「雄英体育祭が迫ってる!」
「「「クソ学校っぽいの来たあ!!」」」
翌日のホームルーム、相澤先生が元気な姿でやって来た。肘の動きが何となくぎこちないが、本人的には完治しているそうだ。
そして雄英体育祭の開催。敵に襲われた後だが、健在である事を示す為にも警備等を強化して行うらしい。
敵も、体育祭直前に襲ってくれば中止に追い込めて打撃を与えただろうに。
授業終了後も、体育祭の話で持ち切りだった。
飯田くんも興奮気味で、「燃えるのは当然だろ」と妙な動きをしている。汽車の動き?
「飯田ちゃん独特な燃え方ね、変」
梅雨ちゃん、本人の申告通り、正直だね。
僕も同感です。
しかし何より張り切っているのが。
「頑張ろうね、体育祭!」
気合入り過ぎて麗日ではない麗日さんだった。眼力が強い!でも可愛い。
後で理由を聞いてみた。
麗日さんのヒーロー動機は、両親の経営する建設会社の為のお金儲けらしい。
両親は自分達の事より、麗日さんの夢を優先して欲しいらしかったけど、余計に稼ぎたくなったとの事だ。
本人は不純な動機だと恥ずかしがっていたけど…。
「麗日君…!ブラーボー!!」
飯田くんは手放しで褒める。
「麗日さん、動機はどうあれ、結果的に人助けに繋がれば、立派なヒーローじゃないかな?ほら、恋愛だってナンパでも一緒のクラスだったでもお見合いでも、きちんと愛し合えば出逢いの仕方なんて問題ないでしょ」
女の子なんだし、恋愛に絡めたら分かり易いかな?とか思っていたら、別の奴らが食い付いた。
「なになに、恋愛の話〜!?」
「私達にも聞かせて〜!」
髪も肌もピンクな芦戸さんと、透明少女の葉隠さんだ。
2人はクラスの中でも特に女子高生してるからな〜。僕は、付いて行けません。
恋愛じゃなくて動機の話だと教えた。2人もお麗日さんの動機を肯定してくれたよ。
「緑谷少年…一緒にごはん、食べよ?」
オールマイトが昼食のお誘いをしてきたのは、そんな時だった。
オールマイトと個室に入ると、先日のお詫びとお礼を言われた。
「警戒していたのに、通勤途中で力を使い果たしたが為に、君達を危険な目に合わせた。幸い、生徒達も先生も大きな怪我はなかったがね、すまなかった」
「いえ、オールマイト。何とか対処できて良かったです。それに、僕も今回は敵の不意討ちに対して、動きが余りに鈍かった。良い経験になりました」
「そうだな…。敵も馬鹿な事をしたものだ!こんなに早く実戦を経験した1年生などあっただろうか。このクラス(1ーA)は強いヒーローになるぞ!私はそう確信しているよ」
「オールマイト…」
「だが、私の活動限界も、そろそろ2時間を切ろうとしている。ぶっちゃけ、私が平和の象徴として立っていられる時間って…実はそんなに長くない」
オールマイトは平和の象徴だ。彼の活躍で日本の平和が保たれている。
だが、歪な状態でもある。大怪我が無くてもオールマイトは人間、必ず老いて死ぬのだ。
しかし現状の平和を壊すのは、多くの犠牲を伴う。いつかは複数のヒーロー達による、強固な組織でも作らないとならないだろうが、直ぐには無理だ。
本当は10年は前からやらないと駄目だったのだろうけど…。
そして、オールマイトが引退する日は刻一刻と迫っている。それに対応できる、最も近いヒーロー候補はワン・フォー・オールを受け継いだ僕なのだ!
僕には、自信なんて全くない。でも師匠達が後押ししてくれている。師匠達なら、崖っぷちまで追い込んで、重りを括り付けて突き落とすだろう!…何で僕、生きてるんだろう…。
いや、ここは言わなければ!
「大丈夫です、オールマイト!今度の体育祭で優秀な成績を…いや、必ず優勝して、僕が来た!と高らかに宣言してみせます!!」
オールマイトはうむ!と頷いた。
「緑谷少年なら、そう言ってくれると思っていたよ!」
僕とオールマイトは、頷きあったのである。
さて、ここからは説教の時間だ。
「それはそうと、オールマイト。通勤途中でヒーロー活動も良いのですが、その為に授業を欠席とか社会人としてなっていません!」
そう、師匠達は強さだけ飛び抜けていて、社会的行動や協調性が絶無で、どれだけ僕が周囲に頭を下げてきたのか!
超電磁空手の師匠達とは逆に、星の保育園の師匠達からは社会人としての行動を、徹底的に叩き込まれたよ…。
「いや社会人って、君はまだ高校生…」
「学生もへったくれもありません!大体、地域にもヒーロー達がいるのです!オールマイトは何でも自分で解決しますが、時には信じて任せてやらないと、そのヒーロー達も成長しません!オールマイトはヒーロー社会の弱体化を狙っているのですか!?違うでしょ!No.1ヒーローなら、他のヒーロー達の育成も考えないと!僕だってクラスメイト相手ですが弟子として育成を…グダグダ…」
「オー…ソーリー…」
僕はその時、隣の部屋で熊だか鼠だか分からない人が、自分の言いたい事全部言ってくれてるな〜と部屋からそっと出た事を、知らないでいたのであった。