…………ん?
ここは…………どこだ?
僕はどうなったんだ。
まさか、助かったのか!?
僕は意識が覚醒すると視界が真っ暗闇に包まれていた。
どういうことだ?
なんで何も見えないんだ。
いきなり意識がはっきりしたかと思えば、暗闇の中に放り出されて混乱する。
待てよ。身体はどうだ。
僕はどうにかして身体を動かそうとする。
ユサユサ! ユサユサ!
なんの音かは分からないが、自身の身体の上半身だけはどうにか動く。
だが、動くといってもほんの微かにしか、動かず、殆ど動いていないに等しい。
上半身だけは動くぞ! 良かった!
幸い、上半身は無事なようで安心したな。でも下半身は動く気配すらない。それどころか感覚すらない。
上半身に関して神経が無事のようだけど、下半身は絶望的だな。
それにしても寒いな。冷房が効きすぎじゃないか。
病院の冷房にしては、効き過ぎじゃないか。このままだと風邪を引いちゃうぞ。
病気の体の上に病気という名のデバフの重ねがけとは健康上、よろしくない。
誰かいないのかな。看護師さんはどこだ?
カサカサカサ
ん? なんだ。
さっき、変な音がしたような?
僕は不意になにか、まるで虫が歩いた時のような足音が聞こえた。
うーん。見えないから分からん。どうにかして見えないものか?
《告。周囲の知覚情報を認識するためにエクストラスキル「魔力感知」の獲得を提案します》
うお! なんだ! 誰だ!
僕は思わず、脳内に直接、語りかけてくるような声が響き、驚く。
「魔力感知」だと? ファンタジーでよくある周囲の魔力を感知する能力を指す言葉だと、ラノベには書いてあった。
てか、この声は一体誰なんだ? なんだか人工知能みたいに、まったく感情の籠っていない無機質な感じだが…………。
《告。ユニークスキル「
ユニークスキル? 「
ますます訳が分からん。
いきなり意識がはっきりしたかと思えば、目の前は真っ暗。
目先真っ暗とはまさにこのことか。
ていうか、こいつ。僕が喋っていないのに応答したな。もしかして頭の中、つまり脳内で会話しているのか。
《告。ユニークスキル『
ほう。
つまり、どゆこと。
僕の頭に人工知能が搭載されてるってことなのか? じゃないと、この会話自体、成立しないしな。
でも確か、ユニークスキル? とか言ってたな。スキルといえば異世界。
もしかして…………
ねぇ、ここってもしかして異世界だったりする?
応答してくれるかは分からんが、ダメ元で質問してみよう。返ってこなかったら何度も繰り返してやる。
《解。ここは基軸世界と称される異世界です》
返事キタァ──ッ!?
ダメ元のつもりだったけど、本当に返ってくるとは…………
それにしても、ここってマジの異世界なのか。
なら魔法やスキルもあるのかな。この謎の声もさっきユニークスキルとか言ってたし。
《解。この世界には魔法やスキルという概念が存在します。ですが、現段階の情報ではこれ以上のことは不明です》
やはり、あるのか、スキルや魔法が!
もしかしたら僕も手から炎や雷、水を出せたりして。でも謎の声もそれ以上は分からないようだ。
まぁ、でもこんな暗闇の中で、一人じゃないってわかっただけでも嬉しい。
異世界に来れたと思ったら、最初からこんな暗闇の中で右も左も分からない状態じゃ、何にもできないし、寂しいのはもう嫌だしな。
ん?
あれ?
ここって異世界なんだよな。
確か、僕はどうやってきたんだ? 確か、胸が苦しくなってそのまま意識を失ったことまでは覚えてる。
そして異世界に来た。
これはよくラノベである展開に似ている。
そのことから考えると…………僕、死んでね。
《解。その認識で合っています》
今唯一頼れる存在の「成長者」さんから肯定されたということは、僕は一度、死んで、生まれ変わったのだろう。
いや、まさか、ラノベだけの話を本当に実体験してしまうとは、不思議なものだ。
だが、ここで問題なのは僕は何に転生したのか。
人ではないな。身体…………というか上半身は少し動くけど、ほとんど動かないに等しい。下半身はというと地面に固定化されているような気がする。
それじゃ、四足歩行の生物かと言われれば、それもないな。
今の状態から考えても人や四足歩行の生物以外で地面に根付いて生きる生物。
(僕って草なんじゃね)
いくらなんでも飛躍し過ぎか。
いきなり転生して、念願の異世界に来たかと思えば、草でしたなんて。
冗談にもならない。
ねぇ、そう思うでしょ。「成長者」さん?
《……………………》
あれ? 返答がない。
まさか、図星だったりして。
《解。その通りです》
うそじゃん。
そんなのあり?
「成長者」さんが肯定したということはその通りに違いない。
《解。
どうやら僕は人としての人生を終え、新たな草としての草生を歩むこととなるのだった。