もう朝4時に起こされるのはウンザリです!〜朝寝坊したいのでデュエル・アカデミアに入学します〜 作:猫猫
せっかくなので、この話ではなるべくきららアニメ的な男女比率を目指したい気持ちがあります。
皆さま、ご機嫌ようございます。念願の家の外の生活初日、現在は朝四時。
デュエルアカデミア、女子ブルー寮の広い私室とクィーンサイズのお姫様ベッドで身も心も安眠に捧げた私、古山遊好です。
「………………やっちまった」
普通の女子高生みたく朝まで惰眠を貪る気満々だったのに、私は今朝も四時に目が覚めてしまった。
敗因は分かっています。はい、明白です。
「夜中の九時に寝ます。朝七時まで寝てたいです。
十時間も寝てるってのは……人間、案外難しいものだったんだなぁ。ハハハ……クソが」
朝寝坊初見勢、古山遊好。15年の人生初の朝寝坊を無事に失敗。
眠れもしないのにベッドの上でゴロゴロするには、私の人生は勤勉な早起きと修行に毒され過ぎたんだ…………。
「クソ親父め……ッッ!!
明日こそ絶対に日の出より先に家を出る人生を変えて見せるからなーー!!」
特にやることも無いので。今朝は特別に、いつもの早朝ランニングをすることにした。
「まあ、朝に運動するのは美容には良いらしいし? チッ……!」
今朝で何回目か分からない舌打ちをする。日の出が良い感じに昇り始めた。そろそろ五時くらいだろう。影一つない海の水平線から上がる太陽は綺麗だ。これでテンションが上がるとかは無いけど、それでも大自然の島で走るのはそう悪い気分じゃない。空気が綺麗だって言うのは、こういうことなんだろう。
さてと、寮に帰っても部屋で朝シャンするしかやることは無いし。
もう少し時間を潰していようか?
そう考えつつ女子寮の前を通過した。
きっと私はこの先、何歳になってもこの選択肢を選んだことを後悔するだろう。
連続二十一周目の周回ランへ向かう私の隣に、一つの人影が現れたのだ。
「…………」
「………………」
桃色の髪の女子が、私と同じアカデミアのジャージを着て並走してきた。
汗もかいてない所を見ると、これから走り始めるんだろう。
大方こっちは、本当に美容目的の努力家女子だろうか? 目的意識があって行動出来るのは羨ましいね。私、こう見えて怠惰なもので。
「…………ねえ、アナタ。ボクが起きた頃にはもう走ってたけど、いつから走っているの?」
「朝四時くらいからだよ。と言うか、今何時くらい?」
「今は五時半……って、一時間半も走っているの!?」
(す、凄いこの子。そんなに走り続けているんだ……!)
「五時半かぁ。朝食が六時半から八時半までだったっけ。じゃああと一時間くらい走ってようかな」
「合計で三時間!? 凄い走るのね! やっぱりソレって体力づくりの為?」
「体力づくり……? 全然考えたこと無かったよ。アナタは?」
「ボクはもちろん、体力づくり。デュエルアカデミアに入学したからには、トップで卒業するつもりでいるわ。
貴女が何のためにこんな朝早くからランニングをしているのか、言いたくないならそれでも良いわ。
けど、トップを取るのはこのボクよ。覚えておきなさい!」
「そっか。がんばってー」
私がそう言うと、桃色の子がガクンとズッコケた。
「な、何でそうなるのよ!? ソコは対抗心を燃やして来なさいよ!!
隠してたってわかるのよ!? どうせアナタだって、『特訓』の為に走ってるんでしょう!?」
おっと、そんなこと言われたら看過出来ないなぁ……。
「冗談じゃないです」
「へ?」
「誤解されてても構わないけど、これだけは言っておくよ。
私、別にデュエルで勝つためにデュエル・アカデミアに来てるわけじゃないから」
「はぁ!? な、何よソレ! じゃあ何で朝から三時間も走ってるわけ?」
「暇つぶし」
何か某ミ●ークみたいな言い方になった気がする。まあいいや。
「ひ、暇つぶしですって……!?」
(ボクよりも早く長く走っておいて……暇つぶし!?)
「そう。本当は七時まで惰眠を貪って、人が作ったご飯食べて、学校通って、そこそこの成績取って危なげなく卒業する。
それさえ出来れば
その中で、一番待遇良さそうだったココを受験したの」
「…………なによ、ソレ。そんなの、侮辱よ!!
ここに入りたくて入れなかった人たちだって沢山いるのよ!? そういう人たちを見下す言葉だと思わないの!?」
「え、思わないよ。人には優劣がある。当たり前のことでしょ?
それにさ、『受験戦争』って言葉知ってる? 勝たなきゃ自分がやられる。普通は自分が負けの側に行きたくないでしょ?
私は嫌。キミも嫌でしょ?」
「当たり前よ!! だからボクたちはみんな、必死に努力して勝って、デュエル・アカデミアに入学したんだ! デュエリストになりたくて!
なのに、アナタは何!? どこでも良いから、楽に入学できる所を選んだなんて……受験に落ちた人も、受かったボクたちもバカにする言葉よ!!」
桃色の子が涙目で睨みながらそう叫んで来た。
参ったなぁ……ちっとも話が分からない。
「う~ん。受験する学校を選ぶ理由って、人それぞれでしょう? 特に女子は華道や茶道と同じ程度の『嗜み』としてアカデミアに来ている人もいるって聞いてるよ?
デュエル・アカデミアの就職率見ても、プロに行ってない人とか全然居たし。
貴女はきっと自分の意思で努力出来る人なんだと思うけど。多分、この世はキミみたいに努力をするのが当たり前だって思ってない人は沢山いると思うよ?(主に私)」
「だ、だから何だって言うの……?」
「うん。つまりね。
見たことも無い他人の努力って、正当に受験乗り越えただけの私が考慮する必要なんて無いんじゃないかな……?
だって、受験だよ? 受け入れ可能数を取り合う椅子取りゲームみたいなもんだよ? 例えば使えるもんなら、時間を止める超能力で真っ先に椅子に座ってたって許されるじゃんね?
ネコ型ロボットのタンマウォッチとかの外付け機能を使ったら、不正だとは思うけど。自前で出来ることは全部その人の持つ
「………………良く分かったわ」
俯いて、握りこぶしを作ってそう言った。いや、もう全然分かってないと思う。
思うけど……人類皆兄弟、なんて不可能だ。分かり合えない相手は居る。ソースは私とクソ親父。
「じゃあ、私はもうちょっと時間潰してるんでこれで~」
分かり合えない人とは距離を取って、必要な時に必要な分だけコミュニケーションを取るだけに留めましょう。これが社会の処世術です。って小学校の先生が言ってた。
ばいばい桃色の子。私たちはハリネズミ。近づいても相手を傷つけてしまうのよ……。
「待ちなさーい!!」
「うえええぇぇぇーー!?!? 追ってきた!?
な、なになになに!?」
「アナタが才能に胡座をかくタイプだってことは理解したわ! ええ、口じゃ勝てない!!
けどそのまま勝ち逃げするつもりね!? そんなの許さないわ!!」
「何が!? 許さないって何!? ってか、私才能とか無いしー! 出来ることだけやって、楽してたいだけなのっ!!」
「それが侮辱だって言ってるのよ!! けどもう良いわ! どうせ言い負かされるもん!
だけど、アナタが楽してデュエル・アカデミアに居られるかどうかは別問題よ! そんなにデュエルが強いって言うんなら、キミにはボクの修行の相手をさせてあげるわ!」
「いやでございます」
「安心しなさい、これでもボクは中学では『孤高の天才』なんて呼ばれてたんだからね!
ボクの修行ついでに、キミのその鼻っ柱を『ペキッ』ってしてあげようじゃない!
さあ、先ずはランニングで勝負よ!! 逃げても追い回してやるーーーー!!!!」
「いやああああー! たーすーけーてー!!!!」
「もう無理……たじゅけで……」
「何してんだよお前」
1時間半くらい走って、崩れ落ちた彼女が涙と鼻水でグチョグチョになって泣きを入れて来たので、寮の医務室へ運ぶことになってしまった。
しかも、彼女は小柄な割に結構重いんだよね。
運ぶのにも時間が掛かってしまい、遅刻を防ぐ為に朝ご飯は生贄に捧げざるを得なくなったのでしたとさ。
関係ないけど、巨乳もギフトの内だよね……関係ないけど。
「くっ……か、借りは必ず返すんだからね!!」
「そんなものより、私の朝ご飯返して……シャワーすら浴びられないし」
「………………………………ごめんなさい。
あとで購買部で何か買ってくるから……」
……あ、彼女の名前はツァン・ディレだそうです。今日から同級生です。
………………ハァ。
古山遊好。
語辺先生とツァン・ディレが巨乳なので、バランスを取るために仕方なかった……
「別に貧乳じゃないし!! あの2人がデカいだけで、私は標準じゃんね!?」