私もう朝早く起こされるのは嫌なので、デュエル・アカデミアに入学します 作:猫猫
本作は日常系ギャグ遊戯王を目指して行きたいと思います。
船が港に着いて、デュエル・アカデミアの島に降り立った私は先ず走った。周りが驚いた表情で見ている気がするが気にしない。だって私はこの日に賭けていたんだから。
「部屋の私物は衣服と学園に必要なもの以外すべて売り払った。既に背水の陣! 銀行の預金もゼロ。身銭は全てこの可愛い財布の中に! 全ては今日この時の為に!!
安くて強いカードが入っていると評判のアカデミア限定販売パックを爆買いするんだ!
クソ親父め、伝統だかなんか知ったことか! 私はとにかく『可愛いカード』でデッキを組む。エンジョイ勢に私は成るんだ!
待っててまだ見ぬ可愛いカード達ーー!!」
”おい、何だアレ?”
”さあ? なんだろな”
”何も知らんけどさあ。
あの気迫でカード買ったら、なんとなく強いカード引けそうな気がするよな”
”ああそれ分かるかも。何か
”ああ言うのが案外、プロになったりするんだろうな~”
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やあ読者諸君。突然だが、私の名は
え? 何故分かるかって? まあ、それは追々。それよりも今は私の話を聞いてくれないか? 非常事態なんだ。
「うう……うううううーーーー……!!!!」
今の唸り声は私ではないよ。私が実技試験を務めた最後の女生徒。在野の優等生である古山遊好くんが上げた絶望の唸り声だ…………。
「ど、どうしたんだい? 遊好くん。こんな所で、こんなにカードの絨毯を拡げてしまって……」
「ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウーーーー!!」
「威嚇しないで?」
ここは購買部の近くにある休憩スペース。窓際に小さいテーブルとイスが幾つか置いてある場所だ。
ビニール袋と、開封されまくったカードパックのゴミから察するに、望んだ開封結果では無かったのだろうとは思うのだ。私もヒスアカでブラマジガールが出なかった時は同じ声を上げていたから。
しかしだ。この学園のカードパックは、いわゆる爆死のような概念は抑え気味になっている。ホログラフィックレアや20thシクのような青天井ガチャ要素も無い。
にも拘らず、何故彼女はこんな20万円課金してマーリンが出なかった人みたいな惨状になっていると言うのか?
「出ないんですよお」
「ふむ。目当てのレアが出なかったわけだな。その苦しみは私も理解できるよ遊好くん。なにせ嘗ては限定欲しさに家賃に手を出したこともある女だからね。
さあ、言ってごらん。キミが欲しかったカードはなんだい?」
「可愛いカード……」
「へ? 可愛いカード?? う~む……今回のパックにそんな可愛いレアカードがあったかな?
確か手元にリストがあった筈だが…………ふぅむ。ソレっぽいのは見当たらないんだが、どれのことだい遊好くん?」
「そういうことじゃないんです! こんなにバカみたいにカードパック買ったのに、私好みのカードが一枚も手に入らなかったんですよ!!
見て、この可愛さのカケラも無いカードたちを!!」
「えっと『メタモルポット』『クリッター』『デビル・フランケン』『幻影の壁』『カラテマン』『サイバーポット』『ジャイアントウィルス』『人造人間サイコ・ショッカー』ゴブ凸『死の4つ星てんとう虫』『ドル・ドラ』『守護者スフィンクス』たけし『怒れる類人猿』『マシュマロン』etc.......。
…………どれもこれも(この世界では)一級品に強力なカードが並んでいるようだが? うおっ!? 三色ガジェが揃っているじゃないか。何が問題なんだい?」
「可愛くないじゃないですか!!」
「遊好くん。カードと言うのは好きだから使うのではなく、使っている内に愛着が湧いて来るものなんだよ?」
「いやあああーー!!(´;ω;`) クソ親父と同じことゆってるううーーーー!」
それから暫くして。
「つまり、遊好くんはご実家の由緒ある流儀……いや、ここは敢えて『お父さんの趣味』と言葉を換えよう。
お父さんの趣味のカードでデッキを組むのが嫌だから、自分の好みの可愛いカードを手に入れてデッキを組みたかったわけだね?」
「はい……ごめんなさい語辺先生。全財産溶かしておいて手に入ったカードがこれかと思うと、平静を保っていられなくて」
「うむ。大丈夫だよ。気持ちはよ~~~~~~~~っっっっく。分かるとも」
「随分深く溜めましたね」
「あまりにも実感が強いからね」
みんなも、心に留めておくんだよ。課金は『余ったお金』でやる物だ。
「ねえ先生、このカード売りに出せます? 強いカードだって言うなら、売り払ったお金で新しくカードパックを買うことも出来るんじゃ……」
「ふむ。少し大人の事情と情操教育についての話をしようか、遊好くん」
「あ、もう出来ない理由を延々説明されるんだって分かったので良いです」
「キミは実に素晴らしい生徒だね。
物わかりの良い生徒には、ご褒美をあげようじゃないか」
白衣の懐から封筒を取り出す。
「もしかして現金ですか!?」
「そんなわけあるか、先生だぞ!!」
この娘は、デュエルの方はお父さんの教育の賜物か目を見張るものがあるんだが。ちょっと未来を希望的観測で染める癖がありそうだね。
借金はしないようにね? 返す『予定』は『未定』なんだよ?
「なぁ~んだ、現金じゃないのかぁ」
「古山君。もしも現金をチラつかせてキミに交渉を迫る大人がいたら、そいつは漏れなく悪い大人だからね? 付いて行かないように」
「それじゃあ、その封筒の中身はなんですか?」
「フフフ。ちょっとした手品が入っていてね。開けてみておくれ」
「手品? まあ、いっか」
遊好くんが素直に封筒の中身を取り出す。中身は一枚のカード。
…………と、思わせておいてからのぉ~~。
「何だカードが一枚……二枚目……三枚、四枚…………いや、何枚入ってんですかこれ?
明らかに年賀状位の薄さからはあり得ない量のカードが入ってるんですが!?」
「ふっふっふっふ。驚いたかね? その封筒には魔法が掛かっていてね。取り出したデュエリストに合わせて勝手にデッキを構築する仕様になっているのだよ!
具体的には、触れた段階でDNAとか指紋とかを採取して、あとはなんやかんや個人情報にアクセスしてどうのこうのする」
「魔法がやけに科学的な説明なんですね」
「まあ、発達した科学は魔法と見分けが付かないって言うからね。
あ、因みに他の人には内緒だよ? そんなモンがあると知られたら、生徒全員が束になって私に襲い掛かって来るかもしれないからね。1人に言ったら30人は来ると思ってる。
…………さて、全てのカードが出てきたようだね。さっそくデッキを確認してみてくれるかい? 気に入ってくれるといいけどねえ」
「………………………………………………………………………………………………………………………………」
あれ? どうした遊好くん?? 何でデッキの一枚目を見た瞬間に固まったんだい?
「遊好くん? どうして全身が石になってるんだい? 何かデッキに不備でも……」
「ぐへ……」
「ぐへ?」
何だろう、今の奇妙な声は。
「ぐふへへへへへへ~~なんて可愛いカードぉぉぉぉーー♡♡♡♡♡」
そう絶叫した瞬間。彼女の顔がトリップした。
この世界の少女は皆さんご存じ、レベルが高い。その中でも彼女の容姿は老若男女に好かれそうなタイプだ。百人見れば八十人くらいは初対面で好感を与えるタイプ。
そんな彼女の顔面が、見せられない感じになっている。この顔を見ても恋心が冷めないのなら、それはきっと真実の愛だろう。
「私好みの理想的なケモケモの『可愛いちゃん』だぁ〜♡♡♡」
「な、なるほど。気に入ってくれたようだね…………」
「しぇんしぇ、コレ本当に頂いてもいいんですかぁ?♡♡♡」
「うん。良いんだよ。
つーか仮に返却を求めたら、手首から先を持って行かれそうだから手を出せないな……」
「ありがとうございます!! じゃあ私今すぐ寮に戻って自分のデッキを鑑賞するので、これで失礼します!!
先生大好き~♡ チュッ♪」
最上級にご機嫌な表情で投げキッスまでして行った彼女は、そのままオベリスクブルー女子寮の方角に真っ直ぐ走り去って行く。
「やれやれ。なんとも感情に素直な娘だ。
けれど、これでようやく一人か。彼女がどんなデッキを引いたのかは、追々知れば良いとして。
これからの日常的なデュエル・アカデミアをどう過ごすのか見せて貰うよ。古山遊好、転生者二世くん……」
今日の所は目的を一つ果たした。私もさっさと部屋に戻って本職の研究を……。
「オヤ、語辺先生。何デースの、このカードの山は!? ゴミも散らかり放題ナノーネ!!
ちゃんとカードとゴミを分別して持ち帰るノーネ!」
「え? あ、いえクロノス教諭これは……」
「もう言い訳は十分デスーノ!!
貴女が赴任して来てかれこれ三年、だらし無さの言い訳は聞き飽きましたーノ!
研究成果や授業がどれだけ素晴らしいものであっテーモ、私室の外にまでゴミが散らかるような生活態度では、教育者たる者として生徒に示しが付かないノーネ! 常に〜〜〜〜!!!!」
「ふぇええええ〜!!