嫌われ生徒はその後に好かれても気付かない。 作:ブルーアーカイ部 一般部員
主人公は好かれるよ!けど自己肯定感は低めだよ!
―――――目を覚ます。
気付かない内に寝てしまっていたようだ。カーテンの隙間から僅かに差し込む太陽光から、朝が来てしまったのだと気付く。
上体を起こし、上に伸びる。
………激痛。それは肩や腰と言った、ありきたりの部分からではなく、腹や胸からだった。
一般的なキヴォトスの生徒と言うのは銃弾にはめっぽう強く作られている。が、それはあくまでも『戦闘になった場合、つまりは短期戦』向けであり、常に受け続けていれば話は別である。
僕はキヴォトスでは唯一の男子生徒らしい。それは先生が教えてくれるまで気付かなかったし、多分信じなかったと思う。
産まれてこの方、確かに女性しか居ないなーとは思っていた。けれど、大人の男性(機械や犬を人間の僕と同類に扱っていいのかは疑問であるが)は居たのか。
学園はトリニティだし。何度正実のお世話になったことか。その度に冷たい目で見られたことか。
………話が逸れた様だ。だがこれでわかってくれたと思う。花の女子高校生、そこに正体不明の男子生徒がいたらどう思う?
そう、ご明瞭。煙たがる。ましてや銃弾飛び交うキヴォトスではそれがハッキリとしてる。
僕はいわゆる、『嫌われキャラ』だったようだ。ヘイトを文字通り死ぬ程集め、結果的にただ生き延びているだけの、肉。
始めは少し抵抗しようとも考えたが、神秘?と言う力の差で普通にボコボコにされた経験から、僕は挑むのすら辞めた。
自分から距離を取る、それが最適だと気付くのには時間は要らなかった。
そうして今に至る。僕への嫌われ度は今も進んでいるらしい。
歯磨きを終わらせた僕は白い制服に袖を通す。前述の通り、僕はどこに行っても嫌われる。それを見越した先生が、シャーレに常駐させてくれることにしてくれたのだ。
有難い、何度そう思ったことか。
しかし、物事には良い面だけでなく悪い面も存在していた。それは――――――
――――先生が、色んな学園に顔を出すのだ!!
そう、そのせいでシャーレに入った意味が殆ど無い。馴染めないからシャーレに入れてくれたんじゃ無いんですかぁ!?
閑話休題。渋々ながら、僕はD.U.にあるシャーレに顔を出す。一瞬、Rabbit小隊の
サキ「ま、待て!話を――――」
マトモに聞かなかった。聞こうと立ち止まったら撃ち抜かれるのがオチである。
シャーレの扉は意外と簡単に開く。セキュリティはどうなってんだセキュリティは!!*1
そして、やはりシャーレ内でも気は抜けない。連邦生徒会は僕をとことんいじめたいらしく、『当番制』と言う制度を導入しやがった。
おのれリンちゃん!!いずれ
それ以外にもシャーレ内にあるエンジェル24を利用する生徒が多いらしく、僕はその目を掻い潜らなければならない。
ふぅ、人気者は疲れるぜ!ま、僕は嫌われてるんですけど。
自嘲が思った以上に刺さり、肩を落としながら進む僕。
背後から近付く、一つの声に気付かずに。
カヨコ「…………やっと見つけた、アス」
「ヘァッ!?」
後ろから静かな笑みで僕の肩を掴んできたのは鬼方カヨコさん。ゲヘナの3年生(恐らく)であり、掴みどころが無い人。
「……あの、肩が……その………」
カヨコ「…………」
「な、なにか話して……」
カヨコ「…………まだ、
………怖い、とな。……はて。
確かにカヨコさんは威圧感のある顔立ちだが………別に怖くは………
いやいや、そう言って近付くと密室に連れ込まれズドンである。
「………何の話ですか?」
カヨコ「…………ッ………何でも、無いよ………」
力無く、掴んでいた肩から手を離したカヨコさん。顔には影が差し込み、表情は読めない。
そのまま何も言わず、僕はシャーレの方角へ踵を返した。
………また、避けられた。
私は自分の顔が怖い方だとは自覚している。………うん、している、つもり。
それが理由じゃないことくらい、多分知っている。だからこそ、余計に辛い。
確かに始めは警戒した。男子生徒なんて見たことが無かったから。
けど、すぐに便利屋としての仕事も手伝ってくれたし、アルが危険な選択肢をしそうになった時も、しれっと直してくれたし。
アビドスの時だって、中立の立場で物を考えて動いていた。銃弾を浴びても、痛がるだけ痛がってすぐ立ち上がった。
便利屋にも、雇われた不良たちにも、アビドス側にも被害のない案を出したのは紛れもなく、アスだ。
そして何より、猫と遊んでくれた。普段は無関心そうなアスが、無邪気に楽しむ姿を見て思わず写真を撮ってしまった程で。その写真は今も私のロック画面で、先生の写真とローテで流れてくるようにしている。
だからこそ、私は……鬼方カヨコは、きっと彼を好いている。
……まだ、この心はバレてない。いや、バレさせたくないのだ。
………………悲しいことに、叶うことも無いだろうけど。
話す度に、心の距離が開いている。それは気の所為などではなく、本当に。
近付けば離れる。隣で歩けば半歩ズラされる。会話中は目が絶対に合わない。
だからこそ、怖がってるのだと勘違いしていた。
そう、さっきまでは。
「………怖がって、なかった………なら、あの行動は……」
―――――嫌われている。私が。
確実だろう。怖がってないのに、避ける必要はない。
自分でも珍しい程に、私は家の枕に顔を埋めて、泣いてしまったのだった。
夏である。僕は久々にトリニティに足を踏み入れていた。理由は単純、学校だからだ。
しかし僕には行きたくない理由が存分にある。ほら、見える。
「…………『ティーパーティーからの招待状』……はぁ……またか………」
そう、"また"である。エデン条約以降、トリニティに出向いた瞬間に送られてくる本当に怖い手紙。モモトークで送れよ!!とツッコミが入りそうだが、何故か毎回文面なのだ。
これが粋って奴?なら理解できません。
そうこうしながらも、足は止めない。仮にも所属学校のトップ機構である。しかもシャーレ所属である以上、他の人の話は聞かなきゃ。
ノック3つ。内側から声は聞こえないので、恐る恐る覗く。
「……いないんですか?」
呼んでおいて??と、思考を巡らせたがこれは違う。
これは―――――
ミカ「てぃ!隙ありー!!!」
「よっと。」
ミカ「へびゃっ!!」
そう、真後ろからの襲撃である。飛んできたのは当然、ティーパーティーの首魁。嘗てエデン条約の時に人騒がせさせた、桃髪の生徒会長が一人。
名を……確か………あ、そう。
「ミカさん……なんで毎度背中から襲うんですか……?」
ミカ「うう……だって、正面からだと毎回目も合わせてくれないし………」
絵文字に表すなら、(´・ω・`)と言う顔が似合う。ああ、本当に似合いすぎる顔で落ち込むミカさん。
「いや、自分のしたことを振り返って見たらわかるのては?」
ミカ「うぐつ……ま、ぁ……そうなんだけど……そうなんだけどぉ……」
時はエデン条約締結の時。アリウスと手を組み、同じく生徒会長の百合園セイアさんへのイタズラが悪化し、殺してしまった(と勘違いした)ミカさんが大暴れした話は有名だろう。
まぁ、それを上回るヘイトを僕が集めたおかげか、今では普通にティーパーティーの首魁に戻っているし、反省もしているのか以前のような横暴さは無くなった。
「それに、僕は皆から嫌われてますし」
ミカ「……それは違うよ、アスくん」
「?皆、僕を避けてますし。それは事実ですよ?」
ミカ「………っ……そう、だけど……そうじゃない!その、なんていうか……も、申し訳無いっていうか………」
………う〜む、全く以て思いつかない。僕は正直、『反省してるならオールオッケー!』スタイルだ。だからもうミカさんにアレコレ言うつもりはないし。
それに、ミカさんもしっかりと考えて行動しているだろうし。
「……ま、アイスブレイクは此処までにしまして。要件は?」
ミカ「え?」
「ん?」
…………前言撤回。この人はきっと何も考えていない。
頼む、早くナギサさんかセイアさん来てくれ……!
ミカ「えーっと……その………あ、あの!アスく――――」
なんか目の前でもじもじし始めているが知らない!!僕は今、さっさと帰りたいのだ!!いつ撃たれるかわかんないからね!!
ミカさんには顔面一撃の拳が飛んできたことを忘れてないし。ナギサさんに関しては3回くらい退学させられそうになっていたし。セイアさんは……うん、セイアさんだ。
ナギサ「すいません、ここに黒神アスさんは居ますか?」
「ニゲルンダヨ~ン!」
ミカ「あっ!待っ、待って!!お願い行かないで!!」
聞かないもんね!扉が開いたら其処までさ!ふはは!
聞いた結果頭にズドンしてきたのはそっちだもんねー!!!
そうして、とにかくトリニティから去ったのだった。途中、黄色いわんぱくフォックスが見えた気がするが気の所為だろう。
「………行っちゃった」
………私は、とっても反省している。いや、恋をしている。
勿論、先生も大好きだ。私をお姫様扱いしてくれる。けど、駄目なものは駄目だと言ってくれる。けど、それ以上に。
嫌われてる男の子。始めはそんな認識しか無かった。
だから、何しても良いと思っていた。
だけど、ある日にその価値観は一切変わった。
エデン条約。私が、セイアちゃんに嫌がらせをしようとしたことが全ての始まりになった、凄惨な事件。
奇跡的に、被害者はゼロだったけど……いろんな人や場所に、迷惑をかけた。
だから、私への罰は相当なものだと覚悟していた。
のに――――
『――――安心してね。僕がきっと、全部受けるから』
牢屋に居た私に、そう声をかけてくれた。始めは虚勢だと思った。けど、本当にトリニティの罵声は彼に向いた。
その日からだろう、彼を意識し始めたのは。
いつしか、視界に入れ続けなきゃ落ち着かなくなった。でも目が合うと心臓が破裂しそうになる。
そして、この気持ちが恋なのだと気付くのには時間が非常にかかった。
……………でも。きっと、この恋は実らない。
彼は、明らかに避けている。私を見ると一歩引くし、会話はすぐ終わらせようとしてくる。私が話したいから、直接監禁みたいな事をした所で仕込みの時点でナギちゃんやセイアちゃんに止められる。
「………私、嫌われてるのかな……」
まぁ、そうだろうね。彼の顔に、一撃殴ったのは鮮明に思い出せる。今となっては、自分を殴りたい気分だ。
「………ねぇ、ナギちゃん。私……なにか、間違ったかな」
ナギサ「…………強いてあげるなら、"始めから"でしょうね……はぁ………」
ナギちゃんも、大きなため息を吐いた。見たら分かる。
ナギちゃんもアスくんが好きなのだ。けど、やっぱりナギちゃんも避けられている。
ナギちゃんはナギちゃんで、色々酷いことをしたらしい。私のしたことに比べたらまだ小さいことけど、何度も退学させようと追い込んだらしい。
当時、スパイ云々で精神が荒れてたナギちゃんはアスくんを犯人と決めつけて疑わなかった。
勿論、その正体が私だとわかって一段落ついたあとに謝罪しに向かったらしいけど………結局、出来なかったらしいし。
目すら合わない。呼び出しには応じるのに、返事は何処か上の空。ナギちゃんが彼処まで凹んだのは、幼馴染史上、初めてだった。
2人で、向き合う。セイアちゃんはどうやらミレニアムに向かったらしい。アッチでお友達とゲームしてるのかも知れない。もしかしたら、ここの近くに居るのかもしれないけど……そうだとしても、きっと彼と何の関係もないハズ。
2人で、盛大な溜息を付いたのだった。
ミカが原作で『魔女』と呼ばれるようになりましたが、まさかの一般通過モブであるアスくんが全ヘイトを持っていきました。
ミカを擁護する声が挙がり、ミカの人望はまだあります。
途中ミカに投げかけたアスの言葉はただの自嘲です。
因みにアスが色んな人からヘイトを集めまくっていたのはごくごく初期の頃であり、今では多くの人が謝罪や懺悔をしようとしているが、本人が異次元なほど避けるので謝罪成功率ゼロである。
逆ネルだね。
因みに男先生です。あまねく奇跡の始発点後、つまり全部の物語を先生の隣で見てきて、しかも多くの人の脳をこんがり焼いたのもオリ主です。
因みに別角度から先生も何時も通り焼いているので、もう大変です。