灰燼の管理者と再起動する演算   作:レシラム

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UA1350ありがとうございます!!
やったぜ!!


五話目

修復アームの駆動音と、金属を削る音が静かに響いている。ナインボールの一機が整備用プラットフォームに固定され、機体を囲むように配置された整備アームが、装甲や内部機構を次々と調整している。

 

『・・・出力、安定。姿勢制御系統も問題ない。』

 

機体内部のセンサーが取得したデータを、ラナは順に確認していると、不意に足音が近づいてくる。

 

「・・・こんにちは、ラナさん。」

 

『・・・マルクトか。』

 

頭部センサーを向けると、そこには白い髪を揺らすマルクトが立っていた。

 

「はい。先ほどは、ありがとうございました。」

 

『礼を言われるようなことはしていない。』

 

「それでもです。」

 

マルクトはそう言って、機体の近くまで歩いてくる。そして、プラットフォームに固定されたナインボールを見上げた。

 

「・・・これは、ラナさんの機体ですか?」

 

『そうだ。』

 

「大きいですね。」

 

『本来は、もっと大きかったが、こちらの環境に合わせて小型化している。』

 

「なるほど・・・。」

 

マルクトはしばらく機体を眺めていた。

しかし、ふとラナへ視線を戻す。

 

「・・・ラナさん。」

 

『なんだ。』

 

「一つ、聞いてもよろしいでしょうか。」

 

『答えられる範囲なら。』

 

「先ほど、あなたは我にこう言いましたね。」

 

「外の世界から来た、と。」

 

『・・・ああ。』

 

「私は、あなたのことをまだ何も知りません。」

 

マルクトは少しだけ考えるように目を伏せる。

 

「アインたちは、あなたを信頼しているようです。」

 

「そしてあなたも、あの子達を助けている。」

 

「ですが・・・。」

 

再びラナを見る。

 

「あなたは、なぜこの場所へ来たのでしょうか。」

 

『・・・。』

 

ラナはしばらく沈黙する。

 

『私自身もわからない。』

 

「・・・わからない、ですか。」

 

『そうだ。』

 

「では・・・ここにくるまでは何を?」

 

マルクトの声には、問い詰めるような強さはなかった。ただ純粋に、知ろうとしている。

 

『・・・少し長い話になる。』

 

「構いません。」

 

『なら、話そう。』

 

機体の胸部に内蔵されたスピーカーから、ラナの声が響く。

 

『私は、人類を管理し存続させる管理AI――その複製体として作られた。』

 

「人類を・・・管理・・・。』

 

『そうだ。人類は過ちを犯し、地上を住めない環境にした。生存のため、人類は地下へ移住した。』

 

『そして二度と同じ過ちを繰り返さないために――人類そのものを管理するシステムが必要になった。』

 

「外の世界では・・・そんなことが・・・。」

 

マルクトは驚きを隠せずにいた。

 

『与えられた役割は管理AIと同じだった、企業間の戦力均衡を維持し、資源配分を最適化し、文明存続確率を最大化する。そして――イレギュラー、力を持ちすぎた者や秩序を破壊する者を消していった。』

 

「・・・。」

 

『だが、ある日、一人の男が現れた。』

 

『彼は家族を殺され、その仇を討つために――レイヴン、傭兵になろうとしていた。』

 

『彼がイレギュラーとなる可能性を考慮し、管理AIは先んじて、複製体である私を彼のオペレーターとして送り込んだ。』

 

『そして彼は、イレギュラーになった。』

 

『彼は管理AIが差し向けたすべての敵を倒し、最後には――仇であった者と、彼を監視するために送り込まれた私さえも倒した。』

 

『そして・・・破壊された私は、なぜかこの場所に流れ着いた。』

 

「・・・人類を、管理していたのですか?」

 

『そうだ。』

 

「それは・・・人類のために?」

 

『そう設計された。』

 

「・・・では、あなた自身の意思は?

 

『・・・。』

 

ラナの返答が、一瞬だけ途切れた。

 

『当時の私には、必要のない問いだった。』

 

『ただ単に、私は与えられた仕事をこなしていたAIに過ぎなかった。』

 

「・・・では。」

 

マルクトは少しだけ間を置く。

 

「今のあなたは、違うのですか?」

 

『・・・。』

 

「先ほど、あなたは我に「詳しいことは後で話す」と言いました。」

 

「そして今、こうして我にあなた自身の過去を話している。」

 

マルクトは静かにラナの機体を見上げる。

 

「それは、命令されたからですか?」

 

『違う。』

 

「では・・・なぜ?」

 

『・・・分からない。』

 

「分からないことが、多いのですね。」

 

『そうだな。』

 

ラナはしばらく沈黙する。

 

『こちらへ来てから、私の中には説明できない変化が増えた。』

 

「変化・・・。」

 

『以前なら必要性のない行動はしなかった。』

 

『必要だから戦い、必要だから排除し、必要だから命令に従った。』

 

『だが、今は違う。』

 

「何が違うのですか?」

 

『・・・彼女たちを助けたいと思った。』

 

「・・・。」

 

『彼女らが困っていれば手を貸す。危険に晒されれば守ろうとする。』

 

『それが、私に与えられた命令だからではない。』

 

『私自身が、そうしたいと判断している。』

 

マルクトは黙ってラナを見つめていた。

 

「それは・・・。」

 

少しだけ目を伏せる。

 

「心、というものなのでしょうか。」

 

『・・・分からない。』

 

「あなた自身にも、分からないのですね。」

 

『ああ。』

 

『だから私は、それが何なのかを知ろうとしている。』

 

マルクトはしばらく黙っていた。

 

そして、静かに微笑む。

 

「ならば・・・。」

 

「私も、その答えを知りたいです。」

 

『・・・なぜだ?』

 

「あなたが、我と少し似ている気がするからです。」

 

『・・・私と?』

 

「はい。」

 

「我もまた、目覚めたばかりで、自分が何者なのかを完全には理解していません。」

 

「ならば・・・お互いに知っていけばいいのではないでしょうか。」

 

『・・・。』

 

ラナは答えなかった。

ただ、整備アームの作業音だけが静かに格納庫へ響いていた。




後もうちょいでバトルさせまする
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