嫌われ生徒はその後に好かれても気付かない。 作:ブルーアーカイ部 一般部員
お久しぶりです、私です。
評価者70人&お気に入り1000人、ありがとうございます。
皆さんの評価一つがかなり励みになります。これからも温かい目で応援して頂けると一人で夜中に騒ぎます。
感想コメントや評価、待ってます。
突如として芽生えた、俺の人格。
いや、それは俺の防衛本能が生み出した別の俺なのかもしれない。
詳細は分からない。が、それでも今の俺にはそれだけで充分だった。
どうしようもなく、俺はシジマに毒されていたようで。
俺という人間は人を助けずには居られなくなってしまったらしい。
難儀なものだ、と思わず口から漏れる。
人助けなんて俺の内心が認めないと言うのに、それでも体は勝手に救おうとしてしまうのだ。自己矛盾、と言う言葉があるだろう。比喩として、俺はあの言葉の体現者なのかもしれない。
その自己矛盾を抱えた俺には、この仮面は便利すぎた。
よくもまぁ、『
何度でも言おう、コレは便利なのだ。
俺は事前に用意したフェイクの覆面を取り付ける。物理的に顔を隠せる仕様だ。市販のお面であるが故に、通気性は最悪だ。それは元々の身体が弱い俺にとって、相性はゴミと言っても過言ではない。
まぁ、付けるしかない。俺の"目的"のためには、これが最適解だと思ったから。
手袋を付け、靴を履き替える。
俺の見た目から、黒神アスと言う人間の要素を捨て去る。
厨二病という訳では無いが─────まぁ、これはカッコいいと自称出来る。
いや、痛いだけか。なんて自嘲し、自らの浅はかさを嘆く。こんなにも酷かったか?と内心で自己矛盾が生じているのは無視する。
ともかく、俺はその衣装を身に着け、外へ出た。
世界は夜。皆が寝静まった頃に俺は動き出す。
蝉の鳴き声すら止んだ場所では、俺の足音しか響かない。
しかしそれが何故か心地よかった。
元来、俺には
何事も一人で解決できる、何だってやれる─────そんなわけがないことを、俺は重々理解した上で、尚もそんな幻想にすがっている。
この世界は終わっている。俺も含めて、全人類は等しく自分勝手で横暴で我儘なのだということを、俺は身に沁みて理解している。
だから、本当の意味で心が通じ合う人………『共犯者』はここには居ないのだ、と決めつけている。
月に照らされた俺は、自分に出来た影を踏みしめるように歩く。
自分の影にも謎の苛立ちを覚え、歩く足を強めてしまう。ドス、ドスと。
姿形がバレたくない人間とは思えないような足取りで、地面を深く踏み付ける。
そして、俺は人助けに赴いた。そもそもこの時間まで起きている人間なんてそうそう居ないだろうが。
一通り回っていく。今夜はアビドス側に向かってみるとしよう────ふと、そう思った俺は時間をかけてまでして、歩いて向かうのだった。
アビドス砂漠。嘗ての嫌な記憶が思い出される、俺にとっての第二の故郷とも、悲劇の始まりとも言える場所だ。
だからこそ知っている。ここは、夜になると冷えるのだ。昼の暑さが嘘に思えるほどの寒さへと変貌する。
故に、少し見回ったら帰ろう、なんて考えていたその瞬間。
不意に、視界の端に何かが見えた。不思議に思った俺は、アビドス自治区の中心地、その路地裏へと近付いていったのだった。
そこに居たのは、酷く傷付き気絶した黒髪の獣人の子だった。
服も僅かにはだけており、荷物は何もないことから察するに、襲われたのだろう。
そもそも、この世界に確認できる男は俺とあの大人だけだ。
となると、やはり女性。しかも強奪を行っているので強盗団。
周囲には何もない。開けた場所→閉じられた場所への展開も緩やかではなく急である。
「…………はぁ。危機管理がなってないなぁ………」
そう、ここまでくればわかるだろう。完全にこの子の危機管理の怠りである。
『夜+アビドス+一人 → 巻き込まれる』のは当然の論理展開だろう。
しかし。
「まぁ、助けてやるか」
見ず知らずの人間だ。しかも相手は気絶済。
うん、見方によってはカモである。特に、俺のような偽善者にとっては。
バレずに救って、面倒事のみを回避すれば問題はない。
地面に視線を向ける。残った足跡はまだ乾ききっておらず、この子が襲われてすぐだということが分かる。
つまり、すぐに接敵できる。
一歩、踏み出す。俺が思う最速で、追いかけてやろう。
足に力を込める。地面を思い切り蹴り、生まれた推進力を体勢を整え、前に向かせる。
継ぎ接ぎだらけの四肢が痛みを訴えてくるが、そんなこと知らない。呼吸があるのなら、動けるし生きている。
──────そして、見えた。
ヘルメットをかぶり、何個ものバッグを後ろの箱に詰め込んだ跡のある人間たちが。
俺は即座にリーダー格であろう一人に飛びかかった。
その速度のままドロップキックを決める。やり過ぎた気もしなくないが、キヴォトス人なら耐えられるだろう。
周囲がやっと俺に気づき出す。しかし、"もう遅い"。
体をひねり、足を曲げる。そのまま宙で翻し、落下の慣性を利用してそのまま拳を叩きつける。
自分でも驚いている。まさかここまで動けるようになっていたとは。
腕が継ぎ接ぎだらけになってからは、自分の肉体を鍛え上げてはいた。だが、いざ実戦となるとその成果が身に沁みて分かるのだな、と動きながら考える。
次に俺が周囲を確認すると、どうやらもう制圧してしまっていたらしい。
体の使い方には少しだけ慣れているとは言え、ここまでのことをするのは久々だった。だから心配していたのだが─────杞憂だったようだ。
しん、と静まった夜の街。
戦闘も終わり、ほぼ全ての学生が寝床につく頃。起きているとしたら、それはシャーレのあの大人くらいなものだ。
もう幸いな事に、この姿の俺に帰る場所はない。
そこからゆっくり、俺は帰宅するのだった。
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