嫌われ生徒はその後に好かれても気付かない。 作:ブルーアーカイ部 一般部員
高評価、ください!!!(乞食)
冗談です。ですが、是非感想や評価をしていただけると私が狂喜乱舞します。お願いします。
─────目を覚ます。
随分長い間起きていなかったような感覚があり、時間感覚がバグってしまっている。
体を起こす。その単調な動きでさえ、
どうやら僕は寝てしまっていたらしい。
なんだか久しい気分だ。
それこそ、何年間も寝ていたような気がする。
体の節々が痛むが、一体何故だろうか。
理由はわからないが、ともかく着替えて外に出た。
外の景色は、自分が起きていた時のモノよりも随分と新しく、まだ新築なものも多かった。
「…………?あれ、シャーレ?なんで僕はここに……」
理由がわからない。僕はシジマと一緒に居た筈では。
…………わからない。本当に不明だ。
どうしよう、取り敢えず誰かを頼ってみるか。
取り敢えず先生でも居れば良いんだが………
そして、外で先生を見つけた。普通に歩いてくれていて助かった。
「先生!探しましたよ、まさかこんなところに───先生?」
まるで幽霊でも見たかのように、先生は大きく口を空けて絶句している。一体僕の何が疑問なのか。
「"……もう、大丈夫なのかい?"」
「何がですか?」
「"えーっと、どういうことかな?"」
「何がですか?」
音程すら変えずに繰り返してしまったが、何かが噛み合わない。
昨日もシャーレで事務作業をしていた。
噛み合わなすぎる。一体、何が──────
そう思った僕は、建物に貼られた日付に目をやる。
……………ああ、と僕は一瞬で理解した。
「そういう事か」
「"??"」
「気にしないで良いです。こっちの話ですから」
不思議そうに首を傾げる先生。その挙動はやはり、僕の知っている先生そのものであり、同時に人を惹きつける善性の表れなのだろう、と思う。
いや、納得した。だからこそ敢えて言わないでおこう。
このズレは、後に必要になる。
「"………そうだ。キミに聞いておきたいことがあってね"」
そう会話を切り出す先生。何やら、重大なことを話そうとしているようだ。
「"名前を教えてもらっても良いかな?シャーレの先生として、生徒の名前は知っておきたいんだ"」
「………名前、ですか」
まずいな、僕が答えたら色々変わりそうだ。
でもまぁ、良いか。ああ答えよう。
「…………アクター、とでもお呼びください」
「"………アクター?"」
「はい、アクターです」
「"因みに、理由は聞いても良いかい?"」
「いえ、今はまだ」
先生は渋々引き下がったようだ。この人は、こういう所がしっかりしている。取捨選択を間違えない大人らしい大人だ。
「さて、じゃあ僕はシャーレに戻って仮眠してきますね」
そうして僕は背を向け、歩き去った。シャーレの建物に入り、仮眠室で横になる。
深い深い、その意識の底へと落ちていく感覚を味わいながら、僕は少しワクワクしていた。
アクター。
彼はそう名乗った。アロナにすら認識できない、正体不明の男子生徒。見た所、男子生徒は彼しかいなさそうなのだけれど。
アロナに問い合わせたら、『キヴォトスに男子生徒は一人だけ居たが、今は行方不明』と言うことらしい。
その子かと思い疑ったが、今日会った彼と情報の中のその子とではあまりに酷く乖離していた。
だからこそ、不思議なのだ。
アロナに観測不可能な生徒。まだこのキヴォトスに来て間もないけれど。
何か、嫌な予感がする。
出来るなら、そんなことが起きないで欲しいのだが。
そう思った私は、一通り見回りが終わったらシャーレに帰ることにした。
シャーレに帰還した私が第一に優先したのは、アクターと自称する彼の様子を確認することだった。
何せ、ここはキヴォトスだ。まだシャーレにはユウカとハスミ、チナツ、スズミの4名のみだが、それでもこの土地が如何に広大で、果てしないのかが分かってしまう。
そこには、今の私には見えていないような苦悩や絶望があるのだろう。
彼がもしその一人であるなら、私は私の全権利を以てして救わなければならない。それが、"
まずは、話を聞くところから。しかし、無理に向き合わせる必要はない。私が聞き、事件のアレコレを知った上で、適切な判断を下さねばならない。
果たして、私に出来るのか?否、やらなければならない。私は、先生なのだから。
彼が居るであろう仮眠室のドアをノックし、僅かに声をかける。
「"起きているかい?"」
反応はなかった。そりゃそうだ。仮眠室なのだから、寝ているだろう。
私は仮眠室に入った。そして寝ている彼を発見し、僅かに安堵する。
彼を起こさぬよう、近くに椅子を持ってきて座った。
まだ私には何もわからない。彼を取り巻く何かがあるのがしれないし、もしかしたら私の気の所為かもしれない。
ただ、どちらにせよだ。前者であれば動くだけであり、後者だとしても私が恥をかくだけで済む。
だから私は、迷わず動くのだ。
どれだけの時間が経ったのだろう。デジタル時計が刻一刻と時間を刻んでいく音だけが響く。
ようやく日が回ったその時に、その青年は目を覚ました。
「……………あれ。俺、何して…………」
「"やぁ。起きたかい?"」
彼がこちらを見つめる。僅かに暗くなったこの時間帯では、確かに顔が見辛い。
しかし、彼の表情にあるのは相手が見えない不安ではなく、困惑だった。
「……………誰すか、アンタ」
「"ん?あれ、さっき私のことを知っているような口ぶりだったような─────"」
「知らないっす」
明確な疑問符を抱えて、眉を顰める彼。
どうしてだろう、紛れもなくさっき会った筈なのに、この青年とさっきのアクターとではまるで違う。
いや、顔の作りや骨格は同じだ。だから、間違いなくこの青年こそがアクターであることには間違いなさそうなのだけれども。
ただ、そうだな。言語化するならば、『雰囲気がまるで違う』のだ。
アクターは、飄々としていて、全体的に軽い態度だった。
けど、今の彼は重い。あまりに人を憎み、蔑み、嫌悪している。
そんな様子の彼を見て、一旦は一人にさせた方が良いと思った。
「"私は『
言いたいことだけを言い切り、彼を寝かし付けた。
やるべきことが、山積みだ。昨日も言った気がするが、この勤務量は異次元だ。私とて人間が故に、疲れるのだ。
ので、今日は取り敢えず自宅に帰還する。有難いことに、シャーレ外に本拠地を設置してもらったのだ。
とは言え、殆どはシャーレ内で過ごしているので、実質的にこっちの方が仮住まいである。
私は布団に横たわって、そのまま寝てしまった。
彼の為に、一応開けておいたのだが。
「……………へぇ」
俺は、それを見ていた。正しくは、監視カメラに映る"僕"を。
完全に胡散臭い。アレが自分とは思えない。
ともかく、あの大人がここのシステムを開けたままにしていてくれて助かった。
俺が寝ていた間の時間、このカメラ内に居る男が、俺の体を動かしていた。動機も不明だ。
だが、これは──────使える。
僕と言う仮面を利用し、俺を隠す。すれば、俺という人間を隠して人の行く末を見ていられる。
「…………簡単に壊れてくれるなよ」
黒神アス、と言う名前の上に、アクターと言う名前を被せる。そして、人々に正体を隠しながら色々する。
実に、良い仮面だ。一体何処の誰が俺の体を使用したか、皆目見当がつかないが、それでも良いだろう。
使える分は全部使う。それが俺の流儀だ。
さぁ、世の為、人の為に動こうか。
新天地ですね。