機動戦士ガンダムSEED RE:SONANCE ―星巡りのルナと換装の呪縛― 作:マキ
【あらすじ】
「砂漠の虎」アンドリュー・バルトフェルドの精鋭部隊による総攻撃が開始された。満身創痍のアークエンジェルを守るため出撃するキラのストライクだが、砂漠の王たるラゴゥの猛攻に窮地に陥る。そこへ、完全チャージを遂げたルナのアースリィガンダムが参戦。激化する戦場の中、ルナの悲鳴をきっかけにキラのSEEDが再び覚醒する! 死闘の末に砂漠を脱出したアークエンジェル。オーブ領海へ到着した深夜、ルナはコアガンダム単体(TP装甲)とサポートメカを引き連れ海へと潜り、電撃的な密航離脱を果たす――。
砂漠の夜が明け、地平線が燃えるような赤に染まる頃、激しい砲撃音が轟いた。
アンドリュー・バルトフェルドが率いるザフトの精鋭部隊が、「明けの砂漠」の拠点を容赦なく巻き込みながら、アークエンジェルへ向けて総攻撃を開始したのだ。
「キラ、無理はしないで! 敵の数が多すぎるわ!」
マリューの悲痛な静止を振り切るように、スカイグラスパーに乗ったカガリが見守る中、ストライクガンダムがカタパルトから発進する。
しかし、砂漠の虎の牙は鋭かった。バルトフェルドの駆る金色に輝く複座型MA『ラゴゥ』と、それに追従するバクゥたちの猛攻は、これまでの戦闘とは次元が違っていた。
「砂漠の戦い方を教えてやらあ、少年!」
ラゴゥの強烈なビームキャノンが砂丘を吹き飛ばし、変幻自在の駆動による鋭い爪がストライクを追い詰める。不慣れな砂地に足を取られ、フェイズシフト装甲のエネルギーをじわじわと削られていくストライク。
その時、アークエンジェルのハッチから、爆発的な推進力と共に青き機体が出撃した。
潜伏期間中に完全チャージを完了したアースリィガンダム――ルナだった。
リアクターコアハンガーとドッキングし、アースアーマーの大容量バッテリーから膨大な電力が直結した瞬間、機体表面が鮮やかなトリコロールへと相転移を起こす。常時展開型『フェイズシフト(PS)装甲』の起動。それと同時に、首元のチョーカーが脳波を検知し、彼女の精神は再び冷徹な兵器(アースリィモード)へと強制的に書き換えられた。
「ストライク、援護します。……これ以上の遅滞は、本艦の運行スケジュールに支障をきたします」
「君……! 来てくれたのか!」
ルナの瞳が冷徹なディープブルーに染まる。アースリィの精密な射撃がバクゥの駆動部を正確に撃ち抜いて動きを止め、生じた隙をキラのストライクが確実に撃破していく。完璧な連携。
しかし、砂漠の王たるバルトフェルドは揺るがない。
ラゴゥの猛烈な突撃がアースリィの死角を捉えた。予測演算の隙を突いた執拗な体当たりが、アースリィの左腕のシールドを激しく弾き飛ばす。PS装甲が衝撃を逃がすものの、その強烈な反動が首元のコントロールチョーカーを介し、ルナの脳内へと激しい負荷激痛となって跳ね返った。
「効率的処理に支障……くっ……あぁぁッ!!」
「ルナ……!? ――やめろぉぉぉッ!!」
痛みに苛まれる少女の悲鳴が通信回線に響いた瞬間、キラの脳内で再び何かが弾けた。
――パキィン!と、宇宙の戦場で何度も鳴り響いたあの乾いた音が、精神の深層で再び覚醒のトリガーを引く。キラの瞳から光が消え、絶対的な集中力が彼を支配した。SEEDの再覚醒だった。
ストライクの動きが、一瞬で文字通り「変貌」する。
OSの限界を超えたような人間離れした超高速戦闘。砂地を滑るラゴゥの攻撃をことごとく紙一重で回避しながら、ストライクは猛烈な勢いで肉薄していく。
その圧倒的な戦闘機動を、ルナはアースリィモードの冷徹な思考回路の端々で、息を呑んで見つめていた。
(あれが……ハッキングデータにあった、彼の『覚醒状態』の戦闘期待値……。やはり私の演算予測を……遥かに超越している……!?)
激しい死闘の末、ストライクの双眸が鋭く光る。肉薄したストライクの両腕から放たれたアーマーシュナイダーが、ラゴゥの強固な装甲を切り裂いた。
直後、激しい爆炎が砂漠の地平線を包み込む。
――戦いは、終わったのだ。
数日後。
激戦の果てに満身創痍となったアークエンジェルは、激動の砂漠をようやく抜け、中立国である「オーブ連合首長国」の領海へとたどり着いていた。
だが、その平穏な海の裏では、先に現地へと戻っていたカガリの父であり代表首長であるウズミ・ナラ・アスハの影と、国防企業『モルゲンレーテ』の技術者たちの思惑が静かに動いていた。
領海侵犯の警告とドック入港への手続きのため、アークエンジェルのブリッジと格納庫(ハンガー)は慌ただしい緊迫感と混乱に包まれていた。
入港準備に伴い、一時的に安全ロックが解除されたカタパルトハッチ。その一瞬の隙を、ルナは見逃さなかった。
静まり返った格納庫の暗がりから、1機の小さなモビルスーツとサポートメカが、誰にも気づかれることなく音もなく海面へと滑り出した。
エネルギー切れを待たず、自らの意思でアーマーを解除した『コアガンダム』。
そのコクピットの中で、ルナの瞳からはアースリィの冷徹な色は消え去り、再び周囲のすべてを鋭く拒絶する「素体」の孤独な精神へと戻っていた。
機体表面はグレーのフェイズシフトダウン状態。被弾時のみ電力を消費する『トランスフェイズ(TP)装甲』のシステムだけをサイレントモードで維持しながら、コアガンダムは夜の海へと潜っていく。
「キラ・ヤマト……カガリ……あなたたちのデータはすべて記録しました」
暗いコクピットの中で、ルナは小さく呟いた。首元のチョーカーに触れる指先が、微かに震える。
「私は、私の戦いへ行く」
アークエンジェルという「揺り籠」を自ら飛び出した少女の孤独な旅路は、オーブという新たな舞台へ。
データバンクからハッキングした情報を頼りに、世界各地へ失われた他のコアドッキングシステムのアーマーたちを奪還する、彼女の隠密作戦が幕を開けようとしていた。
砂漠を抜けた約束の海には、夜霧が深く立ち込めていた。
第5話をお読みいただき、ありがとうございました!
激化するバルトフェルド隊との決戦、そしてキラのSEED再覚醒を冷徹なシステム視点で分析するルナの描写をお届けしました。ハッキングデータにあった「異常な戦闘期待値」を目の当たりにし、ルナも大きな衝撃を受けます。
そして何より、アークエンジェルという居場所を自ら離れ、コアガンダム(TP装甲)単体で夜の海へ消えていくラストシーン。ここから世界各地に散らばったアーマーを奪還する、ルナの孤独な単独作戦がスタートします!
これで第1章(砂漠編)が完結となります。ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!
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