機動戦士ガンダムSEED RE:SONANCE ―星巡りのルナと換装の呪縛― 作:マキ
【あらすじ】
バクゥの猛攻に苦戦するキラのストライク。絶体絶命の危機に駆けつけたのは、素体状態(コアガンダム)のルナだった。未完成なチャージとTP(トランスフェイズ)装甲の極限状態でバクゥの攻撃を掻い潜り、上空の無人支援機からアースアーマーを引き寄せる。「コアチェンジ、ドッキング・ゴー!」――鮮やかなブルーとホワイトの相転移(PS装甲)とともに『アースリィガンダム』が再起動し、【戦術統制】モードへと切り替わったルナの猛烈な反撃が幕を開ける!
「おい! 待てってお嬢ちゃん! ハッチを開けろ!」
マードック曹長がキャットウォークを叩きながら怒鳴るが、コアの強固な装甲に阻まれたコックピットの中には、その声は届かない。
ルナは恐怖と薬切れの激痛で震える指先を抑え込み、必死にコンソールを叩いた。
「外部アクセス、全面遮断……マスターコードナンバー7を入力。……コア、起動します……っ」
ガギィィィン!と重苦しい金属音が響き、給電中だったアークエンジェルのケーブルが強制排除されて床に跳ねた。それと同時に、隣に並んでいた無人支援機リアクターコアハンガーの大型スラスターが、主の危機を察知して激しい爆音とともに青い火花を吹き上げる。
「何考えてんだ、あのガキ! 止めるんだマードック!」
ブリッジから通信モニター越しに叫ぶナタルの声を無視するように、コアはリアクターコアハンガーの牽引アームとドッキング。二つの機体は一体となり、ストライクが飛び立っていったばかりの、まだ熱気の残るカタパルトデッキへと滑り込んだ。
「出力、最大。……行きます……!」
ドンッ!!
アークエンジェルのクルーたちの驚愕の視線を背に、二回りも小さな機体は、猛烈な推進力で砂塵の吹き荒れる外の世界へと弾き飛ばされた。
外の戦場は、シ烈を極めていた。砂漠の王と呼ばれるザフトの陸戦用モビルスーツバクゥが3機。その変幻自在の四足歩行システムは、不慣れな砂地に足を取られるキラのストライクを完全に翻弄していた。
「くそっ……! 動きが速すぎる……ああっ!?」
ストライクが放ったビームライフルの光条は、砂丘を滑るように跳躍したバクゥにかわされ、虚しく砂を焦がす。直後、別のバクゥが死角からストライクの脚部に激しい体当たりを喰らわせ、巨体が激しく砂原へと転がった。そこへ、首部の2連装ビームサーベルを起動させたバクゥが、トドメを刺さんと空中へ跳躍する。
「しまっ――」
キラが絶望に目を見開いた、その瞬間だった。頭上から、凄まじい速度で突入してきた「小さな影」が、跳躍していたバクゥの頭面に強烈な蹴りを叩き込んだ。
ドゴォン!!
「……っ!?」
ストライクのコックピットで、キラは驚愕して目を見開いた。バクゥを蹴り飛ばし、砂塵の中に音もなく着地したのは、ストライクよりも遥かに小さな、まるで骨組みが剥き出しのようなモビルスーツ、コアだった。さらにその上空には、強力な推力でホバリングする支援機が随随伴している。
「あの時の……女の子……!?」
「ストライク、下がって」
通信回線に割り込んできたのは、医務室での怯えを残しながらも、必死に感情を押し殺そうとする少女の声だった。
「機体の機動特性が砂漠の環境に適応していません。そのままではOSの演算が追いつかず、排除されます」
「え……? でも、君のそのモビルスーツだって……!」
キラの言葉が終わるより早く、蹴り飛ばされたバクゥと、残る2機がフォーメーションを組み直し、今度はコアへと狙いを定めて猛烈な速度で突撃してきた。背部のレールガンが、一斉に火を噴く。
「……トランスフェイズ装甲は使えない。なら……!」
ルナの瞳が焦燥に揺れる。まだ素体状態のため、一発でもレールガンを受ければ致命傷になる。だが、彼女は野生的な感覚でレバーをミリ単位で弾き、信じられない反射速度で弾道を予測。小さな体躯をステップさせるようにして、降り注ぐ砲弾の雨をすべて紙一重で回避してみせた。
しかし、エネルギーの限界と肉体の激痛がルナを追い詰める。このままではジリ貧だ。
「ハンガー、コール……!」
ルナの叫びに応じ、上空のハンガーからアースアーマーの各パーツが射出され、砂煙の中でバラバラに分解しながらコアへと引き寄せられていく。
「コアチェンジ、ドッキング・ゴー……アースリィ!」
ガシィィン!ガシィィン!と激しい風圧とともに各部アーマーが固定され、ドッキングしていく。
ドッキング完了と同時に、アースアーマーの大容量バッテリーから莫大な電力が直結。首元のチョーカーが激しく明滅し、ルナの脳へ自律AIの戦術データが流れ込んだ。
思考が【戦術統制(アースリィ)】モードへと強制切り替えされる。怯えていた少女の精神から恐怖と激痛が急速に洗い流され、瞳は氷のように冷徹なディープブルーへと染まった。
「……戦術統制モード移行完了。予測通りの動きね。これより任務を継続、対象を排除します」
先ほどまでのコア単体では、被弾時のみ電力を消費する省電力の『トランスフェイズ(TP)装甲』がシステムとして機能していた。しかし、アースアーマーと再びドッキングし、膨大な電力が直結した今、その防禦システムはアースリィ本来の常時展開型『フェイズシフト(PS)装甲』へと完全移行する。
グレーだった機体表面が瞬時に相転移を起こし、鮮やかなブルーとホワイトの輝きを放ち始めた。大容量バッテリーのバックアップを得たその装甲は、文字通り「無敵の盾」と化していた。
アースリィとなったルナは、右腕に専用のビームライフルを構え、その銃身を迫り来るバクゥの1機へと向けた。
エネルギーはまだ半分しかない。しかし、完全なPS装甲の防御力とアースリィの最大火力があれば、この場にいるザフトを全滅させるには十分すぎる数値だった。
チョーカーが微かに警告の電子音を鳴らし始める中、ルナは感情を一切排した瞳で、冷酷にトリガーを引いた。
第3話をお読みいただき、ありがとうございました!
ついにアースアーマーとの再ドッキング――『アースリィ』への変貌をお届けしました!
本作における機体ギミックとして、素体であるコア状態では被弾時のみ電力を消費する『TP(トランスフェイズ)装甲』が機能していますが、アースアーマーと合体した瞬間、大容量バッテリーの電力を活かした常時展開型の『PS(フェイズシフト)装甲』へとシステムが完全移行します。
第1話の冒頭で見せた姿(アースリィ)へとなり、グレーから鮮やかなブルー&ホワイトへと相転移を起こすロマンが伝わっていれば嬉しいです!
バッテリー半分という制限のなか、【戦術統制】モードへと切り替わったルナの反撃が始まります。
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次回『第4話:【Core】砂塵の彼方へ』に続きます!