嫌われ生徒はその後に好かれても気付かない。 作:ブルーアーカイ部 一般部員
前回が想定以上に上手くまとめちゃったせいで、その後を書くのが大変すぎた人です。
いつもご視聴頂きありがとうございます。
差し支えなければ、是非評価と感想を記入していただければ、狂喜乱舞させて頂きます。
少年は夢から覚める。
…………まぁ、わかっていた。
そりゃあ、また一人の日常に戻ればあの日々が返ってくるのは当然だ。何故なら、アイツらにバレてしまったのだから。
ただ、俺はもう迷ってなかった。
どれだけ心砕かれようと。
どれだけ撃たれようと。
俺は、シジマの為に生きる。ユメ先輩に遺したモノを継ぎ、シジマの生活を裏から支える。
そう決めたは良いものの、トリニティの勘違い正義心者らは俺を排斥しようとする運動が動いている。
勿論、否定派も存在する。ただし、それは明らかに正義感という名の仮面を付けて、自惚れて気持ち良くなってるだけだ。
だからこそ、そこに本当の善意は存在しない。本物の善意を持っている人間は、シジマだけだ。
そんな生活をしていたからか、遂に俺の机が無くなった。高等部の人らは犯人探しを行ったが、誰も名乗り出なかった。
まぁ、十中八九アイツだろう。名前を挙げる価値もない。
それをチクったところ、普通に逆ギレされた。
やはりアレは人として終わっているのだろう。主犯格と言うものは大体致命的な背景を抱えているか、もしくは本当に常識知らずかの二択だ。
そして、アイツが後者だったと言うだけ。
トリニティとは、自分が正しいと思い込んでいる馬鹿どもの巣窟だ。
変なプライドだけある、可怪しい奴ら。
話によれば、高等部の治安維持組織はしっかりしているらしく、そのイジメを行ったアイツは退学になったらしいが───
─────そこは
重要なのは、誰も手を出さないし、助けなんてしないこと。結局誰だって、自分自身が一番大事なんだ。
それが人間の本質でもあり、同時に醜さなのだと俺は思う。
俺は信じない。誰だろうと、人の為の行動は偽善にまみれている。
反論は受けよう。俺が間違っているのであれば、間違っているのだろうよ。
ただ、俺が意見を変えることはないだろう。
さぁ、そろそろ夢から覚める時じゃないか。
もう十分、
人は皆、場所によって仮面を付け替えて生きている。
ならば、俺も付けてやろうじゃないか。
俺じゃない、もう一つの仮面。
背中の翼はカモフラージュとして使えるだろう。ゲヘナだと思ってくれるかもしれないしな。
そして、俺は起きる。
朝になったのを確信した後、衝撃的なニュースが俺の耳を叩く。
「連邦生徒会長が………失踪?」
いや待て。あの超人が逃げ出したってどういう了見だ。
あの人ガキっぽいことするんだな………いや、結構親友には子供っぽい対応してたけどさ……
連邦生徒会長─────■■■■■■は、確かな超人だった。
未来視でもしてるのかと思う程に適切な判断、その先に起きる出来事ですら予見する異次元の対応力。
そのせいか、仕事の量が多かったらしい。
俺が連邦生徒会長を見た回数はごく僅か。それも遠巻きに連邦生徒会全体で見た程度。
その時は全身包帯まみれだったこともあり、あまりよく見れなかったのだけれども。
それでも、ああやはり綺麗だ。なんて俺は思った。
俺という人間は、そもそも対人が得意ではない。それは戦闘という面においても、対話という面においても。
例えそれらが完全に異なる二面性を持っていたとして、その答えは変わらずに『否』であるのだ。
それが、俺だった。どうしようもないほどに。
だから、男として生まれた以上は女に惹かれてしまうのは当然の帰結である。
話が大幅にそれた気がする。まぁともかく、だ。
それが、
もう、それすら不明瞭だ。
俺は今、トリニティに完全に席が無くなったため、歩き続けている。
途中から振り注いできた雨が俺の身体を叩く。文字通り、身体の芯から凍えていくのが分かってしまう。
腕からは血が流れており、俺が歩く度に地面を濡らしていく。
ポタポタ、垂れていく自分の血を僅かに眺めると、その傷口の大きさに驚愕しながら、前を向く。
明確な殺意により生まれた銃痕が、そこにはあった。既に四肢が継ぎ接ぎだらけなのに、酷い仕打ちだ。
─────見るんじゃなかった。
傷は見たところから脳が認識し、痛みが起こるとはこのことか。先程まで痛くなかったのに、今は信じられないくらい痛い。
そのまま、男は歩を進める。
まだ仄暗い朝の冷たさが、嫌に肌へと染み込んでいく。
もはや痛みを嘆く前に、意識が刈り取られそうな鈍痛。
これが、人の手による持続痛であればどれだけよかっただろうか。そうなのであれば、すぐにでも止めさせる事が出来たのに。
なんて、くだらない現実逃避をしてしまう。
気付けば、連邦生徒会の施設のある建物に着いていた。
皮肉なものだ。件の失踪事件で面倒事が起きているのにも関わらず。俺はその面倒事が嫌なのにも関わらず、この建物に辿り着いてしまった。
何故か、既にドアは開いていた。
「誰かが……来ていたのか……?」
まぁ、ありがたく使わせて貰おう。一刻も早く、休みたい。
「……ッ……ぁ………」
這いずり、そのロッカーに腰掛ける。
ゴトン、と。
何かが肩に当たった気がする。掌の中に、それがある。にも関わらず、もう眠くて眠くて仕方ない。
そのまま、俺はその何かを抱えたまま意識を手放した。
キヴォトス、と言う学園都市に勤務することになった私は、初めての土地に驚きながらも…………いや、来た時の事は全く覚えていないが。
とにかく、目が覚めてからの展開は怒涛だった。
せわしなく動き続ける、若い学生達。その全てが女性なことに驚きつつも、取り敢えずはリンという少女の指示のあった通りにした。
明らかな銃社会だった為か、身の安全が少し気にかかったが。
それでも何かしたいと言う自分のエゴには勝てず、結局出しゃばって戦場指揮を行ってしまった。
結局、結果的には大成功だったものの………それは、生徒の力があったからだ。
己の無力さを噛み締めながら、建物の地下へと入っていく。
「………あら?」
「ぁ、ぁぁ………し、失礼しましたー!!」
狐の仮面を付けた女の子がいた気がするが、気の所為だろう。
ともかく、私はくまなくこの場所を探し始める。
「………?先生、何かありましたか?」
特に、と首を振る。別に何かあったわけでもないし。
「………そうですか。では、解説の続きを。ここには、連邦生徒会長が残した──────」
リンの言葉が、止まる。
私はその姿を、見た。
照明により照らされている謎の機械。そこに腰掛けた────明らかに、瀕死の少女。
いや、骨格的に……男子?
「…………
「"………わかった"」
私は、急いで建物の外に駆け出した。初日だが、少し出来事が重なり過ぎでは無いだろうか。
私はそう愚痴を心の中で吐露しながら、走る足は決して緩めなかった。
「……………はい、一応は治療が完了しました。ただ、あり合わせの物しか無く、あまり治療に見込みは持てませんが…………」
「"いや、十分だよ。ありがとう"」
「い、いえ………褒められるような事では………」
チナツは最速で来てくれた。そのおかげかどうかはわからないが、彼に命の危機は無いらしい。
彼は『S.C.H.A.L.E』の仮眠室で寝ている。
…………しかし、不安はそれだけではない。
「…………何故、この人が」
チナツの視線が、一気に冷たいものへと変わる。私はそれに僅かに畏怖を覚えながらも、確かめずには居られなかった為に話しかけた。
「"知り合いかい?"」
「………いえ、こちらが一方的に知っているだけです」
その冷たい視線が、私を見つめるようになってから一気に緩くなった。
その緩急に、何故だか非常に嫌な予感がした。悪寒、と言うのだろうか。
私の中の本質が、それを明確に非難している。
─────それは、違うぞと。
しかし、私はほぼ初対面の生徒相手に掛ける言葉ではない、と自分でその言葉を押し仕舞った。
けど、いつでも取り出せるように。その一部始終だけは、メモ用紙に記入したのだった。
シッテムの箱。タワーの制御権を保持した、連邦生徒会長が私へ託したとされる謎のタブレット。
OSもパスワードも不明。私にしか知らないワードを音声入力することで起動するらしい。
とは言え、先程A.R.O.N.Aと………言い換えよう、アロナと生体認証を交わし、正しくシッテムの箱の所有者となった私。
だから、アロナに一つ頼み事をした。
「"ねぇ、アロナ?"」
「はい?どうかしましたか、先生?」
私は、シッテムの箱をその寝込む男子へと向ける。
知りたい情報は、幾つでもある。その中には、この後の私の在り方を決定付けるかもしれないような、大事な情報も。
「"この男の子の身元、わかるかい?"」
「…………はい?先生、一体誰をですか?」
…………何か、可怪しい。
そう思った私は、アロナにもう一度詳しく注釈を付けて頼み込む。
「"………画面が見えるかな。今、私の目の前で寝込んでいる男の子の詳細を知りたいんだ。お願い出来る?"」
「………あの、先生。申し訳無いのですが────」
「そこには誰も居ませんよ?」
脳が、止まった。
思考が停止した。
確かに、今も私の目の前で寝ているこの男の子。しかし、アロナには見えていない。
チナツにも、リンにも見えていた。なんならユウカすら見ていた。ハスミは………見ていなかったけれど。
いや、アレは見ないようにしていたのだろうか。真偽不明だが、そうじゃない。
なんで見えないのか。それが重要だ。
「………先生?」
「"ごめん、やっぱり何でもない。疲れていたみたいだ"」
「むぅ、初日からアクシデント祭りでしたからね……アロナも休むので、先生も休んでくださいね……ふぁ……」
そう言って私はアロナに、おやすみ、と声をかけて電源を落とした。
問題は山積みだ。
この男の子の詳細と、チナツの視線について。
アロナが頼れない以上、シャーレの先生として活動しながら探っていくしかないか。
そう決心した私は、早速連邦生徒会の書類を手伝って、3時間で音を上げたのだった。
シジマを可愛く書きすぎたせいでメインヒロインがシジマになりかけつつあったので、この作品の主なテーマを振り返ってみました。
需要さえあればシジマとアスのイチャイチャのみを描く作品でも書きます。やる気と需要があれば、ですが。