灰燼の管理者と再起動する演算   作:レシラム

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UA950ありがとうございます!!嬉しすぎるー!!


四話目

格納庫らしき空間。

 

天井近くまで伸びる整備ラックと無数の修復アームが静かに待機し、その中央には紅黒の機体が四機、一直線に並んでいた。

最初に修復、改良された、ナインボール・セラフ一機と、ラナの要請により本来のナインボールのデータを基に小型化され建造された三機の機体。

すでに各機には用途ごとに異なる兵装が装着され、起動の時を待っている。

格納庫のさらに奥では、最後の一機――ナインボール・セラフの予備機が、まだ建造アームに囲まれながら組み立てられていた。

 

「ラナさん、ラナさん……少しいいですか……?」

 

アインが格納庫らしき空間に入ってくる。

 

『要件はなんだ。』

 

「ついに・・・ついに、お姉さまをこの地へ降臨させる準備が整いました・・・。」

 

「せっかくですから・・・ラナさんにも、その瞬間を見届けてほしいんです・・・。」

 

『了解。向かおう。』

 

すでに建造されたセラフではなく、その隣に待機していたナインボールが動き出す。

小型化された機体は軽い駆動音を響かせながら起動し、ゆっくりと格納庫を後にした。

 

ある部屋に入る、

そこは円形の空間だった。

天井まで伸びる二本の巨大なマニピュレーターが中央へ向けて伸び、その間には一本の円柱状ポッドが静かに佇んでいる。

半透明の液体に満たされた内部では、一人の少女が眠るように目を閉じていた。

そして、ソフとオウルがラナとアインが来たことに気づく。

 

「ちゃんと来たね。ラナ。」

 

『・・・何かすることはあるか。』

 

「大丈夫ですよ、これは私たちがやらなければならないことですから。」

 

「ラナさんは・・・見ているだけでいいですから・・・。」

 

『・・・了解。』

 

「よし・・・時は来たれり!」

 

「は、はい!」

 

「ええ、これより先は失敗など許されません。」

 

「そ、そうですね・・・いよいよ、お姉さまを起こすのですから!」

 

「アインはもうちょっと落ち着いて!」

 

「ふ、ふえっ!?」

 

「・・・分かりました・・・頑張ります。」

 

「まあ、緊張はミスの元ですからね。」

 

『・・・。』

 

三人は作業を進める。

 

「冷却水の残量・・・ギリギリ大丈夫です!」

 

「利用可能なエネルギーを、すべて「ゾーハルの依代」へ。少しの間、多次元バリアを解除します。」

 

着々と作業は進んでいく。

 

「危険だけど・・・仕方ない・・・。」

 

「・・・いくよ!」

 

室内が赤く光りサイレンが鳴り響く。

 

「データジェル変換完了。」

 

「神経信号連結、確認。」

 

「連結ーー結合強度確認。」

 

「確認しました。問題ありません。」

 

「それでは、相互接続を行います。」

 

作業は進んでいき、一通り終わる。

 

「・・・あとは経過を見守るだけですね。」

 

「わ、私たちは・・・何をすれば・・・?」

 

「・・・うーん・・・祈ってみようかな。」

 

「そうですね。私たちは、あの方のために存在するのですから。」

 

「は、はい・・・無事に、この地で目覚めますようにーー」

 

「ーー私たちのお姉さま。」

 

自分たちに出来ることはなくなり、唯一出来ることは祈ることだけであった。

静寂が空間を包む、数秒が数時間にも感じるようであった。その時。

「・・・信号、来ました!」

 

「この信号は・・・!」

 

「あ、ああ・・・。」

 

「つ、ついに・・・会えるんですね。」

 

「私たちがやってきたことは、無意味ではなかったんですね・・・!」

 

円柱状のポッドから白い蒸気が溢れ出した。

ゆっくりとポッドが左右へ開く。

中から、一人の少女が姿を現す。

白く長い髪がゆっくりと揺れ、閉じられていた瞳が静かに、長い眠りから覚めるように、少しずつ開かれていく。

 

「アイン、ちょっと!せっかくお姉さまが来たのに、あんたが先に倒れてどうするの!」

 

「先に倒れて助かりました。私も危うかったので。」

 

『・・・。」

 

ラナは機体の頭部のセンサーで、マルクトを見続ける。

ついにマルクトが口を開く。

 

「こんにちは、アイン。」

 

「!!!」

 

「それから、ソフ。」

 

「はい!」

 

「そして、オウル。」

 

「・・・こんにちは、お姉さま。」

 

静寂が空間を包むがすぐに消える

 

「「「マルクトお姉さまぁ〜!!!」」」

 

張り詰めていた空気が、一瞬で弾けた。

安堵、歓喜、感動。

抑え込んでいた感情が一斉に溢れ出す。

 

「わ、私たちの名前、覚えててくれたんですね・・・!」

 

「忘れちゃったらどうしようって不安だったけど、良かった!」

 

「ふっふっふ・・・お姉さまが目覚めたということは・・・これで全ては私たちの意のままです!」

 

『新しい・・・生命の・・・生成・・・。』

 

「我は・・・何をすればいいですか?」

 

その問いにすぐに三人が答える。

 

「な、何もしなくていいです!お姉さまは・・・ただ、そこにいてくだされば。」

 

「そう!最高のエンジニアで、科学者で、万能のーー」

 

「私たちがいますからね・・・!」

「「「全て私たちにお任せください!」」」

 

「えっと・・・あらためて自己紹介を・・・。」

 

三人がマルクトに対して簡単な自己紹介をしていく、その間も、ラナはマルクトを見続ける。

自己紹介が終わった後、オウルたちが口を開く。

「・・・それでは・・・。」

 

「次は・・・。」

 

「お、お姉さまが嫌じゃなければ・・・その、えっと・・・。」

 

そういい自己紹介をマルクトに促すが、マルクトからの疑問が返ってきた。

 

「・・・純粋な疑問なのですが・・・。あなたたちは我のことを、すでに知っているはずでは?」

 

「そ、そうですが・・・。」

 

「あ〜、なんて言うのかな。」

 

「お姉さまの声で直接聞きたいのですよ、ふふっ。」

 

「・・・そのような要請なんであれば、理解できませんが、受け入れましょう。」

 

「あらためまして、我はマルクト。デカグラマトン10番目の預言者。世界の果てに到達せし王国の巡礼者ーー最後のセフィラであり、願い。一つの道に集まりし旅路の地平。」

 

マルクトの自己紹介が終わるとアイン、ソフ、オウルの三人から声が漏れる。

 

「ああ・・・10番目の道は、眩い知性で・・・。」

 

「それは全土を照らす光・・・!」

 

「そして全ての者はーー世界の果てに到達せし王国の巡礼者を崇拝するでしょう!」

 

人の熱のこもった声が部屋へ響く。

その様子をマルクトは静かに見守っていたが、不意に視線が三人の後方へ移る。

円形の部屋の隅。

そこには、一歩引いた位置で沈黙を貫く紅黒の機体・ナインボール──ラナが立っていた。

しばらく、その姿を見つめる。

初めて見る存在。

少なくとも、自らの記憶には存在しない人物。

 

「・・・ところで、其方は・・・誰でしょうか。我が忘れていたら申し訳ないのですが・・・。」

 

「「「あ・・・。」」」

 

完全に忘れていた。アイン、ソフ、オウルの三人はそんな顔をしていたが、ラナは気にせず自己紹介する。

 

『・・・私の名前はラナ・ニールセンだ。・・・外の世界で機体を破壊され、そこからここに流れつき、彼女らに修復され、今は協力者として、彼女らの手伝いをしている。』

 

マルクトはラナを静かに見つめる。

数秒。

その視線だけが止まった。

「・・・。」

「外の世界の・・・。」

小さくそう呟く。

 

ラナは三人へ視線を向ける。

三人とも、何かをしたくて仕方がない様子だった。

 

『・・・詳しいことは、後で話そう。』

 

ラナが自己紹介を終えた時、オウルがマルクトに向けて走り出した。

 

「お姉さまぁ〜!」

 

オウルはマルクトの側に行って優しく撫でてもらう。オウルはかなり満足しているようだ。

 

「あ、ずるい!私もお姉さまになでなでしてもらう!お姉さま!私も!」

 

続けてソフもマルクトの側に行って優しく撫でてもらう。

マルクトの手は驚くほど柔らかかった。

頭へ触れるたび、優しく髪を梳くように指先が動く。不思議と心が落ち着いていく。

 

「ふぁあ・・・。」

 

とても心地が良いのか声が漏れてしまっている。

 

「あ、あうぅ・・・。」

 

しかし一人残されて悲しい声をあげてるアインをおいて。

 

「・・・。」

 

マルクトがアインの側に行く。

 

「ええっ・・・いいんですか?」

 

「さあ・・・。」

 

アインがマルクトに優しく抱きつく。

 

「お姉さま・・・!えへっ、えへへっ・・・。」

 

アインが嬉しそうな声を漏らす中、ソフとオウルから少し不満の声が上がる。

 

「・・・アイン、ずるい。」

 

「ずるいですね。」

 

「私もお姉さまに抱きしめられたいのに・・・。」

 

「やはり、抱きしめるだけではなく、抱きしめ返してほしいですからね・・・!」

 

「私も、私も!」

 

「人生とは、公平であるべきですからね・・・ふふ。」

 

これに対してアインが困ったような声を上げる。

 

「あうぅ、えっと、その・・・。お姉さま・・・?」

 

「・・・ソフ、オウル。アインが困っています。めっ、ですよ。」

 

マルクトがソフ、オウルの二人に対して咎める。

 

「ええっ?!」

 

「うぅ・・・お姉さまに怒られてしまいました。」

 

「そこまで落ち込むなんて・・・では。」

 

マルクトがアインを右手で包みながらソフとオウルを呼ぶ。

 

「二人とも、さあ・・・。」

 

「「お、お姉さまぁ〜!」」

 

二人は同時に飛び込み、左右からマルクトへ抱き付く。

マルクトは微笑みながら、二人を優しく抱き返した。

三人とも安心しきったような表情を浮かべている

少し離れた場所で、ラナだけはその光景を静かに見つめていた。

センサーには三人の心拍数上昇、表情変化、発話内容が映し出される。

それらは全て「歓喜」という一つの感情を示していた。

そしてポツンと佇んでいるラナに向けてマルクトが話す。

 

「・・・ラナさんも、どうですか?」

 

「とっても気持ちいいよ!」

 

「これはラナも味わうべきですよ。」

 

「ふぁ、あぁ・・・。」

 

『・・・私はいい。』

 

「そうですか、」

 

一歩だけマルクトがラナへ近付く。

 

「でも。」

 

「いつか、その気になったら。」

 

「その時は遠慮しないでください。」

 

『・・・わかった。』




そろそろバトル描きたい・・・もう一・二話先で書こうかなと思っておりまする。読んでくださりありがとうございます、
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