今期の授業は、マサラタウンをテーマにします
都市工学と都市経済学の世界では、
いい意味でも、悪い意味でも有名な場所ですね
ポケモンドリームの都市
あるいは、欲望の都市
そう呼ばれることもあります
皆さんご存知の通り
マサラタウンには世界最大の研究機関
オーキド研究所の本拠地があります
摩天楼が立ち並び
最新技術が集まり
活気あふれる都市という印象が強いですね
現在のマサラタウン人口は、過去50年間で約30倍
平均所得は世界最高水準です
人とお金と情報が、一気にこの街へ集まりました
研究者、投資家、企業家、優秀なトレーナー
世界中の才能が、成功を求めてマサラタウンを目指すようになりました
カントーの中心地と言っても過言じゃありません
しかし、その裏側では、
住宅価格の高騰、極端な貧富の差、ホームレス問題、スラム化
これらが深刻化しています
オーキド研究所も、この問題を認識しているようで
これまでタウンへ20億円以上の寄付を行いました
以下は研究所の声明です
『ファミリーホームレスの問題は
マサラタウンの喫緊の課題です
いかなる子どもも路上で眠ることは許容できません
私たちはタウンの一員として倫理的な義務を有しています
ヘンディングホーム計画を支援できることを誇りに思っています』
さらに無料食堂を設置
ここでは無料で食事が提供され
自身だけではなく家族分の食料も持ち帰ることができます
では
そこの君
タウンの人々は
オーキド研究所に対してどんな感情を持っていると思いますか
はい
ありがとうございます
「感謝」
ほとんどの学生さんがそう回答します
しかし、残念ながら不正解です
現地住民へのアンケート
最多回答はこちらでした
『オーキド研究所のせいで、私たちは帰る場所を失った』
オーキド博士は世界的な研究者です
マサラタウンの誇りであり
同時に、今までいた住民たちにとっては
生活を変えてしまった存在なんです
では、なぜこのような歪んだ都市になったのでしょうか
発端は、
カントーポケモンラッシュです
当時、ポケモンに関する公開データ量は短期間で何十倍にもなりました
進化条件、習得技、生態情報、育成方法……
世界中が求めていた情報です
そして、その大半を発表していた機関
それが、オーキド研究所でした
しかし、問題がありました
当時、オーキド研究所は数名体制で
発見されるポケモン、増え続ける研究データ、世界中から届く問い合わせ
とてもじゃないが、処理しきれませんでした
そこで博士は決断しました
研究所そのものを大きくすることを
まずは設備を拡張し
次に世界中から優秀な研究員を集め
そしたら成果が増え
こんどはその成果を求めて、企業が集まり、資金が増える
この繰り返し
経済学では、こうした現象を集積効果と言います
簡単に言えば
「成功している場所には、さらに成功が集まる」
ということです
いやはや
現代の錬金術ですね
オーキド博士は本当にすごい
天才という言葉でも
少し足りないかもしれません
当時は一般的な街、そして研究施設でした
しかし現在では
サファリパーク数十個分の敷地を持つ巨大研究都市です
敷地内には、伝説級ポケモンの
研究区域まで存在すると噂されています
周辺の地価は、年々上昇していきました
研究所で働く研究員、世界中から訪れる関係者
彼らを胃袋を支える周辺施設
更にそこで働く人々と
住む場所を求める人間は増え続けました
しかし、マサラタウンには限界があります
もともとは小さな街です
土地は奪い合いで、猫の額を有効活用しようとマンションが立ち並ぶ
それでも価格は上がり続ける
ある時点から
海を埋め立てて新しい土地を作る方が安い
という判断がされました
大規模な埋立計画
研究所直結の交通網
高級住宅街
商業施設
そこの住民は
元々の住民から皮肉を込めてこう呼ばれています
「上級マサラ人」
先生も研究のため訪れたことがあります
驚きましたよ
ペルシアンのトリミング料金が10万だったんです
先生がいくお店はカット代3000ですからね
人間よりポケモンの方が、
良いサービスを受けている
そんな場所でした笑
才能ある若者は、
夢を持ってマサラタウンへ向かいます
なぜなら、投資環境が整っているからです
資産家は
税金として失うくらいなら
可能性のある若者へ投資したい
そう考える
もし事業が成功すれば
一瞬で世界的企業になります
俗にいうユニコーン企業ですね
有名な例では、
暗号コインによる国際ポケモン送付サービスがあります
まさに、ポケモンドリーム
ただし
夢を叶える人がいると同時に
夢から覚める人もいます
競争は激化の一途をたどっています
似たような効果を持つ技マシンが
数時間違いで発表された
それだけで
片方は成功者
片方は破産者
そんな例もあります
事業者は走り続けるしかありません
拡大、成果、成長
借金をしてでも
止まることは許されない
そして資金が尽きた瞬間
才能ある若者は
一夜にしてスラム街へ落ちます
弱肉強食
成功者の夢の街
失敗者はただ去るのみ
それがマサラタウンなのです
成功と言えば
もう一つ、大きな転機がありました
オーキド研究所を単なる研究機関から
世界最大級の情報企業へ押し上げた発明です
ポケモンバトルの歴史を変えたシステムです
トレーナーが経験で判断していたものを
可視化するシステム
その名前は――
(講義は続く)
前作『レッドデータブック』を書き直した作品です。
同じ話や似た展開を扱う話もありますが、流れを大きく再構成しています。
なお、前作の内容を知らなくても、本作のみでお読みいただけます。
主人公の記者さんのインタビューを中心に
いろんな記録から
「レッドとは何者だったのか」
プレイヤー存在が世界へ与えた影響を、見ていきたいと思います。