読みいただき、ありがとうございました! 今回は、地球連合軍から提示された「48時間の最後通告」の裏で、オーブ防衛のために出撃の準備を進めるルナとモルゲンレーテの戦前夜をお届けしました。
ついに、連合軍のオーブ侵攻が目前へと迫るなか、ルナはモルゲンレーテの技術陣とともに、回収した4つのアーマーをパーツ単位で分離合体させる『リミテッドチェンジ』の最終調整を完了させました。
装着する「頭部アンテナアーマー」によって自身の精神パラメータ(冷徹・熱情・狂暴など)が直接切り替わるという過酷なギミックを背負い、名前すらなかった自分を受け入れてくれたオーブを守るため、少女は最前線・オノゴロ島防衛線へと出撃します。
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次回、第16話『【Earthly】舞い降りる剣、偽りの静寂』もお楽しみに!
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