嫌われ生徒はその後に好かれても気付かない。 作:ブルーアーカイ部 一般部員
きっかけは何だったか、覚えていない。
ただ一つ、嫌われたくなかったという願いが強かったのかもしれない。
Episode1、最終回です。
─────目を覚ます。
覚めたくなかった。今でも思い返す、あの悲痛な顔。
辛いだろう、悲しいだろう。
泣きたいだろうに、私はそれを踏みにじった。
自然と、涙が出てきた。それは欠伸による生理的反応なのか、それとも私の心によるものなのか。
今の私に、判断など出来はしなかった。
そして、私の意識はやっと現実に戻ってきたようだ。
気付けば、もう深夜だった。
気絶した私は教室に設置していた仮眠スペースに寝かせられていた。
誰が運んだのか。それは、気絶する前の事を思い出せば一発だ。
彼だ。彼からしたら、急に奇声を発して倒れた変な奴なのに、それでも私を此処まで運んだのだろう。
………彼は、優しい。私には似合わない程。
あなたの頭を撃ったのは私だ。もしかしたら、あの表情(カオ)にしてしまったのは、私かもしれないのに。
その全てを忘れようとして、のうのうと生きていたのは、私だ。笑えよ。
「ごめんなさい……ごめんなさい………」
懺悔の声は、等しく小さく。しかし、私の限界はそこだった。
少しの間、学校で彷徨くことにした。
暗闇だからこそ、見えるものもある。
私は暗闇が嫌いだ。だって、物が良く見えないから。
見えないと、失ってしまう。正しく読み取らなきゃ、その先の真実には気づけない。
伸ばせば届いたかも知れない、そんな後悔は後になって気付くものなのだ。
そう、懺悔とは後悔したものしか行わないものなのだ。
嘆き、苦しむ。しかしその後に立ち直るか、直らないか。
その違いを履き違えたのは、一体どこの誰だろうか。
一度目は、大切な先輩を亡くした。二度目、三度目は私を犠牲にしようとして、大切な後輩に守られた。
今思えば、くだらないことばかりだ。
だから、私は先輩を喪ったのだ。
私の人生はミスの連続だ。その全ては、油断と慢心で出来ている。
彼を救えなかったことも、その一つ。一つの絶望のみを見ていた私への、罰。
………私のことを忘れてほしい、なんて。
きっとそんな
そんな
キヴォトス唯一の男子生徒、それだけで嫌悪した私たちへの罰だ。
────これは、救済など無い程穢れた懺悔の物語。
私はきっと、これからも生きていく。
後輩たちだけには、この真実を隠して生きていく。
ユメ先輩と約束したのだ。だから私は、今日も生きる。
明日を生きる、後輩たちの為に。その為なら私が全てを背負おう。
いや、捨ててみせよう。それで救えるなら、それでも助けたいのだから。
私は再び決意を固め、もう暗くなった学校の施錠をして帰宅したのだった。
アビドスは比較的居やすい。
いや、それでも僕は別に仲良くしようなどとは一ミリも思っていない。
今日は先生が居たため、先生を盾にして会話が可能だったと言うのが一番の理由だろう。
盾がいれば直接目を見ずとも会話が可能だ。そして、詰められそうになったら隠れられる。
先生より僕は体は強いので、流石に銃が撃たれた場合は身を挺して守るが。万人から愛される先生を撃とうとする輩は居ないだろうし。
だってこの先生、チンピラ達ですら挨拶するタイプの人でっせ。
そして何より、隠れていても不快感がない大人と言うのも珍しいものだ。
先生は僕らからしたら年上の大人の筈だが、何故だか加齢臭がしないのだ。
寧ろ、女性の香りが………やめておこう。
そうして、小鳥遊さんを寝かしつけた後は雑談と近況報告を先生がこなした後だったので、僕は帰ろうとした。
そこで、シロコさんが扉の前で腕を広げ、通せんぼして来た。
「ん、帰さない。まだ茶も出してない」
「私達の学校にお茶はありませんけどね……」
「ちょっと、もう帰るの?来てまだ三十分も経ってないじゃない!」
「ん〜、早すぎではありませんか?」
成程そう来たか。
これはアレだな、囲って帰さない。帰して欲しくば何かを差し出せってことだ。
「………いやぁ、僕に手持ちは何も………」
「無くて良い。居て」
「帰りたいんですが」
「ん」
圧が凄い。シロコさんの端正な顔がもう目の前にある。
目線を逸らすので精一杯だ。
「あら〜☆シロコちゃん大胆ですね!」
なんだろう、嫌な予感。
そう感じたタイミングで僕は、先生の背中に隠れた。
身長は僕の方が高いだが、体格だけなら僕は先生よりもヒョロい自覚がある。
先生、ヘルプミーだ!
「"……アス?その、何してるの?"」
「隠れてます」
「"その身長じゃ無理じゃないかな……"」
「なん……だと……!?」
まぁ、冷静に考えればその通りである。
僕は178cmの45kgだ。連邦生徒会、もといシャーレの制服で見た目詐欺しているが、超細いのだ。
見た目も相まって、ただのヒョロガリ陰キャである。
そりゃまぁ、イジメの標的になりますわな。
そこが気に食わない理由でもあったのかもしれないと考えると、妥当なのかもしれない。
そして何とか説得し、先生を犠牲にして僕は夜のアビドス砂漠を歩いていた。
大丈夫だ、しっかりとコンパスは手元にある。
水分は摂らずとも生きていける体だ。嘘だけど。
アビドス砂漠の夜は冷え込むのだ。砂漠の暑さのメカニズムとは、日中は太陽光が直接振り注ぎ、遮るものが何もないことが原因なのだ。
だからこそ、夜は空気中の水分がないことも相まって、保温効果が一切無い。
その静けさの中、僕の足音だけが砂漠を踏む。
僅かながら結晶化した地面を踏むと、パキリと小気味よい音が聞こえる。
僕は暗闇が大好きだ。確かに暗い世界は何も見えず、先など見えないだろう。
しかし、その暗さがまた良いのだ。暗いからこそ、人はよく物事を見ようとする。
僕は日常を生きている。そこは、数多の人間が同時に共存する異文化社会。
僕は僕が異物だと理解している。だからこそ、その度に人生を見つめ直すのだ。
世界に溢れる、雑多の数々。人が作り上げた神秘の結晶。
それらの上に僕らは立っている。だからこそ、世界は沢山の情報にまみれている。
僕には、その全てが眩しすぎた。
思わず目を瞑ってしまいそうなほど、世界というものはあまりに眩しく、あまりに輝いていた。
だからこそ、暗闇はその眩い情報をシャットダウンしてくれる。
見たい情報だけが、見たいだけ見せてくれる。
僕はそんな世界が好きである。しかし、人は好きではない。
作り上げたその全てに感謝をしながら、その癖に作り上げた人には感謝をしていない。
歪なのだ、僕は。それを理解しながらも、その道を変えることなど一体誰が出来ようか。
僕は嫌われ続ける。きっとその先も、大人になっても。
この学園都市に居る限り、僕と言う男は嫌われている存在なのだろう。
だから、極限まで避けるのだ。
一人で生きるなんてのは不可能、だから出来る限り互いのことを考えて行動する。そこに正解は無いけれど、間違いは沢山ある。
さぁ、地面を踏みしめ続けよう。
僕と言う男が、この世界から消えるまで。
黒神アスと言う男は、元来強いものではない。
世界全体で見ても、名を張れる程何かを大成した訳でもない。
しかし、この男にはある『特徴』があった。
それは──────
「………はぁ。今日も今日とて、家が荒らされてるな」
極度の、嫌われ生徒である。
ということで!
『Episode / Zero』、この世界の過去編のスタートです!
今回、結構短めですみません……
けどその代わり、設定とか超練ってますので、投稿頻度が遅れるかもしれません!
お楽しみに!!