ノーゲーム・ノーライフ・ノーデュエル   作:ぬっく~

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プロローグ

―――都市伝説。

それは一種の願望である。

 

数多の都市伝説。

その一つに、こんな話があるのを聞いたことはあるだろうか。

ただ一度も敗北はなく、空前絶後の記録を刻み。

あらゆる大会の頂点に降臨する正体不明のプレイヤー。

アカウント名が常に空欄ゆえに、通称『  』(くうはく)

勝つことが不可能とまで言われる決闘者(デュエルリスト)のお話を―――

 

「くそ……。“不正使い(チーター)”が」

 

「……不正使い(チーター)? 『  』(くうはく)の正体を知っているの?」

 

「……別に、みんな知ってる噂程度だ。敗北実績を消すハッカー説。開発スタッフが様式美として、空欄の名前を使っている説。超凄腕の決闘者(デュエルリスト)集団の共有アカウント説。まあ、噂だけならいくらでもある。だが確信した“不正使い(チーター)のグループ説”が真実だ。カードの書き換え……。不正してるに決まっている。そうやってトップとったんだろう」

 

「……あんたたちには言ってなかったわね……」

 

「あ?」

 

「不正ツールを使ってたのは……私達のほうよ」

 

「―――な……」

 

「相手は“都市伝説(くうはく)”。どんな手段使っても、勝てば新たな伝説だと思った。それを―――……戦略を駆使した。確認できた限り“不正なし”の試合だったのよ。“彼”は多分たった一人……。恐ろしく頭のいい人よ」

 

―――こうして噂は更に加速していく。

 

「あぁ~~。どんな素敵な王子様かしら!」

 

「……本当に一人なら、ただの廃人だと思うけどな」

 

都市伝説。

それは一種の願望だ。

―――現実はだいたい一番つまらない答えが真実だから……。

 

「な、なんとか勝てた―――。つか」

 

兄―――「(そら)」18歳。

童貞・コミュ障・ニート・ゲーム廃人。

 

()()っ! 『  』(くうはく)名義のメインアカウント。()()操作するのやめてくれません? 兄ちゃん心臓に悪いわっ!」

 

「……おなかすいた、から」

 

妹―――「(しろ)」11歳。

不登校・コミュ障・ヒキコモリ・ゲーム廃人。

 

「……にぃも食べ、る?」

 

「おま。また、そんなブルジョアな兵糧買ったのか!」

 

「……栄養だい、じ」

 

「知ってるか妹よ。人間の脳はブドウ糖さえあれば機能する。「食パン」がカロリー栄養コスパ共に最強」

 

「……効率厨おつ……」

 

「つか今、何時だ?」

 

「……夜中、八時」

 

「朝八時を夜中とは斬新な表現だよな妹よ。―――で、何日の?」

 

「四日、目?」

 

「いや妹よ。徹夜した日数じゃなくて、何月の何日よ」

 

「……ニートのにぃに関係ある、の?」

 

「あるよっ!? イベントとかランク大会とかっ!」

 

「……ふわぁ。ねむ、い」

 

「え。ここで寝るのっ!?」

 

「……にぃ、なら出来、る。……ふぁい、と 」

 

―――そう、これが……

 

「うおぉぉぉ。掛かって来んかい、散兵どもぉっ」

 

「ZZZ……」

 

都市伝説が生まれる理由。

世界は混沌で理不尽で不条理で―――、意味などありしない。

それに気づいた者。

認めたくない者の切なる願いから生まれる願望。―――すなわち。

少しでも世界が面白くあればと。

―――では一つ。

“僕”もそれを手伝ってみよう。

さしあたって様式美として、書き出すとしよう。

“こんな噂を聞いたことがあるだろうか”と

 

「……にぃ。メール……」

 

「広告だろう。ほっとけ」

 

「……友だち、かも」

 

「……。……誰の?」

 

「……。……にぃ……の?」

 

「ははっ、おかしいな。愛しい妹にひどい皮肉言われた……幻聴か」

 

「……しろの……って言わない、理由……察して……欲しい」

 

―――【新着一件―――件名:『  』達へ】

 

「……にぃ、メール……PCで……みて……」

 

「ん?」

 

From: unknown

Title:

君ら兄妹は生まれる世界を間違えたと感じたとはないかい?

http://www.unknowntheworld/nextpage/20……

 

「なんだこれ……。―――つか、何で『  』(おれら)が“兄妹”だって知っているんだ?」

 

……対戦依頼、取材依頼、挑発に中傷。

まあ、よくあるが……。

俺らの正体を知っている奴は、()()()()()()()―――

揺さぶり(ブラフ)……

駆け引きのつもりか?

 

「面白いじゃねぇか」

 

カチッ

 

「……あ? ふつーの……遊戯王?」

 

「……ふぁふ、おやすみ……」

 

「ちょ、待って! 遊戯王は白の担当だろ!? 相手が高度なプログラムなら俺じゃどうにもならんぞっ!」

 

「うぅ……」

 

遊戯王は二人零和有限限定完全情報ゲーム。

運が介在する余地がないこのゲームは原理上明確に必勝法がある。

ただし、十の百二十乗。

無量大数以上の局面すべて、把握できれば、だ。

 

「……遊戯王なんて……ただの……()()()()()()()

 

『デュエル!!』

 

LP:8000

手札:5枚

 

???

LP:8000

手札:5枚

 

(……そう。グランドマスターを破ったプログラムに、()()()()()()()()()二十連勝した白ならその通りだろう。だが―――こいつは)

 

「うそ……」

 

LP:100

手札:1枚

 

エルシャドール・ミドラージュ

エルシャドール・シェキナーガ

エルシャドール・ネフィルム

エルシャドール・エグリスタ

エルシャドール・ウェンディゴ

 

伏せ:2枚

 

 

???

LP:8000

手札:0枚

 

大逆転クイズ

 

墓地

超電磁タートル

ネクロ・ガードナー

ネクロ・ガードナー

ネクロ・ガードナー

黄泉ガエル

終焉のカウントダウン

 

 

「……このままじゃ負けるな」

 

「……そ、そんなこと……っ」

 

「落ち着け。相手は……“人間”だ」

 

「え……」

 

「プログラムは常に最善手を打つ。だがこいつはあえてLPを犠牲にして、白の悪手を誘った。まんまと罠にかけられたな」

 

「……うぅ……」

 

「白を追い詰める人間とは信じ難い話だが―――世界は広いな。揺さぶり、誘いは俺が読む。単純な勝負の力量なら白が負けるはずがない」

 

コレが。

数多の大会で世界ランキングのトップを独走するゲーマのからくりだった。

 

(おれ)(しろ)で『空白(くうはく)』―――。『  』(おれら)に勝てる奴がこの世にいるか、見せて貰おうじゃねぇか♪」

 

―――そう、これが。

『  』(くうはく)という都市伝説の真実。

 

ユー・アー・ウィナー

 

「な、なんとか勝てたな……。すまん白、負けを覚悟しそうになった……」

 

「……こんな強い、人……。はじ、めて……」

 

「ああ。一体どんな奴―――」

 

【おみごと。それほどのゲームの腕前―――。さぞ―――生きにくくないかい?】

 

そのたった一文で。

二人の心境は―――氷点下まで下がった。

 

【君達は、その世界をどう思う?】

 

どう思うかだと……?

 

―――楽しいかい? 生きやすいかい?

 

……そんな、の決まって……る。

 

『クソゲー』

 

七十億ものプレイヤーが好き勝手に手番を動かす。

ルールも目的もないくだらないゲーム。

勝ちすぎても、負けすぎても、ペナルティ……

黙れば圧力で、喋れば疎まれる。

クソゲーじゃなきゃ、なんだってんだ?

 

【―――もし遊戯王で全てが決まる世界があったら。目的もルールも明確な盤上の世界があったら】

 

【どう思うかな?】

 

「なるほど―――。そんな世界があるなら、確かに俺らは、生まれる世界を間違えたわけだ」

 

刹那、ブレーカーが落ちたように、バツンと音を立てて部屋の全てが止まる。

 

「な―――なんだっ!?」

 

()()()()()()。君達はまさしく、()()()()()()()()()()()。だから僕が()()()()()()()()

 

もはや画面以外の、部屋の全てが砂嵐に呑まれる中。

唐突に、白い腕が生える。

 

『―――君達が、生まれるべきだった世界に!!』

 

そして―――。

 

『な……!?』

 

そこは―――上空だった。

 

「ようこそ、僕の世界へ!!」

 

壮大で、異常な景色を背後に、落下しながら『少年』は腕を開いて笑う。

 

「ここが君達が夢見る理想郷。【盤上の世界】ディスボード。すべてが遊戯王で決まる世界―――。そう―――人の命も国境線さえもッ!」

 

「待て待て待て、それどころじゃねぇ! 何がどうなってる!? なんで俺ら紐なしバンジーしてんだ!」

 

「……あ、あなた。だ、だれっ」

 

「僕? 僕はね~~。あそこに住んでいる」

 

だが相変わらず楽しそうに笑って、少年が言う。

 

「わかりやすく言うなら―――()()かな♪」

 

「だから、それどころじゃねぇ、つってんだろう。地面が迫―――」

 

そんな二人に、神を名乗る少年は、楽しげに告げる。

 

「また会えるのを期待してるよ。きっとそう……遠くない内にね」

 

―――そうして、二人の意識は暗転した。

 

「う……うーん……。な、なんだったんだありゃ……」

 

「……うぅ。変な、夢」

 

「白……嗚呼、妹よ。あえて口にしなかったのに、“夢じゃないフラグ”たてないでくれよ」

 

「……う、うぅ」

 

そこには、ありえない景色が広がっていた。

 

「……。なあ、妹よ」

 

「……ん」

 

「人生なんて、無理ゲーだ。マゾゲーだ。何度となく思ったが」

 

「……うん」

 

「ついに“バグった”」

 

「もうなにこれ、超クソゲぇ……」

 

こんな噂を聞いたことがあるだろうか。

あまりにゲームが上手すぎる者には、ある日メールが届くという。

本文のURLを踏むとゲームが始まり、そのゲームをクリアすると―――異世界へ誘われるという。

そんな『都市伝説』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたは信じますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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