機動戦士ガンダムSEED RE:SONANCE ―星巡りのルナと換装の呪縛― 作:マキ
【あらすじ】
第1次侵攻を退けたものの、翌朝には更なる大軍による第2次侵攻が予見されるオーブ。ウズミ首長たちは国を守り抜くため総力を挙げて迎撃の準備を進める一方、万が一防衛線が突破された際の「最悪の保険」として、ウズミの理念と未来を宇宙(そら)へ繋ぐ『クサナギ』への搬入作業を極秘裏に進めていた。「この国を絶対に渡さない、守り切る」という強い情熱と、背水の陣の緊迫感が漂う深夜の地下ドックで、ルナ、キラ、アスランの三人は静かに言葉を交わす。
オノゴロ島の地下深く、マスドライバー『カグヤ』へと繋がる巨大な秘密ドック。 昼間の激戦が嘘のように、そこには重厚な機械音と、溶接の火花が散る静かな活気が満ちていた。
「慎重に吊り上げろ! リアクターコアハンガーの予備バッテリー、固定を確認!」 「マーズとヴィーナスのコンテナ、クサナギの第2ブロックへ搬入急げ!」
整備兵たちの指示が飛び交う。だが、彼らの表情にあるのは撤退戦の陰りではなく、「明日こそ連合を返り討ちにし、このオーブを守り抜く」という悲壮なまでの執念だった。 『クサナギ』への機体搬入は、あくまで国が破れた時の最後の保険。誰も国を捨てるつもりなど毛頭なく、全員が明日もこのオノゴロの地を守り抜く覚悟で動いていた。
ルナ・セレスは『クサナギ』の広大なモビルスーツ・デッキに立ち、整然と並べられていく自らの「具足」を見つめていた。
デッキの中央には、すでにアースアーマーとドッキングを完了した青き守護者――アースリィガンダムが鎮座している。素体であるコアガンダムの華奢なシルエットは厚い装甲の下に隠れ、今はただ、明朝の防衛戦を待つ静かな巨躯としてそこにあった。 その傍らには、メルクワン、マーズ、ヴィーナスの各コンポーネントが収められたコンテナが並び、専用ラックには冷却を終えた『ビームシュートライフルU7』が厳重に固定されている。
「……全部、揃った」
ルナは小さく呟き、首元のコントロールチョーカーに指を添えた。 アーマーと同調していない素の意識に近い状態の彼女は、いつもの周囲を拒絶するような鋭さは影を潜め、どこか遠くを見つめるような透明な瞳をしていた。
「ルナ。準備、順調みたいだね」
聞き慣れた優しい声に振り返ると、そこにはキラが、そしてその隣には紅い制服を纏ったアスランが立っていた。 背後のデッキでは、キラのパーフェクトストライクと、アスランのジャスティスガンダムが、明日の決戦に向けて最終チェックを受けている。
「……キラ。アスラン。準備、終わったみたいだね」
ルナは二人をじっと見つめた。かつて死闘を繰り広げた二人が、いま同じ場所でこの国を守るために準備している光景。それは、データと合理性だけで生きてきたルナにとって、不思議な暖かさを伴う違和感だった。
「その機体の運用能力……凄かったよ」
アスランが、アースリィの巨躯を見上げながら口を開いた。
「パーツを自在に組み替え、アンテナで自分の思考までも戦局に合わせる。連合がどんな目的で君を調整したかは分からないが、君はそれを自分の力として使いこなしているんだな」
「……私は二人みたいに、守りたい世界や大層な理念があるわけじゃない」
ルナは淡々と、しかし確かな意志を込めて答えた。
「でも、この名前をくれた人たちがいるこの国を、壊されるのは嫌だから。……明日も、絶対に守る」
キラはルナの言葉を聞き、優しく目を細めた。
「うん。僕たちで、この国を……大切な人たちを絶対に守ろう」
キラの視線の先には、少し離れた場所でオーブ兵たちと最終確認を行っているカガリの姿があった。誰もがこのオーブという故郷を諦めてなどいない。
「そうね。この『クサナギ』への搬入は、あくまで万が一の保険……私たちの望みは、明日の戦いで連合を退け、この地に踏みとどまることよ」
背後から歩み寄ってきたエリカ・シモンズが、三人の肩に手を置いた。その目には、国を守る技術者としての誇りと強い意志が宿っていた。
「OSのデータリンクは完了しているわ。ルナ、明日も頼むわよ」
「了解した、エリカ」
ルナは一歩前に出て、整備の終わったアースリィガンダムを見上げた。 明日、ハッチが開けば再び苛烈な戦場が待っている。この国を守り抜くため、少女は再び4つの具足を掲げて立ち向かう。
「キラ。アスラン。行こう。この国を守るために」
ルナの言葉に、二人の少年も強く頷いた。 オノゴロの夜が更けていく。明日の決戦に向け、静かな誓いが地下ドックに満ちていた。
第17話をお読みいただき、ありがとうございました! 今回は、激戦の合間に訪れたオノゴロ島地下ドックでの静かな夜と、脱出準備を進めながらも「この国を守り抜く」という強い誓いを交わすルナ、キラ、アスランの姿をお届けしました。
アースリィガンダムを中心に、回収したすべてのアーマーと専用武装『ビームシュートライフルU7』を『クサナギ』へと搬入し、万全の体制を整えたルナ。自分に名前と居場所をくれたオーブを守るため、少女は明日訪れる第2次侵攻へと挑みます。
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次回、第18話『【Earthly】刻の開拓者』もお楽しみに!