嫌われ生徒はその後に好かれても気付かない。   作:ブルーアーカイ部 一般部員

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曇らせです。ご注意ください。

いつもご視聴頂きありがとうございます!




後悔

 

 

──────きっと、目は覚めている。

 

起きているのに、寝ているかのような。

夢の中なのに、起きているかのような。

 

そんな、感覚。二年前からずっとだ。

後悔と、絶望が私を襲う。もしあの時喧嘩別れしていなかったら。もしあの時、無理をしてでも助けに行っていたら。

 

勿論、ユメ先輩の件は何とか乗り越えた。後悔の海に、沈むことも無くなった。

皮肉なことか、先輩は枯れて亡くなったのだけれど。

 

その日々は、辛かった。失ったことを現実は無情に突きつけてくる。

あと何日。あと何億。あと、あと─────

 

渦巻くのは、悪感情。憎悪やら嫌悪などの、そう言った類の何か。

私は早計だったのだろう。当時は荒れていた自覚はある。

失った直後で、何も出来なかったことは知っている。

けれど、そのせいで人に当たってしまった。

 

黒神アス。紫がかった灰色の髪で右目を隠した、細身の男の子。始めは……そう、胡散臭かった。大人に近い何かを感じた。まるで黒服のような、裏のある何かを。

 

当時の私は、気が狂いそうだった。何をしても、空虚に見えて仕方なかった。

 

そんな中、彼が声をかけてきた。何故かは知らない。

ブラックマーケットに赴いた時の話だったか。そこで、彼は不良達にカツアゲされていた。

 

〚……何してるの〛

 

私のその一言で、多くの不良達は逃げ遂せた。

彼は絞められていた首を抑え、咳き込んでいた。

 

見苦しく見えた。この世のものとは思えない、汚物か何かに見えていた。

 

だから、私は声をかけた。

 

〚…………キミ、名前は?〛

〚…………アス、です………〛

 

これが、彼と私の出会いだった。思えば最悪だった。

その時の私の顔には、笑みなんて無かった。ただ威圧だけで、聞きたいことだけを聞いて、自分の意見を押し通していた。

 

〚………なんで此処にいたわけ。力も無いのに〛

〚………えーっと、色んな人から、お願い事されてて……〛

 

〚………お願い事?〛

 

話を聞けば、頼まれたものを買ってこい、と言われていたらしい。

明らかにパシリである。ただ、その時の私は何とも思わなかった。

 

〚ふーん、そう。じゃあ頑張って〛

 

それだけ告げると、私は立ち去ろうとした。

しかし、アスは私の足を掴んだ。

 

〚…………なに〛

〚……あ、あの……お礼したくて。名前を聞かせてくれないですか?〛

 

〚は?言うわけないじゃん〛

 

─────驚くほど、すんなりと口から出てきた言葉に、自分で驚いた。

しかし、それが私の本心だったのかも知れない。

黒く歪み、痛み、穢れた心こそが、()だったのかもしれない。

 

〚そ、そこを何とか〛

〚………黙って。次に何か話したら、発砲する〛

 

〚……!で、でも─────〛

 

 

銃声音が、響き渡った。音源は勿論、私のショットガンから。

0距離から放たれ、彼の頭や胴体に散弾し直撃したその弾丸は、彼を仰け反らせて仰向けに倒すのには十分な威力だった。

 

そんな彼を見て、私は冷たく一瞥して何も言わずに立ち去った。

後日、彼は全治半年という重傷を負ったらしい。

 

 

…………これが、私、小鳥遊ホシノが黒神アスと初めて出会った日だ。

ユメ先輩が遭難して、そしてその遺体を発見して3日後の話だ。

 

『………違う。あれは私じゃない』

 

─────やったのは私だ。逃げるのか。

 

『最初に掴んできたのはあっち』

 

─────撃ったのは私だ。黙れ、口を開くな。

 

『そんなんだから、あの子は─────』

 

 

 

「黙れぇッ!!!!」

 

ドンッ!!!と机を叩き、起きる。

今のは、夢だったのか。

私は取り乱してしまったことに後悔し一息吐くと、落ち着いて周りを見渡すと。

 

そこには、驚愕と畏怖の顔をした、後輩たちの顔があった。

 

「……ホシ、ノ……先輩………?その…………」

「きゅ、急に怒って……私達、何かした……?」

 

「あ、え〜……っ、と………ゆ、夢!不思議な夢を見ちゃってさ〜!」

 

「ん、それは無理がある」

「……ホシノ先輩、何か隠してるなら言ってくださいね。前回も、一人で勝手に走っていってしまったでは無いですか」

 

…………そうだ。私は、1回皆に助けられた。

ユメ先輩も、言ってくれたじゃないか。

 

「………皆、あのさ─────」

 

その瞬間、モモトークが鳴った。

こんな時間に鳴らしてくるなんて、私もツイてない。

 

渋々口を閉じ、連絡を確認する。すると、それは先生からのモモトークだった。

 

 

 

MomoTalk

_先生

◀︎
やぁ、元気かい?

ホシノ_

▶︎
うん、元気だよ

▶︎
どうしたの?

_先生

◀︎
実はシャーレで向かってるから

◀︎
今校舎内に居るかな?

ホシノ_

▶︎
今は居るよ

_先生

◀︎
そっか

◀︎
じゃあ待っててね

既読

 

 

 

どうやら先生が来るらしい。

若干の身嗜みは気をつけておかなきゃな。

 

過去の遺恨が、離れてくれない。

ずっと私に纏わりつく黒い靄。きっとそれは、前よりももっと厳しいモノで、ずっと居残り続けるだろう。

 

すると、校門の方から足音が聞こえた。このアビドスの校舎は老朽化が進んでいるせいで足音が響きやすい。

本来ならば、侵入者に対策するために有難い仕様だが。

 

今回ばかりは、それを憎んだ。

足音が2つ、コツン、コツンと近付いてくる。

それはまるで、処刑台の前に居るかのような。それと同時に、何か人としての恐怖を感じさせる、そんな足音。

 

いや、きっとそれらはただの足音なのだろう。ただ、私を殺す遺恨が言っている。

 

()()()()、と。

 

瞳孔が開く。喉が渇き、耳鳴りがする。視界も、ボヤケてきた。

しかし、気付けば体は動いていた。

先生たちとは逆側に、全力で走っていた。

 

「ちょっ、ホシノ先輩!?何処行くの!!」

「ん、逃げる気。追いかける」

 

しかし、明らかにいつもより速度が出ていない。

まだ夢見心地なのか。はたまた、これは私の恐怖心が故か。

 

どちらにせよ、上手く足は動いてくれてないようで、結局体育館の倉庫に隠れる他無かった。

 

………そこで、気付く。何を逃げているんだ私は。

別に、ヒナちゃんとかの可能性もあったじゃないか。

 

恐る恐る、体を起こす。扉の向こうには、何も居なかった。

ため息を付いた。何に対してかは不明だけど、今はそれだけで安堵できた。

 

─────コツッ。

 

嫌な感じがした。その音は、間違いなく私の方へと向かっていた。

しかし、止まってはくれない。そして、もう私に逃げる場所はない。

 

 

来ないで。嫌だ。

 

─────足は止まらない。

 

お願い、私が悪かった。

 

─────足が、止まった。

けれどその影は、もう扉の前に居て。

 

 

「ぁっ……あぁあああっ………!」

 

どうか、その扉を開けないで。どうか、私の顔を見ないで。

想い虚しく、無情にもドアは開いた。

 

「………ああ、やっぱり此処に居た」

「………っ………や、やぁ〜。はじめましてかな〜?」

 

自分でも思う程に、下手な嘘。

お願い、忘れていて。身勝手だとはわかっている。

懺悔は後で幾らでもする。だから今だけは。

 

「…………?小鳥遊さん、ですよね?」

 

─────息が止まった。バレている、あの小鳥遊ホシノだと。

あの、嘲笑うようにあなたを撃った人間だと。

 

震えが、止まらない。そのせいで、足は後ろに下がってコケてしまった。

尻餅をつく形になって、大変なことになった。

 

そしてそんな私に、手が差し伸べられた。

 

「大丈夫ですか?」

 

嫌だ。そんな目を私に向けないで。

理由無く怪我させた、犯罪者と同じ私を、そんな目で見ないで。

 

嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ────

 

「………?」

 

あぁ……ああああああああああああ!!!

 

来るなぁああああ!!!

 

思わず、絶叫してしまった。

駄目だ、もう。

 

恐怖か、後悔か。どちらかはわからないが、私の意識は深い闇の中に、沈んでいくのだった。

皮肉なことに、先程までの夢遊感は無かった。

 

 


 

 

なんだこの人。

 

僕が手を差し伸べたら、叫んでそのまま気絶したんだけど。

………そんなに嫌??

僕は自分の嫌われ度を再び再確認した。

けれど今回のは意外にも特殊な事例だ。普段は我が強い人ばかりなので僕がボコボコにされるケースが常だ。

特に、2年前の小鳥遊さんはもっと芯があった気がしたのだが。

 

何度も言うが、僕は『反省してるならオールオッケー!』スタンスである。

勿論体はまだ恐怖で立ち止まる場合も多いし、何より一線を引いているのは僕の方だ。

ただ、それはあくまでも彼女達を想って彼女達の言ってきた通りに動いているだけだ。

 

僕は全然許しているし、それでいて仲良くしないだけである。

考えられる事をまとめてみようか。

 

一、2年前のブラックマーケットでのことを覚えている。これは無いな。

気が付いたら居なかったし、つまりそのまま立ち去ったのだろう。だから記憶にも無いはず。

 

二、梔子さんの事を思い出した。これもない筈。

直接的には関わっていないが、裏でアレコレ手を回したのは僕なので一部始終は知っている。

だから、あれは解決と言って良いだろう。

 

そして、三。この二年の間にトラウマが出来た。

 

一番有力なのはこれだろう。人間と言う生き物は、少なからず自分優先に生きるモノだ。他の生物と違い、頭で考えて裏を予想して行動することのできる高度の知的生命体である。

 

人と人が行動する以上、そこには明確なズレが生じる。それを許容するか否か、それはその人次第である。

僕は許容する派だが、世界中を見てそう捉える人はキヴォトスには少ない。

許容する派の代名詞は先生だろう。アレ程までに善意で構成された人間もいない。

 

だからこそ、その明確なズレで生じる亀裂は脆く、簡単に人は崩れていく。

 

 

いずれにせよ、だ。このままじゃ僕が何かしたと思われかねない。

そう思った僕は背負い、何処か隠せる場所を探す。

 

近くの教室にでも寝かせ────あれ?ベットがある。

体操マットに、クジラの抱き枕と言う超簡易的なベットだが、これは寝床と言えるだろう。

 

まぁ良いや。誰が使っていようと、前述の通り僕も自分優先するタイプの人間だ。それに疑問を持ったことはないし、これからも思うことはない。

 

そうして僕は小鳥遊さんを寝かしつけ、そのまま対策委員会の教室に向かったのだった。





Tips!

アスの信頼度Tier

SS・・・無し
S・・・先生、黒服、ネル
A・・・アリス、アル

アスから見た危険度Tier

SS・・・ユウカ、ナギサ、ホシノ(New!)
S・・・ミカ、カズサ、ノア



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