私もう朝早く起こされるのは嫌なので、デュエル・アカデミアに入学します 作:猫猫
≪受験番号33番、
「--よっしゃ、私の番だっ」
なんともパッとしない受験番号と共に呼び出すアナウンスが聞こえて、私は両頬をパンッと叩いて立ち上がる。
別に成績は程々で良い、取り敢えず入試突破だ。
「何でもいいからデュエルアカデミアに入学して家を出るんだ…………」
「受験番号33番、古山遊好さんだね。
この試験デュエルは必ずしも勝利しなければ合格できないというものではない。キミの普段の実力を出せるように頑張ってください」
「はい!」
試験官の先生がデュエルディスクを構えた。
ここで私の新しい人生を掴むんだ。何が何でも合格して…………。
「--デュエル!!」
「朝四時に起こされて滝行とドローの修行から始まる青春を改革して見せるんだ!!
--デュエル!!」
古山遊好 LP4000
試験官 LP4000
「先攻は受験生に与えられる。キミの力を見せてもらおう」
「はい。
お願い私のデッキ。旧いばっかりで碌でも無い因習村もとい因習小屋から私を連れ出して!
ドロー!」
引いたカードは『古のルール』。いつもと同じドロー。
だったらイケる筈!
「手札から『古のルール』を発動します!」
(ほう『古のルール』。手札からレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚する魔法カードだ。
伝説のデュエリスト達が『ブラック・マジシャン』や『青眼の白龍』を特殊召喚するのに使用するのをよく見るが、今どきの若い子が使うのは初めて見るな)
「来て『エビルナイト・ドラゴン』!!」
エビルナイト・ドラゴン ATK2350
「ほう、伝説のモンスターには僅かに劣るが。いきなり攻撃力2350か。素晴らしい一手目だ」
試験官の人が関心してる。よし、好感触だ!
「カードを一枚伏せてターンエンドです」
「では私のターン、ドロー」
デュエル・アカデミアの試験デュエルは、レベルが低く設定されているって受験対策本に書いてあった。いきなり攻撃力2350が出てきたら、向こうは守備にしてくるしかない筈。出来れば一気に攻め込んで楽勝で行きたいな。
「私は『ビッグ・シールド・ガードナー』を攻撃表示で召喚」
ビッグ・シールド・ガードナー ATK100
「へ? あれ、攻撃力100?
ビッグ・シールド・ガードナーって、守備用モンスターの筈じゃ」
「その通りだ。彼のキング・オブ・デュエリストも、このカードを守備用のモンスターとして使用することが常だった。
しかし、そのキングの友が使うカードの中にはとても相性の良いカードがあってね。わたしはコレが好きなんだ。
魔法カード『右手に盾を左手に剣を』発動!」
「そのカードは、モンスターの攻撃力と守備力を入れ替えるカード!?」
エビルナイト・ドラゴン ATK2400
ビッグ・シールド・ガードナー ATK2600
「その通り! よく勉強しているねえ、若いのに実に感心だ!!
このカードの効果によって場のモンスターの攻守は変動! これでビッグ・シールド・ガードナーの攻撃力はエビルナイト・ドラゴンを越えた!
どうだね古山くん! キング・オブ・デュエリストとその生涯の友のカードのコンボ! まさに絆の力だと思わないかね!?」
「え、あ。はい。そー思います」
「フフフフフ!! 実に話の分かる子だ! デュエル・アカデミアに入学した際にはもっと沢山の絆を教えてあげようじゃないか!
さあバトルだ。ビッグ・シールド・ガードナーでエビルナイト・ドラゴンを攻撃!! 鈍器で殴るこうげき!!」
ビッグ・シールド・ガードナー ATK2600 VS エビルナイト・ドラゴン ATK2400
古山遊好 LP3800
「くっ、最上級モンスターが壁モンスターに一蹴されるなんて……プランが崩壊した」
「うむうむ! これがデュエルの奥深さだね!
わたしは永続魔法『ウェポンチェンジ』を発動。
そしてカードを一枚伏せてターンエンドだ」
すっごい気持ち良さそうな顔でエンド宣言をする試験官。ちょっとムカつく……!
「私のターン、ドロー!」
ウェポンチェンジは、自分のスタンバイフェイズにライフを700払うことで自分のモンスター一体の攻守を相手のターンのエンドフェイズまで入れ替えるカード。つまり、ビッグ・シールド・ガードナーが残っていると、次のターンも攻撃力2600で襲い掛かってくる。
けど、それまでは攻撃力100の貧弱モンスターが倒されるためのマトになってるだけ。
「魔法カード『思い出のブランコ』を発動! 墓地からエビルナイト・ドラゴンを復活!」
エビルナイト・ドラゴン ATK2350
「なんと。通常モンスター専用の蘇生カードとは。
しかし、そのカードで特殊召喚されたモンスターはこのターンのみの命。儚いものだ。まるで歴史のように……」
気持ち良さそうに語っててキモいなぁ!
「バトルです! エビルナイト・ドラゴンでビッグ・シールド・ガードナーに攻撃!
やられた分を倍返しだー!」
エビルナイト・ドラゴン ATK2350 VS ビッグ・シールド・ガードナー ATK100
「フッフッフ。古山くん、計算は苦手かね? その攻撃が通ったらダメージ的には2150。十倍以上じゃないか。仕返しのバランスが悪すぎて看過出来ないなぁ!
リバースカードオープン。速攻魔法『月の書』。
このカードの効果で、ビッグ・シールド・ガードナーを裏守備表示に変更する。
やられた分の倍返しだが、受け取り拒否だ。着払いにさせてもらうよ!」
エビルナイト・ドラゴン ATK2350 VS ビッグ・シールド・ガードナー DEF2600
「く、くうううう~~!!」
古山遊好 LP3550
「ビッグ・シールド・ガードナーは攻撃を受けると攻撃表示になる。攻守を変更させてもらう」
ビッグ・シールド・ガードナー ATK100
「グヌヌヌぬ……っ、メインフェイズ2へ入ります」
「どうぞどうぞ! さあ、もっとキミの力を発揮してくれたまえ!!」
気持ち良さそうに喋る顔が本当にムカつく!! 見てろよあの試験官、そのドヤ顔で喋る口を魚みたいにパクパクさせてやる!!
「魔法カード『鹵獲装置』を発動!
互いのプレイヤーはモンスターを一体選択して、コントロールを入れ替えます。
ただし、私が選べるのは通常モンスターだけですけどね」
「ふむ。我々の場には互いに一体ずつしかモンスターがいない。
私のビッグ・シールド・ガードナーとキミの儚い命のエビルナイト・ドラゴンか。
自分は相手のモンスターを奪い、私のカードは事実上の除去。そしてその代償として私に渡したモンスターは最初からこのターンまでの命。これは実に良い一手だ。ここまで戦術的なカードの使い方をする生徒は、今のオベリスクブルー三年生でもそうは居ない」
それって、もしかしてデュエル・アカデミアって生徒のレベル低いとか?
古山遊好、デュエル・アカデミアの首席とかワンチャンあります?
ちょっと良いかも~昔はエリート専用の寮とかもあったって言うし、ウッハウッハのバラ色学園生活とか~ぬっふっふっふっふ~♪
「私はビッグ・シールド・ガードナーを生贄にして『ファイヤー・ウィング・ペガサス』を召喚」
ファイヤー・ウィング・ペガサス ATK2250
「ふむ。ファイヤー・ウィング・ペガサスか。
先ほどから『通常モンスター関連』のカードばかりだが、何か拘りがあるのかね?」
「いえ、私は別に。父がデュエルモンスターズに思い入れが強くて、通常モンスター関連のカードだけは沢山持ってるんです」
「ふむ。それを受け継いだわけだね。実に面白い話だ」
この人さっきから受験生の私よりカードと歴史のことしか見てない。
何でこんなのが試験官やってるんだろう? まさか人手不足じゃあるまいな!? 嫌だぞせっかく入学出来ても来年経営不振で潰れマースとか!!
「あの、一つ質問良いですか?」
「ああ。もちろんだ。意欲的な者にデュエル・アカデミアは協力を惜しまないとも」
「デュエル・アカデミアって、三年以内に潰れたりしそうだって話とかあります?」
「…………ないんじゃないかな。聞いたこと無いし。学園が潰れるって話も、ついでに受験生に『この学校潰れますか?』なんて質問されたことも無い」
「ふぅ……それは良かったです。
これで、入学さえ出来ればそこからの三年間は『毎朝七時まで朝寝坊する』と言う、私の人生の悲願の一つが叶うのは約束されました!」
「朝七時が朝寝坊に入るのかは諸説あるが、デュエル・アカデミアは授業の時間にさえ間に合っていれば何時まで寝ていても問題はないよ。
私室以外の寮の掃除当番とかも無いしね」
「おっしゃあ!! 俄然やる気が出ました。ターンエンドです!」
「私のターン、ドロー」
ビッグ・シールド・ガードナーは駆除してやった。これでウェポンチェンジはただの置物。
あとは今度こそあっちがモンスターを壁にしてエンドとかしてくれれば……!!
「いやぁ、正直なところ驚いたよ古山遊好くん。まさか、受験生がここまで私を
「ひょ?」
え、何? この不穏な前振りみたいな空気は。ちょっと? 貴女いま試験官ですよ?? 本気にさせるとかイズ何!? 職務放棄か!?
「実は私はこう見えて、デュエル歴史学の教師をしていてね……」
「あ、はい。でしょうね」
逆にここまでの言動でその手の教師じゃなかったら何だと言うのか。
「特に、決闘王の提唱していた絆の力に大きな関心があるんだよ。
だからこのデッキも、絆の力をテーマに組んであるんだ」
「ここまでのプレイングではただのビッグ・シールド・ガードナーをアタッカーにするためのデッキにしか見えませんでしたけどね」
「そこでだ。キミには特別に、絆の力の偉大さを特別授業してあげようと思うんだ!!」
「結構です。入学した後で、授業時間中にお願いします」
「さあ刮目せよ!! これが絆の力だァ!!!!」
「話を聞けよいらねえっつってんだろ、役目を果たせ公僕ゥ!!!!」
「魔法カード融合を発動!! 手札から『カオス・ソルジャー』と『破壊神ヴァサーゴ』を融合し『
「うわあああああーーー!?!? 思ってたよりデカいのが来たあああーー!!!!」
「ゆけ、絆の力よ!!
古山遊好 LP800
「ぎゃああああーーー!!?」
攻撃力5000の衝撃がソリットビジョンとは言え襲い掛かる。割と吹き飛びそうだ。
「ああ、
職務放棄してデカブツ出して人を殴って、挙句トリップしてやがる。本当に教師なのか
…………ってか、いい加減キレてもいいかな?
「私はこれでターンエンドだ!
さあ、古山遊好くん。全身全霊で掛かってきたまえ!!!!」
「………………」
「うん? どうしたね? もしかして怯えたかね? 大丈夫さ!! 私がこんなものを出した時点でもう実技試験は私の一存で合格だ。後のことは怯えなくてもよい!!」
「………………へえ」
そっか。私はもう合格扱いなんだ。
じゃあ、こいつぶっ飛ばしても良いな。
「私のターン、ドロー」
「そうだ、その意気だ! ファイトだ古山くん!!」
ああ、来てくれたか。私のアイドルカード。
「私はジェリービーンズマンを召喚します」
ジェリービーンズマン ATK1750
「おお、ここ来て初めて下級モンスターを喚んだね。
キミのデッキ、随分と多くの上級モンスターが採用されているみたいだが……それを回せる実力は驚嘆の一言だよ」
「…………父親が毎朝四時に運命力を鍛える特訓だーとか言って、滝行とドローの特訓させてくるんで。
だから、いつかきっと下剋上してやろうと思ってるんですよね。
装備魔法『下克上の首飾り』を発動。ジェリービーンズマンに装備」
「ふむふむ。下克上の首飾りは通常モンスターにのみ装備できる装備魔法。
その効果は、戦闘を行うモンスターとのレベル差の分だけ攻撃力を500上げると言うもの」
「…………あは☆」
「んじゃ、バトルで。
ジェリービーンズマンで
ジェリービーンズマンのレベルは3。
よって上昇値4500を受ける私のアイドルカードの攻撃力は--。
ジェリービーンズマン ATK6250
「攻撃力ろろ、ろくせんんんんーー!!」
「因みにこのリバースカードなんですけど、実は同じく『下克上の首飾り』だったりするんです」
「(チーン……)」
「絆の力が悪いとか、個人の力こそが絶対とか。どうでも良いんですけど、流石にここまで大火力出せると爽快ですよね」
ジェリービーンズマン ATK10750
「なんてことだ…………究極竜騎士《マスター・オブ・ドラゴンナイト》の上からワンキルだなんて……」
「対戦ありがとうございました。
行け、ジェリービーンズマン!」
「ヤあああああああああーーーー!!!!(泣)」
試験官 LP0
「あふんっ!!」
「よっし! やられた分もきっちり倍以上にして返してやったぜ!!
ふーすっきりした。
やっぱり外野からあーだこーだ言われないデュエルは良いもんだ。
あ……先生、一応再確認しますけど、私実技は合格って確約なんですよね?
私デュエル・アカデミアに入ったら、学園の格安激レア封入率が高いパック剥いてデッキ変えたいんで、よろしくお願いしますー」
「あ……うん。任せて、遊好ちゃん……がくっ」
こうして、デュエル・アカデミアへ入学出来ることが内定した私は帰路へ着くことにした。
"お、おい……見たかよあの33番。すげえ攻撃力出してたぞ"
"と、とんでもねえヤツと同じ時代に産まれちまったもんだぜ……"
"ば、バカな……クロノス教諭のアンティーク・ギア・ゴーレムを上回る究極竜騎士《マスター・オブ・ドラゴンナイト》と、更にその攻撃力を雑魚モンスターで上回るデュエリストだと……!?"
何か周囲がガヤガヤしていたらしいことは、のちに友達に聞くまで全く知らなかった私なのだった。
試験官
入学してよく絡むことになる。デュエルのことになると早口になるが、ソレ以外は良識があるタイプ。
名前はまだ無い。