機動戦士ガンダムSEED RE:SONANCE ―星巡りのルナと換装の呪縛― 作:マキ
【あらすじ】
態勢を立て直し、再びヤキン・ドゥーエ要塞へと進軍を開始する三隻同盟。ジェネシスの次なる照準が地球へ向けられるのを防ぐため、全軍がジェネシス本体を目指すなか、戦場に禍々しい威圧感が漂う。現れたのは、ザフトの最終兵器『プロヴィデンスガンダム』。搭乗するラウ・ル・クルーゼの圧倒的な空間認識能力と全方位ドラグーン射撃に対し、ルナは背部マルチコンテナドラグーンによるビームシールド展開や、分離射出させた腕部マニファードラグーンのビーム砲撃で食い下がる。しかし、クルーゼの猛攻により左腕を破壊され追い詰められたルナは、ビームガトリングのパーツを意図的にパージし、バルカンで爆破する捨身のトラップを敢行する――!
ジェネシスが放った白光が宇宙(そら)の彼方へ消えても、戦場には熱核の残熱と、あまりにも多くの「死」の気配が淀んでいた。
「……各機、エネルギー充填完了。……再出撃します」
クサナギの補給ラインで急速充電を終えたジュピターヴガンダムのコックピットで、ルナは荒い息を整えていた。先ほどの脳波ブーストによる負荷が、まだ火を噴くような頭痛となって彼女の脳を苛んでいる。だが、首元のチョーカーをカチリと締め直し、再び空間認識能力を強制的に引き上げた。
ジェネシスの第2射を許せば、地球は終わる。その焦燥感が、三隻同盟の全機をヤキン・ドゥーエ要塞へと駆り立てていた。
だが、目的地を目前にして、ルナの感覚が「それ」を捉えた。
「……何、この……嫌な感じ……!」
チョーカーを通じて脳に突き刺さる、禍々しいまでのプレッシャー。それは、かつてメンデルで感じたものよりも遥かに鋭く、冷徹な殺意。
漆黒の闇の向こうから、全周に異形のポッドを纏った大型機――プロヴィデンスガンダムが、滑るように姿を現した。
「ハハハハ! 終わりだよ、世界は! 人の望んだ結果なのだよ、これは!」
通信回線を、嘲笑が支配する。それと同時に、プロヴィデンスから無数のドラグーンが一斉に放たれた。
「やらせない……! ドラグーン、展開! シールド形成!」
ルナは叫び、ジュピターヴの背部に装備された2基のマルチコンテナドラグーンを射出。チョーカーによる超並列制御で空間に配置し、その間に強固なビームシールドの幕を張らせた。さらに両腕から分離・射出させた2基のマニファードラグーンをビーム砲として遠隔駆動させ、迫り来るプロヴィデンスのオールレンジ攻撃を必死に撃ち落としていく。
マルチコンテナによるシールド展開と、マニファードラグーンのビーム射撃による迎撃。手動制御ゆえの緻密な配置と相まって、今までは隙のない陣形を誇っていた。
しかし――。
「論理だと? 詰め将棋だと!? 甘いのだよ、お嬢さん!」
クルーゼのドラグーンは、ルナの予測を嘲笑うかのように、シールドの「継ぎ目」を一点に集中して突き破ってきた。
「ッ……! 配置が、読まれてる……!?」
「人の意志が、論理ごときに従うものか! 滅びこそが本願だと言ったはずだ!」
死角から放たれた極太のビームが、ルナの生命線であった背部マルチコンテナドラグーンの1基を直撃、粉砕した。バランスを崩した機体を、クルーゼの全方位照射が逃さない。
「あ、ぁぁぁああっ!!」
さらに、もう1基のコンテナも爆散。背後の盾を失ったジュピターヴへ、無慈悲な弾雨が降り注ぐ。
――ズドガァァンッ!!
「くっ……! 右カメラ、大破……! バルカンも……っ!」
頭部右側のメインカメラと右バルカンが火花を散らしてブラックアウトした直後、左腕付け根に直撃したビームの莫大なエネルギーが内部フレームを完膚なきまでに破壊。強烈な爆煙とともに、ジュピターヴの左腕部が肩から丸ごと宇宙の闇へと吹き飛んだ。
「きゃあぁぁぁっ!?」
「逃がさんと言ったはずだ!」
さらに畳みかけるプロヴィデンスの追撃。万事休すかと思われたその時、ルナの瞳に鋭い光が宿った。
(ただで……撃たれるわけにはいかない……!)
ルナは右足部のジュピターアーマーを緊急パージすると同時に、右手に保持していたビームガトリングの追加パーツを力任せに分離・射出。残された頭部左側のバルカンを、パージしたガトリングパーツへ向けてゼロ距離で叩き込んだ!
――ドカァァァンッ!!
高密度のエネルギーセルを抱えたガトリングパーツが、至近距離で眩い大爆発を起こす。
「なに……! 機体が弾けたか……ふん、所詮はその程度の器よ」
激しい爆炎と拡散する熱源反応。プロヴィデンスのモニターには「目標撃破」に近いノイズ信号が走り、クルーゼは冷笑を浮かべると、そのまま興味を失ったように新たな獲物――フリーダムガンダムの方角へと機体を翻した。
だが、爆発の猛烈な風圧と衝撃を利用して吹き飛ばされたコアガンダムは、撃滅を免れていた。
分離・浮遊させたまま放置された2基のマニファードラグーン、そして左腕と右足アーマーを失い大きく回転する機体。爆発の反動とチョーカーからの強烈なフィードバックがルナの神経を極限まで焼き切り、彼女の視界は急速に漆黒へと落ちていった。
(……キラ……。……みんな……。ごめん……なさい……)
少女の意識は静かに途絶えた。 撃破されたと誤認された歪な機体は、漆黒の宇宙の深淵へと静かに漂流していくのだった。
第26話をお読みいただき、ありがとうございました!
ついにヤキン・ドゥーエに降臨したラウ・ル・クルーゼとプロヴィデンスガンダム。 ルナが編み出したマルチコンテナドラグーンのビームシールドと、両腕部マニファードラグーンのビーム砲撃による迎撃戦術すらも、クルーゼの狂気的な執念と圧倒的なドラグーン運用の前には通じませんでした。
しかし、絶体絶命の窮地において、ルナはパージしたビームガトリングパーツをバルカンで爆破する決死のブラフを敢行! クルーゼに「撃破した」と誤認させることに成功し、間一髪で生還(漂流)を果たしました。
左腕を奪われ、右足アーマーを失い、宇宙空間に取り残されたマニファードラグーン……。満身創痍となり、宇宙の闇の中で意識を失ったルナ。
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次回、第27話は『【Core】不屈の覚醒、光の翼へ』をお届けします!次回もぜひお楽しみに!