嫌われ生徒はその後に好かれても気付かない。   作:ブルーアーカイ部 一般部員

11 / 14

物語を読む前に一言言わせてください。

評価者50人越えありがとうございます!!!
沢山の人に評価してもらって、遂に評価バーが端から端まで色に染まりました!

こんな駄文に評価を入れてくれるだけでも有難いですし、最大のモチベーションになります!感想はもっとです!

これからも続けていきますので、どうか温かい目で応援していたたげると有難いです!

さぁ、お祝いとまではいきませんが、今回は少しほのぼのしますよ。





太陽は陽と共に陰を生み出す

 

 

トリニティは金銭感覚がおかしい、と言うのは共通認識だろう。

 

俺はトリニティ生ではあるのだが、その出自は酷いモノだ。

いや、本当の家族は見つかっていないのだが。あくまでも家族を名乗る不審者が俺を家族扱いしていただけで。

 

それは、目の前の少女も例外ではない。ここは上級社会であるがために、支出も収入も桁が違うのだ。

 

まだ中等3年の俺は高校を知らない。しかし、そこは魔境……もとい、地獄だと言われる。

噂によれば、ゲヘナよりも酷いらしい。直接的な嫌がらせよりも、隠れてコソコソ悪事を働き、その癖自身の過ちを認めない集団だからだ。

 

…………その前提が、たった今崩れかけている。

 

「はい、あーん!」

 

「…………やだ」

「嫌じゃないです!はい、あーん!!!」

 

ずいずい、と俺の頬にそのパフェを押し付けてくる目の前の少女。そこに躊躇いも思惑も無いように、あまりに純粋な目で俺を見てくる。

 

「どうしてですか?とっても美味しいんですよ!ささ、一口だけでも食べてみませんか!?」

 

事実なのだろう。どうしようもなく、隠し事が出来ないタイプの人間らしい。

どうやってこのトリニティを生きてきたのか不思議なレベルだ。

しかし、俺はそれに弱いらしい。

 

「…………一口だけだからな」

「わはーい!言いましたね!?」

 

そう言うと、スプーンの限界量を遥かに上回った量を掬う少女。

 

「ちょっと待て。一口だって言った筈だ───」

「ほら、一口です!!」

 

…………クソっ、やられた。

確かに、初めにそれを指定しとくべきだった。流された俺にも至らなかった点が幾つもある。

 

渋々、俺はその地獄みたいな量を口に含み、見事に喉を痛めるのだった。

 

 

「………散々な目に遭った」

「一口って始めから宣言してましたし!」

 

もう諦めた。この少女には、何を言っても通じない。

どんな正論も、等しく無意味だと悟った俺は、そのまま帰ろうとした。

 

「あ、ちょっと何処行くんですか!」

「あ?いや、用事は済んだろ?じゃあ後は帰るだけ………」

 

「違いますよ!」

 

 

………嫌な予感がする。途轍も無く、嫌な予感が。

 

「まだ遊び足りてないです、私!」

「………まさか、お前………」

 

「はい!一緒に遊園地に行きましょう!」

 

 

終わった。コイツ、俺を探していたってことは俺の素性は大体知ってる筈じゃないのか。

なのに敢えてこんなに関わってくるのは何故だ。

 

金か?話し相手か?

それとも────口実(交渉材料)か?

 

ともかく、俺は信じきれない。しかし表面上は何も強く言えないので。

 

「………わかったよ。行けば良いんだろ行けば」

「わはーい!」

 

絶対に暴いてやる。その思考だけを持って、俺はペアチケットを購入したのだった。

 

 

そして、到着する。結構大きな場所であり、しかし高貴な輩の多いトリニティではそこまで人気じゃないスポット。

加えて、今は学園の時間だ。学生の多いキヴォトスにおいて、その時間は基本ガラ空きである。

 

「さーて!到着ですよ〜!ささ、早速チケットを購入して………」

「買ってあるぞ」

 

「えっ」

「え?」

 

先程、事前購入したばかりである。

勿論ペアチケットを購入した。安かったから。

 

「えっ、良いんですか!?本当に!?」

 

……いや、結局は俺が買うことになるんだろうし。なら事前に用意していた方が好感度も稼げるし楽だ。

だから、買ったのだが………この女は、自分が奢るつもりだったらしい。手に持っている行き場の無くなったカードが揺れている。

 

「……まぁ、買ったからな。使おうぜ」

「な、なんかすっごい接待されてる気がするんですけど……!私が誘ったのに!?」

 

「気にするな。どうせ使うんだろ?」

 

渋々、と言った顔で受け取った女。ところが、そのチケットを見た瞬間に目を見開いて俺に突き付けてきた。

 

「なっ、なななな何を買ってるんですかぁ!?」

「ん?嫌なことでもあったか?」

 

「逆ですよ逆!!優先乗込チケットじゃないですかコレ!高いヤツ!」

 

 

そう、俺が購入したのは誰よりも優先して乗れるよ!と言う画期的なアイテム。勿論値段は相応に高くなるが、そうでもしないと不機嫌になる輩があまりにも多すぎる。

 

だから、俺はいつもそれを買う。大体が買い渡す場合なので、俺個人が使うのは初である。

 

「……なんだ、その………サッサと遊ぶぞ」

「は、はいっ!いきましょー!」

 

 

その後、俺と女はガラリと空いたアトラクションに乗り尽くした。

 

………結論から言おう。めっちゃ楽しかった。

裏を探っていたが、この女はあまりにも裏表が無さすぎる。

3つ目のアトラクションからは、考えることが馬鹿らしくなったので止めたのだ。

しかし、疲れたものは疲れた。過酷なアビドス砂漠を1週間近く生き延びたとは言え、所詮は人間だ。限界は来る。

 

「……はぁ〜………」

「あ、お疲れですか?彼処のベンチで休みましょう!」

 

「逆に何でジェットコースター(から)お化け屋敷の順で疲れないんだよ………」

 

 

そう、この女は激しいアトラクションを好むらしく、アクションが激しい奴を選んでは燥ぎ、楽しそうにする。

その笑顔が、何処かあの人に似ていて。酷く楽観的なその表情(カオ)が。

 

前にも言ったが、きっと俺はチョロいのだ。最近自覚し始めている。

こう、楽しそうにしている純粋な子に弱いのかもしれない。

 

「いやー、流石に疲れました!」

「そうであってくれて助かった………」

 

「わはー!………あ、綺麗な夕暮れですよ!もうこんな時間だったんですねー!」

 

俺は顔を上げ、女が指差す方角へ顔を向ける。

するとどうだろう。

 

陽が沈む。そして、反対側から夜がやってくる。

それだけの事象の筈なのに、その一連には華がある。

グラデーションの問題か。橙をベースとした色合いに、宇宙(ソラ)の本来の色達が合わさり、幻想的で美しい印象を与えるのかもしれない。

 

なんて。

 

「………じゃあ、そろそろ閉園時間か」

「あー………終わっちゃうんですね。この時間が」

 

不意に、夕焼けを見つめて独りごちる女。その目には、先程までの燥いだモノではなく、本当に憂うモノを見つめる目だった。

 

「………綺麗だな」

「ですねー!あの夕焼け、とっても綺麗です!」

 

自分で言った言葉を、繰り返す。きっとそこには、色んな複雑な感情が混ざっていたのだろう。俺本人にもわからない、そんな感情も。

 

「……んー、あ!じゃあじゃあ、最後に観覧車乗りませんか!?」

「………アレか?別に、それくらいなら………」

 

てっきり、最後にジェットコースターとか言うのかと思っていた。けど、そうか。

それくらいなら、まぁ。

 

 

そして、俺たちは観覧車に乗った。

女が太陽を見ないで済むように、調整してやった。

対面に座る形になる。しかし、女は全く気にせずに外の景色を堪能している。

 

徐々に回転し、天に近くなる。

そして、やっと本来の思考に戻ってくる。

 

何故、この女は俺を連れ出した?一人でカフェに行けば良かっただろう。誰か友人を連れて遊園地に向かえば楽しかったろう。

何故、俺だったのか。

 

「………なぁ。一つ良いか?」

「はい、なんでしょう?」

 

「………アンタ、なんで俺を誘ったんだ。別に俺じゃなくたって─────」

「いいえ」

 

キッパリと。俺の言葉が終わる前に、そう言い切った。

 

 

「貴方だから、私は誘ったんです」

「………なんで」

 

「私、困ってる人が居たら助けたいんです。ただ、それだけです」

「………それだけ?アンタには、俺が困ってるように見えたってことか?」

 

意味がわからない。そこまで表情に出ていたのだろうか。

にしてもだ。何故そこまで。

 

「………第一、アンタと俺には何の関わりもなかったろ。何で急に……」

「気分です」

 

「気分って、アンタなぁ………」

 

「一緒に居て、気分が良いんです。ほら、トリニティって見かけだけの関係が多いじゃないですか。だから、気兼ね無く話せる友人が欲しいなぁって」

 

何も言えなかった。この女、本気なのだ。

裏とか表とか、そんなに軽いものじゃない。()()()()()()()()()姿()なのだ。

裏も表も全てが同じなんだ。

 

沈みゆく太陽をバックに置いているせいで、顔全体に陰が指し込み、表情が読めない。

けれど、確かに微笑みかけている。

 

「だから、お友達になりませんか?」

 

陽によって見えない筈なのに、何でかそう見えた。

実際にはどうかわからない。

しかし、俺にとってはそれだけで十分だった。

 

「…………良いっすよ。これから宜しく」

 

俺は顔を背けた。この頬の赤さは、西日のせいだ。きっとそうだ。

 

「わはー、やりました!ピース!」

「…………お前は本当に空気を読まねえな……」

 

「だってだって、新しい友人の前ですから!」

 

そして、俺たちは友達になった。名前は向こうが知ってるだけで、俺は彼女の名前を知らない。

 

「………もっと気楽に会話して良いか?」

「てか、元々タメ語じゃなかったですか?」

 

………あ。

言われてみたら、そうだ。俺は基本的に敬語で話していたというのに、この女だけにはタメ語だった。

 

「………始めから、こうなることは確定だったってことか………」

「??よくわかりません!」

 

わからなくて良い。きっと面倒になるから。

 

夜が来る。夕焼けが終わり、完全な深蒼の世界へと。

その暗さは僕らを包み隠すけれど。

 

僅かに光る、その月明かりを生命線にして。

暗闇に差す、唯一の光。一度は壊れてしまったけれど、光を継ぐ光が現れた。

 

俺はそれをただ、大切にしていきたいのだ。

どれだけ惨めでも、どれだけ無様でも。

その光だけを、胸に添えて。

 

──────ああ。この物語が、どうか。

このまま終わってくれることを、俺は望んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

きっと、終わらないけど。

 

 

 

 

 






アスの髪色は紫がかった白灰色、つまり『ラベンダーグレー』で想定しています。


いつもご視聴頂きありがとうございます。
図々しいのは百も承知ですが、是非評価や感想を入力して頂ければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。