ここは、敵連合のアジトである、とあるBARの中。
そこに黒い霧が発生し、中から手のマスクをした死柄木が出てきた。
「ちくしょう、完敗だ…。手下共は瞬殺だ…脳無もやられた…平和の象徴には会えもしなかった!」
死柄木はカウンターのモニターに愚痴をぶちまける。
「話が違うぞ先生…」
『違わないよ』
モニターから、先生と呼ばれた人物の声が聞こえる。
『ただ見通しが甘かったね』
『うむ……なめすぎたな。敵連合なんちうチープな団体名で良かったわい。ところで、ワシと先生の共作脳無は?回収してないのかい?』
また、モニターから別の男の声が聞こえる。
「脳無は、生徒の1人にやられました。彼のパンチ一発で屋根を突き破り、吹き飛ばされて座標が分かりませんでした」
『ん?脳無が生徒にやられた?一撃で?』
『そんな馬鹿な…。あれはショック吸収に超再生も持っていた筈だ』
モニターの向こうが、やや慌てた感じになる。
「そうだよ先生。胸に超電磁とか書かれたフザケた道着を着た、緑髪のモジャモジャ頭の生徒にやられたよ」
「脳無は彼にかなりの攻撃をくわえたのですが、全くの無傷でした」
モニターの中がシンと静まる。
そこに、更に別の人物の笑い声が響き始めた。
『キャハハハッ!あの様な人間の
『…ワシの脳無が、人形だと言うのか!?』
『そうです!どんなに強い人形でも、使えなければ意味がないでしょう!現にたった1回の襲撃で失くしているではありませんか!私の作った、焼きプリン製造機の方が余程役に立つ』
『…教授、あまり博士を虐めないでくれないかね?』
『良いでしょう。これ以上、口出しはしませんとも!プリンおいちい!』
少しの間、誰も話さない時間をおいて、先生と呼ばれた男が答えた。
『何にせよ、今回の失敗は経験を積んだと考えなさい。なに、まだ取れる手は沢山あるとも』
そして、先生はモニターを切る寸前、呟いた。
『超電磁空手の使い手、か…。もしかすれば、こちらに引き込める可能性があるかな…』
「全員無事か」
クラス全員が集められ、その無事が確認された。尾白くんは1人で戦っていたらしい。やはり格闘技をしてると強いや。
相澤先生は腕に敵の個性、崩壊の影響があり13号先生は背中から上腕にかけて裂傷が酷いが、どちらも命に別状はない。
敵は首謀者2人以外は逮捕、脳無は雑木林で確保された。良かった、まだ息があった…。
ショック吸収と超再生があるって聞いたから、余り手加減出来なかったけど。殺したらヒーローとは言えないからね…。
その日の帰り、学校を出る前に相澤先生に呼び止められた。病院で治療を受けたら、即座に戻ってきたらしい。流石は現役ヒーロー、タフだなぁ…。
「緑谷…。先ずは助けて貰った事に礼を言おう。助かった。そして済まない。本来なら、教師の俺が護らなくてはならなかった。不甲斐ない事だ…」
「い、いえ、個性の相性もありましたし…」
頭を下げる相澤先生に、慌てて止める。
「それはそれとして、お前を鍛えたと思える人について聞きたい。お前は、超電磁空手の一門…だな?」
相澤先生も超電磁空手を知っていたのか!?と驚いたけど、聞けばゼッカ師匠達は政府から特一級の危険人物として目をつけられているそうだ。…いや、納得しかないけどね。むしろ、見逃していたら、それこそ政府は無能だと批判したと思うよ。
「そこで、お前を注視していたが…。今回、見事に死者を出さずに済ませた」
「あ、はい!実は他にも手加減を教えてくれた拳法の師匠もいまして!」
「…そうか…。個性は、爆豪にしろ轟にしろ、使い方次第で容易く人を殺せるものだ。これからもその調子でいけ」
相澤先生は、それだけ言うと立ち去って行った。かなり、心配されていたんだな…。
次の日は流石に休みだった。
そして、その日を利用してかっちゃんと修行をした。
「かっちゃんが使った技術、制空圏。自分の攻撃範囲を定め、その中を自分の庭の様に感じる技」
「おう、これか…」
そう言うとかっちゃんは制空圏を張る。
もちろん、目に見えている訳ではない。
格闘技をある程度極めている者に感じる、相手の間合い。
「僕の技は、筋肉を手素螺コイルとして使った時の応用で、超電磁レーダーを張っているから内容が違うけど。拳法の師匠から聞いた話だから、多分あっていると思うよ」
そう言って、僕は師匠から聞いた制空圏の説明をする。
第1段階は制空圏を薄皮1枚まで縮め、反射神経を高めて相手の動きに逆らわずに合わせる。
第2段階は相手の目を見て、相手の立場に立ち同調して合わせる事。傍若無人を具現化した様なかっちゃんには難しいかも。
「誰が傍若無人だ!!」
「…ええ!?…自覚無し!?」
最終段階で、相手と一体化できた後、相手の動く場所を先に占領する事で、相手を自在に動かす技術。
これを極めし技は、「流水制空圏」と言う。
「デク…本当にできるんか?いや、手素螺コイルなんかよりは説得力が…」
「師を疑うな、疑うなら師を取るな。拳法の師匠の言葉だけどね。僕は、かっちゃんならできると信じている。独学で、短期間で制空圏を身に着けたかっちゃんなら!」
僕はどんなに頑張っても出来なかったけど…。と言うか、先手必勝、一撃粉砕の超電磁空手と相性が悪いんだよね…。空手に先手なしって言葉はある筈なんたけど。
それはともかく、無責任だけど、かっちゃんには本当に期待しているんだ。
この日は第1段階の修行で丸々潰えた。
ここまでは、かっちゃんもあっという間に習得出来たけど、やはり第2段階の相手と同一化は難しいみたい。
うん、心の修行として、頑張って欲しいと思いました。