モヤに包まれて足場が消えた、と思ったら、見えたのは水面だった。何処かに飛ばされた!?と思う暇なく、水中に投げ出される。
水の中では、サメみたいな敵が「おめーに恨みはないけど、サイナラ!」と大口開けて襲ってきた。
僅かにしか身動きが取れない水中でサメに襲われると言う、原始的な恐怖に襲われたが直ぐに迎撃態勢を取ったところで、梅雨ちゃんがサメをキック!そのまま舌で船の上に助けられた。
「くそ!何をテンパっているんだ僕は!」
突然の襲撃、久々の
いくら経験がない
後悔していたら、梅雨ちゃんが峰田くんを助けて上がってきた。峰田くん、ビタン!と乱暴に船に放り出されていた。痛そう。
「ありがとう梅雨ちゃん、助かったよ」
「どういたしまして。しかし大変な事になったわね」
「奴らはここの地形や、オールマイトの予定を知っていた。綿密な計画を立ててきたと考えた方が良さそうだ」
「で、でもよう。オールマイトが来たらあんな奴らケッチョンチョンだぜ」
「峰田ちゃん…殺せる算段が整ってるから連中こんな無茶してるんじゃないの?オールマイトが来たとして……無事に済むのかしら」
「みみみ緑谷ァ!んだよあいつうう!」
うん、梅雨ちゃんの心配も当然だが、そこまで脅さなくても、とは少し頭を過ぎる。しかし、言ってる事は頭に入れておくべき事だ。
「オールマイトを殺せる手段は、考えても分からないから後回しにしよう。今分かっているのは敵がUSJの地形を把握して待ち伏せている事、梅雨ちゃんをここに送ったということは僕達の個性を把握してないという事。とりあえず今の状況を抜け出せる算段を考えようよ」
2人に個性を聞いてみると、梅雨ちゃんは水中に強い蛙の様な個性、峰田くんは頭のモギモギで敵をくっつけたり反発したりできる個性だった。
峰田くん、戦闘的な個性じゃないって嘆いているけど、今必要なのはその個性なんだよ!
「ひとまず水中の敵をやっつけるから、梅雨ちゃんは敵を船上に投げて、峰田くんが片っ端から捕縛する作戦でどう?」
「いや緑谷ぁ、やっつけるって、そんな簡単に…」
「大丈夫、任せて!まあ、見ててよ」
そう言うと僕は飛び上がり、水面に向かって拳を撃ち出す。
「超電磁…逆突きゃああ!」
超音速の拳が、水中で炸裂する。
水中衝撃波。
空気は圧縮率が高いので爆発の衝撃は減衰しやすいが、水中はそうはいかず、衝撃波は中々減衰しないまま水中を駆け巡るのだ!
…師匠と山籠りを無理矢理させられて、魚を捕るのに使わされたから、威力は保証済みだ。ダイナマイト漁だね。
結果、プカプカ浮かぶ敵の集団。手加減したけど、30m先のコンクリートを粉砕する拳の衝撃波を食らったのだ。
峰田くんは呆れた顔をしていたが、梅雨ちゃんが敵を拾い上げてモギモギで捕縛した。
「とりあえず水中にはもう居ないみたい」
「今朝快便だったし奴ら1日はくっついたままだぜ」
「よし!広場に戻って皆と合流しよう!先生達も、まだいる筈だよ!」
僕達は、ひとまず中央の噴水広場へ戻る事にしたのだった。
広場に着くと、相澤先生が脳味噌むき出し男に襲われる寸前だった。
僕は慌てて足に力を込め、ダッシュで間に割り込む!
殴りつける腕の下にスッと自分の手を差し込むと、グリンと回しながら関節を決めて相手の力を利用しつつ、遠くへ放り投げる!サヤさんに習った、合機柔術だ!
「み、緑谷…!」
「先生、遅くなりました!」
先生の様子をサッと診る。素人目だけど、あちこち骨折して頭から血を流しているが、命に別状はないみたいだ。
「…!!ここは大丈夫だ!他の生徒を助けに行け!」
「先生、そうはいかない様です!」
投げた方向を見ると、脳味噌むき出し男が立ち上がってこっちを睨んでいた。
手だらけマンが「脳無、こいつも始末しろ!」と命令すると、高速でやって来る!
「超甲殻三戦法!」
ぐっと力を入れて構える。筋肉を活動させ、
「み、緑谷ぁ!!避けろ!!」
先生は叫ぶが、既に脳無は目の前だ!
右から左から正面から、高速パンチが降り注ぎ、その勢いだけで砂煙が舞い上がる。
「はははは!生徒が1人、粉微塵になった!」
手だらけマンが喜ぶが、それは少し早いんじゃないかな?
脳無が手を緩める一瞬の隙に、反撃を開始する!
「超電磁正拳突きぃぃ!!」
ワン・フォー・オールを込めた正拳突きが
脳無の胴体に炸裂!ショック吸収をも乗り越え、衝撃波は体内に炸裂した!
「な、何だと!?何故、無傷なんだよ」
「ふん!魂の籠もってないパンチなんて、何発くらっても効くもんか!」
そう言って内部から破壊され、悶えている脳無を更に投げ飛ばす!脳無は向こうの壁を突き破り、ガラガラと瓦礫に埋まった。
「死柄木弔」
そこへ、あのモヤが手だらけマンの所へワープしてきた。
「黒霧、13号はやったんだろうな?」
「それが…一名逃げられました」
「…は?」
死柄木と呼ばれた男は、顔をガリガリと削る様に掻きむしる。
「なんだよ…全然話が違うじゃないか先生!オールマイトは居ない、ガキは逃がす、オマケに脳無は生徒1人殺せない!!」
「そして最期は逮捕されました、になるよ」
僕は死柄木に向かって拳を構える。
「くそ!このチート野郎が!脳無!!早くこいつをブッ殺せ!!」
ドカン!と瓦礫を吹っ飛ばし、脳無が躍り出る。見た目は、先程のダメージは残ってない。だが、超電磁レーダーで観ると、体内はまだズタボロだ。
「はっはっは!脳無はショック吸収と超再生を持っているんだ!その程度のパンチなど効きはしない!」
外野が何か言っているけど、僕は再度脳無と対峙した。
そして呼吸を調えると、フッと脳無へ向かって歩き出す。脳無は構えようとするが、そのまま脇の死角へ入り込む。まだ反応できてない。
僕は脳無の横を過ぎ去る際に、脳無の脇腹に鉤突きを撃ち込んだ。
ワン・フォー・オールと超電磁空手の粋を詰め込んだ一撃だ。脳無の体内で嵐の様に発生した衝撃波は、身体中をグルグル破壊しながら回り、最後に地面に接した足裏から噴出する。
そう、まるでロケットの様に。ゼッカ師匠直伝の、
「…た〜まや〜」
たちまち打ち上がり、脳無は屋根を突き抜け去って行った。まだ生きてるかな?
「………は?」
死柄木が呆けた顔で天井を見つめる。多分。顔見えないけど。
「私が来た!」
あ、やっと来てくれた、オールマイト先生!!
しかし、ふと気付くと死柄木と黒霧がいなかった。
しまった、オールマイト先生に気を取られた隙に逃げられたか…。あ、これじゃオールマイトが逃がした様に聞こえるよ。
「お疲れ様です、オールマイト先生。首謀者の2人はワープの個性で逃げられました。怪我人は見た所相澤先生と13号先生だけですが、各地に皆飛ばされたので、助けに行かないと!」
「そうか、ありがとう緑谷少年!」
そう言うと残った回りの敵をあっという間に気絶させ、飛び出して行った。
これで…一安心かなぁ?