本日は2話掲載します。
5分後にもう1話出します。
人生には幾度か転機と言うものがあって、僕の第一の転機は4歳の健診の時だったと思う。
皆が受ける個性診断で、どんな個性を持っているのだろうとワクワクしていた僕に下された診断は、奈落の底に落とすだけの力があった。
「緑谷出久君、残念ながら君は無個性と診断されました」
お医者さんの無情な言葉と、僕の隣で泣いて謝るお母さんの声を聞きながら、僕はあんなに憧れたオールマイトはもちろん、ヒーローにすら成れないと思い知る事となった。
個性という一種の超能力、超技能を持つのが当たり前の様になった、いわゆる個性社会になって幾年月、全体の8割が何らかの個性を持っている中で、無個性とは「無能」の烙印を押された様なものだった。
もちろん、個性といっても指から小さな火が出る、なんて言うちょっとした個性から、空を飛ぶ、怪力を持つ等の強個性まで幅広くあるけれど、全くの無個性は無能と同等だった。
無個性の2割もほとんどが年寄りで、若い人で個性がない人は学校に1人いるかどうか、の世界だったのだ。
僕は、その無能の烙印を押された。
この社会には個性を使った犯罪者(ヴィラン)が多くいて、警察も対応できない事態になりがちになっていた。
それに対応する為に産まれたのが、ヒーローという職業だ。
様々な個性を使い、悪党を退治し警察に引き渡す、ヒーローという存在は皆の憧れの的だった。個性社会は、ヒーロー社会でもあったのた。
そしてヒーローには、強個性が必須条件なのた。
つまり、無個性の僕はヒーローになれない。
それでも諦めきれない僕に、周りはとても冷たかった。
無個性はヒーローなんかになれない!
お前の様な弱い奴はヒーローなれない!
落ちこぼれが生意気言うな!
仲が良かったと思っていた友達は、皆離れていった。
幼馴染のかっちゃんも、爆破という強個性で僕をいじめてきた。
かっちゃんに、役立たずの木偶の坊という意味で「デク」とあだ名され、僕が何を言っても、何をやっても役立たずと罵られ、時に暴力を振るわれた。
そして今日もボロボロにされ、公園のベンチに座って1人佇んでいた。
それは小学校に上がる数カ月前の事。
ここで第二の人生の転機が訪れた。
僕の前を通りかかった男の人は、とても大きかった。見上げる程の身長は、周りの大人の優に2倍はあった。いや、小さい僕が見上げて感じた身長だから、本当はもっとあったかも。
そして恰幅の良さは、鍛え上げた
「ん〜?坊主!そんな所で何をしている?」
何か心に触れるものがあったのか、男の人は僕に話しかけてきた。
その時の僕は気が沈んでいて、誰かに縋りたい気持ちでいっぱいだったと思う。
思わず、僕はその男の人にぶちまけてしまった。
無個性の事、いじめられている事、それでもヒーローになりたい事。
泣きながら、何もかも話してしまった。
話を聞き終えた後、男の人はうーむと唸って立ち上がった。
そして徐ろに拳を僕に突き出した!
途端に、顔が広がって持っていかれる程の突風が吹き荒れる!
ベンチがあったから吹き飛ばされなかったけど、凄まじい拳圧だった。
「無個性はヒーローになれないと言うが坊主、今のは個性ではなく技だ!」
びっくりして凝視していた僕に、男の人は話しかけてくれる。
「無個性で弱い。なのに坊主、お前は鍛えてないな?唯でさえ個性持ちより不利なのに、そんな事でヒーローになれるのか?」
「ぼ、僕は…ヒーローになれるんでしょうか!?」
うーむ、とまた男の人が唸りだす。
「身体を鍛え、技を身に付けろ坊主!無個性で弱いなら、技を覚えて強くなればよい!さすれば、何にでもなれる!もちろん、ヒーローにもだ!」
それは、その言葉は、僕の人生を大きく変えさせた言葉だった。一番、僕が一番欲しかった言葉だった。
「僕に、その技を教えて下さい!お願いします!」
もう考える間もなく、その場で土下座して頼み込んだ。ここしか、今しか僕を変える事はできない!
「うーむ、これだけボロボロに虐められて、尚立ち上がる気力。未だひ弱なれど大器の片鱗有り!良かろう、ワシが空手を教えてやろう」
それが、その男の人、タラバさんとの出会いが、僕と超甲殻空手、そして超電磁空手との出会いだった。