レッドさん?
一般には、知る人ぞ知るポケモントレーナーってところかな
でも、僕たち研究者の間では、かなりの有名人だよ
名前だけなら、世界中の全博士が知っている
え?
レッドさんについて教えてほしい?
うーん、そうだな
いきなり本人の話をするより、身近なものから始めた方が分かりやすいか
まずは、これを見て
ピッ
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No.144
フリーザー
分類:れいとうポケモン
タイプ:こおり/ひこう
高さ:1.7m
重さ:55.4kg
でんせつの とりポケモンの ひとつ
ながい しっぽが たなびいて とんでいく すがたは すばらしい
記述者:オーキド
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彼を有名たらしめているものの一つ
そう、ポケモン図鑑
カントー地方の図鑑には、フシギダネからカイリューまで
149種類のポケモンが登録されている
何十年も前から、ずっとそう
これから先も、きっと変わらない
どこにもレッドさんの名前がないじゃないかって?
まあまあ、慌てないで
図鑑のどこを探しても、レッドという名前は載っていない
だから、彼を知らない人がいるのも当然なんだ
注目してほしいのは、こっち
記述者、オーキド
オーキド博士は知ってるよね?
世界で一番有名なポケモン研究者だもの
マサラタウンのオーキド博士は、インタビューのたびに決まってこう言うんだ
「わしがしたのは、届いた記録をまとめたことだけじゃ」
僕も博士の話は好きでね
研究者として尊敬しているのはもちろんだけれど、いちファンと言ってもいいかもしれない
ああ、だから僕のところへ来たの?
へえ
誰に聞いたの?
デボンの人から?
他社にまでそんな噂が流れてるなんて、面白いなあ
ごめん、ごめん
続きを話そう
さっきの博士の言葉
何度見たか分からない
新聞、雑誌、ネット記事、動画
公式の場だけでもうん十回言っているんじゃないかな
でもね
「データをまとめただけ」なんて、とんでもない話だよ
博士が発表した『ポケモンが習得する技と、その属性に関する考察』
が発表されたときは、研究所中がひっくり返った
あの論文がなければ、今ある技術や商品だって、かなりの数が存在しなかったと思う
僕も、それをきっかけに新しい商品の開発を始めた一人で――
ああ、また話がそれたね
博士が整理したという、そのデータ
一体どうやって集めたと思う?
ヒントは、世界中を旅する人
そう
ポケモントレーナーだ
博士は、有望なトレーナーに図鑑を渡し、旅先で見つけたポケモンの情報を記録してもらっていた
特に興味深い個体は研究所へ送ってもらい、実際に観察や飼育も行っていたそうだ
ただ、今はもう図鑑を配っていないらしい
まあ、当然だよね
カントーのポケモンは、ほぼすべて発見されている
生態系を構成する149種類
新しいポケモンが見つからなくなってから、図鑑の配布も終わった
話は戻って、じゃあ、博士へ最も多くのデータを送ったトレーナーは誰だと思う?
お
勘がいいね
そう、ここで、ようやくレッドさんにつながる
何十年も前
当時、まだ半分ほどしか埋まっていなかった図鑑を、短期間でほとんど完成させた人物がいた
あの頃はすごかったらしいよ
毎日のように、新種発見の速報が流れた
昨日まで存在すら知られていなかったポケモンが発表され
その数日後には、その進化系や習得技まで公開される
ポケモンは無限にいるんじゃないかと、本気で考える人までいたそうだ
当時の新聞は、史上最高の発行部数を記録した
研究者も、トレーナーも、企業も、誰もが新しい情報を欲しがった
情報には、それだけの価値がある
実感が湧かないかい?
じゃあ、具体的な数字を出そうか
これは新種発見ラッシュより少し前の新聞
当時、エスパーポケモンの第一人者だったナツメさんの記事だ
ヤマブキシティにエスパータイプ専門のジムを設立したことで、一躍有名になった人だよ
彼女が、ユンゲラーの進化系であるフーディンと、その習得技を発表した
ただでさえ人気の高かったユンゲラーに、さらに進化先がある
そのうえ、新しい技まで使える
世界中が飛びついた
懸賞金は一億円を超えた
講演や広告まで含めれば、その何倍もの金が動いたはずだ
すごすぎる?
いや、そうでもないよ
考えてみて
世界中のトレーナーが、より強いパートナーを求めている
どんなポケモンがいるのか
何に進化するのか
どんな技を覚えるのか
それが分かるだけで、育成方法も、バトル流行も、リーグルールも変わる
新しいポケモンの情報は、それだけ大きな影響を持つんだ
それが、毎日のように発表された
化け物みたいに強いポケモンが現れたと思ったら、数日後にはさらに上が見つかる
今では、あの時代をオーキド博士の黄金期と呼ぶ研究者もいる
特許だけでもいくらあることか
公表はされていないけれど、間違いなく世界有数の億万長者だろうね
博士は三代くらい遊んで暮らせるんじゃないかな
さて
その黄金期に、博士へ大量のデータを送った人物
それまで七十種類ほどだった図鑑を、一気に149まで押し上げた
カントーのポケモンの、およそ半数
その発見と育成に関わったとされる人物
そう、それがレッドさんなんだ
カントー図鑑を完成させた立役者
英雄と呼んでも大げさじゃない
……それが、本当ならね
だって、考えてもみてよ
長い間、世界中の研究者やトレーナーが
探しても見つけられなかったポケモンを、一人の少年が次々と発見する
しかも、期間はリーグのワンシーズンと、その前後だけ
調べれば分かる
レッドという名前は、当時の殿堂入り記録にも残っている
つまり彼は、ジムを巡り、ポケモンを鍛え、リーグを勝ち抜く一方で
訪れた土地に生息する未発見のポケモンを捕まえていたことになる
一種類も欠けることなく
しかも、捕まえただけじゃない
進化するまで育てている
ここがキモなんだ
どのポケモンが進化するのか
何度進化するのか
どんな条件で姿を変えるのか
レッドさんは、それを全部見つけている
おかしいだろ、だって一人のブリーダーが
一種類のポケモンの進化条件を突き止めるために、一生を費やすことだってある
それを彼は、何十種類も同時にやった
進化するかどうかすら分からない新種を捕まえ
条件の分からないまま育て、最終進化まで到達させた
新しい進化系が発見されていないことを考えれば、見落としもなかったことになる
旅をしながら
リーグを目指しながら
大量のポケモンを捕まえ、育て、戦わせながら
記録上では、四年と少し
体がいくつあっても足りない
ねえ
君だって、おかしいと思うだろう?
だから僕は、レッドという名前は一人の人間を指していないと思っている
オーキド博士から図鑑を渡された複数のトレーナー
彼らをまとめた、プロジェクト名だったんじゃないかって
全員の成果を一人の英雄へ集中させることで、情報の出所を守った
あるいは、発見者ごとの名誉や報酬の差をなくした
そう考えれば、まだ説明がつく
きちんと公表すればいいのにね
送信記録には最初から最後まで、同じ一人の名前しか残っていない
レッド
初代ポケモンをプレイした、すべてのレッドさんに捧げます