機動戦士ガンダムSEED RE:SONANCE ―星巡りのルナと換装の呪縛― 作:マキ
【あらすじ】
アークエンジェルを脱出し、オーブの岩壁に隠された「秘密のドック」へと潜入したルナ。彼女を迎えたのは、国防企業モルゲンレーテの技術統括エリカ・シモンズだった。ルナはコアガンダムの稼働データと引き換えに、機体の整備環境と各地のアーマー追跡データを要求する。そこで提示されたのは、かつて第1話の演習場から回収されていた予備フレームと、長距離狙撃兵器『ビームシュートライフルU7』のパーツとストライクPの残骸だった――。
第6話【Core】秘密のドック
アークエンジェルのハンガーを脱出したコアガンダムは、夜の帳が下りたオーブの海を低空飛行で滑るように進んでいた。ルナがアークエンジェルのデータから割り出した座標――それは、中立国オーブの国防企業モルゲンレーテが管理する、表向きの地図には記載されていない岩壁の秘密ドックだった。
「識別信号、送信。……ハッチを開放してください」
ルナがコンソールを叩くと、まるで巨大な岩山が割れるように、隠蔽されていた重厚なハッチがゆっくりと左右にスライドした。内部から漏れ出すのは、アークエンジェルとは異なる、どこか人工的で冷徹な白い光。コアガンダムがゆっくりと着艦デッキへ降り立つと、そこにはすでに、数人の技術者たちと、彼らを背後で護衛するオーブ軍の兵士たちが待ち構えていた。
プシューッ、とコックピットのハッチが開き、熱気と共にルナがタラップへと降り立つ。アーマーのない素体の彼女は、武器こそ持っていないものの、野生の獣のように身体を硬くし、全員を敵視する視線を向けていた。
「近づかないで」
低く鋭い拒絶。それを迎えたのは、モルゲンレーテの技術部門を統括する女性技術者、エリカ・シモンズだった。エリカはルナのただならぬ警戒心を大人の余裕で受け流し、フッと微笑む。
「ようこそ、連合の迷子さん。私はエリカ・シモンズ。あなたが来ることは、私たちの情報網でも少しだけ掴んでいたわ」
ルナは表情を変えず、首元のコントロールチョーカーをそっと指でなぞりながら、冷淡な視線をエリカに向けた。
「知っていたのなら話が早いです。私は機体の整備環境と、各地に散らばった換装アーマーの追跡データを求めてここへ来ました。その見返りとして、私の機体――コアガンダムの稼働データをあなたたちに提供します」
エリカの隣にいた技術者たちが、驚きに目を見開く。
「稼働データだって!?連合が極秘に進めていた、あのコアドッキングシステムのオリジナルデータか!?」
「ええ。それに、あなたたちが砂漠の半壊した基地から、ちゃっかり何かを回収していることも知っています」
ルナの言葉に、エリカはフッと不敵な笑みを漏らした。
「目ざとい子ね。ええ、その通りよ。ザフトが去った後、うちの回収班が面白い残骸を見つけてね。……ついてきなさい」
エリカに案内されてドックのさらに奥、厳重な隔壁で仕切られたエリアへと足を踏み入れたルナは、思わず息を呑んだ。そこに鎮座していたのは、ルナのコアガンダムと全く同じ形状をした、未完成の剥き出しのフレームだった。
「うちの回収班が、例の砂漠の演習場跡地から独自に回収してきたコアガンダムの予備フレームよ。……それとね、もう一つ面白い『お土産』があったわ」
エリカがコンソールを操作すると、照明が別のハンガーを照らし出した。 そこに置かれていたのは、装甲がズタズタに引き裂かれ、黒く焦げ付いた凄惨なモビルスーツの巨躯——第1話の砂漠で、バクゥの猛攻を受けて大破・沈黙した**『ストライク(模擬再現機)』の残骸**だった。
「……あの機体。あの時、私と並んで倒れた……」
ルナが冷たい瞳を僅かに細める。外装は原形をとどめないほど破砕されていたが、胸部の中央——コックピットを守るメインフレームだけは、奇跡的に原形を保っていた。
「ええ。バクゥの爪と砲撃で外装と駆動系を派手に破壊されて、完全な『大破』状態だったけれどね。幸いなことに、中心フレームの強固な骨格と、ブラックボックスに残された生の戦闘データは無事だったわ。……今、うちの技術陣がその骨格とデータを抽出を進めているところよ」
「……兵器の残骸まで利用するのですね」
「無駄にはしない主義なの。……さあ、話を戻しましょう」
エリカは不敵に微笑むと、隣に置かれた大型の長距離狙撃兵器のパーツへと視線を移した。
「それは……」
「連合が開発スケジュールに間に合わず、武装だけが先行試作されていた長距離狙撃ユニットの基幹武装、ビームシュートライフルU7のパーツよ。アーマー自体はまだ設計すらされてないみたいだけれど、うちの技術であなたのコアガンダムに同調・稼働させられるわ」
「あと回収したストライクの残骸データ、見させてもらったわ」
エリカ・シモンズは画面上のデータを指で弾きながら、どこか感心したように息を吐いた。
「Gストライカーの熱伝導制御、EXのデッドウェイト、ライトニングの給電機構……単なるストライクのデータじゃない。連合が迷走しながら重ねてきた失敗と試行錯誤の歴史が丸ごと詰まっている。おかげで、U7の出力調整も一気に目処が立ったわ」
ルナは、青く鈍い光を放つ巨大なライフルの銃身を見上げた。専用のアーマーがない状態での運用は、機体へのキックバックやバッテリー消費の面で凄まじい負荷がかかる。だが、他人を信じられず、力だけを求める今の彼女にとって、これ以上ない強力な「新しい牙」だった。
「……交渉成立です、エリカ・シモンズ。私はここに留まり、機体のアップデートを行います」
「いいわ。お互い、利用できるものは徹底的に利用しましょう」
中立国オーブの闇に潜む巨大企業モルゲンレーテ。そこでルナは、ただ1機のコアガンダムをさらに危険な存在へと変貌させるための調整を開始するのだった。
第6話をお読みいただき、ありがとうございました! 第2章「アーマー回収編」の幕開けとなる今回は、モルゲンレーテのエリカ・シモンズとのスリリングな交渉と、新たな整備環境・装備の獲得を描きました。 第1話の演習場跡地から密かに回収されていた「予備フレーム」によるパーツ補給、そして専用アーマーがない状態での強力な新武装「ビームシュートライフルU7」の導入など、単独行動を開始したルナがさらに危険な力を手にしていくワクワク感を楽しんでいただけたら嬉しいです! オーブの闇のドックで機体のアップデートを進めるルナ。そこへ、同じくオーブへと入港したアークエンジェルの存在や、モルゲンレーテの思惑がどう絡んでいくのか……。もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ぜひページの評価(★)や感想、お気に入り登録をよろしくお願いします!皆さんの応援が執筆の大きな励みになります。 次回『第7話:【Core】閃光の試射、あるいは襲撃』もお楽しみに!